川越宗一のレビュー一覧

  • 天地に燦たり

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    ネタバレ

    儒学と出会い白丁の聖人になって人を人にすることを天命とし、様々な出会いを通じて成長した明鐘が、最後に儒者として禽獣から変われないと諦めていた久高に生を説き、生きる道を示したところに彼の目的の達成の一端を見た気がして良かった

    読み終わる前からこの文庫本の表紙が好きで、「守礼乃邦」と掲げられた門とハイビスカスと真っ青な空とミスマッチな甲冑がこの物語を表していて良いなと思っていたけど、最後に3人再会したシーンだと分かり改めて素晴らしい絵だなと思ってまじまじと見返してしまった

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    2025年06月26日
  • 熱源

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    文明化の中、同化政策により故郷や言葉、名前までも奪われ、アイデンティティを揺るがされた、アイヌのヤヨマネクフとポーランド人民族学者ブロニスワフ・ピウスツキ。2人が生涯を賭して守り継ぎたかったものとは。
    「アイヌ」はアイヌ語で「人間」を指す。文明人ではなくひとりの人間であり続けようとした人々の熱に満ちた物語。

    ヤヨマネクフは白瀬矗らと南極探検隊として極地を目指した人物として知られる。その生涯は金田一京助著「あいぬ物語」に記されている。
    ピウスツキはポーランド共和国建国の父にして独裁者として知られるユゼフ・ピウスツキの兄。

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    2025年05月17日
  • 天地に燦たり

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    日本の歴史の中でも有数の愚行である朝鮮出兵を薩摩、朝鮮、琉球それぞれの視点から描いた作品。
    有名な武将の物語ではなく、朝鮮や琉球の身分の低い人たちが儒教の礼をもって戦を語るところに清々しさを感じる
    薩摩が武勇の国から卑怯な国に成り下がったきっかけが家久だったのか。

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    2025年03月02日
  • 灯台を読む

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    作家さん達が全国18か所の灯台を巡り、紹介する紀行文。島国である日本人は古くから海と共生してきたが、現在のような西洋式灯台が建設されたのは明治維新以降になってからだという。風の吹きすさぶ岬の突端でポツンと立ちながら必死に灯を届ける様子は、孤高であり浪漫を掻きたてられる。
    近代日本の文化遺産として、灯台が見直されつつあり、各地域では新たな観光資源となっている。各地に旅行に行く際に、灯台へふらりと寄ってみるのも楽しそうだ。私の地元の灯台も紹介されていたので、まずはそこから訪問したい。
    また、どの作家さんも『喜びも悲しみも幾年月』という映画について言及されていた。近代日本を支えた誇りある灯台守という職業とその過酷な暮らしについて興味が湧いた。

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    2025年02月11日
  • 福音列車

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    時代は西南戦争~インド独立まで。五短編。個人的には「黒い旗のもとに」がお気に入り。馬賊に魅了される病に冒されているらしい。どの短編も地味だが根は力強い。但しタイトルは「福音列車」と云うより「苦役列車」が相応しい。嗚呼、でもこのタイトルじゃあ西村賢太が芥川賞を受賞してしまったか。「熱源」以来2冊目だが人間の力強さと潔さに充ちていて読んでいて不満はなかった。

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    2024年11月04日
  • 熱源

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    2019(下)直木賞受賞作。樺太アイヌを軸にした歴史小説。小生の父方は、明治入植の屯田兵で、樺太にも住んだそうで、懐かしみを持って読み切りました。あと、大戦末期に本土決戦があったのは、ここ樺太と沖縄だけだそうです。

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    2024年08月16日
  • 海神の子

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    川越宗一『海神の子』文春文庫。

    以前読んだ『熱源』が非常に面白かったので期待は大きい。

    本作も『熱源』のような熱量を感じる歴史小説であったが、面白さという点では『熱源』の方が一枚上であった。

    本作は、後に台湾の英雄となり、江戸の人々を熱狂させた舞台『国姓爺合戦』の主人公のモデルとなった鄭成功の半生を描き出した歴史小説である。

    中国の海賊と日本人の間に生まれ、弟と共に平戸に預けられていた福松のもとに母親の松が迎えに来る。松は台湾を根城にする大海賊の頭となっていたのだ。

    福松は中国に渡り、鄭成功となると、割拠する海寇たちや東インド会社を下して力を付け、ついには大明国から城と将軍職を与えられるほどの人物になる。しかし、李自成の乱が起こって明は滅亡し、清軍が攻めてくる。鄭成功は、鄭家を守るため、自ら新帝を立てることで『天命』を我がものとしようとするのだが……

    本体価格980円
    ★★★★

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    2024年07月23日
  • 見果てぬ王道

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    どう切り取っても思想、政治がが含まれてくる難しいテーマの中で、孫文を陰に日向に支え続けた日本人から語るというのは絶妙な距離感だし、もうそれだけでドラマ生まれてるすな。

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    2024年04月24日
  • 足利の血脈 書き下ろし歴史アンソロジー

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    古河公方 足利家と、忍び さくら一族を描いた歴史小説 アンソロジー、連作短編集

    史実の裏側では、こういった暗躍もあったかも知れない。時代に想いを馳せました。
    巻末の系図が有難いです。

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    2024年02月18日
  • 福音列車

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    川越さんらしい面白い作品でした。
    短編ながらもそれぞれ歴史に翻弄されながらも逞しく生き切るという人々が美しく描かれていました。
    本流でない歴史に暗かったので、
    教科書で学ばない歴史背景を学び、今回も感嘆しました。また今後の作品も楽しみにしています。

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    2024年02月03日
  • 福音列車

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    常に世界の何処かで勃発する戦争。戦闘をせずに人間の業が満たされることは無いのか。5つの物語の登場人物は、みな戦争を望まない人たちだ。史実を知る反面、胸が裂ける。

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    2024年01月01日
  • パシヨン

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    人間は幻想を持たないと生きていけないが、それがキリスト教なのは、この時代この地では体制にとって不都合だった。
    これこそが全ての悲劇の原因だった。

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    2023年12月21日
  • 天地に燦たり

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    章立てがコンパクトであり、小さな話のまとまりで読み切りやすい。これは現代的な読み手への工夫か。ややあらすじの先を読みやすい印象

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    2023年11月12日
  • パシヨン

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    ネタバレ

     「熱源」も「天地に燦たり」も、抗えない歴史のうねりでもがきながらも自らの運命を切り開こうとする。
     しかし、歴史の流れには抗えない。
     本書「パシヨン」の構造も同じだ。

     戦国時代が終わり、徳川の治世で世の中には平和が訪れていた。
     しかし、戦国の敗者はまだ恨みを引きずっていた。
     関ケ原西軍の敗将、小西行長には対馬藩主に嫁いだ娘がいたが、子を成した後の関ケ原の敗戦により母子ともども追放されていた。
     行長の孫、小西彦七は旧小西家家臣からは、いつか殿に返り咲くことを期待されながら、本人にはその気は全くなかった。
     
     戦国時代には日本各地にいたキリシダン大名のもとで広がったキリスト教だったが、徳川の世になり弾圧は次第に苛烈になる。
     旧小西家の家臣たちも土地柄キリシタンが多く、長崎に身を寄せていたが、次第に長崎にもその弾圧が近づいてくる。

     司祭が来日できずに、奇跡を求めるキリシタンたち。
     長崎の学舎で学んでいた彦七は洗礼名マンショと称し、救いを求める民のため仲間たちとローマへ行き司祭となり日本に帰ることを誓う。

     これは小西マンショが日本を出て、ローマで司祭となり、そして帰国後に処刑されるまでを描く。
     小説では悲劇的な終わり方だが、その200年後に信徒発見に至ることは歴史上の記録だ。
     マンショの受難は決して無駄ではないことは歴史が証明している。

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    2023年11月05日
  • パシヨン

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    「熱源」で、直木賞を受賞した川越宗一さんの歴史小説です。
    何が人々を島原の乱へと駆り立てたのか。
    キリシタン大名小西行長の孫であり、禁教下最後の日本人司祭となる小西彦七(マンショ小西)の生涯を辿りながら物語は進んでゆきます。
    限られた歴史の記録の行間をドラマチックに埋めるのがとても上手な作家さんだと思います。
    こんな展開、まずなかっただろうな…。と思いながらも、もしかしたらと、歴史ロマンに浸れる1冊です。

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    2023年10月14日
  • パシヨン

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    江戸時代のキリスト教徒の話は、遠藤周作さんの沈黙で初めて読みました。いつも、人の残酷さに悲しく辛い思いがします。

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    2023年07月19日
  • 見果てぬ王道

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    孫文を金銭的に支えた梅屋庄吉の一代記。孫文関係でなんとなく知っていたがこんなに面白い人物だったとは驚いた。特に孫文と出会うまでの破天荒ぶりに呆れるとともに、養父母の深い愛と理解にも感服。
    裏話的な歴史も楽しめた。日活の創始者だった事も知らなかったが、南極探検に出資するなどいろんなエピソード満載の人生だ。

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    2023年06月11日
  • 見果てぬ王道

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    史実を元にしたフィクション。孫文が日本にゆかり深かった事は知ってはいましたが、ここまでとは恥ずかしながら認識なかったです。また日本人の個人が孫文をこんなにも支えていたんだという事、フィリピンの独立運動にも関係していた事、これまた驚き&新鮮でした。見方や立場を変えた書籍を色々読んで見たくなりました。それぞれ登場人物が英雄っぽく描かりたりせず、人間っぽく描かれている点も好感。

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    2023年06月09日
  • 見果てぬ王道

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    66兵庫に縁の深い孫文の解放の戦いとあまりにも人間臭い生身の姿を最大の支援者である梅屋庄吉を通して初めて知った。革命とは武力と権力闘争にあらず。市民を中心にしなければ何も成就しないということを歴史が教えている。彼の国はあと何百年経てば変わるのかな。

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    2023年05月18日
  • 見果てぬ王道

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    中国革命の父として知られる孫文を経済的に支援した日本人実業家・梅屋庄吉の破天荒な生涯を描いた歴史大作。と言っても史実を重視した作品ではなく、庄吉の人間的な魅力にあふれており、読んでいてとても楽しかった。日本の映画産業発祥にも深く関わっていたことも知り、とても興味深かった。
    にしてもこの人、運がいいんだか悪いんだか、目端が利くんだか利かないんだかよくわからない。新規事業を興しては成功→失敗を繰り返してばかりいる。稼いだ金は惜しげもなくばらまいてしまう。傍から見ているなら面白いが、身内にいたら堪らないだろうな。

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    2023年01月29日