川越宗一のレビュー一覧
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戦国末期から江戸初期にかけての日本を舞台に、信仰と権力、そして個人の尊厳が真正面からぶつかり合う物語だった。序章から、当時の宗教状況の厳しさや、価値観が揺らぐ時代の空気が濃密に描かれていて、読み始めた時点でかなり重い話なのかな? と勘繰ったものの、思ったよりも読み口は軽い。
信仰に生きることを最初から選び取っているわけではない彦七が、状況に流されながらも“自分の意志”をつかもうとする過程がとても良い。派手なヒーロー像ではなく、迷いながら、それでも真摯にあろうとする姿が印象に残った。周囲の人物たちも一面的ではなく、最初は苦手に感じた人物が別の角度から見えてくる瞬間があり、読んでいて視点が更新さ -
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序章で女海賊の荒々しさに心を鷲掴みにされて年末年始の慌ただしい中、隙あらば読みふけりました。
あぁ面白かった。
文楽・浄瑠璃などに詳しくないのですが、
近松門左衛門『国性爺合戦』のモデル鄭成功の壮大なスペクタクル歴史小説です。
台湾では今でも鄭成功は人気の偉人だそうです。
明が滅んでゆき、清に天下が取って代わる時期、鄭成功は最後まで清軍に抵抗し続ける。
戦ばっかりではあるんだけど、
なんだか個性豊かで魅力的な登場人物達にすっかり魅了されてずっと厦門や南京に脳内トリップしてた。
主人公・福松はなぜかいつも孤独を感じてたみたいだけど、親友がいて、師父もいて、実母も養母も弟もいて、家族愛が -
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小西マンショの生涯をたどりながら、天草の乱をはじめとする、キリシタンの弾圧を描いている。キリシタン側、幕府側からの正義を描いており、どちらにも感情移入してしまい揺さぶられてしまった。平和とは、権力とは、信仰とは、自由とは、多様性とは、様々な場面で考えさせられる。
登場人物も魅力的で、主人公の飄々とした感じや、友人の岐部渇水の豪楽な人物像もかっこよく、幕府側の井上政重が残忍(に見える)なキリシタン奉行になるまでの心の動きの描写もよかった。
悪魔をてんぐ、愛をごたいせつ、といった和訳のルビやクレドの和訳なども心地よく、当時のキリシタンの信仰風景もしっかり考証されている印象を持った。 -
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樺太アイヌのヤヨマネクフ(山辺安之助)と、ポーランド人ブロニスワフ・ピウスツキを軸に、民族の文化とアイデンティティを守ろうとする姿を描いた歴史小説です。ヤヨマネクフが「私たちの土地は、私たちが守り続けてきた」と語る場面では、民族の誇りと土地への深い愛情が伝わり感動しました。一方、ブロニスワフはアイヌ文化を記録する使命に燃えながらも、「記録しても守りきれないかもしれない」という苦悩を抱えています。この二人が文化を未来へと継承しようとする姿勢に心を打たれました。
「人は誰もが、自分の熱源を持っている」という言葉が特に印象に残りました。自分にとっての「熱源」とは何かを考えさせられる作品です。文化や -
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ネタバレGPSの進歩により、灯台がその役割を終えていっているという事実を初めて知った。
「海と灯台プロジェクト」協力のもと、灯台が存在することの意義を、その土地のあらましや歴史、灯台を守ってきた人々にスポットライトを当てることで言語化した、6名の作家さんによる紀行文。
作品を読みながら旅行気分に浸れるので愉しい。作家のみなさんが灯台の中の螺旋階段を登り、灯台室に入られる場面のわくわく感が伝わってきた。フルネルライトを初めて検索したが、見事なライトであった。
灯台の父と呼ばれるイギリス人のブラントンさんという方が、菜種油で火を灯す木造の灯明台が主な海の道標だった日本に、西洋式の灯台をもたらした。また -
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ネタバレ序章。樺太に赴くロシア軍女性伍長クルニコワは、かつてソビエト時代の大学で民族学を専攻し、日本と領有を争っていたサハリンこと樺太の論文や資料に目を通していた。その中には旧式の蝋管レコードにはサハリン・アイヌの歌、五弦琴トンコリ演奏、昔話が記録されていた。そして後に登場するポーランド人学者ブロニスワフ、樺太アイヌのシシラトカ、ヤヨマネクフの名も記されていた。
実は私は何十年も前に、ロシアで発見された樺太アイヌの巫術(トゥス)を記録した蝋管レコードを、日本の孫世代の遺族が聞いて記憶を蘇らせる、というテレビ番組を見たことがあり、とても強い印象を受けました。多分それ以来、ほとんど知らなかった樺太・千島 -
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1人の青年が海賊になり、更には民族的英雄になるまでの大スペクタクル。
国や立場によって個々の名前が変わるため覚えるのが大変だがとても面白い。
同じ学校で学んだ友達が違う道を選ぶように、同じ釜の飯を食った仲間と道を違えば殺し合うことになる時代に、自分の選んだ道を直向きに貫き通す情熱に感服した。
今当たり前に生きてる現代も、昔は主人公らのような人たちが死に物狂いで作り出した時代なんだ、そんな現代=人の世とは何かを考えさせられる。
主人公に反した部下の父の言葉だが、人それぞれが天下であり、天下=国を治めるという考えだから天下を摂っても国内に反乱思考のものが出るというのは現在にも通じると感じた