あらすじ
『ジェイムズ』で話題沸騰! 最注目の著者によるブッカー賞最終候補作
二〇一九年、ミシシッピ州で白人男性の遺体が発見された。傍らには七十年前に惨殺された黒人少年エメット・ティルに酷似した遺体が。やがて同様の事件が全米で連鎖する。過去への報復か、新たな反乱の幕開けか。アメリカの黒人リンチの歴史に迫る文芸ミステリ
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Posted by ブクログ
本屋でたまたま手に取った。
フィクションでありながら、解説を読み進めるうちに背後の歴史がいかに「ノンフィクション」に近いかを知った。
黒人へのリンチが放置される一方で、白人が被害者となった途端に警察が動き出す。それを黒人捜査官が追うという反転の構図。推理小説のような体裁をとっており、リズム感のある筆致で物語は加速していく。しかし、読後の感覚は決して「すっきり」とはしない。現実問題としてはなんら解決してないのだから。
読書に期待する「未知の視点」を十二分に与えてくれる作品だった。
Posted by ブクログ
アメリカの負の歴史を克明に記した社会派小説、理解できない事象を解決できるのか… #赤く染まる木々
■あらすじ
アメリカ南部のミシシッピ州で凄惨な死体が発見される。殺人現場では白人と黒人の二体あり、白人の切り取られた睾丸を黒人が握りしめており、さらには鉄条網で首が絞めつけられていたのだ。
地元の保安官たちは捜査を進めるも、さらに同様の事件が発生してしまう。州警察、FBIが捜査に加わるが、事件は全米に広がっていき…
■きっと読みたくなるレビュー
1955年のミシシッピー州、黒人差別によるリンチで亡くなったエメット・ティルの事件を下敷きにした社会派ミステリー。日本人にとってはあまり馴染みのない事件だと思いますが、詳しく知らなくても本作は理解できると思います。ぜひ読み終わった後に、少し調べてみて下さい。
本作は奇怪な殺人事件を保安官や刑事たちが捜査を進めていきながら、その中で事件関係者の価値観、社会的背景、アメリカ南部の闇も描かれていくって筋立て。
そこには現代でも残り続ける人種差別の現実を描いていて、どれだけ読んでも理解が追い付かないのよ。とても現実とは思えないような滑稽なセリフが情報が淡々と綴られるんです。
まったく納得がいかず、絶望しかないため、怒りというよりも、虚しさしかないんですよね…
物語が中盤になると事件がどんどん肥大化してくる。さらに「ママZ」なる人物から提示される情報は、あまりにも衝撃的で失望に暮れてしまう。どれだけ多くの黒人が殺され、そして社会的にも隠匿されてきたのか。
読めば読むほど現実感がなく、何故ここまで人間は非道になれるのか、やっぱり理解できない。
終盤には最たる人物が出てくるのですが、皮肉たっぷりに描かれ、問題の根深さを露骨に表現していますね。もはや涙もでず、乾いた笑いしかでません。正直、我々日本人にとっては遠い国のことです。しかし知り、学ぶことで、未来を変えていくために何かできるかもしれない。大切なことを教えてくれる作品でした。
■ぜっさん推しポイント
読み終わったとき、これはミステリーなのか?という疑問が脳内を溢れる。誰が殺したのか、なぜ黒人の死体が消えたのか、なぜ白人の睾丸を握っていたのか。
いわゆる本格ミステリーとして通用する謎が次々と出てくるものの、真相とはいうと… そう、おそらくは読者が想像する答えではないのですが、これもひとつのミステリーなんだと思いました。
確かに保安官や刑事たちが聞き取り、捜査を進めていく警察小説ではあるのですが、それは本作品においては一部分でしかない。アメリカの負の歴史を克明に記した社会派小説なんです。果たしてこの「理解できない事象」を解決できるのでしょうか。