岩井三四二のレビュー一覧
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大きな天災が発生するたび、人は生かされているものだと思う。九死に一生を得て、天命を知り、その道を進む、といえば、かっこいいのかもしれないが、本当に天に求められた道だったのか、疑問も感じる。
元就を何を目指したのだろう。他家の顔色を気にすることなく生きていける家の確立。最期の言葉からも家を守ることは大切だったと思う。一方で、晩年、寿命と競るかのような覇権的な行動は自分の知略の実験場でしかないように思え、何か悲哀さえを感じる。毛利家は、その後、何度も歴史の転換点で大きな役割を負っていく。それを思うと藩祖ともいうべき元就の生涯には興味を持ってしまうのであるが。
全般的に面白いが、1テーマ毎、人の機微 -
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空に魅せられた男の物語。飛行機が実用化され、軍隊にも導入され始めた時代が舞台である。
日本陸軍の操縦訓練生である錦織英彦中尉は、その類まれな体力と視力を生かし見事な操縦センスを発揮した。そして日本の第一次世界大戦参戦で、ドイツ軍の青島(チンタオ)要塞攻撃にも参加する。しかし、ずけずけものを言う性格が災いし、上司に疎まれ任務から外されてしまう。
空への憧れを捨てられない英彦は、フランスでピロット(戦闘機乗り)になった先人のことを知り、義勇兵としてフランスに渡る。アス(エース)を目し、ドイツ軍に挑むことになる。
作者の岩井三四二氏は時代小説で有名な方だが、こういった近代物も非常に面 -
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国宝 銀閣寺
時代小説としての面白みよりも、職人史 寺社建築史としての面白みのほうが勝っている作品である。国宝銀閣寺の外見がどうもチグハグな理由もよくわかった。
主人公の家庭内の悩み 室町時代末期の荒れた世の中 無理な取り立て 等の要素も加えているが、やや中途半端かな。オチの部分の地獄極楽の部分も今ひとつ腑に落ちない。 -
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角倉了以。
名前は見たことがあるのです。確か秀吉の頃?何をした人?そもそもカドクラだと思い込んでいたし。
正しくはスミノクラ、江戸初期(近い!)の京都で茶屋四郎次郎、後藤庄三郎らと並んで「京の三長者」と呼ばれた人物でした。元々角倉家の商売は土倉(質屋・金貸し)ですが、了以はツルハシと綱を持った木像が残されてる様に河川改修~水運業が有名で、この物語も彼が行った山城の大堰川、駿河の富士川、そして京都の高瀬川の開削の話です。
同じように川の改修を扱った歴史小説に帚木蓬生の『水神』が有りますが、それと比べるとどうしても小粒な感じがします。困窮する農民を救うため私財を投げ打ち、文字通り命を掛けて用水路を -
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色々な味わい
7人の作者による7本の短編集。いずれも不利な情勢から逆転した戦い、しかもそれほど有名でない戦い という共通点を持たせている。どの作者もそれなりに良い味を出しているが、私はいくらか滑稽味を帯びた岩井三四二の作品が一番のお気に入りである。
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安定感ゆえに、ついつい埋め草的に読んでしまう岩井さんですが、この本は面白かった。
戦国期の上総を舞台に200人で守る城を1000人で攻め込む話です。
主人公・神子田久四郎は10人ほどの部下を連れ攻城戦に向かう冴えない中間管理職。それが借金で調達した兵糧の減りを心配したり、上の連中の思惑に振り回されてオタオタしながらも頑張るというのもいつもの岩井さんのパターンです。
でも、ほぼ全編を通して描かれる攻城戦が冴えています。井楼(敵陣を偵察/攻撃するために材木を井桁に組んで作るやぐら)を建て衝車(先端をとがらせた杉の丸太を台車に載せた物)を門にぶっつけ、数と力で攻める攻城軍。地の利を生かし、間道を使っ