『熱源』は良かったのですが、どうも川越さんとは相性は良くないようです。
孫文を支えた日本人が主人公の話と聞き手にしました。孫文という名前は良く聞くけど現実にどんな人だったのかに興味があったのですが、途中からは走り読みになってしまいました。
どうも主人公の梅谷庄吉に魅力がないのです。日活の前身を立ち上
...続きを読むげ、孫文に対しては1兆円とも言われる支援を行い、孫文没後、意気消沈した庄吉の為に衆議院議員、華族、社員など大勢が激励会を開いてくれる。そういうエピソードからは商売人としてやり手であるとともに、義侠心が強く、人望が厚かったと思われるのですが、そこらがうまく描かれていません。ただただ、文中で奥さんに評されるように軽佻浮薄なだけの人物に見えるのです。孫文についてももそうですね。そうも単なる女癖の悪い夢追い人の様に見えてしまいます。そういう意味では、むしろ奥さんのトクや若い日に夫婦同然だった登米のキャラが読み応えあります。
英雄視することなく等身大に描くことは成功した。一方で庄吉や孫文が持ってたであろう強烈に人を惹き付ける魅力が感じられなかった。そんな気がしました。