上野元美のレビュー一覧
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猟奇的な殺人事件で物語は始まる。白人の死体の横に黒人の死体があり、その手には切取られた白人の睾丸が握られている。収容された黒人の死体は所在不明になるが、次の殺人事件現場に現れる。同様の事件は南部を中心に拡がりを見せ、ホワイトハウスで要職者も殺害されるに至る。被害者は黒人や有色人を蔑視する価値観を抱き続ける白人で、レッドネックやペッカーウッドと蔑称される階層だ。ホワイトハウスの要職者も例外ではなく、大統領もその系譜に含まれる。大統領の名前は出てこないが、ファーストレディーの名はメラニーだ。
この小説は現在のアメリカの差別と分断の状況が、新たなフェーズの出現ではなく、時代が単に継続しているだけと警鐘している。BLM(Black lives matter)と同様に。
そもそもタイトルの『赤く染まる木々』は黒人が白人にリンチされ木につるされた状態をで、ビリー・ホリデイが唄う『奇妙な果実』と通底する表現だ。黒人が虐げられ、リンチされた歴史を、人種を反転させて再現させてみせた物語だ。当時リンチされた黒人男性が言った『俺はもう死ぬ、しばらくの間。でもまた戻ってくる。おれたちはみな戻ってくる』が象徴する事件群だ。
事件の黒幕的な人物として、自分が生まれてから発生したリンチ事件を記録し続ける人物が登場する。そのおびただしい被害の記録を提示し、事実を直視するよう世の中の “あほう達” に警告している。史実を修正するな、犠牲を忘れるなと。 -
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残虐な手口で男性が殺され、その場に残された見知らぬ男の遺体が、警察が引き上げたあとに消えてしまうという奇妙な事件から始まる。はじめは犯人探しのつもりで読み進めたが、物語はしだいに混沌としていき、登場人物の輪郭も曖昧になっていった。人の命が奪われているのに、いつしか「またか」という気持ちになってしまう。その感覚こそ、かつてアメリカ南部で繰り返されたリンチや、それを見て見ぬふりしてきた歴史につながっているように思う。
特に印象に残ったのは、死体を集める会社の存在だ。荒唐無稽にも思えるが、「生きている時には注意を受けないのに、死体になるとなぜ注意を受けるのか」という皮肉には、鋭い痛みを感じた。生きているあいだの暴力には鈍感なのに、死んでからの扱いだけが問題にされる。その不気味さが、この作品の恐ろしさなのだと思う。
人種差別という重い問題を、この作品は混沌そのものによって描いているのだと感じた。ただ、個人的にはJamesや消失のほうが輪郭がつかみやすく、自分には好みに合っていた。 -
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「ジェイムズ」と同じように、展開が早く読みやすく、とても面白かったですね。また読後の余韻があって、色々考えさせられる小説でした。
タイトルから、分かる人には分かってしまうと思いますが、実際にあった黒人リンチに着想を得たミステリー小説です。「奇妙な果実」という有名な歌もありますね。ただフィクションではあるものの、実話半分みたいな微妙な世界観で、事件が国レベルまで発展した際には、某大統領も登場します。過去の黒人迫害の歴史だけではなくて、今も根強い分断が米国では続いているんだと、読者に訴えかけているんだと私は感じましたし、複層的な切り口で事件を発展させる辺りがとても斬新だなと思いました。
パーシヴァル・エヴェレットにはこれからも目を離せません。 -
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アメリカの負の歴史を克明に記した社会派小説、理解できない事象を解決できるのか… #赤く染まる木々
■あらすじ
アメリカ南部のミシシッピ州で凄惨な死体が発見される。殺人現場では白人と黒人の二体あり、白人の切り取られた睾丸を黒人が握りしめており、さらには鉄条網で首が絞めつけられていたのだ。
地元の保安官たちは捜査を進めるも、さらに同様の事件が発生してしまう。州警察、FBIが捜査に加わるが、事件は全米に広がっていき…
■きっと読みたくなるレビュー
1955年のミシシッピー州、黒人差別によるリンチで亡くなったエメット・ティルの事件を下敷きにした社会派ミステリー。日本人にとってはあまり馴染みのない事件だと思いますが、詳しく知らなくても本作は理解できると思います。ぜひ読み終わった後に、少し調べてみて下さい。
本作は奇怪な殺人事件を保安官や刑事たちが捜査を進めていきながら、その中で事件関係者の価値観、社会的背景、アメリカ南部の闇も描かれていくって筋立て。
そこには現代でも残り続ける人種差別の現実を描いていて、どれだけ読んでも理解が追い付かないのよ。とても現実とは思えないような滑稽なセリフが情報が淡々と綴られるんです。
まったく納得がいかず、絶望しかないため、怒りというよりも、虚しさしかないんですよね…
物語が中盤になると事件がどんどん肥大化してくる。さらに「ママZ」なる人物から提示される情報は、あまりにも衝撃的で失望に暮れてしまう。どれだけ多くの黒人が殺され、そして社会的にも隠匿されてきたのか。
読めば読むほど現実感がなく、何故ここまで人間は非道になれるのか、やっぱり理解できない。
終盤には最たる人物が出てくるのですが、皮肉たっぷりに描かれ、問題の根深さを露骨に表現していますね。もはや涙もでず、乾いた笑いしかでません。正直、我々日本人にとっては遠い国のことです。しかし知り、学ぶことで、未来を変えていくために何かできるかもしれない。大切なことを教えてくれる作品でした。
■ぜっさん推しポイント
読み終わったとき、これはミステリーなのか?という疑問が脳内を溢れる。誰が殺したのか、なぜ黒人の死体が消えたのか、なぜ白人の睾丸を握っていたのか。
いわゆる本格ミステリーとして通用する謎が次々と出てくるものの、真相とはいうと… そう、おそらくは読者が想像する答えではないのですが、これもひとつのミステリーなんだと思いました。
確かに保安官や刑事たちが聞き取り、捜査を進めていく警察小説ではあるのですが、それは本作品においては一部分でしかない。アメリカの負の歴史を克明に記した社会派小説なんです。果たしてこの「理解できない事象」を解決できるのでしょうか。 -
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ノンフィクションで、そこそこ緊迫感もスリリングもあり、ぐいぐいと読ませられる。のだけれど、読んでいる間に次々に人物が出てくる。誰が誰だかわからなくなるうえ、どうも横文字の名前に弱い。しかも同じ人物なのに名字だったり名前だったり本名だったり偽名だったりが行単位で入れ替わったりとわけわからなくなって混乱しながら読んでいる。
さほどその偽名に重要性がないならいちいち偽名をのせなくても…例えば「〇〇は△△という名義で・・」は「〇〇は偽名を使って…」とすれば、かなり読みやすくなる。何せ、1ページ内に名前も場所も道路も施設もカタカナが多くてわずらわしすぎ。しかもアラブ、イスラエルともに人名もその他も英語圏よりも馴染みがなく覚えにくい。
結局、1週間かかって読み終えた。先に書いたとおり、終始混乱しながらもやはり内容は濃く、文章にも弛みがなく、ぐいぐいと読ませられた。もともとこういったスパイものが好きなので、興味深くハラハラしながら読んだ。なんといっても世界有数の諜報機関である。そこに志願し働く女性たちの優秀さ、愛国心にも感心させられた。
人名が整理できて読めたらかなり面白いドキュメントだったと思う。 -
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あくまでも イスラエル側からの視点の中東戦記です。
何が正義なのだか、何が道義なのか人道なのか、中にはイスラエル側の人たち犠牲を読者の情緒に訴えるような、家族が殺されたとかの記述もあります。
あまり感情を込めずにイスラエル側から戦史を記述した内容の本です。
ですがイスラエル側以上にパレスチナ、シリアレバノンヨルダン、イラクイランエジプトなどの人たちはあまりにもひどい目にあっていることはちょっとインターネットで調べることのできる人たちならわかることです。
パレスチナ問題の解決は、道義的な情緒を世界に訴えるしか方法がないのかもしれません。
綺麗事ではなくてただのんびりぼんやりと生きていくことではなくて、基本的に争いや、競い合い、奪い合い 、殺し合いでしか人類は成長、発展、繁栄できないのかもしれません。
そして自分自身が生きてきた今までの時代で、物語や小説の世界ではなくて実際に事実として世界中では大変なことが起きていたということを思いました。
ただし本の中に出てくるイスラエルの軍人の人たちは確かにとても優秀だと思わざるを得ませんでした。
イスラエルやユダヤの人たちは確かにあまり余計なことをせずに学力とか 知力を高めて成長して働いて生きている人たちがとても多いと思います。
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ネタバレ男同士親友2人で、カナダ北東部の大自然の中をカヌーで旅する。釣りをし、漁をし、ベリーを積み、狩猟だけでなく、それなりの食料を持ち込んで。
川から湖へ気の向くままにオールを漕いで、気の利いた浜辺でキャンプする、そんな卒業旅行が一転、大規模な森林火災にぶち当たってしまい、彼らも早々に脱出しようとする中、行動が不信なカップルに出会う…。
大火災からの脱出と、瀕死のけが人の搬出、さらには彼らをつけ狙う殺人者…という、自然にも人間にも狙われる2人のサバイバルを描いた小説。大自然の火災の描写は圧巻、と思ったら作者はアウトドア系ノンフィクションの本を3冊上梓しているのだとか。なるほど得意な土俵ということか。
残念ながら、人間ドラマの方は少々チャチイ。主人公2人の友情ドラマはかなり書き込まれているし、友情とちょっとした反目なんかも読ませるのだが、いかんせん敵役が…あの展開では、まとまりがなさすぎると思うのだが。
殺人とかVS人間のアクションなしで、大自然に対峙し生き抜くためのサバイバルに徹した方がまとまったんじゃないかな?一読者のわがままとしては、この作家が描く、人間間の殺し合いがないサバイバル小説を読んでみたい。 -
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映画「ソーシャル・ネットワーク」が好きで、それのもとになったメズリック氏の「facebook〜」を読んでいたこともあって、「世紀の大博打」を読んでみた。
仮想通貨という言葉しか知らない、みたいな自分でも興味深く読めた。
……のだけど。facebook〜と同じく、ノンフィクションだけれど、人物の心理描写など、本人しか知り得ない・(過去のことなので)細かく書くのが難しい部分が多かったと思う。facebook〜の前書きだったかで「読みやすさを考えて小説(物語?)仕立てにした」というような一文があった気がするのだけど、今回もそういう感じだったのかな?と。
映画を観たり本を読んでも、自分はウィンクルボス兄弟に対して悪役の印象を抱かなかった。けれど、本書ではそういった印象を持たれてしまったことについて触れられていたので、なんかこう少し驚いてしまった。
終盤で出てくるとある人物との再会したエピソードには驚いた。
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ネタバレ半年後に隕石が衝突することが発表され人類滅亡までのカウントダウンが始まっている世界。
人々は仕事そっちのけで残された時間を有意義にするため、”したいことリスト”の実現を目指し社会機能が減衰。
一方多くの人が希望を失い自殺者も急増。
そんな中一見すると自殺に見えるが、何かひっかかる事件に遭遇する新米刑事ヘンリー・パレス。
終末の憂いを帯びる廃れた世界でひとり熱意を保ち職務を全うしようとする姿が健気で胸を打つ。
極めて特殊な状況設定の中で明らかにされていく事件の真相と差し込まれるヘンリーのプライベートサイドストーリー。
終わりゆく世界での事件解決までの道のりと虚無感との融合がある意味新鮮な感覚のSF警察物語。