川越宗一のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
戦国史を足利一族の視点から描くアンソロジー。
古河公方発足から、喜連川藩誕生までの200年余りが物語の舞台となっています。
室町から戦国にかけて関東一円の戦乱の原因は、鎌倉公方・管領の足利一族のいざこざのせいだと思っています。なんというか、関東だけに限らず、足利は血族の争いが多い気がする。尊氏と直義から始まってることですし。それでも、240年近く幕府として続いたことは珍しいことでしょうね。
時代を下りながらのアンソロジー7話。一つの流れとして、関東公方家に仕えた忍びの「さくら一族」の存在があります。「足利の血脈」というタイトルですが、「さくら一族」伝でもあります。
『嘉吉の狐』『螺旋の龍』『大禍時』の3話では、足利義教、義輝、織田信長の暗殺に関わったと配役。特に『螺旋の龍』は伝奇色が強くて好きです。
足利一族。特に関東の公方と管領の関わりは、いま一つ把握ができていません。
公方も管領も多いのですよ。そして、それぞれの陣営が頼りにする長尾も北条も関東豪族も、多い!しかも、長い間争うから、代替わりしていて家系図の把握が大変!なまじ、権威はあるだけに、誰がどこの養子になったり、実質管領職は誰々で、とかごっちゃになるんですよ。
それを把握しながら、読む進めるのは楽しいのだけど大変。大変だけど楽しい。
このアンソロジーの「さくら一族」のように、物語に一つの幹があると理解がしやすくていいです。
歴史小説楽しむには、まだまだ精進が必要です。 -
Posted by ブクログ
「熱源」で直木賞をとった作者の第一作ということで手にとった。面白い。参考文献18冊を元にして史実を交えながら、想像上の人物を加えて、戦いの場面、種々の人物が相対する緊迫する場面等、楽しく読めた。主人公は、武士道を求める島津の家老武士と、朝鮮の若き儒学者と、明国に冊封を受けて貿易で生きる礼の国の沖縄の密偵。時代は秀吉の朝鮮出兵時。3者の異なった生き様が面白かった。孟子のことば『人は覇の力ではなく王の徳に服す』、および『天地に参たり(天地と並び立つ崇高な人としての存在)』という問いかけは、答えがあるような無いような、余韻を持った終わり方だった。
-
Posted by ブクログ
最後の描写には心を打たれた。
表紙はどの描写なのかと考えながら読んでいたが、最後の描写やったんか。
戦乱が止まない時代、何が正義で何が悪か分からない。
そんな時代だからこそ「礼」が異なった価値観をなんとか繋ぎ、禽獣を人にする。
主人公の久高と明鍾。
2人は最悪の出会い方をしたが、真市がいてこそ、最後違う形で再会出来たと思う。
一瞬の再会だろうこの後3人は別々の道をゆくだろう。久高は史実によると地頭となる。他の2人は実在者では無いが、おそらく明鍾は朝鮮の故郷に戻り、真市は琉球王国の官人を続ける。だが、3人の心の中の何かは必ず変わった。
特に明鍾は出会いに恵まれている。 -
Posted by ブクログ
「熱源」で直木賞を受賞した著者のデビュー作。
豊臣秀吉の島津征伐から、文禄・慶長の役、琉球侵攻までの戦乱を、三人の視点から描く。
島津の家臣、樺山久高は儒学を学びながらも、戦乱の世では学は意味がなく、人は禽獣と変わらないと考えていた。
そして、戦乱の世に身をやつしていた
朝鮮の被差別階層、白丁の明鐘はあるきっかけで儒学者の下で学を学ぶことになる。
白丁の出自でありながら儒学により聖人を志す。
真市は商人を装い、倭にも朝鮮にも足を運ぶ海の民たる琉球の密偵だった。
大国の間で琉球が生き残るため、飄々とした性格の裏には強烈な愛国心があった。
戦で敗ける者と、勝つ者。
敗ければ全てを失うのに、礼を失っては人ではなくなる。
天地に参たる人として、禽獣と分つものは礼である。
礼を主題に置き、一時代を違う国で生きた三人の視点の違いを描く。
文禄・慶長の役は「星夜航行」で、琉球侵攻は「テンペスト」で予習したので、歴史小説を読んでおくと、いつか別の作品での理解が深まる。
本作品では、それぞれの戦乱を詳しく描くというよりは、戦乱の中での人の生き方を三人の視点を通して描くことに主眼が置かれている。
ラストシーン、今まで敵同士だったが三人が一堂に会したとき、戦の勝ち負けを越えたものを感じた。 -
Posted by ブクログ
井上ひさしの「東慶寺花だより」のような話かと思って読み始めたが、章が進むにつれて時代が変わっていくところが当作品の要であると気づいた。
新旧の時代の狭間で離縁の手続きに難儀する人々。特に「谷を渡る」では、御一新後の政府の混乱のせいで東京と上州を何度も行ったり来たりさせられる。
明治に変わった頃は実際にこんなことがあったのだろうか。法が整わないままに政治の主体も区分も頻繁に変更されたのだとしたら、この話どころではない大変な事態があったとしてもおかしくない。
女性から離縁を願い出ることが困難で、どれほどの女性たちが一生を我慢づくで過ごしたのだろうか。 -
Posted by ブクログ
2020年直木賞受賞作。
8月は戦争に関する本を一冊は読もうと思っているのだけれど、今年は何がいいか思いつかず、
チャッピーに相談したら本著を勧められました。
(昭和の大戦ではなく、明治・大正の話でした)
ロシア人の名前も、アイヌの地名や人名も馴染みがなく、淡々とした文章でなかなか集中できなかったのですが、読後に調べてみたら、ほとんどの人物が実在していたことにビックリ。
主人公の一人、リトアニア生まれのポーランド人、ブロニスワフが、政治犯として囚われたサハリンで現地人ギリヤークたちと交流し、生きる力を得ていくあたりから面白くなってきました。
一方、アイヌのヤヨマネクフの故郷である樺太(サハリン)では、日露の争いが繰り返されます。
日本が来てもロシアが来ても、
永遠にアイヌは支配される側。
紆余曲折の末、ようやくアイヌが文明世界で生きていくための知識を身につけるために作られた学校も、アイヌを日本人に作り替える場所にされてしまいます。
アイヌには滅ぶ運命しかないのか。
「アイヌを滅ぼす力があるのなら、それは外部からの攻撃ではなく、アイヌのままであってはいけないという観念だ」とヤヨマネクフは苦悩します。
そして、アイヌとして生きている証として、南極探検隊に樺太犬を連れて参加するという、予想外だけれど史実に基づく展開に、またビックリ。
ブロニスワフ・ピウスツキは民族学の研究者として名をなし、アイヌの妻と子を得たが、母国の独立のためポーランドに戻ります。
弱肉強食の世界では、弱き者は滅ぶしかない。
力で独立を成し遂げようとする弟に対し、
「その摂理と戦うんだ」とブロニスワフ・ピウスツキは言います。
何が正解なのか、私には判断できない。。
20世紀は「戦争の世紀」と言われているそうだけれど、21世紀もそうなりつつあるような。
どの国も、どの民族も、
そこにそのまま在るだけではダメなのかな。
私には難しくて読みにくかったけれど、
読んで良かった本でした。
「ゴールデンカムイ」読んでたおかげで
なんとなく樺太の情景やアイヌの入れ墨を想像できたところもあって、、
だから最後まで読めたと思います。 -
Posted by ブクログ
川越宗一、直木賞受賞作『熱源』。
川越宗一作品、初読み。
明治の樺太(サハリン)。
アイヌ・ヤヨマネスクは、北海道へと開拓団として渡る。
一方、リトアニアに生まれたポーランド人・ブロニスワス・ピウスツキは、政治犯として、サハリンへと送られる…
ヤヨマネスクは、日本人として、山辺安之助の戸籍を得るが、亡き妻への想いと一人息子・八代吉とともに、樺太へと戻る。
故郷を日本とロシアにないがしろにされたアイヌ・ヤヨマネスク。
自国をロシアにうばわれた政治犯の囚人となったブロニスワフ。
自分たちは何者なのかと問いかけ続ける2人。
それが彼らの生きる源、『熱源』。
弱肉強食の世界に、なんとか自らのアイデンティティをと探し続ける2人。
それだけに、ヤヨマネスクもブロニスワフももっと闘い続けるのかと思ったが…
ヤヨマネスクの最後はしっかりと描いて欲しかった…
ブロニスワフの妻、息子はどうなったんだろう…
知里幸恵は誰の子孫だったんだろう…
突然、名前が出てきて、亡くなった…誰かの孫なのかと…