川越宗一のレビュー一覧
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ネタバレ壮大!!
宗教がらみなため難しそうですが映像化して欲しいと思った作品。
江戸時代初期、取り締まりが厳しくなっていくキリスト教。信徒であり司祭を志す彦七の物語。
幕府側の人間である政重もまた、得てきたものを次々と失っていく人生だったわけですが、ラストで2人が対峙したときのやり取りは、なんだか身につまされる思いがしました。
悔いを重ねつつも歴史の渦に翻弄された者、最後まで自分の意思を貫抜き通した者。
徳川幕府という絶対的な権力がある中で、自分の信じる道を貫き、今自分がすべきことに邁進し、あらゆる覚悟をしながらも日本のキリシタンのために生きた小西彦七。
その生き様がひたすらにかっこよかっ -
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直木賞作家・川越宗一氏によるキリシタンを題材にした最新作です。
キリシタン大名の小西行長の孫、小西マンショが主人公です。難しいことは考えない熱血タイプの少年漫画的な性格。地の文は硬いけど、彼のセリフは現代風で、読者を置いていかない工夫がなされていると思います。
主人公は実在するけれど幼少以降の消息が分かっていない、創作した話なのかな?と思いきや、読み終わって調べてみると、キリシタン関係者の残した数少ない資料に沿っていた事が分かり、こんなヨーロッパまで股にかける劇的な人生だったのかとびっくりしました。
幼馴染が朝鮮国出身の真面目で優秀な男の子で、彼の親が小西行長に朝鮮出兵の際に連れてこら -
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とても面白い作品でした。
孫文のパトロンとして知られる梅屋庄吉の一代記です。時代背景等も綿密に調査されて書かれており、学び多き小説でした。この時代の日本も中国も国作りの黎明期、創成期にあたり、個人が大きな事をし得た時期であったので、男子であれば大変ではあるものの面白い時代だったろうなと羨ましく感じました。
かたや女性は家や夫に尽くすべしと言った風潮から、夫の女性関係や金銭的にもかなり泣かされただろうと同情しました。庄吉、孫文だけでなく小説に登場する一人ひとりが過酷な運命の中でも逞しく生き抜く姿に沢山の感銘と感動を得ました。是非読んでみてください。 -
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ネタバレ豊臣秀吉が天下を取り、朝鮮出兵を行った頃。朝鮮国の卑賤の身である明鐘、島津に属する武士である大野久高、琉球国の商人(密偵)である真市のそれぞれが、朝鮮出兵での倭と朝鮮・大明との戦争、そしてその後の倭・琉球との戦争に巻き込まれていく。それぞれの文化や思想に触れながら、人として生きるとはどういうことかを儒学思想をベースに描いていく。
卑賤の身でありながら、幼い頃から良い師の元で儒学を学び、そして己の身分や触れる文化が目まぐるしく変わっていくが、全て自ら選び取ってきた明鐘。常に侵略する側として人の上に立ちながら、国や家の方針に従い、人を殺し続けてきた久高。この二人の心理の対比が面白い。
また、王と -
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物語は、薩摩の島津家が豊後の大友家との争いを制して九州全土を傘下に収めようかというような時期から起こる。九州での戦乱は豊臣秀吉の「鎮西入り」で収束する。そして朝鮮出兵の凄惨な戦いが在り、豊臣秀吉が薨去して収束する。やがて関ヶ原合戦を経て徳川家康が天下を取るが、薩摩の島津家は琉球国へ侵攻する。そういう1580年代後半から1600年代頃が物語の背景だ。
そして物語は、1580年代後半から1600年代頃を各々の地で生きている3人の主要視点人物を据えている。
1人は薩摩に在る。島津家の重臣ということになる、樺山家の次男で大野家に婿養子に入った経過が在る大野七郎久高である。
もう1人は朝鮮国に在る。被差 -
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扇谷上杉、北条氏を描いた富樫倫太郎「早雲の軍配者」の後に読んだ作品として最高だった。非常に混沌としていながら、戦国期の甲信越・関東の土台となった"古河公方"に纏わる連作短編アンソロジー。
1.嘉吉の狐:古河公方初代成氏-唯一の生き残りの前半生。足利義政への恨みと関東公方としての覚悟、それとかの有名な嘉吉の変のリンクが自然で良い。
2.清き流れの源へ:大人しい茶々丸というのが新鮮だったが、途中の豹変の過程が不明瞭で違和感。
3.天の定め:北条に抗い続けた晴氏。子への非情さと情の狭間で揺れ動く心情がよく描かれている。
4.宿縁:他と一線を画す荒山氏らしい独特な作品。源義家から -
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作家さん達が全国18か所の灯台を巡り、紹介する紀行文。島国である日本人は古くから海と共生してきたが、現在のような西洋式灯台が建設されたのは明治維新以降になってからだという。風の吹きすさぶ岬の突端でポツンと立ちながら必死に灯を届ける様子は、孤高であり浪漫を掻きたてられる。
近代日本の文化遺産として、灯台が見直されつつあり、各地域では新たな観光資源となっている。各地に旅行に行く際に、灯台へふらりと寄ってみるのも楽しそうだ。私の地元の灯台も紹介されていたので、まずはそこから訪問したい。
また、どの作家さんも『喜びも悲しみも幾年月』という映画について言及されていた。近代日本を支えた誇りある灯台守という -
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川越宗一『海神の子』文春文庫。
以前読んだ『熱源』が非常に面白かったので期待は大きい。
本作も『熱源』のような熱量を感じる歴史小説であったが、面白さという点では『熱源』の方が一枚上であった。
本作は、後に台湾の英雄となり、江戸の人々を熱狂させた舞台『国姓爺合戦』の主人公のモデルとなった鄭成功の半生を描き出した歴史小説である。
中国の海賊と日本人の間に生まれ、弟と共に平戸に預けられていた福松のもとに母親の松が迎えに来る。松は台湾を根城にする大海賊の頭となっていたのだ。
福松は中国に渡り、鄭成功となると、割拠する海寇たちや東インド会社を下して力を付け、ついには大明国から城と将軍職を与えら