赤松利市のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
第一回大藪春彦新人賞受賞作が、住所不定作家のものだったという事で興味が湧いて。
受賞作は、正確には第一節部分が該当するもので、短編だったとあとがきにあたる選評で知りました。
続く第二節から第四節(電子書籍で先行配信後加筆修正)でかなり厚みがついて読み応えのあるものになっています。
原発周辺の諸問題が詰め込まれ、そのダークな部分を詳らかにしているのでフィクションとは言え、各所から問題視されそうであります。
が、著者の現場経験が生かされていると思うと、なかなかにスリリングです。
第一節の終わり方はショッキングで確かに大藪春彦がニヤリとしそうなものです。しかしその先の物語がもっともっと面白い。主人公やその周辺の人物たちのキャラが白黒付けにくくなっていく流れはページを捲る手を止めさせません。
最後には組織の上層部がそんなに物分かりがいいの?と、正直思ったけどマキに比重をかけたのでま、納得かな。
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Posted by ブクログ
これがデビュー作だなんて本当ですか!?
文章がめっちゃ上手かったです!
テーマは東日本大震災です
そのためトラウマがある人は読むのを控えた方が良いと思います
福島原発の除染作業を描いた物語でした
金と利権について大変リアルに描かれています
それに翻弄される一般市民たちの哀れな末路がしんどい…
震災で1人生き残った者の苦悩についても触れられています
全員がこうなるわけではないけれど、少なからずの人達が自暴自棄になったと思わされる説得力がありました
大きな金か動く場所には多くの闇が蠢いている
それをしっかりと描かれています
映画化されるようですね
どんな作品になるのか期待です -
Posted by ブクログ
ネタバレ石巻や福島といった被災地でのビジネスを行った著者のエッセイ。
土木作業や除染作業での壮絶な体験が述べられている。
仕事も辛いが、とにかく人間関係が酷い。
出てくる登場人物のほとんどが性格が悪い。
しかし、妻と娘に送金するために収入を失うわけにはいかない。耐えなければならない。
その悲哀が『昭和枯れすゞき』の歌詞や桜を見る会問題で答弁した官僚への同情という形で示されている。
様々な愉快というよりは不愉快という方が明らかに適切な登場人物の中で、印象的なのがベテラン土木作業員Kだ。
彼は幼稚かつ陰湿な人間で、著者を虐めて苦しめている。
土木作業をしていた頃の著者にとって最悪の存在だったK。しかし除染作業のため福島に移った著者が重機オペレーターを探した時には、優秀なオペレーターとして救世主となるのだ。
とはいっても性格が悪いのは変わらない。実際、寝タバコで宿舎(禁煙)に設置されていた新品のカーテンを燃やすなど、トラブルの元になっておる。
Kは性格が悪い。人格破綻者と言っても過言ではないレベルで、口の悪さゆえにチームワークに大きな問題を抱えている。
しかし仕事ができる。万能の作業員であり、仕事が早い。段取りにも長けており、頭の回転もかなり速そうに見える。
仕事ができる人間は仕事以外も優れている。そんな通念に対する生きた反証がKなのだ。いくらできる人でもKと一緒に働きたい人間はいないだろう。
この本で特に印象的なのが著者ら土木作業員や除染作業員の悲惨な扱いである。
「おまえたちのような下賎の者を、あのお方に見せるのは目の穢れであるが、(中略)決して手を止めたり、顔をあげたりしないように。いいか、厳命しておくぞ。』
この引用文は、大名行列に出会した農民に対して、姫を見てはならぬと命令する武士の台詞ではない。
有名な女優が拡張工事中の病院に視察するに際して、スーパーゼネコンの現場所長が言い放った言葉なのである。
除染作業は差別が酷い。福島の復興にとって欠かせない彼らに部屋を貸すオーナーはほとんどいないというのだ。しかもその数少ない物件は除染アパートと呼ばれるのだという。
しかも、作業服のままでスーパーに入り迂闊に商品に触れば、「除染の人が触った」と大声を挙げられることがあるというのだから恐ろしい。
私は福島県に住んでいたが、こんな差別が罷り通っているとは思ってもみなかった。
「美しい国?日本が?この話、すべて真実」と帯にあるように人間※の陰湿さがこれでもか、と示されている。
※日本人と書こうか迷ったが主語が大きくなるため人間とした。 -
Posted by ブクログ
どんなジャンルの本でどんな毛色の物語なのか、全く情報なく読んだことが結果良かった。
男臭い漁師の世界は私の日常とは掛け離れた新鮮さがあり、一本釣り漁法の描写などが興味深く、「あぁ、へしこ食いたいなぁ。白酒は描写だけで胸焼けするなぁ。」とか思いながら楽しく読んでいた。
その矢先。
物語が3分の2くらいに差し掛かった時に急転直下。
そのまま予想だにしなかった展開に。
どっとめまぐるしく、自分の感情をどこに持っていけばいいのか分からない。
作者の特異な経歴も相まって、唯一無二の作風だと感じた。
「全員悪人」ってアウトレイジのキャッチコピーは秀逸だな、とふと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ誰しも心当たりがある、人間の心の裡に潜む汚さや黒さや醜さを抽出して娯楽性を兼ね備えた文学に昇華させている、という点において、作風は違えど西村賢太氏の著作にも通じるものを感じた。
なんだかんだありながらも結局は乗り切って収まるんかなもしかしたら…と思いきや、中盤以降の新一の壊れっぷりがこちらの予測を遥かに上回るペースで加速及び驀進し、一気に奈落の底へ落ちて破滅に至るのかやっぱり。
逆説的ながら、ある意味で大団円とも言える幕切れに違和感はないが、終盤の畳みかけるような展開は急ぎ過ぎの感が否めず、もっと紙幅を費やして丁寧に描いても良かったのでは…等と僭越ながら思ったり。
これが長編デビュー作とのことだが、著者のバックボーンあってこその物語か…と得心する、本来小説を味わうのにその情報は不要のはずとは分かりつつ。
筋半ばではあるが、5人の中国娘たちが歌い寅吉が滂沱と涙するシーンは、崇高さと清浄さにおいてピークを極めた1つのクライマックスだ。 -
Posted by ブクログ
赤松利市さん著「藻屑蟹」
著者の作品は初読みになる。
2018年、第一回大藪春彦賞を本デビュー作で受賞。
その当時62才、住所不定の作業員だったとのこと。著者の年齢と背景が凄くミステリーに感じられる。
物語は東日本大震災によって被害を受けた原発のその後の闇が描かれていくフィクション。
正直フィクションとはいえ、描かれていたものは実際に事故の裏側であった事だったのかもしれないし、少なからず形は違えど利権や欲にまみれた裏の社会ではこうした金銭が存在してたに違いない。
フィクションなのだが色んな闇を炙り出しているようにも感じられた。
物語は粗っぽさが強く、かなり強引な手腕での展開。正義感やら友情やら同情やら…
結構詰め込んで書かれている。
かなり重厚な部類のテーマと内容なのだが、全ての展開が早いためドッシリとした重厚感は感じられなかった。
自分的にはそこが少しだけ残念。
最初にも触れたが現在70才の新人って…
つくづく凄いなと感心させられる。