上野元美のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ノンフィクションでありながら、近未来の描写をちょっと入れたり、ほんのり小説テイスト。
全編通読後、結構重要なブリッジが端折られているんじゃ…といった感想を持ったりもしたが、遺伝子工学の大まかな現状とこれまでの過程がある程度分かり、また、永久凍土が失われてゆくメカニズムとそれがもたらすCO2排出の恐ろしさがヒシヒシと感じられ、スリリングでもあった。
意図して種を滅亡させることも可能だという、遺伝子ドライブなる技術も然り…。
科学者は"科学でできること"を際限なく突き詰めるのが本能であるし、その衝動及び恩恵と倫理がどこで折り合いをつけるのか、これはバイオテクノロジーを論じる時に必ず付いて回る問題であり、もちろん本書の読者に対しても例外なくその命題は示される。
個人的な感覚としては、例えば"人間に害をなす生物を改変・駆逐する"、"別の種の生物が持つ特徴を発現させる"、あるいは"飼い主の要望を受けペットのクローンを作る"などといった技術は既に超えるべきでない一線を跨いでしまっている気がするが…果たして、ジュラシックパークならぬ"氷河期パーク"は誕生するのだろうか? -
Posted by ブクログ
マンモス再生計画に携わる研究者たちを追うノンフィクションである。
類書に比較して読みやすい1冊である。研究者の人となりにもフォーカスし、彼ら彼女らがどのような経緯でその研究に携わることになったのか、人間ドラマとして読むこともできる。
軸となるのはハーバード大学のジョージ・チャーチと彼が率いる研究室である。チャーチはヒトゲノム計画や次世代シーケンサー(遺伝子配列解析装置)の開発に携わってきた遺伝学界の「巨人」である。
チャーチのグループは、永久凍土に残るマンモスから、クローンをつくることを目指しているわけではない。マンモスの特徴を持ったゾウを作り、マンモスを復興(リバイバル)させることを目指している。彼らの計画は:
・マンモスの特徴を抽出する
・マンモスのゲノムデータを手に入れる
・マンモスの特徴をコードするDNAを特定する
・CRISPRを使って「マンモス遺伝子」をゾウの細胞に書き込む
・遺伝子が変換された幹細胞を作る
というものである。
厳密にはそれはマンモスなのかという点では疑問が残るが、マンモスのように振る舞うであろうとは予測される。
彼らが特に重要な特質としたのは、密生した毛、暑い皮下脂肪、小さく丸い耳、氷点に近い温度でも機能するヘモグロビンである。
マンモスゲノムは他の研究室により解読が進んでおり、これらの特徴を司る遺伝子は特定可能であった。
こうして特定した遺伝子を近縁であるアジアゾウのゲノムに切り貼りして「マンモス化」することも、CRISPR-cas9の技術により、実行可能となった。
次の山は、幹細胞である。遺伝子の書き換えができたとして、そのゲノムをさまざまな細胞に分化可能である細胞に入れなければマンモスの個体を作るという目標には近づけない。
実はゾウは幹細胞の得られにくい生物として知られていた(一方でゾウは癌にならないことも知られており、この2つには関連がある可能性もある)。
しかし、iPS細胞の技術を使用することで、これもどうにかクリアできそうになっている。
研究にあたっては、アジアゾウの細胞試料が多く必要だった。チャーチはその「お返し」として、ゾウにとっては命取りのヘルペスウイルスに対する治療法を確立することを目指し、そちらの研究にもあたっている。
実際にマンモス個体を得るには、もう1つ大きな、おそらく最大の山がある。
それは、受精卵を得て、それにマンモスゲノムを移植し、そして個体になるまで育てなければならないことである。近縁種から受精卵を得て、またその腹を借りるというのがまずは考えられる手法だが、現存のゾウは絶滅が危惧される動物である。妊娠期間も2年間と極めて長い。希少な動物の受精卵や子宮を、別の種の仔を生み育てるために借りるということが許されるのか? すでに絶滅した動物と、絶滅が危惧される動物が入れ替わるだけではないのか?
チャーチらは「人工子宮」という驚くべき策を検討している。これが成功するのかどうか、本書の時点ではわからないが、さてこの先、どのような結果が待っているのだろうか。
遺伝子編集、幹細胞操作といった分野は発展も目覚ましいが、倫理上の問題の整理が追い付いていない感がある。新たに生じる境界上の問題を解決できる倫理が育っていないと言った方がよいのかもしれない。「できること」を突き詰めていったその先に何が起こるのか。
人は本当にそれをすべきなのか。それともやめるべきなのか。それは誰が決めるのか。決めてもそこに実効性はあるのか。
毛深いマンモスの物語の向こうに、そんな不安も見え隠れする。 -
Posted by ブクログ
イスラエルを守るために軍が作戦行動を遂行する。敏腕パイロットやスパイなどの工作員、首相などの政治家が生々しい活動をする--。読んでいると冒険小説のように感じる。
この本はノンフィクション作品だ。実際に起こったことが語られている。気を付けないと小説のように楽しんでしまうが、実際にテロリストや軍人が死に、関係ない市民も犠牲者が出ている。これは楽しんではいけない事実だ。
小説と違うと感じるのは、ストーリーに盛り上がりやクライマックスがないこと。最初から最後まで淡々とイスラエルから見た中東情勢が語られる。イスラエル周辺では第二次世界大戦後もずっと事実上の戦争状態なのが分かる。文章は読みやすい、でも書かれた事実は重く受け止めるべきものなのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
小惑星マイアが半年後にぶつかり地球は終わるそんな世界でひとり殺人事件を捜査するヘンリー・パレス刑事。おまえはどうして平気なんだみたいなことを言われたりするけれど、ヘンリー・パレスも本当は平気じゃないし、気にやんで眠ることができなかったりする。そりゃそうだと思う。半年後に世界は滅亡するんだから。殺人事件を追いかけて、くそったれな世の中で精一杯刑事であろうとしているヘンリーに入り込んでしまった。というより、この世界に。半年後にマイアが来るような気がしてしまう。現実に。それくらい力のある作品だと思った。さて、次は『カウントダウン・シティ』読みます。