岩井三四二のレビュー一覧

  • 田中家の三十二万石

    Posted by ブクログ

    この作品も、良い意味で期待を裏切られた作品だった。はっきり言って、田中吉政という人は、「名前は知っている」程度で、あんまり歴史的に偉業を成した人ではないので、物語として、面白いものにはならないだろう、と髙を括っていたんだけれど、いやいや、面白い。人間的にも、面白い人だった。

    0
    2025年04月07日
  • 天命~毛利元就武略十番勝負~

    Posted by ブクログ

    大きな天災が発生するたび、人は生かされているものだと思う。九死に一生を得て、天命を知り、その道を進む、といえば、かっこいいのかもしれないが、本当に天に求められた道だったのか、疑問も感じる。
    元就を何を目指したのだろう。他家の顔色を気にすることなく生きていける家の確立。最期の言葉からも家を守ることは大切だったと思う。一方で、晩年、寿命と競るかのような覇権的な行動は自分の知略の実験場でしかないように思え、何か悲哀さえを感じる。毛利家は、その後、何度も歴史の転換点で大きな役割を負っていく。それを思うと藩祖ともいうべき元就の生涯には興味を持ってしまうのであるが。
    全般的に面白いが、1テーマ毎、人の機微

    0
    2024年08月24日
  • 鶴は戦火の空を舞った

    Posted by ブクログ

     空に魅せられた男の物語。飛行機が実用化され、軍隊にも導入され始めた時代が舞台である。
     
     日本陸軍の操縦訓練生である錦織英彦中尉は、その類まれな体力と視力を生かし見事な操縦センスを発揮した。そして日本の第一次世界大戦参戦で、ドイツ軍の青島(チンタオ)要塞攻撃にも参加する。しかし、ずけずけものを言う性格が災いし、上司に疎まれ任務から外されてしまう。

     空への憧れを捨てられない英彦は、フランスでピロット(戦闘機乗り)になった先人のことを知り、義勇兵としてフランスに渡る。アス(エース)を目し、ドイツ軍に挑むことになる。

     作者の岩井三四二氏は時代小説で有名な方だが、こういった近代物も非常に面

    0
    2024年07月14日
  • 村を助くは誰ぞ

    Posted by ブクログ

    1美濃国で尾張との国境に居を構える地侍。2美濃国の危機に発せられた密使。3密使に強請られる伊勢神宮の御師。4やはり尾張国に接する美濃国平田西荘に住む百姓。5それとは逆の、尾張側の村娘。6土岐家に嫁いだ斎藤道三の娘・帰蝶の傍近くで暗躍する甲賀くノ一。1~6それぞれの物語は、斎藤道三の周囲を描いており、戦国時代の過酷さを浮き彫りにする。そのどれもが大団円ではなく、人々のしたたかさと悲哀が伝わる連作短編。「那古屋小判金」の、自国・美濃にも、敵国・尾張にも組できない地侍の一発逆転劇が面白かった。

    0
    2024年07月11日
  • 三成の不思議なる条々

    Posted by ブクログ

    関ヶ原の戦い&石田三成を描いた本としてはかなり構成が斬新で面白かった。三成が生きたその当時を描くのではなく、後世から振り返り新たな輪郭を浮き彫りにしていくという斬新な物語にいつのまにか惹き込まれていた。
    何も知らない町人が厳命を受けて三成についての話を全国の当事者たちに訪ねて回る中で、次第に三成の人となりが浮かび上がってくる。
    語り手も勝者や権力者でなく、様々な陣営のあらゆる立場の者たちだからこそ飾られてない関ヶ原の戦いの様子や石田三成の性格が語られるのが面白い展開である。

    0
    2024年04月14日
  • 津軽の髭殿

    Posted by ブクログ

    大浦為則の娘と婚姻し大浦家に養子となることで大浦城を手に入れる。その後、自らの手腕で領土を拡大するも豊臣秀吉の天下統一事業を目の当たりにし臣従する。大浦氏を大名にし、幕末まで続く弘前藩(津軽藩)の藩祖となる津軽為信の一代記。

    0
    2023年09月23日
  • 霧の城

    Posted by ブクログ

    思い出しながらの感想。
    読んだのはかなり前です。

    秋山信友、、
    全然イメージにない感じの描かれかたでした。
    猛将ってイメージが強かったんですよね。
    完全にゲームの影響ですが。

    いや、ラストはほんとに悲しい終わりでした。
    戦国時代って華々しくもあり虚しくもありますね。

    0
    2023年06月27日
  • 銀閣建立

    購入済み

    国宝 銀閣寺

    時代小説としての面白みよりも、職人史 寺社建築史としての面白みのほうが勝っている作品である。国宝銀閣寺の外見がどうもチグハグな理由もよくわかった。
    主人公の家庭内の悩み 室町時代末期の荒れた世の中 無理な取り立て 等の要素も加えているが、やや中途半端かな。オチの部分の地獄極楽の部分も今ひとつ腑に落ちない。

    0
    2023年06月04日
  • 天命~毛利元就武略十番勝負~

    Posted by ブクログ

    名将毛利元就が中国10カ国の太守になるまでに経た勝負どころ10場面を中心に元就の一生を描いている。知略、胆力を活かした謀略を駆使し、版図を広げる力量は凄まじく学ぶべきところが多い。謀多きは勝ち、少なきは負け。

    0
    2022年07月28日
  • 室町もののけ草紙

    Posted by ブクログ

    室町時代に興味津々なので、つい手が出てしまった一冊。ぶくろぐには登録していたと思っていました。

    狩野派が絵師として天下をとる、ずっと前。正信のお話がとても好き。このルートでいくのかと思いきや、日野富子と彼女の周辺が描かれてゆく。
    現在では日野富子や将軍の跡継ぎ争いが応仁の乱の原因とは言われなくなっていますが、こちらも最新の説をとりあげつつ人々の機微や思いが綴られています。

    なんだかとても好きなお話ばかりで、読み終えてから他作品を検索しまくりました。ぼちぼち揃えて読んでいます。

    0
    2022年03月01日
  • 崖っぷち侍

    Posted by ブクログ

    厳しい戦国の世ではあるが、登場する人達は、たくましく未来に向かって生活している。ああ、自分も頑張らねばと、読み終わって思う。おばあさんの一言一言が、現状を打破する知恵になっているのは、面白い。

    0
    2022年01月15日
  • 城は踊る

    Posted by ブクログ

    地侍として城攻めに参加すると、こういう感じなのかと、妙にリアリティがあった。戦で生き抜くってことは、覚悟と運が要るってことを教えられた。

    0
    2021年09月18日
  • 絢爛たる奔流

    Posted by ブクログ

    角倉了以。
    名前は見たことがあるのです。確か秀吉の頃?何をした人?そもそもカドクラだと思い込んでいたし。
    正しくはスミノクラ、江戸初期(近い!)の京都で茶屋四郎次郎、後藤庄三郎らと並んで「京の三長者」と呼ばれた人物でした。元々角倉家の商売は土倉(質屋・金貸し)ですが、了以はツルハシと綱を持った木像が残されてる様に河川改修~水運業が有名で、この物語も彼が行った山城の大堰川、駿河の富士川、そして京都の高瀬川の開削の話です。
    同じように川の改修を扱った歴史小説に帚木蓬生の『水神』が有りますが、それと比べるとどうしても小粒な感じがします。困窮する農民を救うため私財を投げ打ち、文字通り命を掛けて用水路を

    0
    2021年06月30日
  • 戦国 番狂わせ七番勝負

    購入済み

    色々な味わい

    7人の作者による7本の短編集。いずれも不利な情勢から逆転した戦い、しかもそれほど有名でない戦い という共通点を持たせている。どの作者もそれなりに良い味を出しているが、私はいくらか滑稽味を帯びた岩井三四二の作品が一番のお気に入りである。

    0
    2021年04月04日
  • 城は踊る

    Posted by ブクログ

    安定感ゆえに、ついつい埋め草的に読んでしまう岩井さんですが、この本は面白かった。
    戦国期の上総を舞台に200人で守る城を1000人で攻め込む話です。
    主人公・神子田久四郎は10人ほどの部下を連れ攻城戦に向かう冴えない中間管理職。それが借金で調達した兵糧の減りを心配したり、上の連中の思惑に振り回されてオタオタしながらも頑張るというのもいつもの岩井さんのパターンです。
    でも、ほぼ全編を通して描かれる攻城戦が冴えています。井楼(敵陣を偵察/攻撃するために材木を井桁に組んで作るやぐら)を建て衝車(先端をとがらせた杉の丸太を台車に載せた物)を門にぶっつけ、数と力で攻める攻城軍。地の利を生かし、間道を使っ

    0
    2021年02月11日
  • あるじは信長

    Posted by ブクログ

    信長が前面に出る話しでは無く家臣達から見た信長。信長を恐れながら自分の出世欲や憧れ信長を通して自分の欲望を叶えようと紆余曲折する物語。信長の性格を少しイメージしてから読むと面白い作品。

    0
    2021年01月02日
  • 一所懸命

    Posted by ブクログ

    有名武将が活躍する戦国物と違って、少し身近な人々が主人公で、丁寧に描かれていた。そうだよな、槍で刺されたら痛いよな、恐いよなぁと共感しながら読んだ。面白かった。

    0
    2021年01月01日
  • あるじは信長

    Posted by ブクログ

    初めて岩井三四二さんの著書を読んだが、たいてい主役にならないであろう人物達が生き生きと描かれていて、面白かった。信長周辺の人達の思いから、信長の影響力の大きさが浮かび上がってくる。。

    0
    2020年07月14日
  • 霧の城

    Posted by ブクログ

    2019.7.18完了
    悲しい。終わりを知っているだけに悲しかった。
    悲しかったのは終わりの部分だけ。
    終わり方は余計な描写が少なく良い。
    脚色はあろうが、話の経過は非常に読みやすかった。
    浅いともいえる。読みやすいといえる。

    0
    2019年07月18日
  • 絢爛たる奔流

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    水運業を開いた角倉了以父子。
    事業を広げ過ぎてしまう商人肌の父。息子は学者肌で造本の道楽。娘は不治の病でふさぎがち。

    父子の確執は破綻的なものではない。
    趣味の世界を手放して、一生かけてやり遂げる仕事に邁進しはじめた息子の決断の下り、こころに響くものがあった。

    序盤が退屈なので読み投げしようと思ったが、読み終えてよかった。

    0
    2017年08月21日