香納諒一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
2007/11/4ジュンク堂住吉シーア店にて購入。
2009/10/12~10/16
京都で下宿する師井厳のもとに、なぞの男風太が現れ、父親が不始末をしでかしたので、すぐに自分と一緒に東京へ来い、と言われる。とまどいながらも風太とともに東京へ向かった厳は新宿にある角筈ホテルに投宿することに。ホテルの近所の蔦屋敷で死体を発見してしまった厳は、やくざ、中国マフィアなどとの騒動に巻き込まれる。
一夏の青年の成長を描く物語であるが、見事なハードボイルドミステリ。家族に縁の薄かった厳が家族というものを考え直し、友人とは何か、恋人とは何か、など様々な人間関係を通して大人になっていく姿が描かれる。ハルさん -
Posted by ブクログ
久々に、「面白い」と思える文章を書く作家さんに出逢えました。
全部の書き方が、出し惜しみしてて悔しいくらい長編が気になる。
個人的に、[世界は冬に終わる]という話が1番好き。
『世界は冬に終わる そんな気がしていました』のフレーズが大好き。
[タンポポの雪が降ってた]
昔の短い恋が終わった春、タンポポの綿毛がまるで雪のように舞っていたー…。懐かしい人からの手紙で、あぁ、確かにあの恋の終わりはタンポポの雪が降っていたのだと感傷にふけた。
[大空と大地]
失恋した自分を慰めてくれたのは、趣味で行った旅行先の空ではなく、いつもと同じ東京の空だった。
[世界は冬に終わる]
田舎から都会に出てきた郵便局 -
Posted by ブクログ
中編小説とは、長編でもなければ短編でもない。そうつくづく思わせるのが、このキャンパー探偵シリーズである。長編小説ほど人物に入れ込める時間は読者に与えられないものの、短編小説よりは人間の個性が印象深く刻まれ、凝結された個々の人生の長さや深さとが体感できる。長編小説に書き換えることができるのではないかと思えるほどに、複雑にすれ違ったり、交錯したりする人間たちの人生模様が、探偵・辰巳翔一の眼を通して、あたかも一時的に垣間見る風景みたいに、いともあっさりと通り過ぎてゆく。
その一瞬に込められた人生の悲喜劇を目撃しては去ってゆく、探偵そのものの存在すらも儚く思われ、一時的な幻の風景みたいに思えてし -
Posted by ブクログ
辰巳翔一がこのようにシリーズ化されるなんて、かつての『春になれば君は』『虚国』ではもちろん想像だにしなかった。辰巳は固定した事務所で活躍する探偵というより、訪れた土地で副業的に巻き込まれるタイプの探偵と言う印象。これを決定づけたのが『虚国』であった。廃墟カメラマンが主業……と呼べるかどうかは収入の多寡から計れば疑問があるにせよ(苦笑)……だが、辰巳翔一イメージには、車を使った旅するハードボイルドのイメージを既に埋め込まれているような気がする。
だからこうして連作中編小説集となる定めは予期すべきことであったかもしれない。かつてより香納諒一は短編小説の名手として個人的には高く評価しているつも