2021年、19冊目は、3年連続、この時期に読む(文庫の刊行ペースがそぅなのか?)、赤松利市。
千葉の海に面した旅館、望海桜。その総支配人が殺された。犯人は、従業員と元従業員の六人。
『藻屑蟹』『鯖』そして、今作が『らんちう』。水性生物括り。と言う冗談は、さておき、今作も社会の歪みの狭間や、下側
...続きを読むにいる人々が展開の核を成す。
まづ、驚いたことに、全編そのパートの主人公の主観、一人称で描かれている。
「人はそれぞれ正義があって」何て、どこかで聞いた歌詞を思い浮かべたりもするが、六人の犯人達のベクトルが合致した先に「総支配人殺害」があったのだろう(もちろん、異分子的存在もあったし、果たす役割もある)。それでも、「殺意」「動機」と言う点では十分とは言えない。
第三章で「参考人」達の供述に入ると(もちろんココでも、主人公の一人称で語られる)、今まで見えていなかった側面が見えてくる。
とてもサクサク読める。一部を除き、登場人物達の考え方も納得できる。華美な情景描写も、技巧的表現もほぼなく、ソリッド感さえある。そして、きちんと直前で減速して、第三章の切り替えポイントに進入する。造りは好みのタイプ。少し大雑把な言い方だが、かなり序盤から「怪しい」と自分が思った人物、事象がネックになってて、「やっぱり」的なトコでクライマックス。しかし、ソコで「ランチュウ」をそぅ絡めてくるとは。そして、終章でさらに1/4ひねり加えてきた。★★★★☆評価は決まり。
『奇形は誉れ』そのためには、真っ当な者は躊躇なく葬る。さもなくば……。