赤松利市のレビュー一覧
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赤松利市『鯖』徳間文庫。
赤松利市の作品は『藻屑蟹』に続き、2作目。何とも恐ろしいノワール小説。やはり、面白い。
冒頭の得体の知れない薄汚れた漁業団『雑賀衆』の描写に一体どんな展開になるのか興味深く、読み始めた。この物語は成功を描いているのかと、一瞬微かな光が見えたのだが、物語はどんどん有らぬ方向に向かい、最後には世界の全てが焼き尽くされたかのような真っ暗闇のどん底の絶望が待ち構えていた。
時代の波にあがらい、頑なに一本釣りを続ける『海の雑賀衆』。65歳の船頭・大鋸権座を筆頭に、66歳の加羅門寅吉、56歳の鴉森留蔵、55歳の狗巻南風次と高齢者に加え、35歳の水軒新一の5人が終の棲家に決め -
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メッセージ性が強く、ストーリーとしても申し分ない。文章は荒削りだが、そのことがかえって切実さを感じさせることもあり、小説は技術より内容が大切だと改めて思わされる。最後の一行は、こんな終わり方があるのかとぞくりとなった。
また、作中後半に以下の文がある。
「どうして世の中は、こんな風にできているんだろう。金がすべてだとは思いたくはないが、残念なことにすべてなのだ」
この言葉の重みは、市場に虐待された者にしか分からないだろう。札束の夢、ジュンの変容、金が分断を作り、それを利用する者もいる。自由社会ゆえの恐ろしさがそこかしこに散りばめられている。
原発の物語として、同時期にボラード病を読んだ。文章 -
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人間とはまったく厄介な生き物だ。本書を読んでつくづくそう思った。
「一号機が爆発した。セシウムを大量に含んだ白煙が、巨象に似た塊になって、ゆっくりと地を這った」
本書の書き出しであるが、読み終えた後、あらためてここを読んでみると、著者の物語を紡ぐ巧みさにあらためて気づかされる。
2011年、起こるべくして起こった原発の爆発は、原爆のときのような即死者こそ出さなかったものの、人々の日常を大きく変えていった。本書は、爆発によって産み出されたもやもやとしたものによって、いつしか人生を変えられていく人々の様子を、高いところで浮いている権力者でなく、地面の上で生きている普通の人々に焦点を当てて描 -
Posted by ブクログ
東北で大震災、津波が起こり、原発が爆発した。その光景をテレビで見ていたパチンコ店の店長、木島は世の中が変わると思った。彼はその変化に期待し、愉快な感情さえこみ上げた。
そして、数年後、彼に訪れた大きな変化。彼は崩壊した原発の利権に携わることになり、大金も手に入れた。身近な人が亡くなることもあった。自分じゃ理解できない事件にも巻き込まれた。
変わったのは木島だけじゃない。避難民たちは賠償金額の大小に嫉妬し、一喜一憂する。「立入制限区域に住んでて良かったね」、「他の地震の被害者じゃなくて良かったね」、「家族が死んで良かったね」。陰ではそんな言葉さえも飛び交う。
タブーとも言える原発避難民の格 -
Posted by ブクログ
仄暗いイラストに赤字で大きく「ボダ子」と書かれたインパクトに惹かれて読み始めた(著者近影のガラの悪さ…笑)。
壮絶。まともな人間が桜井さんしか出てこない。
主人公(作者)に至っては初婚のエピソードで既に「あー…」と言いたくなる(元嫁も大概なのだが)。
もしかしたら主人公には人を見る目が無いのかもしれない。一番の被害者はもしかしたら本妻かもしれないな。
奥田英朗先生の「最悪」も読んでて辛かったが、これは比ではない。実話だというのも驚きだ。
女性作家の作品ばかり読んでいたので、男性目線の野望、家族愛、悲哀、肉欲がすごい衝撃的だった。
こんなにどん詰まりで辛いのに、読む手が止まらなかった。