赤松利市のレビュー一覧
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タイトル通りの救い難いクズが自滅していくストーリーは著者の得意分野だ。
何をもって金しか愛せないクズに堕ちていくかを、ひとりの人生に描き出している。
在日二世、朴マンスは中学校に入っていじめの対象になった。
そこを救ったのが、貧困団地の井尻だった。
マンスは井尻に月10万円を払い、学校での安全が保障された。
マンスと井尻との関係は一生続くものになる。
朴マンスは婚外子だ。
父親は姫路のパチンコ屋の経営者だ。
幼い頃は父親に猫かわいがりを受けたが、次第に父は母子の家に寄り付かなくなる。
しかし、マンスが高校生になる頃には、父が忍んで家に来ていることを知っていた。
そして -
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ネタバレ全く知らない世界で生きる彼らに感情移入できない。
が、それが面白い。
主人公マンスの小学から成りあがるまで描かれている。
井尻、マンスと同じ中学校の先輩。
大人になったマンスの周りには井尻の息のかかったメンバーで固められている。
マンスはこのことに気付いていない。
孤独なマンス。でもそれに気づいていない。
井尻さんお金は信頼できる。
でもほんとに?疑心暗鬼が面白かった。
父を恨んでいるが、逆境に負けないでと思うのは、幼いころの父との楽しい思い出があるせいだろう。混乱したマンスの歪み様が悲しい。
母への疑問、寂しさ。
違和感を覚えるマンス。母が死んだのは自分のせい?最後の方では母の死を自分な -
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赤松利市『白蟻女』光文社文庫。
短編『遺言』と中編『白蟻女』の2編を収録。最初に収録されている短編『遺言』は無かった方が良かった。『白蟻女』が面白い中編だけに残念。非常に不味い前菜を食べた後に素晴らしいメインディッシュが出て来ても、不味い前菜で損なわれた口はなかなか整わないのだ。
『遺言』。箸にも棒にもかからないレベルの短編。年老いた母親が娘の咲子への遺言をリオノコーダーなる機械に吹き込む。遺言というよりも昔の想い出を延々と語るのだが、山谷も無く、最後の衝撃の告白も予想の範囲だった。★★
『白蟻女』。表題作。まさか感動の結末が待ち受けているとは。夫の栄一郎の通夜、2人の娘を家に帰し、夫 -
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なぜか突然、この本の旬は1月なのではという気が強くして、読み始めた。『藻屑蟹』を読んでから3年と10ヶ月、ずっと読むタイミングを計っていたこの本、ようやく読めた。
いやぁ、なんか……かなりヤバいものを読んでしまった。この本にはR指定(と今は言わないのかな)が必要では。でも読書の醍醐味である、貴重な擬似体験をさせてもらった。そういう意味では、ものすごくおもしろかった。
始めは、世間への憤りを抱えた主人公にハッとさせられながらも、これはコメディなのかと思うほどコミカルな表現に何度も吹き出していたのだが、読み進めるうちにだんだん笑えなくなってきて、後戻りできなくなっていく状況に恐怖を感じるように -
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赤松利市『犬』徳間文庫。
第22回大藪春彦賞受賞作。
個人的に苦手なトランスジェンダーを主人公にしたピカレスク小説だが、面白い。
国の誤った政策で非正規雇用が増加し、日本は貧困国に成り下がり、社会保障額は目減りし、老後の不安は増す一方。死ぬは地獄、生きるも地獄の今のご時世。一攫千金を狙ってもリスクばかりで、うまい話に儲けは無い。貧困のあるところに犯罪あり。
大阪でニューハーフバー『さくら』を営む63歳になるトランスジェンダーの桜は、同じトランスジェンダーで24歳の沙希を雇い、慎ましい生活を送っていた。
ある日、『さくら』に桜の昔の男であった安藤勝が現れる。久し振りの再会に舞い上がる桜 -
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赤松利市『東京棄民』講談社文庫。
初の文庫書下ろし。
まさに今、日本が苦しめられている新型コロナウイルス感染禍を題材に描かれた世紀末近未来サバイバル小説。
リアリティを感じるストーリーであるが、少し欲張り過ぎた感じがする。
国民の自助と自衛に頼るばかりでワクチン接種の一本足打法以外に打つ手の無い政府の新型コロナウイルス対策。政府はスペイン風邪の時のように2年半程度で自然終息すると軽く考えていたのか。それとも集団免疫獲得という幻想を抱いているのか。
政府側近の人材派遣会社トップが労働者派遣制度を歪め、安価な人件費を変動費に変えたことから広がり続ける格差社会。新型コロナウイルス感染禍でさ -
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バブル末期の平成初期年代。
場所も違った場末の風俗にも、その不景気の予兆が訪れる。
新宿二丁目では、もう何人も”飛んで”いる。
北海道の寂れゆく離島には東南アジアからの女が流れ着く。
大阪の道頓堀に子どもが捨てられる。
彼ら彼女らの悲哀が込められた、平成初期の風俗街に焦点を当てる。
「ショコラ」
新宿二丁目のゲイバー、不況の煽りを食らって閉店が相次いでいた。
大吾は金融の世界で家庭も作らずに仕事に没頭し、遊ぶときは二丁目で盛大に金をバラまいていたが、不況の気配を感じて自分の得意な領域のコンサルとして独立する。
なじみの店でNo.1を争うカスミが自分の店を持ち、カスミには -
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2021年、19冊目は、3年連続、この時期に読む(文庫の刊行ペースがそぅなのか?)、赤松利市。
千葉の海に面した旅館、望海桜。その総支配人が殺された。犯人は、従業員と元従業員の六人。
『藻屑蟹』『鯖』そして、今作が『らんちう』。水性生物括り。と言う冗談は、さておき、今作も社会の歪みの狭間や、下側にいる人々が展開の核を成す。
まづ、驚いたことに、全編そのパートの主人公の主観、一人称で描かれている。
「人はそれぞれ正義があって」何て、どこかで聞いた歌詞を思い浮かべたりもするが、六人の犯人達のベクトルが合致した先に「総支配人殺害」があったのだろう(もちろん、異分子的存在もあったし、果たす役割