グレアム・グリーンのレビュー一覧

  • ヒューマン・ファクター〔新訳版〕

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    これは翻訳の妙でもあるのだろうけど、文章の隅々まで英国っぽさが溢れる小説。人物の性格造形から気候や街の雰囲気、ウイスキーや料理、菓子等の小道具に至るまで、芯が一本ビシッと通っていて、知らずしらずのうちに世界に引き込まれた。

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    2021年07月16日
  • 事件の核心

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    「幸福と愛を混同するのは間違いだ」英文学史に名を刻む恋愛小説の最高傑作とはいえそこに甘さはない。妻と恋人と神との4角関係を描くキリスト教哲学小説の名作。西アフリカの植民地の警察副署長スコービーは南アフリカに移住したいと言う気まぐれな妻のためにシリア人の悪党に金を借りる。妻が発った後、海難事故で夫を失った若い女ヘレンと出会う。
    グリーンの凄さは無駄のない人物描写にある。何かの役割を持って過剰に語ったり作者すら気持を理解できない人形のような人はいない。登場人物はごく自然に登場しその一挙手一投足が適確なジャブのように後々確実に効いてくる。そうそうと言ってるうちに迷路に迷い込み、それでも進むうちに一気

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    2022年04月26日
  • ヒューマン・ファクター〔新訳版〕

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    「ヒューマン・ファクター」。人間的要因、とでも訳しますか。
    これは、大人の男性には堪らない小説でした。
    手に汗握る、スパイ小説。紛れもないスパイ小説なんですが、そういう状況に置かれた男性の心理描写。葛藤。
    銃の撃ち合いやら車の追っかけっこなんか、ゼロです。
    後半は物凄い緊迫感。やめられないとまらない、でした。

    1978年にイギリスで書かれた小説です。
    書いたのは、グレアム・グリーンさんという人です。
    グリーンさんは1904年生まれのイギリス人さん。1991年に亡くなっています。86歳くらいまで生きたんですね。
    で、1930年代、つまり30歳前後にはもう、小説家として成功していたみたいですね。

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    2014年03月30日
  • ヒューマン・ファクター〔新訳版〕

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    007の痛快なスーパーマンの諜報部員ではない。地道な情報担当の諜報部員の日々が息苦しく描かれている。主人公は妻のために祖国を裏切った二重スパイ。疑惑・陰謀・奸策に囲まれてる。家族とともに生き抜くために、自分を隠しながら全てを疑い、真実を判断しなければならない。小さな過ちは破滅につながる。心の支えは妻と息子、しかし家族に真実を話すことも許されない。孤独と愛、信頼と裏切り、人生でのどうしようもない不条理が濃縮されているよう。その中で懸命に生きる主人公たちが切ない。緊迫感に溢れたストーリー。

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    2013年05月07日
  • ヒューマン・ファクター〔新訳版〕

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    スパイ小説の傑作と呼ばれているだけある。一気に読み終わった。たくさん出てくるウイスキーの銘柄が気になる。

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    2019年01月16日
  • ハバナの男

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    冷戦下のキューバ、平凡な掃除機屋さんがなぜか英国スパイにスカウトされる。勘違いや大げさな反応や状況の馬鹿らしさに流されていると、話がどんどんとややこしくなっていく。痛快とはまさにこのこと。

    Our man in Havana
    Graham Greene, 1958

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    2025年10月24日
  • 権力と栄光

    「権力と栄光」について

    この作品は、グレアム・グリーンの代表作の1つで、遠藤周作の「沈黙」に大きな影響を与えたと言われている作品。
    メキシコの共産主義革命という実際に起きた出来事を背景に書かれています。

    逃亡中の神父は、逃亡する以前に既に祭日や断食日、精進日といったものに心を煩わすこともなくなっていますし、妻帯や姦淫を許されないカトリックの神父であるのに、マリアという女性との間に6歳になるブリジッタという娘がいます。

    そして、逃亡途中に聖務日課書を失くし、携帯祭壇(オールタ・ストーン)を捨て、通りすがりの百姓と自分の服を交換。
    残っているのは、司祭叙任十周年のときの原稿だけ。

    そこまで堕ちた神父であるのに、彼の

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    2025年09月03日
  • ヒューマン・ファクター〔新訳版〕

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    「ヒューマン・ファクター…人間や組織・機械・設備等で構成されるシステムが、安全かつ経済的に動作・運用できるために考慮しなければならない人間側の要因のこと」(Wikipedia)

    舞台は第二次大戦後冷戦時代のイギリス諜報部。
    アフリカ情報担当である諜報部員カッスルは、すでに定年を過ぎても仕事を続けているが、その理由は自分でも解らず、常に「引退」を考えていた。
    そこへ、所属する部署に内部調査が入る。
    誰かによる情報漏洩の疑いを明らかにするため……。

    イギリス諜報部というと「スパイ大作戦」「007」など派手なイメージがあるが、まったくそんな描写はなく、淡々と日常を描きながら疑心暗鬼が高まっていく

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    2023年01月19日
  • ヒューマン・ファクター〔新訳版〕

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    スパイ小説ですが、007みたいな感じではなく文学作品という感じ。ヒューマンファクターのタイトル通り、登場人物のもつ異なる性格や背景がストーリーを動かしていきます。

    好きなフレーズ
    “我が国の人たち(my people)なんて話をしないで。わたしにもう同胞はいない。あなたが我が民(my people)なの”

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    2020年11月08日
  • ヒューマン・ファクター〔新訳版〕

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    スパイは、いつ何時なってしまうかわからない。愛する家族の為なら、一歩踏み出してしまうのだろう。でも、悲惨の中でも、そこはかと出てくるユーモア。さすが、グリーン。読者を飽きさせずに、一気に読み進ませてしまう。

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    2020年04月25日
  • ヒューマン・ファクター〔新訳版〕

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    静かな話なんだけど、最後まで一気に読み進めた。
    007みたいな華やかさはないけれど、はらはらしました。

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    2020年03月10日
  • キャプテンと敵

    購入済み

    映画「ことの終わり」や「第三の男」の原作者による長編小説。
    父親の賭けのかたとして、キャプテンと名乗る詐欺師に連れ出された少年は、ロンドンの片隅でキャプテンの帰りを待ちわびながら暮らす女性と生活を始める。
    やがて成長した少年は、キャプテンを追ってパナマへ渡る。
    奇妙な関係で結ばれた男女と少年の、複雑でひたむきな愛を描く前半、パナマを舞台に冷戦時代のスパイ戦が展開される後半。
    グリーンの魅力が楽しめる作品。

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    2019年11月18日
  • ヒューマン・ファクター〔新訳版〕

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    スパイ小説だが複雑な複線があるわけでないシンプルなプロットだ(最後のカッスルの役割が明かされるところは少しひねった感じだが)。しかし強く引き込まれた。いかにもイギリス人と言うシニカルな視点。愛と怖れをコインの裏表として描いている。

    最後のほうになってセイラの視点で描かれる転換は何か他の本で同じような手法を読んだ気が。そこに限らず後に続くスパイ小説には大きな影響を与えているのだろう。ただひとつうらみがあるとすれば、うますぎてスルスル流れてしまうような感じだろうか。

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    2018年11月05日
  • ヒューマン・ファクター〔新訳版〕

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    本書の解説には、某小説家による以下のコメントが引用されています。

    「スパイを主人公にしているからスパイ小説にちがいないだろうが、そのようなレッテルは無用の傑作である」

    まさにその通りです。
    スパイ小説の傑作であることは間違いないですが、より大事なことはスパイという存在を描いた人間小説ということかもしれません。

    誰が二重スパイなのかという謎を追いかける愉しみもありますが、それと同時に語り手であり主人公である男にとって何が大事なのかを知っていく愉しみもあります。

    500ページ近い作品ですが、久しぶりに睡眠時間を削ってでも読み進めたいと思わせてくれた一冊でした。

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    2018年10月19日
  • ハバナの男

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    トム・ハーディへのインタビューで、映画インセプションで彼が演じた役(イームス)のモデルの一人であるというのを知って読んだ。
    最初はホーソンがそのモデル?と思ったけど、最後まで読むと主人公の方かなぁと。old manって言ってたしやっぱりそっちか。

    内容は最初はなんだか展開が読みやすい昔の小説という印象で正直あまり面白くなかったんだけど、途中から怒涛の展開、主人公の変貌…いや変貌は寧ろ見事にしておらず終始一貫しているんだけどそのブレなさがどんどん得体の知れない印象を与え、この周りの登場人物や読者がいかに主人公を見誤っていたかに気づくという。こういう騙され方はとても面白い。
    そして感情描写が少な

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    2017年04月23日
  • ヒューマン・ファクター〔新訳版〕

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    派手さの全くないスパイ小説。なのに、確かにぐいぐい引き込まれる。政治状況は変わっているが、今、読んでも古びれないのは、ヒトの生きざまの根幹に触れているから。

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    2015年10月17日
  • 叔母との旅

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    自分の本当の母親は、ということは最後まで明かされないが、叔母との旅が契機になって、南米に移住してしまうという、よくできている小説である。

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    2015年09月22日
  • 喜劇役者

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    ハイチを舞台にした小説である。喜劇役者は自分ではなく、船で乗り合わせたイギリス人であり、はっきりと死んだということは解らないが、自分は助かる結末である。

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    2015年09月06日
  • 密使

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    密使となってイギリスの石炭を輸入する役割を担った人物とそれに反対する人物と女性というみつどもえの小説である。主人公は最後は死なないというめずらしい結末。

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    2015年07月16日
  • スタンブール特急

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    スタンブール特急。ユーゴスラビアの革命家の死亡が背景とあるが、その歴史は日本では世界史の範囲外である。

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    2015年06月29日