この巻の見所はたぶん、いよいよ始まったB級ランク最終戦なのだろうが、私が個人的に挙げるなら、ヒュースが千佳に投げかけた「千佳は人が撃てるんじゃないか?」からの千佳の背中をそのヒュースが押した所に尽きる。
作中で栞が言っていたように、ヒュースがなかなかズバズバ言うので、賛否両論分かれるところでは
...続きを読むある。けれど、この問題は玉狛第二にとっては避けては通れない問題であり、いつかはきちんと向き合わなければならない時が来る。
千佳の事情や性質を知っているだけに修を始め、玉狛支部の人間は今まで面と向かって千佳にその話題は持ちかけられなかったのだろう。
それは優しさゆえに。玉狛の人間は優しいから。
もちろん人が撃てないなら撃てないなりに、これまでいろいろ策を講じてチームワークで乗り越えてきた。玉狛第二の皆がそれぞれの役割を果たし、力を合わせ、仲間を助け助けられてきた。だからこそここまでのしあがって来られた。千佳も充分に貢献している。だからこそヒュースが付き合いが短いにもかかわらず、「千佳は仲間のために自分を駒として使える人間だ」と言い切ることができた。
けれども、ここから先は今までのようにはいかない。
誰かが千佳に「人が撃てない」という問題と逃げずに向き合うよう、示唆しなければならなかった。今の玉狛メンバーの中で唯一それができるのがヒュース。彼しかいなかったと思う。
それはヒュースが近界民であるということもあるが、それだけではない。それなら游真にも当てはまる。二人とも実際の戦場で戦闘を繰り広げ、何度も死線をくぐり抜けてきた経験がある。そんな彼らの言葉は重みが違う。ではなぜ游真ではないのか?游真もまた仲間には優しすぎるからだろう。そうでなければ、とっくにどこかで口に出していただろう。
近界に実際に遠征がかなったとしたら、赴くその地は本当の敵地、正真正銘の戦場である。
「千佳が人を撃てなければ、修や游真が死ぬこともありうる」
ヒュースが言ったことは誇張でも何でもなく真実なのだ。
千佳がヒュースの言ったことを受けとめて「私もちゃんと答えたい」と決意していたことが本当によかったと思う。まだまだ道は険しいけれど、千佳のこれからの成長に期待したい。
この巻を読んでヒュースがかなり好きになった。