川越宗一のレビュー一覧
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扇谷上杉、北条氏を描いた富樫倫太郎「早雲の軍配者」の後に読んだ作品として最高だった。非常に混沌としていながら、戦国期の甲信越・関東の土台となった"古河公方"に纏わる連作短編アンソロジー。
1.嘉吉の狐:古河公方初代成氏-唯一の生き残りの前半生。足利義政への恨みと関東公方としての覚悟、それとかの有名な嘉吉の変のリンクが自然で良い。
2.清き流れの源へ:大人しい茶々丸というのが新鮮だったが、途中の豹変の過程が不明瞭で違和感。
3.天の定め:北条に抗い続けた晴氏。子への非情さと情の狭間で揺れ動く心情がよく描かれている。
4.宿縁:他と一線を画す荒山氏らしい独特な作品。源義家から描き、さくら一族の特殊能力というSF要素を加え、北条の乗っ取りを描く。
5.螺族の龍:こちらも独特な作品。荒唐無稽さではダントツ。天海和尚や曲直瀬道三を出す発想には感服するがさすがに突飛がすぎる。
6.大禍時:信長抹殺にさくら一族が関わっていたというストーリー自体は突飛だか、義氏の心情によくスポットライトが当たっており良作。気弱・優しい義氏の人間らしさが同情を誘う。
7.凪の世:江戸期・喜連川藩に足利の血脈が繋がっていく締めとなる物語。主役が高坂長内で、ラストがこれで良いのかとうショックが残る。 -
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作家さん達が全国18か所の灯台を巡り、紹介する紀行文。島国である日本人は古くから海と共生してきたが、現在のような西洋式灯台が建設されたのは明治維新以降になってからだという。風の吹きすさぶ岬の突端でポツンと立ちながら必死に灯を届ける様子は、孤高であり浪漫を掻きたてられる。
近代日本の文化遺産として、灯台が見直されつつあり、各地域では新たな観光資源となっている。各地に旅行に行く際に、灯台へふらりと寄ってみるのも楽しそうだ。私の地元の灯台も紹介されていたので、まずはそこから訪問したい。
また、どの作家さんも『喜びも悲しみも幾年月』という映画について言及されていた。近代日本を支えた誇りある灯台守という職業とその過酷な暮らしについて興味が湧いた。 -
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川越宗一『海神の子』文春文庫。
以前読んだ『熱源』が非常に面白かったので期待は大きい。
本作も『熱源』のような熱量を感じる歴史小説であったが、面白さという点では『熱源』の方が一枚上であった。
本作は、後に台湾の英雄となり、江戸の人々を熱狂させた舞台『国姓爺合戦』の主人公のモデルとなった鄭成功の半生を描き出した歴史小説である。
中国の海賊と日本人の間に生まれ、弟と共に平戸に預けられていた福松のもとに母親の松が迎えに来る。松は台湾を根城にする大海賊の頭となっていたのだ。
福松は中国に渡り、鄭成功となると、割拠する海寇たちや東インド会社を下して力を付け、ついには大明国から城と将軍職を与えられるほどの人物になる。しかし、李自成の乱が起こって明は滅亡し、清軍が攻めてくる。鄭成功は、鄭家を守るため、自ら新帝を立てることで『天命』を我がものとしようとするのだが……
本体価格980円
★★★★ -
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ネタバレ「熱源」も「天地に燦たり」も、抗えない歴史のうねりでもがきながらも自らの運命を切り開こうとする。
しかし、歴史の流れには抗えない。
本書「パシヨン」の構造も同じだ。
戦国時代が終わり、徳川の治世で世の中には平和が訪れていた。
しかし、戦国の敗者はまだ恨みを引きずっていた。
関ケ原西軍の敗将、小西行長には対馬藩主に嫁いだ娘がいたが、子を成した後の関ケ原の敗戦により母子ともども追放されていた。
行長の孫、小西彦七は旧小西家家臣からは、いつか殿に返り咲くことを期待されながら、本人にはその気は全くなかった。
戦国時代には日本各地にいたキリシダン大名のもとで広がったキリスト教だったが、徳川の世になり弾圧は次第に苛烈になる。
旧小西家の家臣たちも土地柄キリシタンが多く、長崎に身を寄せていたが、次第に長崎にもその弾圧が近づいてくる。
司祭が来日できずに、奇跡を求めるキリシタンたち。
長崎の学舎で学んでいた彦七は洗礼名マンショと称し、救いを求める民のため仲間たちとローマへ行き司祭となり日本に帰ることを誓う。
これは小西マンショが日本を出て、ローマで司祭となり、そして帰国後に処刑されるまでを描く。
小説では悲劇的な終わり方だが、その200年後に信徒発見に至ることは歴史上の記録だ。
マンショの受難は決して無駄ではないことは歴史が証明している。