グレアム・グリーンのレビュー一覧
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「幸福と愛を混同するのは間違いだ」英文学史に名を刻む恋愛小説の最高傑作とはいえそこに甘さはない。妻と恋人と神との4角関係を描くキリスト教哲学小説の名作。西アフリカの植民地の警察副署長スコービーは南アフリカに移住したいと言う気まぐれな妻のためにシリア人の悪党に金を借りる。妻が発った後、海難事故で夫を失った若い女ヘレンと出会う。
グリーンの凄さは無駄のない人物描写にある。何かの役割を持って過剰に語ったり作者すら気持を理解できない人形のような人はいない。登場人物はごく自然に登場しその一挙手一投足が適確なジャブのように後々確実に効いてくる。そうそうと言ってるうちに迷路に迷い込み、それでも進むうちに一気 -
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「ヒューマン・ファクター」。人間的要因、とでも訳しますか。
これは、大人の男性には堪らない小説でした。
手に汗握る、スパイ小説。紛れもないスパイ小説なんですが、そういう状況に置かれた男性の心理描写。葛藤。
銃の撃ち合いやら車の追っかけっこなんか、ゼロです。
後半は物凄い緊迫感。やめられないとまらない、でした。
1978年にイギリスで書かれた小説です。
書いたのは、グレアム・グリーンさんという人です。
グリーンさんは1904年生まれのイギリス人さん。1991年に亡くなっています。86歳くらいまで生きたんですね。
で、1930年代、つまり30歳前後にはもう、小説家として成功していたみたいですね。 -
「権力と栄光」について
この作品は、グレアム・グリーンの代表作の1つで、遠藤周作の「沈黙」に大きな影響を与えたと言われている作品。
メキシコの共産主義革命という実際に起きた出来事を背景に書かれています。
逃亡中の神父は、逃亡する以前に既に祭日や断食日、精進日といったものに心を煩わすこともなくなっていますし、妻帯や姦淫を許されないカトリックの神父であるのに、マリアという女性との間に6歳になるブリジッタという娘がいます。
そして、逃亡途中に聖務日課書を失くし、携帯祭壇(オールタ・ストーン)を捨て、通りすがりの百姓と自分の服を交換。
残っているのは、司祭叙任十周年のときの原稿だけ。
そこまで堕ちた神父であるのに、彼の -
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「ヒューマン・ファクター…人間や組織・機械・設備等で構成されるシステムが、安全かつ経済的に動作・運用できるために考慮しなければならない人間側の要因のこと」(Wikipedia)
舞台は第二次大戦後冷戦時代のイギリス諜報部。
アフリカ情報担当である諜報部員カッスルは、すでに定年を過ぎても仕事を続けているが、その理由は自分でも解らず、常に「引退」を考えていた。
そこへ、所属する部署に内部調査が入る。
誰かによる情報漏洩の疑いを明らかにするため……。
イギリス諜報部というと「スパイ大作戦」「007」など派手なイメージがあるが、まったくそんな描写はなく、淡々と日常を描きながら疑心暗鬼が高まっていく -
購入済み
映画「ことの終わり」や「第三の男」の原作者による長編小説。
父親の賭けのかたとして、キャプテンと名乗る詐欺師に連れ出された少年は、ロンドンの片隅でキャプテンの帰りを待ちわびながら暮らす女性と生活を始める。
やがて成長した少年は、キャプテンを追ってパナマへ渡る。
奇妙な関係で結ばれた男女と少年の、複雑でひたむきな愛を描く前半、パナマを舞台に冷戦時代のスパイ戦が展開される後半。
グリーンの魅力が楽しめる作品。 -
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本書の解説には、某小説家による以下のコメントが引用されています。
「スパイを主人公にしているからスパイ小説にちがいないだろうが、そのようなレッテルは無用の傑作である」
まさにその通りです。
スパイ小説の傑作であることは間違いないですが、より大事なことはスパイという存在を描いた人間小説ということかもしれません。
誰が二重スパイなのかという謎を追いかける愉しみもありますが、それと同時に語り手であり主人公である男にとって何が大事なのかを知っていく愉しみもあります。
500ページ近い作品ですが、久しぶりに睡眠時間を削ってでも読み進めたいと思わせてくれた一冊でした。 -
Posted by ブクログ
トム・ハーディへのインタビューで、映画インセプションで彼が演じた役(イームス)のモデルの一人であるというのを知って読んだ。
最初はホーソンがそのモデル?と思ったけど、最後まで読むと主人公の方かなぁと。old manって言ってたしやっぱりそっちか。
内容は最初はなんだか展開が読みやすい昔の小説という印象で正直あまり面白くなかったんだけど、途中から怒涛の展開、主人公の変貌…いや変貌は寧ろ見事にしておらず終始一貫しているんだけどそのブレなさがどんどん得体の知れない印象を与え、この周りの登場人物や読者がいかに主人公を見誤っていたかに気づくという。こういう騙され方はとても面白い。
そして感情描写が少な