赤松利市のレビュー一覧

  • ボダ子(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ボーダーの娘の話と思っていたが、実際は娘よりもその父親を描いた物語。欲望に満ち、傲った人間が堕ちていく様は、多くの小説の題材としてあるが、東日本大震災の復興の裏側が覗かれ、奇妙な生々しさに溢れている。悲惨な内容を滑稽さで中和しているが、ノンフィクションの部分もあるということで、主人公の周りの人間が不憫に思えてしまった。

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    2022年04月15日
  • ボダ子(新潮文庫)

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    お金があったって、幸せになれるわけじゃない。
    もっともっと、そうやって欲を出して失敗する。

    無責任な大人はたくさんいるもんだ。
    相手のことを慮れずに、自分の欲には貪欲なまでに溺れる。

    けどしっぺ返しは必ず起こるよな…とこの小説を読んで思った。
    相手が怒っていることも、自分には関係のないことだと決め込んでいたら、
    当然イラつきしか覚えないわけだ。

    いつまでも現実と向き合えない主人公には終始不快感しか持てなかったが、
    こんな大人はすぐ近くにもいるのでは…と考えさせられた。

    ボダ子のような子どもが、ひとりでも減ることを祈るばかり。

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    2022年03月07日
  • 鯖

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    なかなかの胸糞な結末が待っているが、まあ因果応報感も否めないので、納得できる。終始陰鬱な感じだが、引き込まれて読み切った。魚の匂いやアンモニア臭まで感じられる本だった。

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    2021年12月07日
  • 下級国民A

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    03月-09。3.0点。
    赤松利市本人の半生記。
    「鯖」を読んだとき「ナンじゃこりゃ」と思ってから、全て読んでいる。凄い人生を歩んでいたんだな。
    ある著作にも、同様の内容があった。モデルは著者本人だったんだなと再認識。

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    2021年03月09日
  • 下級国民A

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    ネタバレ

    もともと会社経営で羽振りがよかった著者が食い扶持を失って福島へ、土方に混じって働くことになる。土方たちの単細胞ぶり、そのくせ競争心が高いのでみんなでスマホゲームに熱中する、スマホゲームやらないと怒るなど。性格的におかしいのもいて、いじめられるが耐える、家族に仕送りするためのカネが必要なので。
    最後は自分が責任者の立場になったときにひどい業者に一杯食わされて、真面目な仕事仲間のことも見捨てて放り出してトンズラするに至る。著者がひどい人というのではなく、カネが欲しいゆえに無理をすると危ない橋を渡らざるをえず、そのうちにそんな状況に追い込まれてしまうというか、そういう世界が福島界隈にはあるよというこ

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    2021年01月22日
  • 下級国民A

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    変わった雰囲気の文章です。
    除染作業まですることになった現場の雰囲気、仲間となる人たちの育ちを感じさせる描写など、なかなか壮絶なことが淡々と書かれています。

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    2020年09月15日
  • 鯖

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    前評判に戦々恐々としながら読み始めたが、まさかまさかの一風変わったお仕事小説…と思いきや、中盤以降は急転直下で狂気の世界へ。何でもありのノワール小説だが、デフォルメされたキャラクターの人物造形は人間の浅はかさや傲慢さ、空虚さを映し出す鏡のよう。長年の経験に裏付けられた漁師団の漁猟技術が最新鋭の魚群探知機に容易く打ち砕かれる様子など、覆せぬ現実の冷淡さはあまりに無情。シンイチの変貌ぶりといい、身に余る贅沢は身を滅ぼすとはこれ正に。著者62歳時のデビュー作とのことだが、文壇の世界では人生経験に勝るものなしか。

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    2020年09月13日
  • 藻屑蟹

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    1月-6。3.0点。
    震災後の福島原発。近隣でパチンコ店長の主人公。
    幼馴染みに誘われ、原発関連の仕事を始めようとする。

    この作家らしい、転落もの。
    デビュー作だけあって、ライトな感じ。

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    2020年01月13日
  • 藻屑蟹

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    『3.11』から6年後の福島。パチンコ店店長として、なんの希望もなく細々と暮らしていた木島は、原発の保守点検を請け負う会社で成功を収めている友人・純也に誘われ、高額な報酬を手にするが…。原発の事故で生活を奪われた人々、原発に関わるあらゆる企業、除染作業員を狂わせる何十、何百、何千、何億という金、金、金。そのドス黒い渦の中に木島も取り込まれていく。これは現実に起こっている事なのか?実際に除染作業にも携わった、住所不定無職の62歳の作者が漫画喫茶で書いたという本作、強烈としか言いようがない。

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    2019年12月21日