赤松利市のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
千葉にあるリゾート旅館で、総支配人夷隅登が殺された。従業員から通報があり、警察が駆けつけると、そこにいた6名の従業員全員が犯人だという。
本書は、6人の従業員らがその犯行を語ることから始まり、警察での取り調べでそれぞれの事情を詳細に語り、さらに周囲にいる関係者たちが参考人として供述、そして、受刑者となった6人の心中が語られて、幕を閉じます。
「あとがき」にあるとおり、この小説には主人公と言える人物がいません。始めから終わりまで、代わる代わる誰かが話しています。なぜこうなるに至ったのか、少しずつ事情が見えてくるのですが、赤松利市さんのことだからきっとこのままでは終わるまいと思っていたら、やっ -
Posted by ブクログ
バブル期に大いに働き大いに稼ぎ大いに遊んだ主人公。それでも家庭を持ち子を持つ。
大人になった頃には既にバブルが弾けていた私には理解不能な価値観の人物たち。
所謂グズ。グズでも本を読み働き夢を追いかける…だけれども、やっぱりグズ。
私を育ててくれた大人たちがバブル期を経験してもこんな風にならなくてよかった、ありがとうという気持ちにさえなってしまった。
筆者の体験に基づいて書かれた作品とのこと。
ある意味自然主義文学さながらの物語。
バブル期を経た人物が被災地へ流れて一攫千金を狙って再起を図るとは被災されたたくさんの方たちにとっては虫が良すぎるのだろうと感じ、やはり、震災後文学というものには -
Posted by ブクログ
ネタバレ支配人が殺される。
若女将との結婚から始まり、旅館の改革、リストラ、奉仕活動、啓発セミナーのまねごとの懺悔をする会等いろんなことをやって、評価が悪かった人物。
だが、蓋を開けてみれば、若者社員と古参とでは意見が違う。働いている者と、リストラされた者、内部・中枢にいた者と、旅館そのもの、支配人の評価が真逆。現実の会社、社会にもある、その場をうまく過ごすために、同じ意見であると安心する、安心させる、仲間だという流れ…。旅館の内部事情に詳しい者は、自分のやって来たことを隠したいがために、悪口を垂れ流して自分の身を守るために一芝居打つ。それを真に受ける者もいたりして、支配人の評価は下がる一方。
若女 -
Posted by ブクログ
心がザワザワする。
何故かというと今、またコロナの波が押し寄せてきているから…。
収束したのか、したのか…いやまた感染拡大しているではないかの状態で…。
この物語は、コロナの影響で勤務先を解雇され、マンガ喫茶暮らしとなった中年男性の行く末である。
何度目かの感染爆発が起き、その都度ウイルスの名前も変わり、「東京株」という新しい株が発生。
ついに東京逆ロックダウンという措置を政府が発表する。
東京エリアに関して感染者数の増加が急激過ぎて、東京エリアの都民、市民を他の地域に移動、分散させる対策である。
だが、マンガ喫茶にいた中年男性やホームレスやその避難計画から取り残された人たちが、どのよう -
Posted by ブクログ
著者初の文庫書下ろし。
コロナ禍が続く日本、オミクロン株の次に流行したのは致死率が高い”東京株”だった。
政府は県外移動ではなく、全東京都民を疎開させる措置をとった。
「東京逆ロックダウン」と呼ばれる強硬政策により、東京はもぬけの殻となった。
しかし、その枠から漏れる人間も存在した。
イサムはコロナ禍の中で勤めていた調理器具商社が倒産し、フリーターを続けながらネットカフェ難民を続ける40代半ばの中年だ。
ある日、突然にネットカフェにいた客どころか、店員もいないこと気が付く。
ツイッターで東京逆ロックダウンが起きることは知っていたが、住民票もない自分のところには連絡が届くわけ