赤松利市のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
2020年、33冊目は、約1年振り、『藻屑蟹』以来の赤松利市。
「海の雑賀衆」一本釣りに特化した游漁船団。時代の変化に呑まれ、船頭、大鋸権座が率いるのは、オンボロ漁船一隻、乗組員四名だけである。現在は日本海の孤島を根城に、割烹料理屋に魚を卸すことで、糊口を凌いでいた。そんな彼らに、ビッグビジネスの話しが舞い込む。
フォーマットは『藻屑蟹』と似た「欲」にとらわれた人間の物語なんだが、コチラは狂気的、デカダンス型。よもや、こんな結末になるとは、予想出来なかった。
ストーリーの緩急。そして、中盤以後は一気に加速する展開。ソコに癖の強いキャラが絡んでくる。
『藻屑蟹』より、読者を選ぶし、評価も -
Posted by ブクログ
東日本震災後の復興特需に群がる人間が描かれた「藻屑蟹」「ボダ子」は、あくまで小説だった。
本書は、復興特需に乗っかろうとして、乗り損ねて住所不定無職となった筆者の随筆である。
かつてバブル時代にはゴルフコースのコンサルタントとして120人の従業員を率いていたが、バブルとともに会社は弾けた。
再起をかけて乗り込んだ東日本震災後の東北だったが、そこでは日雇いの土木作業員に揉まれる日々だった。
復興ビジネスの裏表を知り尽くし、そして最後には限界に気づく。
気が付いた時には下流国民へ。
まもなく震災から9年、日本という国自体の下への流れが止まらない。 -
Posted by ブクログ
2019年、26冊目は、新設の大藪春彦新人賞受賞作。先週までの不調がなかったかのような、一息、一気読み。
東日本大震災、福島の原発事故。その様子をテレビで見ていた木島雄介は、「何かが変わる」と感じていた。震災から六年が経ち、木島はパチンコ屋の雇われ店長ではあるものの、将来の見通しもないまま、仕事に忙殺されるような日々を繰り返すだけだった。そこに、高校時代の友人から、東相馬市の除染作業員となる誘いが舞い込む。
「一号機が爆発した。」という書き出しから始まる物語。ノッケから、なかなか衝撃的だ。
地方の閉塞感に苛まれる青年、木島が、除染作業の裏側に見たモノ。物事の表と裏。隠蔽、癒着、そこで動く -
Posted by ブクログ
東日本大震災から8年が経ち、人々の意識からもあの大惨事の記憶が薄らいでいると思う。当時の日本を覆い尽くす暗い雰囲気を忘れたい気持ちは自然な事ではあるが、今も先の見えない福島原発の廃炉作業が続いており、震災のダメージから回復が出来ていない人もいる事は心に留めておかなければならない。
震災後の各補償問題について当時、色々な情報が流れていた事を思い出した。最終的には補償イコール金銭となるが、実際の金額と向き合うと人の別の面が表れてくる。
高額な補償金額、より多くの補償を望む気持ち、その補償を受け取る人々への嫉み、被害者意識などが交差してより嫌な雰囲気になったと思う。
この作品はストーリーの展開の中で