赤松利市のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
人間とはまったく厄介な生き物だ。本書を読んでつくづくそう思った。
「一号機が爆発した。セシウムを大量に含んだ白煙が、巨象に似た塊になって、ゆっくりと地を這った」
本書の書き出しであるが、読み終えた後、あらためてここを読んでみると、著者の物語を紡ぐ巧みさにあらためて気づかされる。
2011年、起こるべくして起こった原発の爆発は、原爆のときのような即死者こそ出さなかったものの、人々の日常を大きく変えていった。本書は、爆発によって産み出されたもやもやとしたものによって、いつしか人生を変えられていく人々の様子を、高いところで浮いている権力者でなく、地面の上で生きている普通の人々に焦点を当てて描 -
Posted by ブクログ
東北で大震災、津波が起こり、原発が爆発した。その光景をテレビで見ていたパチンコ店の店長、木島は世の中が変わると思った。彼はその変化に期待し、愉快な感情さえこみ上げた。
そして、数年後、彼に訪れた大きな変化。彼は崩壊した原発の利権に携わることになり、大金も手に入れた。身近な人が亡くなることもあった。自分じゃ理解できない事件にも巻き込まれた。
変わったのは木島だけじゃない。避難民たちは賠償金額の大小に嫉妬し、一喜一憂する。「立入制限区域に住んでて良かったね」、「他の地震の被害者じゃなくて良かったね」、「家族が死んで良かったね」。陰ではそんな言葉さえも飛び交う。
タブーとも言える原発避難民の格 -
Posted by ブクログ
仄暗いイラストに赤字で大きく「ボダ子」と書かれたインパクトに惹かれて読み始めた(著者近影のガラの悪さ…笑)。
壮絶。まともな人間が桜井さんしか出てこない。
主人公(作者)に至っては初婚のエピソードで既に「あー…」と言いたくなる(元嫁も大概なのだが)。
もしかしたら主人公には人を見る目が無いのかもしれない。一番の被害者はもしかしたら本妻かもしれないな。
奥田英朗先生の「最悪」も読んでて辛かったが、これは比ではない。実話だというのも驚きだ。
女性作家の作品ばかり読んでいたので、男性目線の野望、家族愛、悲哀、肉欲がすごい衝撃的だった。
こんなにどん詰まりで辛いのに、読む手が止まらなかった。