あらすじ
住所不定、無職。マンガ喫茶で書き上げた作品が大藪春彦新人賞を受賞し、衝撃のデビューを果たした鬼才による初の随筆。東京で住所不定に陥るまでの被災地での経験を書く。
美しい国? 日本が? ―― この話、すべて真実。
石巻で、南相馬で福島で。
土木作業員の、除染作業員の、無数の「A」の、憎悪が渦巻く。
2020年度大藪春彦賞受賞作家、初の随筆。
バブル期は125名の社員を抱え、2400万円の年収があった「私」は、会社を破綻させたのち、兵庫県でコンサルティング業を営んでいた。 仕事は先細り、不安を覚えていた矢先、小さな土木会社を営む社長から、東北に仕事を探しにいってくれないかと持ち掛けられる。 東日本大震災が起きてから約半年。男性週刊誌に「狂乱の復興バブル」などという見出しが踊る時期だった。 月給40万、仕事が軌道に乗り儲けが出れば、それはきれいに折半しよう。 悪くない条件に乗って、私は仙台に入る。 しかし、女川町で最初の仕事を得たあたりから、雲行きが怪しくなる。 あくまで営業部長として東北に入った「私」まで、作業員の頭数として現場に出ることになったのだ。 そこには想像を絶する醜悪な現実があった。 住所不定、無職。 大藪春彦新人賞でデビューし、2020年に大藪春彦賞を受賞した注目の鬼才が書く初の随筆。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
赤松さんの作家デビュー前の壮絶な被災地生活。
逃げれば良いのに抜け出せない、そんな状況がしかと伝わってきます。凄い本でした。
私の同級生も派遣会社に就職後、未経験にも拘らず即、現場監督就任。入れ墨の入った方々をビビりながら指揮していたようで、ホント滅茶苦茶な状況だったようです。
Posted by ブクログ
赤松ワールド入門編に最適。将来、赤松研究書が出た日には初期必読書となるだろう。これまでに出版された「藻屑蟹」「鯖」「ボダ子」「らんちう」の原型的な出来事がそこかしこに簡潔に描写される。そして描写「されなかった」であろう詳細がこれからの作品で展開されることを思う。おそるべし。
Posted by ブクログ
「実録!震災復興ビジネスの闇」な本。知る事のできない世界が小説仕立てで生々しく描かれ、結末も物語の様で良かった。土木系は結構わかる方だが人種描写も超リアル。
Posted by ブクログ
著者の体験に基づいて書かれているだけにすごくリアル。貧困ビジネス関連の本を読むと、必ずそこで働く人々の独特さが描かれているんだけど、こちらも例にもれず特殊な方々がいっぱい。この奇異な環境の中、著者はよく耐えたと思う。向き不向きとか、著者が彼らを見下しているとか、もうそういう問題じゃなくて、住む世界が違うとはこのことだと思う。(むしろ異星人といってもいいと思う)
失礼を承知でいうけれど、一般常識があり、ある程度の文化的な生活を送ってきた人は、足を踏み入れないほうがいい世界だと痛感。
Posted by ブクログ
人というものはいろんな重み付けで測られるものではあるが、その場のハッタリや腕力だけが物をいう世界があって、本書は間違ってそんなところに中年を過ぎてから入り込んでしまった男の悲喜劇。無論やられっぱなしではなく、筆者なりの打算や世渡りも描かれるが、読者からするとどうにも「取らぬ狸の〜」と感じてしまい、救いのない話の中で貴重なユーモアとして効果を発揮している。
Posted by ブクログ
東日本震災後の復興特需に群がる人間が描かれた「藻屑蟹」「ボダ子」は、あくまで小説だった。
本書は、復興特需に乗っかろうとして、乗り損ねて住所不定無職となった筆者の随筆である。
かつてバブル時代にはゴルフコースのコンサルタントとして120人の従業員を率いていたが、バブルとともに会社は弾けた。
再起をかけて乗り込んだ東日本震災後の東北だったが、そこでは日雇いの土木作業員に揉まれる日々だった。
復興ビジネスの裏表を知り尽くし、そして最後には限界に気づく。
気が付いた時には下流国民へ。
まもなく震災から9年、日本という国自体の下への流れが止まらない。
Posted by ブクログ
著者の土木建設会社勤務時代を中心に自身の体験を率直にかつ平易な文で記した自伝的作品。
まず、震災の復興作業に集まった作業員達の粗暴さと無教養さに驚くと同時に、土木作業の技術と適性なコミュニケーション能力の両方を備えていなければまともな職場で働くことはできないのだなと感じた。また、国の除染事業も美味しいだけではなく多くの利権が絡み合う中で、パイプを持たないもの達はいかにその匂いを嗅ぎ分けるのかが大事かがひしひしと伝わってきた。
経済も何もかもが下降するこの国で、自由競争社会の荒波に放り出された我々の明日は下級国民Aかもしれない。
Posted by ブクログ
著者の経歴が書いてあった
ゴルフ場の管理、アメリカやイギリスではそんなに優遇されるのかとびっくりした。
寄せ集めの作業員、底辺の人はそのレベルなのかと思った。まぁ私も底辺で下級国民だけれども
六文銭の男が気になった
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03月-09。3.0点。
赤松利市本人の半生記。
「鯖」を読んだとき「ナンじゃこりゃ」と思ってから、全て読んでいる。凄い人生を歩んでいたんだな。
ある著作にも、同様の内容があった。モデルは著者本人だったんだなと再認識。
Posted by ブクログ
もともと会社経営で羽振りがよかった著者が食い扶持を失って福島へ、土方に混じって働くことになる。土方たちの単細胞ぶり、そのくせ競争心が高いのでみんなでスマホゲームに熱中する、スマホゲームやらないと怒るなど。性格的におかしいのもいて、いじめられるが耐える、家族に仕送りするためのカネが必要なので。
最後は自分が責任者の立場になったときにひどい業者に一杯食わされて、真面目な仕事仲間のことも見捨てて放り出してトンズラするに至る。著者がひどい人というのではなく、カネが欲しいゆえに無理をすると危ない橋を渡らざるをえず、そのうちにそんな状況に追い込まれてしまうというか、そういう世界が福島界隈にはあるよということ。