川越宗一のレビュー一覧
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川越宗一『海神の子』文春文庫。
以前読んだ『熱源』が非常に面白かったので期待は大きい。
本作も『熱源』のような熱量を感じる歴史小説であったが、面白さという点では『熱源』の方が一枚上であった。
本作は、後に台湾の英雄となり、江戸の人々を熱狂させた舞台『国姓爺合戦』の主人公のモデルとなった鄭成功の半生を描き出した歴史小説である。
中国の海賊と日本人の間に生まれ、弟と共に平戸に預けられていた福松のもとに母親の松が迎えに来る。松は台湾を根城にする大海賊の頭となっていたのだ。
福松は中国に渡り、鄭成功となると、割拠する海寇たちや東インド会社を下して力を付け、ついには大明国から城と将軍職を与えら -
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樺太アイヌの話。
日本とロシアにはさまれ、未開人と見下され、戦争に翻弄される辛酸の日々を描くストーリーながら、誇りやアイデンティティを失わない生き方には考えさせられる所が大だった。
──命、家族、故郷
自然と限りなく調和した文明だからこその、地球オリジンな熱源を感じとれる。淡々とした語り口もそれを引き立てる。とても好きな話だった。
余談だけど『ゴールデンカムイ』も節目的な役割を果たしたよね。私の熱源はそこから。樺太アイヌの一部が北海道に移住した、なんてことすら知らなかったけど。より深く知れて良かった。そのなかに中村チヨさんもいらっしゃる。本作でも知里幸恵さんが登場し、リアリティを出している。 -
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第162回直木賞
明治初期から終戦まで、極寒の地での壮大な歴史冒険小説。
樺太に暮らす少数民族のアイヌをはじめ、オロッコ、ニヴフが帝国に故郷と文化を奪われ同化を余儀なくされていく過程は興味深く、またなん度もやるせない気持ちになりました。
故郷を奪われたアイヌとポーランド人が出会うという設定は面白いし、未知のアイヌの文化を知れることもこの小説の魅力です。
歴史の中で多くあることですが、先進国が先住民を未開人として蔑み、啓蒙という名の支配をすることには強い憤りを感じます。
しかしそんな少数民族に寄り添う民俗学者のブロニスワフがアイヌのための識字教室を開く際の押し問答できっぱりと言った一言、
「劣 -
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ネタバレ「熱源」も「天地に燦たり」も、抗えない歴史のうねりでもがきながらも自らの運命を切り開こうとする。
しかし、歴史の流れには抗えない。
本書「パシヨン」の構造も同じだ。
戦国時代が終わり、徳川の治世で世の中には平和が訪れていた。
しかし、戦国の敗者はまだ恨みを引きずっていた。
関ケ原西軍の敗将、小西行長には対馬藩主に嫁いだ娘がいたが、子を成した後の関ケ原の敗戦により母子ともども追放されていた。
行長の孫、小西彦七は旧小西家家臣からは、いつか殿に返り咲くことを期待されながら、本人にはその気は全くなかった。
戦国時代には日本各地にいたキリシダン大名のもとで広がったキリスト教だった