上野元美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
世に警察小説は数あります。ですが、本作ほど個性的な作品は警察小説はおろかミステリ全体を見渡しても数えるほどでしょう。
何といっても基本設定が
小惑星衝突による破滅的災厄を間近に控えた世界。古びたファーストフード店で一人の男が首を吊った。未来に悲嘆しての自殺と誰もが思った。だが、新人刑事ヘンリー・パレスは他殺を疑い、終局に向かう世界の中、地道な捜査を開始する……
だというのですから。
本作『地上最後の刑事』はかように特異的かつ魅力的な背景を持つ一作です。メインとなる舞台も、起こる事件も、主人公たる刑事と彼を取り巻く登場人物たちも、全てが「警察小説」という言葉から浮かぶイメージと一致します。
ただ、人類が確定的な滅びに瀕しているという一点を除いては。
本作は驚天動地のどんでん返しミステリではありません。キャラクターは個性豊か、かつプロットも十二分に練り込まれていますが、事件解決に至るプロセスも、真相もどちらかといえば地味だといえるでしょう。
読みどころはむしろその先にあるといえます。
終わりを待つばかりの絶望的な世界においては、人々の思考も行動も全てが変容しています。
同時発生する祝祭と暴動、機能停止した保険会社、通じない電信網。些細な描写の積み重ねが、変容してしまった世界を克明に浮かび上がらせてくれます。
わけても中盤、ある人物が呼吸をするように死をえらぶくだりは象徴的でしょう。
読み進めながら、我々は問いかけざるを得ません。
滅びに瀕した世界が異常なのか?
それとも、異常な世界で己の日常を、使命を貫こうとする刑事こそが異常なのか?
壊れゆく世界の中で悩み、苦しみながら猟犬の如く獲物を追い詰めるパレスの姿はいっそ悲壮ですらあります。
事件を追う興奮、終末を過ごす虚無感、そして究極的状況における自らの選択。これらを同時に追体験出来る、まさに思弁的ミステリというべき一作でしょう。
お勧めします。 -
Posted by ブクログ
この本にも時々登場するイスラエル人ジャーナリストのロネン・バーグマンのシークレット・ウォーズがホメイニ革命以後のイランvsモサドを中心に書いているのに対し本書では特に1948年の建国から1980年代までのモサドの活躍を中心に書かれている。バーグマンもかなりイスラエルよりだと感じたが、本書は完全にイスラエルの立場で書かれており、暗殺や国外での誘拐など他国の主権を無視する行為も肯定的に書かれている。イスラエルでベストセラーになった理由がよくわかるがちょっと一方的すぎる。モサドの失敗談も書かれているがバーグマンの方が辛辣だ。
全21章にはナチスのアイヒマン誘拐と処刑、ミグ21の略奪、黒い9月のミュンヘンオリンピック事件、スターリンを批判したフルシチョフ演説の入手などがあり、シリアのクーデーターでバース党が実権を握った際に革命議会に食い込み次期閣僚候補になったエリ・コーヘン、エジプトのナセル大統領の義理の息子となり、サダトの情報担当大統領秘書官になったアシュラフ・マルワン(イスラエルに偽情報を流した二重スパイとの説もあるが、モサドはイスラエルのスパイであったことを認め、エジプトのムバラク大統領は公式には否定した)が取り上げられている。
直近ではモサドの27名からなるチームがドバイのホテルでハマスの指導者にして武器密輸の要アルマブフーフを暗殺する工作の様子が空港、ホテルのカメラに収められている。現実のミッション・インポッシブルはきれいごととは縁遠い。
中東和平交渉が再開し始めているがどうなることやら。イスラエルはアラブから信用できる相手に見えるのか?アラファト議長暗殺についてもイスラエルのペレス大統領が関与を認めている。 -
Posted by ブクログ
最強の諜報機関であるイスラエルのモサドの様々な諜報・スパイ活動がこれでもかと紹介されている。
イラクの核開発を阻止するための科学者の暗殺、ブラジルからナチス残党を拉致する話、エジプトの大統領の義理の息子をスパイにする話、PFLPのテロ組織壊滅のための攻撃、シリアに住むユダヤ系女性のイスラエル脱出作戦、ミグ21の機体を欲しいとイラクの空軍少佐をそそのかしたりと兎に角これでもかとばかりにモサドの合法・非合法を問わず、また成功・失敗を問わずに活動内容が次々と紹介されている。
知られざる中東の歴史の背景にある様々な国の思惑、特にイスラエルから見た中東の近隣諸国との関係の裏面史には目を見張るものがある。
とは言え一番の驚きはそうしたモサドの勇士達の活動が実名または写真付きで紹介されていることだ。幾ら既に過去の話としてもこうした諜報活動は最後まで世に出ないことが普通とされているにも関わらず、こうして大量の資料をベースに実名で活動に携わった人間が本書を通じて表舞台にでると云う事が信じがたい話だ。
著者はイスラエルのジャーナリストでありスパイ小説作家でもあるわけだが、飽くまでもモサドの活動内容を直接知り得る立場にもないはず。つまりイスラエルの文書公開がベースになっているとしか考えられないのだが、もしそうhした活動内容も含めて公文書が公開されているとすればイスラエル恐るべしだ。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ秘録イスラエル特殊部隊──中東戦記1948-2014
題名と内容がちょっと異なる気がします。
内容はイスラエルの建国から中東紛争を経てテロとの戦いを年代順にまとめ、最後に当事者のコメントを追加したものです。
当然、イスラエル寄りのバイアスが非常にかかった内容ですが、中東紛争の全体を知るという意味で読む価値はあると思います。
また、周りを敵に囲まれながら国家の存続を賭けて時には先制攻撃も辞さない決断力には感服です。
文章的には、作戦の全体を描写する中に個々人のエピソードが挿入される形式になっていますが、それがあまりマッチしておらず、どちらかにした方がよかったのかなと思えます。
はてさて、日本は・・・
竹蔵