川越宗一のレビュー一覧

  • パシヨン

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    「パシヨン」(川越宗一)を読んだ。

    こんなにも胸が苦しくて目を閉じてしまいたいほどに悲しいのにページを繰る手が止まらない。
    そうして最後にじんわりとした暖かさが身体の中に灯るのだよ。

    これはね、もう、誰も彼も読みなよ!

    「熱源」よりもさらに熱い力作だった。

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    2025年07月10日
  • パシヨン

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    小西マンショの生涯をたどりながら、天草の乱をはじめとする、キリシタンの弾圧を描いている。キリシタン側、幕府側からの正義を描いており、どちらにも感情移入してしまい揺さぶられてしまった。平和とは、権力とは、信仰とは、自由とは、多様性とは、様々な場面で考えさせられる。
    登場人物も魅力的で、主人公の飄々とした感じや、友人の岐部渇水の豪楽な人物像もかっこよく、幕府側の井上政重が残忍(に見える)なキリシタン奉行になるまでの心の動きの描写もよかった。
    悪魔をてんぐ、愛をごたいせつ、といった和訳のルビやクレドの和訳なども心地よく、当時のキリシタンの信仰風景もしっかり考証されている印象を持った。

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    2025年04月07日
  • 熱源

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    樺太アイヌのヤヨマネクフ(山辺安之助)と、ポーランド人ブロニスワフ・ピウスツキを軸に、民族の文化とアイデンティティを守ろうとする姿を描いた歴史小説です。ヤヨマネクフが「私たちの土地は、私たちが守り続けてきた」と語る場面では、民族の誇りと土地への深い愛情が伝わり感動しました。一方、ブロニスワフはアイヌ文化を記録する使命に燃えながらも、「記録しても守りきれないかもしれない」という苦悩を抱えています。この二人が文化を未来へと継承しようとする姿勢に心を打たれました。

    「人は誰もが、自分の熱源を持っている」という言葉が特に印象に残りました。自分にとっての「熱源」とは何かを考えさせられる作品です。文化や

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    2025年02月09日
  • 熱源

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    とても壮大な歴史小説でした。フィクション?ノンフィクション?
    わかりませんが。。。
    時代と国家に翻弄されたマイノリティ。
    日本に同化を迫られるアイヌの人たち。その中でもいろんな生き方があり。ロシアの同化政策で囚人にされたリトアニア生まれのポーランド人。
    故郷ってなんだろ国籍ってなんだろ。
    考えさせられることが多い小説でした。
    かなりオススメです!

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    2025年01月04日
  • 灯台を読む

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    日本財団「海と灯台プロジェクト」から生まれた紀行。近年の流行作家門井慶喜、澤田瞳子、阿部智里、川越宗一、永井紗耶子、安部龍太郎。それぞれある地域の灯台を3カ所訪れ時空を超えて想いに馳せる。
    映画「喜びも悲しみも幾歳月」の世界は遠い過去。無人化さらにGPSの普及により灯台は役目を終えつつある。
    とはいえ灯台の立つ場所は古代からの交通の要衝。異国との貿易の出発点、文化が交わる場所でもあった。

    地域の海の記憶を辿り、新たな海洋体験を 灯台とともに

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    2024年12月05日
  • 灯台を読む

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    ネタバレ

    GPSの進歩により、灯台がその役割を終えていっているという事実を初めて知った。
    「海と灯台プロジェクト」協力のもと、灯台が存在することの意義を、その土地のあらましや歴史、灯台を守ってきた人々にスポットライトを当てることで言語化した、6名の作家さんによる紀行文。

    作品を読みながら旅行気分に浸れるので愉しい。作家のみなさんが灯台の中の螺旋階段を登り、灯台室に入られる場面のわくわく感が伝わってきた。フルネルライトを初めて検索したが、見事なライトであった。

    灯台の父と呼ばれるイギリス人のブラントンさんという方が、菜種油で火を灯す木造の灯明台が主な海の道標だった日本に、西洋式の灯台をもたらした。また

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    2024年11月18日
  • 天地に燦たり

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    ネタバレ

    読みやすい歴史小説(できれば世界史)にハマっている身には、かなり当たりの作品だった。
    薩摩、朝鮮、琉球、明…東アジアの中の狭い地域の話だけれど、この時代に国境を越えての物語があるということにロマンを感じる。

    最後の場面。表紙絵のシーンだと気付き、何度も絵を見返しては感じ入ってしまいました。
    短めに区切られた章立ても非常に読みやすい構成だったし、本の編集部分も含めてトータルで素晴らしい「本」でした。

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    2024年11月13日
  • 熱源

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    ネタバレ

    序章。樺太に赴くロシア軍女性伍長クルニコワは、かつてソビエト時代の大学で民族学を専攻し、日本と領有を争っていたサハリンこと樺太の論文や資料に目を通していた。その中には旧式の蝋管レコードにはサハリン・アイヌの歌、五弦琴トンコリ演奏、昔話が記録されていた。そして後に登場するポーランド人学者ブロニスワフ、樺太アイヌのシシラトカ、ヤヨマネクフの名も記されていた。

    実は私は何十年も前に、ロシアで発見された樺太アイヌの巫術(トゥス)を記録した蝋管レコードを、日本の孫世代の遺族が聞いて記憶を蘇らせる、というテレビ番組を見たことがあり、とても強い印象を受けました。多分それ以来、ほとんど知らなかった樺太・千島

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    2024年11月03日
  • 熱源

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    とても面白かった。
    明治維新後のアイヌだったり、日露戦争前後のロシアだったりと重くなりそうな時代背景を重厚過ぎない読み口で物語の次を楽しみながら読めました。

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    2024年10月07日
  • パシヨン

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    政治と信教、自分も以前からずっともやもやしていたことを真っ向から描ききって下さり感謝しています。二人の主人公の問答は令和の名場面として、大河ドラマなどで後世に伝えたいです。

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    2024年09月12日
  • 熱源

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    ネタバレ

    アイヌ民族が日本とロシアの戦争に巻き込まれていく様がリアルに書かれている。
    しかし文明を受け入れずにいることで淘汰される命もある。
    アイヌの人が生き残り、アイヌ文化のアイデンティティを守るためにはどうすれば良いのか?

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    2024年08月17日
  • 海神の子

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    1人の青年が海賊になり、更には民族的英雄になるまでの大スペクタクル。

    国や立場によって個々の名前が変わるため覚えるのが大変だがとても面白い。

    同じ学校で学んだ友達が違う道を選ぶように、同じ釜の飯を食った仲間と道を違えば殺し合うことになる時代に、自分の選んだ道を直向きに貫き通す情熱に感服した。

    今当たり前に生きてる現代も、昔は主人公らのような人たちが死に物狂いで作り出した時代なんだ、そんな現代=人の世とは何かを考えさせられる。

    主人公に反した部下の父の言葉だが、人それぞれが天下であり、天下=国を治めるという考えだから天下を摂っても国内に反乱思考のものが出るというのは現在にも通じると感じた

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    2024年08月12日
  • 海神の子

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    あっぱれ、国姓爺!海風に乗っている心地を何度も味合わせてもらいました。
    "アジアの大海賊時代"、国家交替期の空気感、中華の地の果てしない大きさ、国家というものの矮小さと遠大さ、ままならない世の中や人生、人間社会の歪み、そうした中でも寄り添い合い生きる者たちの温かさ、時代のうねり。これらがリズム良く、ダイナミックに描き出されています。
    それにしても、海賊というのは気持ちの良い生き様だなぁ~(悪どい人たちがいたことも分かっているが、それはここでは脇に置いておく)。
    川越宗一さん、初めて読みましたが、すっかりファンになりました。

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    2024年08月04日
  • 熱源

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    ネタバレ

    文明に呑み込まれる種族はどう生きるべきなのか。
    抗えないからこそ、やるべきことを考える。
    ヤヨマネクフとシシラトカは南極を目指し、種族として名を残そうとした。又、どこの領地でもない土地に想いを馳せずにはいられなかったのではないか。

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    2024年04月08日
  • 熱源

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    ウクライナ侵攻やパレスチナ紛争が起きている今、いろいろと考えさせられた。
    国を持たない人たちの心情は、想像はできても、理解しているとはおこがましくて言えない。
    ゴールデンカムイの時代背景もこんな感じだったのか、と思った。

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    2024年03月20日
  • 熱源

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    ネタバレ

    サハリンアイヌの話である、ということは事前情報で知っていたのですが、第一章の舞台が石狩川流域の対雁(ついしかり)だったことで、ぐっと話が身近になりました。
    というのも、対雁は現在江別市にあるわけですが、江別市というのは小学校低学年から結婚するまで私が住んでいた場所なのです。
    そして、樺太に住んでいたアイヌ人が宗谷に強制的に連れてこられたあげく、対雁に住まされたということを史実としては知っていたので、余計に興味深く読むことができました。

    第二章はロシアからの独立を願うテロ行為に巻き込まれたポーランド人学生・ブロニスワフが、冤罪によりサハリンに流されるところから始まります。
    こちらはまったく馴染

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    2024年03月07日
  • 熱源

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    ネタバレ

    【私、私たちを生かせるもの】
    国家制度の中で、多くの民族は消えていく。引き裂かれ、同化され、あるときは誇りを失い、あるときは抵抗し、そんなプロセスが今も続いている。

    この本は、樺太を中心とした人々の生き様が書かれている。

    先日、ミャンマーの今、についての講演を聴いた。
    「不当な命令と権力に対しては、義務として服従するな。」
    今の市民の抵抗運動の根底にあるのは、アウン・サン・スーチーさんがずっと訴えてきた、このガンディーの精神であることを学んだ。
    抵抗を権利として論じたジョン・ロック、その西洋の思想とは異なり、義務としての不服従を規定する。

    国家は人がより良く生きるために人間が組織したもの

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    2024年03月04日
  • 熱源

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    樺太半島。日本の地図にはないその地の歴史について、ほぼ知らなかった。そこに、日本人が、ロシア人が手をつけ、現地に住んでいた様々な人々が翻弄された歴史を。現地人も、日本で教育を受けたり、ロシア人と仲良くなったりしながら暮らしていたので、日露戦争でとても戸惑ったということを。
    どうして日露戦争がおきてしまったのか。戦争が起こったのか。その歴史の源流には、日本人が欧米から感じていた屈辱感があったこと。そしてその屈辱を、今度はアイヌにむけていたこと。
    歴史はこうも繰り返し、終わらない。そのことに絶望感を抱きながら読み進めた。

    屈辱は、劣等感は、常識は、感情は、歴史は、人が作るもの。その根元には、原因

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    2024年02月21日
  • パシヨン

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    小西マンショの半生を描いた歴史小説。
    史実に基づいたネタをここ迄ドラマチックに書ける川越さんはやっぱり凄いです。昭和の大作家,吉村昭先生を彷彿させる1人ではないでしょうか。
    読み応えのある1冊でした!

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    2024年01月26日
  • パシヨン

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    天正遣欧少年使節の深堀りを忘れていたことを思い出させてくれた。小西マンショについては深堀れなさそう…?

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    2023年11月10日