【感想・ネタバレ】熱源のレビュー

ユーザーレビュー

ネタバレ購入済み

寄り掛かれるもの

Ru 2020年06月03日

じわじわと自分たちの生活が脅かされていく恐怖。文明的でない自分たちは劣っているのか。子供たちが学校で日本人として教育され「天皇陛下万歳!」などと言うようになっていくさまを見て、アイヌの人々の感じていたであろう寂寥感、屈辱感、無力感を考えると胸が詰まる。

しかし、そこに共感できるのは今の日本の日常に...続きを読むも似たような感情を抱かざるを得ないことが溢れているからかもしれない。
成績の優劣、収入や社会的地位の違いと言った劣等感。多数が少数をないがしろにする状況はいくらでもある。
最後にヤヨマネクフがたどり着いた、日本人を見返してやる必要なんてない。アイヌとして生きていけばいいんだ。という境地。
そこに現代でも通じる生き方があると思う。

ただ、彼らには自分たち独自の文化、生活という誇りを持ち、寄り掛かれるものがある。
今、義務教育を受け高校、大学、社会人と言った良くある人生を送ってきた人は何に誇りを持ち、どこに寄り掛かればいいのか。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年05月28日

最高によい!失礼ながら、たいして期待せぬまま読み始めたらもうー止まらへんがな。題名の通りに熱い、アツーい、生の物語なんやけど、ふざけたようなとこもなく終始硬派にまじめに書いてあるんやけど面白い。こらー映像化されるんやない?

サハリンだのアイヌだのソ連だのと、設定を聞くと、興味ないなーと思われそうな...続きを読むのがもったいない。私としては、地域的には特に興味深いわけじゃないけど、目下自分が求めている、生活の身体性とか生きる実感、それこそが熱源、が、描かれていて、もうたまらない。。
民族、あるいは民俗、異文化コミュニケーション、アイデンティティなど、小難しく見られそうなテーマがこのようなドキドキハラハラわくわくの物語として読めるのは、大切なことやなーとも。

このレビューは参考になりましたか?
ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年05月28日

【あらすじ】
序章
ソ連の兵士たちはサハリンへ日本との戦争に向かう。クルニコワ伍長はベルリンで政治将校が女をレイプしていたため射殺した。

第一章
アイヌであるヤヨマネクフは樺太から北海道へ移住した。シシラトカ、太郎治と過ごす。
北海道では度々アイヌであることにより差別を受けた。ヤヨマネクフはキサ...続きを読むラスイと結婚し子供ができるが、キサラスイは痘瘡により亡くなる。その後、ヤヨマネクフは故郷の樺太へ帰った。

第二章
ポーランド人であるブロニスワフの友人達がロシア皇帝暗殺を企て、ブロニスワフもサハリンへ流刑となる。ブロニスワフはサハリンで犬橇を駆るギリヤークと出会い、「この凍てつく島で生きる熱を与えたものが何か知りたい」と彼らの生活について研究することになる。ギリヤーク達は文字の読み書きができないため、ロシア人に騙され村を焼かれる。このことからブロニスワフはギリヤークのための学校を作った。ブロニスワフはシュテルンベルグという民族学者と共にウラジオストクへ行き、博物館でギリヤークについての講演を行った。

第三章
バフンケの養女イペカラは熊送りの準備をする。イペカラがトンコリを弾いていると、ヤヨマネクフと出会う。
ブロニスワフが樺太で研究しているとき太郎治と出会う。ブロニスワフ、太郎治、インディンは学校を開くことになる。バフンケの屋敷で、イペカラの親戚であるシシラトカとヤヨマネクフ、太郎治が再会する。
冬に学校を開いたが、インディンは結核により亡くなる。落ち込むブロニスワフを慰めるチュフサンマ。チュフサンマも夫と子を亡くしている。ブロニスワフはチュフサンマに求婚し、チュフサンマはイペカラに入墨を頼む。
ブロニスワフはヤヨマネクフとイペカラの歌と琴を録音する。そのときロシアと日本の戦争が始まった。

第四章
樺太ではロシア軍が上陸していた。ブロニスワフとチュフサンマの子供が産まれる。ブロニスワフは刑期が終了し自由の身となった為、リトアニアに帰ろうとしたが、旅費が無いので講演料を稼ぐためにウラジオストクへ向かう。
その頃、樺太に日本軍が上陸する。太郎治はロシア軍の案内役に、ヤヨマネクフは日本軍の案内役になる。ロシアと日本の戦闘で2人は再開する。ロシアは降参し、戦争が終わる。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年05月20日

樺太アイヌとポーランドを故郷とするロシア人との交流。 土地の支配、文明の進化とは何かについて考えさせられる。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年05月06日

日本人にされたアイヌ人やロシア人にされたポーランド人。歴史の中で、理不尽に翻弄されていた人々が、この土地で交じり合う偶然。この偶然を本当に、奇跡だと思った。でも奇跡は、登場人物たちの「生きる」という強い意思の上に起こったものだと思う。最近、アイデンティティーを意識したことがなかった。おまえは何者で、...続きを読むどんな人生を送っているのか。この本から問われているような気がした。あぁ、最後は泣いちゃった。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年05月05日

すごい。
読んでいて熱くなる。
熱はいかにして生まれるのか。ただ文章を読んだに過ぎない。ここに生きる人の生きる熱が伝わるのだろうか。
とにかくすごい。
自分たちが知っている、遠くない昔の話。
信じられない。

文明とは何か。
自分のアイデンティティとは。

とにかく魂が揺さぶられる。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年05月05日

史実をベースにした、樺太アイヌたちとポーランド人との「故郷」を巡る物語。
現代のグローバル化の世界では、生まれ故郷を離れて暮らす人は多く、国内であっても田舎から上京してそのまま東京で一生を過ごす人も多い。そんな世の中で、改めて自分の「故郷」とは何なのか問う作品だと思いました。
ただ単に、生まれ育った...続きを読む場所が「故郷」とは限らない。今は既になくなってしまったものが「故郷」の場合もあれば、自分に生きるための「熱源」を与えてくれたものが「故郷」となる場合もある。
折しもコロナ禍により自分の「故郷」が姿を変えていってしまうところに直面している人も多いことと思う。
自分は何のために生まれて、何のために生きるのか、改めて自分自身と向き合い、自分の「故郷」=「熱源」を考えさせてくれる物語。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年04月29日

凄い作品だった。
ポルトガル人アイヌ研究者の史実に基づいた物語り。

大変に興味深く実際の人物の生涯と照らし合わせながら読みました。

アイヌがアイヌとして生きて行く為に時に日本人になり、ロシア人になりながらも、アイヌの誇りを胸に一生を駆け抜く人々の熱い思い。

なんて重たい歴史だろう。
戦争と差別...続きを読むと貧しさと偏見。
日本の侵した罪は大きく、その中を生き抜いてきた人々の強さと悲しみと誇りが語られてます。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年04月22日

19世紀の終わり以降、ロシアに支配されたり日本に支配されたりする激動の樺太に生きる者たちの物語。北海道へ移住して痛い目にあう者あり、ポーランド人で樺太に流刑になった者あり。

熱く重厚な物語、じっくり堪能させてもらった。

近代文明を取り込んでいかないのいけないのか、そうするとアイヌではなくなってし...続きを読むまうのではないかというジレンマ。ポーランドの独立などがリアルに伝わってくるところもあり、歴史を学ぶ的な小説でもあった。太平洋戦争終結直後までを描いてる。登場人物欄に、金田一京介や探検家の白瀬の名前があるのも愉快だった。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年04月20日

埋もれていく歴史。日本という国が多くを語らないアイヌの存在を、いまの日本人はどう認識すべきなのか?と問題提起された気分。疫病との戦い、国家の存立、個人のアイデンティティの所在を含め、あれこれ議論したくなる。傑作!

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年04月18日

樺太アイヌが経験した変化を、追体験しているようなリアルな小説だった。史実に基づくフィクションで、ポーランド、ロシア、日本、満州という国々が出てくるが、その国と国との闘いや国の中での戦いが、その中に生きる人を通すことで歴史の教科書で学ぶよりも数倍速く深く心に入ってくる。
どの国のどの立場の人にも熱を感...続きを読むじられて、生きるということを強く感じさせられた。

ロシアのこと、ポーランドのこと、東欧のこと、樺太のこと、アイヌのこと、明治維新のこと・・・多く歴史を、きちんと知りたいと思わせる熱さがあった。

ゴールデンカムイにハマっている人には特におすすめ。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年04月16日

アイヌ民族たちは、当時の日本列島において生まれ育った地と融合し、その場所性そのものが与える安寧と共に生きた最後の生き残りなのではないかと思う。現代に生きる私たちは故郷を思う気持ちを愛国主義やらナショナリズムやら、堅苦しい言葉でしか表すことができなくなった。東京で桜を愛おしむ四迷がいる一方で、大隈伯爵...続きを読むは殆ど呪いのように国家という仮想的な概念に固執する。その点において、アイヌという性質は直接的に民族間の繋がりを保っているゆえに特別なのだ。ヤヨマネクフがアイヌのパーソナリティを場所性に見出していたのも頷ける。だが、彼は最終的に人こそがアイヌを遺すものなのだと気づく。それは悲しくも運命に争う意志の終着点でもあり、殆ど真実だ。それを金田一京介や太郎治が残した書籍が物語る。アイヌは、確かに今もどこかで生きている。そして、どこにでも生きる可能性があるとも言える。なぜなら、川越宗一が記したのは、その「熱源」であるのだから。

このレビューは参考になりましたか?
ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年04月16日

文明とは、国とは何か。生きるとはどういうことか。歴史をもとに実在した人物を描いているが、この作品は歴史を描くというよりは、そこで生きた人、その一人一人を、その熱源を描いた作品なのだと思う。
その熱に触れると考えてしまう…私は今、生きているといえるのか?そして思い知る…その熱が伝わることそれ自体が、生...続きを読むきている証でもあることを。
そして終盤の台詞へとつながる。
「あたしもあんたも、まだ生きてる。なら、できることがある。」



このレビューは参考になりましたか?
ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年04月08日

樺太アイヌの歴史 戦いと冒険を描いた希少作品。
樺太(サハリン)にロシア人と日本人が住んでいた歴史を知らなかった。かなり深く掘り下げているので読みごたえがある。戦争により失った命、土地等複雑に絡み合っている。
アイヌの人のイデオロギー、ロシアから独立しようとする国家のイデオロギー等国を作る苦しみは、...続きを読むきれいごとではすまされない。西洋人の考え方もストレートに書いてあり、心外だがこれが当時の偽らざる事実だろう。
登場人物が多いのと、ロシア名、日本名が入り乱れて少しよみずらい面はあるが、秀作。

アイヌの歴史本をもっと読んでみたいと思う。

このレビューは参考になりましたか?
購入済み

良かったよ

cheetah5 2020年02月29日

久しぶりに、意義深い小説を読んだ気がする。読みやすかったし。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年05月29日

明治から昭和までの樺太アイヌの物語で直木賞受賞作。

歴史小説としては圧倒されるくらいの史実をもとにほぼノンフィクションっぽい感じで、でも民族の熱はしっかり伝わる物語として素晴らしい作品でした。
歴史小説の醍醐味は、知っている歴史でも目からうろこ的な新事実を知らされたり、独特な推定や大胆な発想から物...続きを読む語として昇華されていたり、あるいは、全く知らない歴史的事実を物語として教えてもらえることだと思います。
この作品は最後者で、ほとんど知識のない樺太の歴史を、実在の人物の史実上の物語によって、自分の知識に刻めたことは大変幸甚でした。
ロシアと日本と樺太の関係だけでなく、ポーランド人(しかもポーランドの歴史上の重要人物の兄)まで実際に関係していたということも驚きです。
現代も樺太アイヌの人たちの状況はよくわかりませんが、民族の熱は耐えていないことを信じたいです。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年05月25日

いや~怒涛の展開だった~!!
大変な時代を生きた人達のまさに「熱源」だった!!
いつも関係のない人達が巻き込まれなきゃいけないんだろう!!
後、文明の進化もいいけど、振り返る事の大事さを教えてくれた!

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年05月24日

私達日本人にとって馴染みに深いアイヌの人達が、樺太で、北海道で、どんな人生を歩んで来たのか?明治維新後のアイヌに何が起こったのか?この作品をみつけたとき、それに非常に惹かれ、この『熱源』を絶対に読みたい!と思い読みましたが、それは、壮大な彼らの人生の冒険でした。
426ページという長編ですが、読み応...続きを読むえたっぷりで、最初から最後まで物語の中にどっぷりと引き込まれました。
実在した人物をもとに描かれたこの壮大な物語は、ざっくりとしか知らなかったアイヌの人達について、そして樺太について、二人の生涯に渡りながら知ることができ、心を惹かれたとても満足する一冊でした。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年05月24日

なんのために生きるか。自分の生はどんな熱を源にしているのか。
それには人種や国籍、言語、文明など様々なことが複雑に絡み合っている。だからこそ異なる者同士が衝突する。
それでも生きていれば出来ることがある。人が作りだりだした「摂理」なら人が変えられるはずである。
そういう生きることの難しさと希望を教え...続きを読むてくれる小説だと思った。

このレビューは参考になりましたか?

Posted by ブクログ 2020年05月24日

大国ロシアー日本の支配や戦争に翻弄されるアイヌの運命。
彼らは帰属権の主張がなされるずっと前から樺太にいた先住民である。樺太ー千島交換条約により樺太が1875年にロシア領になると、日本政府は樺太アイヌを北海道に移住させる。1905年には日露戦争の結果、南樺太が日本領となり、故郷に戻り生活するアイヌも...続きを読むいたが、第二次世界大戦後の1945年にソ連が南樺太を支配すると再び北海道に多くの樺太アイヌが移住した。
欧米、日本からは野蛮で近代化から取り残されている劣等民族と差別された彼らは「ただ生きているだけ」なのに迫害される。失われていくだろうアイヌ文化や言葉の中で、「アイヌ」が決して劣ってはいないことを世に示そうとしたヤヨマネクフ。彼にとっての熱源は「アイヌの人」であり「アイヌの故郷」だ。

史実をベースとしており実在した人物も数多く登場する。
読後は日本の対ロシア関係、北方領土問題やアイヌ文化、帝政ロシアの歴史など関連する事項についてもっと知りたいと感じた。

このレビューは参考になりましたか?