岩井三四二のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
文永、弘安の役と2度の元寇で活躍した肥後国御家人の竹崎季長が文永の武勲を認めてもらうために鎌倉行きを決行するドラマが圧巻だし、日本国内では鎌倉幕府の北条時宗や安達泰盛、無学祖元の存在感も面白い。そして攻め手の元のフビライ帝、耶律希亮、クドゥン、その元に面従せざるを得ない高麗の金方慶・白老爺たち、南宋の范文虎の動きまでが詳細に語られ、日本側の視点だけでなく立体的に把握できることが素晴らしい。弘安の役における台風の猛威と元軍の大敗北に至ったその描写が劇的なドラマだった。その中で季長が手柄を求めて突入していく場面がユーモラスともいうべき型破りの迫力だった。
-
Posted by ブクログ
大きな天災が発生するたび、人は生かされているものだと思う。九死に一生を得て、天命を知り、その道を進む、といえば、かっこいいのかもしれないが、本当に天に求められた道だったのか、疑問も感じる。
元就を何を目指したのだろう。他家の顔色を気にすることなく生きていける家の確立。最期の言葉からも家を守ることは大切だったと思う。一方で、晩年、寿命と競るかのような覇権的な行動は自分の知略の実験場でしかないように思え、何か悲哀さえを感じる。毛利家は、その後、何度も歴史の転換点で大きな役割を負っていく。それを思うと藩祖ともいうべき元就の生涯には興味を持ってしまうのであるが。
全般的に面白いが、1テーマ毎、人の機微が深堀されていてもよかった感はある。 -
Posted by ブクログ
空に魅せられた男の物語。飛行機が実用化され、軍隊にも導入され始めた時代が舞台である。
日本陸軍の操縦訓練生である錦織英彦中尉は、その類まれな体力と視力を生かし見事な操縦センスを発揮した。そして日本の第一次世界大戦参戦で、ドイツ軍の青島(チンタオ)要塞攻撃にも参加する。しかし、ずけずけものを言う性格が災いし、上司に疎まれ任務から外されてしまう。
空への憧れを捨てられない英彦は、フランスでピロット(戦闘機乗り)になった先人のことを知り、義勇兵としてフランスに渡る。アス(エース)を目し、ドイツ軍に挑むことになる。
作者の岩井三四二氏は時代小説で有名な方だが、こういった近代物も非常に面白い。 -
購入済み
国宝 銀閣寺
時代小説としての面白みよりも、職人史 寺社建築史としての面白みのほうが勝っている作品である。国宝銀閣寺の外見がどうもチグハグな理由もよくわかった。
主人公の家庭内の悩み 室町時代末期の荒れた世の中 無理な取り立て 等の要素も加えているが、やや中途半端かな。オチの部分の地獄極楽の部分も今ひとつ腑に落ちない。 -
Posted by ブクログ
角倉了以。
名前は見たことがあるのです。確か秀吉の頃?何をした人?そもそもカドクラだと思い込んでいたし。
正しくはスミノクラ、江戸初期(近い!)の京都で茶屋四郎次郎、後藤庄三郎らと並んで「京の三長者」と呼ばれた人物でした。元々角倉家の商売は土倉(質屋・金貸し)ですが、了以はツルハシと綱を持った木像が残されてる様に河川改修~水運業が有名で、この物語も彼が行った山城の大堰川、駿河の富士川、そして京都の高瀬川の開削の話です。
同じように川の改修を扱った歴史小説に帚木蓬生の『水神』が有りますが、それと比べるとどうしても小粒な感じがします。困窮する農民を救うため私財を投げ打ち、文字通り命を掛けて用水路を作った『水神』の五庄屋に対し、了以の河川改修は京都の民衆の為と言いつつ、しっかり店の利益や死後の名声を計算した上での事業ですから。
面白いのは了以の息子・与一の存在です。上司の無茶振りでオタオタする中間管理職的人物が主人公というのが岩井さんのお得意ですが、川の改修に店の限界を超えて巨額投資を行う破天荒な父を横目に、必死で店の存続を図る学者肌の与一がひょっとしたらこの作品の主人公なのかもしれません。
ややまどろっこしい所は有りますが、ちょっと異色で面白い歴史小説でした。 -
購入済み
色々な味わい
7人の作者による7本の短編集。いずれも不利な情勢から逆転した戦い、しかもそれほど有名でない戦い という共通点を持たせている。どの作者もそれなりに良い味を出しているが、私はいくらか滑稽味を帯びた岩井三四二の作品が一番のお気に入りである。