岩井三四二のレビュー一覧
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■毛利元就のその初陣から隠居するまでの、10の場面での決断と行動。いわば「どうする元就」。
■小説なので非常に読みやすい。戦術検討や合戦の様子がリアルに描かれている。
■亡兄の子、幸松丸を支える後見役の多治比元就としてスタート。
■大江広元の子孫を称する毛利家も一族や重臣が多い。主家に対して、臣従する者もいれば蔑ろにする者もいる。
■高橋家を滅ぼし領土を拡大した頃から重臣たちがその実力を認めていく。
■忍びや斥候を使って情報を集めうまく活用する。情報運用の才能を感じさせる。
■志道広良という良き相談相手がいたことも大きい。
■尼子攻めの撤退戦で殿軍を命令され、九死に一生を得るなど苦労もしたし、 -
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したたかに生き抜く
戦国時代が終わり天下泰平の江戸時代へと時代が大きく変化する中、翻弄される人々の姿を描いている。
この作者の描く登場人物は、みんな江戸時代の武士のように忠義や義理にガチガチにとらわれていない。生き生きとしていて どこかユーモラスでひょうひょうとしていて 実にいい。
主人公たちは、最後に主家がつぶれて浪人してしまうが、農業も営んでいるのでそちらの方で自活してゆく。
現代に置き換えると、会社がつぶれて失業してしまうが、手に職があるのでそれを元手に暮らしてゆく という今も昔も変わない真理を実感した。 -
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忠臣蔵といくらか似通ったとこ
賢明とはいえない主君を持ったばかりに、お家の崩壊 追われる浪人生活 主家再興のための地味な努力 と忠臣蔵といくらか似通ったところがある。
前半部分はいくらか地味であったが後半部分の話の盛り上がりは、なかなかのものである。もっともこの作者の以前の作品にあったようなほろ苦いユーモアは影を潜めているところは残念である。
作品後半に南朝方と接触した際、赤松党も南朝方も絶望的な努力を長年尽くして来たので、手段が目的化してしまいもし本願がかなったら呆然としてしまうだろう という述懐の部分には感銘を受けた。 -
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久々に最初から入り込める小説を読む。
テンポよく引き込まれる文章に前に読んだ本もこんな感じだったのでこの人の作品と自分は相性がいいのかもしれない。
瑞石は浅井家の男児を匿い雲石と名乗らせ医学を学ばせるが、雲石には堂々とした態度でバレたらその時考えると雲石の不安を意味のないものとしていう。
そして瑞石の人間らしさや医学を志した動機、そして危険を覚悟で匿ったのは何故か雲石と別れる前日に雲石に語る。
浅井家から特別な配慮か恩を返したのかと思っていたのだけど瑞石の優しさと後悔から引き受けたことを知り動じない人プラス優しい人、顏は怖いが根はいい人な瑞石に今までの行動が全て頼もしい人に変わっていった一行 -
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戦国時代、乱世に何故連歌のようなちょっと優雅なものが・・と不思議に思っておりました。「武士はなぜ歌を詠むか 鎌倉将軍から戦国大名まで (角川叢書)」と本書である程度、理解出来たような気がします。連帯感と一種の高揚感が連歌で得られるのですね。
著者のほかの作品と同様、主人公は滑稽で人間的、時に悲しい存在ですが・・・。最後には・・。
師匠にあたる宗牧は実在の人物だそうで。不勉強で知りませんでした。そのまた師を辿っていくと古今伝授で有名な宗祇、東常縁まで行き着くのだとか。いやいや。岩井三四二さんはピンポイントで興味持っていることをテーマにして下さります。(気づくのが遅すぎますが。すみません) -
Posted by ブクログ
室町後期の文亀二年(1502)、和泉国逆巻庄に、京の大寺より一人の青年僧・清佑(せいゆう)が、荘園の新代官として赴任してくるところから、物語は始まる。
前任の代官からは、「村の者どもをあなどってはならん。といって、恐れてもいかんがな」と心得を教えられ、寺の老師からは「村の者どもを愛子(あいし)と思うて撫育するように」とも教えられて、理想に燃え、良識と学識、祈祷の力を武器に、代官職を務めようとするが…。
食うや食わずの生活を贈り、どんな手を使っても生き延びることを第一とする村人たちは、一筋縄ではいかない。
年貢の徴収、公事(裁判)や対決(公判)、盗みの取調べ、干ばつや洪水の祈祷、地所争い、