赤松利市のレビュー一覧

  • 藻屑蟹
    苦しい小説だった。
    いろいろなものにがんじがらめにされて、息苦しかった。
    でも、最後、主人公の怒りに満ちた思いが噴出したとき、涙が出た。
    心の中で拍手喝采した。

    読んで良かった。
    薄い文庫1冊だけど、濃密な読書時間だった。
    たくさんのことを学んだし、私には起こりえない人生を疑似体験できた。
    これぞ...続きを読む
  • アウターライズ
    東日本大震災後の東北で
    2度目となる規模の大きい地震、津波が発生。
    その後復興と共に「東北国」として独立国となる。

    理想論だと言われればまぁそうに違いないのだけれど
    夢や理想の未来を語れる国はシンプルに素敵だなと思った。
    各々が「いま自分に何が出来るか」を考えながら
    それを実行に移し生活出来るって...続きを読む
  • らんちう
    かなり面白かったけどグロテスクだな…
    読んでて色々思ったけど
    「昨日と同じことを今日もしていたい」
    的に生きてると、活動範囲狭まっちゃうし嫌なことに対する対抗策も減るよなぁ…とは思いつつ
    私は人間関係狭めの終わりかけみたいな中小企業のコミュニティも帰属できればいいものだと感じるのでなんとも…
  • 救い難き人
    救い難き人。
    どうしようもない悪人ばかり登場するので、いい加減こちらの感性が麻痺してくるような感覚に陥ってしまう。
    パチンコ屋を舞台に在日二世のマンスは、母の「恨の気持ち」を情動にして、中学の先輩で悪人のノブと共に父親への長い復讐を画策する。
    次々と金に固執する男達の悪事の連続に、464ページの長さ...続きを読む
  • 救い難き人
    お笑いのネタでいうツカミが、読書人生一のディープさ、実生活に影響するほどの打撃をもらった後は無駄な贅肉が一切ない美しい文章運び。筆者は人の心を分かりすぎているがしかし、人間でありましてや神ではない。飴や鞭を巧みに与えられて、読者はどんどん引き込まれていく。有象無象の世界を文学は芸術に仕立ててしまう、...続きを読む
  • 救い難き人
     タイトル通りの救い難いクズが自滅していくストーリーは著者の得意分野だ。
     何をもって金しか愛せないクズに堕ちていくかを、ひとりの人生に描き出している。

     在日二世、朴マンスは中学校に入っていじめの対象になった。
     そこを救ったのが、貧困団地の井尻だった。
     マンスは井尻に月10万円を払い、学校で...続きを読む
  • 下級国民A
    人というものはいろんな重み付けで測られるものではあるが、その場のハッタリや腕力だけが物をいう世界があって、本書は間違ってそんなところに中年を過ぎてから入り込んでしまった男の悲喜劇。無論やられっぱなしではなく、筆者なりの打算や世渡りも描かれるが、読者からするとどうにも「取らぬ狸の〜」と感じてしまい、救...続きを読む
  • 救い難き人
    全く知らない世界で生きる彼らに感情移入できない。
    が、それが面白い。

    主人公マンスの小学から成りあがるまで描かれている。
    井尻、マンスと同じ中学校の先輩。
    大人になったマンスの周りには井尻の息のかかったメンバーで固められている。
    マンスはこのことに気付いていない。
    孤独なマンス。でもそれに気づいて...続きを読む
  • 藻屑蟹
    原発の除染作業員の経験がある赤松利市の大藪春彦新人賞受賞作。デビュー作なのに文章力、表現力がある。原発の廃炉作業にともなう利権に群がる人々の群像劇かと思ってよみすすめたら、最後は市民の矜持が勝つという話だった。
     長年、原発の作業に従事して被曝、そして自殺。
    原発の除染に関わる利権を手にして、疑心暗...続きを読む
  • 藻屑蟹
    途中暗くて心が折れそうになってからの最後のスピード感、すごかった。
    そして作者の経歴を知らず(激レアさんも見てたのに気付かなかった。。)、びっくり。
  • 東京棄民
    女性作家さんが続いて、久しぶりに赤松さんが読みたくなった。(軽めなやつ)
    とても面白くてあっという間に読んでしまった。
    東京株という強悪な新型コロナウィルスが蔓延し、東京から人が他県へ避難するという話。そして、その東京に取り残された人達の物語。
    主人公の男性が普通の人であるのが良かった。いかにも小説...続きを読む
  • 鯖

    なぜか突然、この本の旬は1月なのではという気が強くして、読み始めた。『藻屑蟹』を読んでから3年と10ヶ月、ずっと読むタイミングを計っていたこの本、ようやく読めた。

    いやぁ、なんか……かなりヤバいものを読んでしまった。この本にはR指定(と今は言わないのかな)が必要では。でも読書の醍醐味である、貴重な...続きを読む
  • 鯖

    人間の脆さ、残酷さ、欲深さをさらけ出した話。
    能力の無いものは淘汰されるという現実をただ読者に突きつけている。

    しかしその酷さとは裏腹に文章は読み心地が良く、欲望に飲まれていく描写でさえ、そんな人間に対する情を感じる不思議な作品。

    赤松利市作品は初めてだったが、他も読んでみたくなった。
  • ボダ子(新潮文庫)
    「62歳、住所不定、無職」の大型新人、赤松利市氏。新潮文庫2月の新刊です。
    出てくる人物は全てクズ。特にボダ子(境界性人格障害 borderline personality disorder)の父親である主人公が下衆の極み。復興バブルをあてにして石巻で土木事業に関わりますが嘘とごまかしで失敗して、ひ...続きを読む
  • 東京棄民
    この方のほかの作品を読んでいたので、主人公が死んだり悪い感じになったりするではないかと・・・はらはらしながら読んだ。
    イッペイよかったね。
    有事が過ぎれば、日常が帰ってくる。
    日常は視野を狭め、問題を見ないことにして平安をめざす。
    どの立場にあってもそう。そんな中でタハラの今後に期待を感じた。
  • エレジー
     バブル末期の平成初期年代。
     場所も違った場末の風俗にも、その不景気の予兆が訪れる。

     新宿二丁目では、もう何人も”飛んで”いる。
     北海道の寂れゆく離島には東南アジアからの女が流れ着く。
     大阪の道頓堀に子どもが捨てられる。

     彼ら彼女らの悲哀が込められた、平成初期の風俗街に焦点を当てる。
    ...続きを読む
  • 風致の島
    カッコいいヒーローが存在しない赤松作品。
    負け組ビジネスマンが奮闘、企み、騙し、
    南の島でのおぞましい日常。
    最高。
  • 饗宴
    赤松利市さんの世界。読むごとにおぞましさが増しドキドキ。結末前後にもう一波乱あれば……‼
    次のおぞましい世界にも期待。
  • らんちう
    2021年、19冊目は、3年連続、この時期に読む(文庫の刊行ペースがそぅなのか?)、赤松利市。

    千葉の海に面した旅館、望海桜。その総支配人が殺された。犯人は、従業員と元従業員の六人。

    『藻屑蟹』『鯖』そして、今作が『らんちう』。水性生物括り。と言う冗談は、さておき、今作も社会の歪みの狭間や、下側...続きを読む
  • 藻屑蟹
    多額の金を受け取った木島は、その後崩れていくのかとドキドキした。
    脱原発に傾けさせないために、原発避難民に多額の賠償金を渡すという点、ホントだったから怖いけど、、どうなんだろう。