川越宗一のレビュー一覧

  • パシヨン
    人間は幻想を持たないと生きていけないが、それがキリスト教なのは、この時代この地では体制にとって不都合だった。
    これこそが全ての悲劇の原因だった。

  • 熱源
    時代の狭間で懸命に命を紡ぐ人たちの生き様と、彼らがただそこで生きることが侵されないでほしいという祈りに心が震えた。
  • 天地に燦たり
    章立てがコンパクトであり、小さな話のまとまりで読み切りやすい。これは現代的な読み手への工夫か。ややあらすじの先を読みやすい印象
  • パシヨン
     「熱源」も「天地に燦たり」も、抗えない歴史のうねりでもがきながらも自らの運命を切り開こうとする。
     しかし、歴史の流れには抗えない。
     本書「パシヨン」の構造も同じだ。

     戦国時代が終わり、徳川の治世で世の中には平和が訪れていた。
     しかし、戦国の敗者はまだ恨みを引きずっていた。
     関ケ原西軍の...続きを読む
  • パシヨン
    「熱源」で、直木賞を受賞した川越宗一さんの歴史小説です。
    何が人々を島原の乱へと駆り立てたのか。
    キリシタン大名小西行長の孫であり、禁教下最後の日本人司祭となる小西彦七(マンショ小西)の生涯を辿りながら物語は進んでゆきます。
    限られた歴史の記録の行間をドラマチックに埋めるのがとても上手な作家さんだと...続きを読む
  • 熱源
    樺太アイヌの世界
      歴史フィクション小説
      
    「熱帯」と買うのを間違えそうになりました。
    森見登美彦さんの作品ですが、
    タイトルと表紙が少し似てますよね。

    樺太に生きるアイヌの人々の
    とてつもない熱量を感じました。

    北海道とロシアの間に位置する樺太は、
    板挟みにあって領土の取り合いの重要地。...続きを読む
  • パシヨン
    江戸時代のキリスト教徒の話は、遠藤周作さんの沈黙で初めて読みました。いつも、人の残酷さに悲しく辛い思いがします。
  • 熱源
    どれだけ熱い展開が待っていても「でもこの後に第二次世界大戦が来てしまうんだよな……」という思いがちらついてしまって結構緊張しながら読んだ。
    でもそれらは杞憂で、そうなってほしいと思ったところに物語は着地していた。
    新年一発目から良い読書体験でした。

    私は思わぬところで運命が交わる人たちの物語に弱い...続きを読む
  • 見果てぬ王道
    孫文を金銭的に支えた梅屋庄吉の一代記。孫文関係でなんとなく知っていたがこんなに面白い人物だったとは驚いた。特に孫文と出会うまでの破天荒ぶりに呆れるとともに、養父母の深い愛と理解にも感服。
    裏話的な歴史も楽しめた。日活の創始者だった事も知らなかったが、南極探検に出資するなどいろんなエピソード満載の人生...続きを読む
  • 見果てぬ王道
    史実を元にしたフィクション。孫文が日本にゆかり深かった事は知ってはいましたが、ここまでとは恥ずかしながら認識なかったです。また日本人の個人が孫文をこんなにも支えていたんだという事、フィリピンの独立運動にも関係していた事、これまた驚き&新鮮でした。見方や立場を変えた書籍を色々読んで見たくなりました。そ...続きを読む
  • 熱源
    史実を元にしたフィクション
    樺太から北海道へ強制移住させられ再び樺太に戻ったアイヌ。しかし、故郷の樺太は日本への同化政策により過去の面影は消えてゆく。滅びゆく民と言われそれにあがらう。

    その一方で、ロシア帝国に国を奪われたポーランド人も登場し、樺太でアイヌの妻を娶る。日本初の南極大陸上陸にアイヌと...続きを読む
  • 見果てぬ王道
    66兵庫に縁の深い孫文の解放の戦いとあまりにも人間臭い生身の姿を最大の支援者である梅屋庄吉を通して初めて知った。革命とは武力と権力闘争にあらず。市民を中心にしなければ何も成就しないということを歴史が教えている。彼の国はあと何百年経てば変わるのかな。
  • 海神の子
    川越宗一は『熱源』で初めて読んで、そのスケール感に驚かされた。今度は海賊の話。平戸で生まれた福松は、夫を殺し、夫の名を語り海賊の頭となっていた母と再会し、明国へ渡る。皇帝自死ののち、新たな皇帝を建てるという壮大な話。国姓爺合戦という言葉は知っていたが、中身は知らなかった。国姓爺となる鄭成功こと田川福...続きを読む
  • 熱源
    明治〜昭和時代の樺太を舞台にしたお話で
    今までほとんど知らなかったアイヌ、サハリン、ポーランド、ロシアの歴史、文化を興味深く学べた気がします。

    なかなか、名前が難しく覚えにくく、すぐに退場する人物もいて、取っ掛かりが入り辛かったがドンドン話に引き込まれて読み進めれた。(ほとんど実在した人物であった...続きを読む
  • 見果てぬ王道
    中国革命の父として知られる孫文を経済的に支援した日本人実業家・梅屋庄吉の破天荒な生涯を描いた歴史大作。と言っても史実を重視した作品ではなく、庄吉の人間的な魅力にあふれており、読んでいてとても楽しかった。日本の映画産業発祥にも深く関わっていたことも知り、とても興味深かった。
    にしてもこの人、運がいいん...続きを読む
  • 天地に燦たり
    守礼之邦。理想を掲げた国づくりがその通りにいかないのは、いつの世も同じと改めて思わされた。久高の男気、明鐘の生きる力に魅了されたが、この物語は真市たち琉球の人々が主人公だと思った。
  • 天地に燦たり
    清々しいエンディングだった。
    それぞれの生を必死に生きた3人の心の共鳴を感じた。
    著者はこれが初作で2作目が直木賞を取った「熱源」と知って驚き、その才能の今後を楽しみに感じた。
  • 足利の血脈 書き下ろし歴史アンソロジー
    戦国史を足利一族の視点から描くアンソロジー。
    古河公方発足から、喜連川藩誕生までの200年余りが物語の舞台となっています。

    室町から戦国にかけて関東一円の戦乱の原因は、鎌倉公方・管領の足利一族のいざこざのせいだと思っています。なんというか、関東だけに限らず、足利は血族の争いが多い気がする。尊氏と直...続きを読む
  • 海神の子
    国性爺合戦をモチーフとしていて、福松(のちの鄭成功)が幼少期に中国にわたり将軍になり台湾統治に至る、という史実には沿っているが、この物語の主題はそれではないような印象を受ける。

    この物語は中国が明〜清へ変遷しゆく時代に、中国、日本(平戸)、台湾の地で生きた人の犠牲にした物、手に入れた物、失ったもの...続きを読む
  • 海神の子
    鄭成功という名は知っていたけれど
    実際どういう人物でどういった人生を
    送ったのかは知らなかった。

    福松の母(松)が海賊という設定は
    読んでいて興奮するもの。

    最後まで夢を諦めない想いに胸を打たれる。