眉村卓のレビュー一覧
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「聞いた事があるな」と思った本をひたすら読む期間に初めに手に取った一冊。自分が面白かったか否か、それだけでいつもは星をつけている。今回はこの本を面白かった!いや、面白くなかった!という判断を私は出来ずにいる。じんわりと胸に広がるこの感覚が感動なのか寂しさなのか、それすら分からずに本を見つめている。
奥様が亡くなる5年間、毎日書き続けてきた話を、時系列に並べてその時の状況と照らし合わせながら読む。
形式としてはものすごく分かりやすく、好みの本だった。
筆者の奥様への愛と、その5年という年月に思いを馳せて、私は私なりの感想とさせていただく。 -
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妻に捧げた1778話
著:眉村 卓
余命1年を宣告された妻に対して一日一作品、妻のために作品を綴る。そして妻に向けたその作品はプロである著者が商業的な読み物として世に出せるものという水準が求められている。
妻に向けながらもその先にある読者を考慮する作品。
全1778話の中から厳選された作品が本書にて編纂されている。
著書の作品を紡ぎあげる目的は何だったのだろう。余命一年を宣告された妻に対しての想いを綴るそれは、手紙でもなく、そしてその作品によって完治を図るものでもないように思う。ただ目の前の人に喜んでもらう。その妻の喜びは裏・将来の読者を意識した喜びが叶えてはじめて妻も喜ぶ。
難しく -
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僕が青春時代、既にオールドタイプのSF作家という認識でいました。何冊か読んだ事はあると思うのですがあまり覚えておりません。(不定期エスパーシリーズを読んだ記憶があります)
本作はカズレーザーさんがアメトークの読書芸人で紹介した事で一気に広がったと思うのですが、(僕も見ていました)メチャクチャ感動する泣ける、という方向の紹介だった為泣かせて欲しい症候群の人々が群がったのがとっても残念でした。
淡々とした筆致で奥様との日々を語り、短編を淡々とつづる。
長い時間を共有した夫婦だからこそ醸し出せる奥深い空気感。
誰にでも訪れる別れに、わが身を置いてこそ感じるしんとした切なさ寂しさ。
最後の一文に込めら -
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古典のジョブナイルSF。核の冬に怯えていた当時と比較して今読むと、作中のSF観の違いに驚かされる。それでも核による終末観はやはり依然として恐怖として残っており、その設定は色褪せてはいない。ネットが発達した今、同じ人間だからといって、果たして別の高次元の存在を受け入れるかと言われれば確かに疑問が残る所ではあるが、ジョブナイルものとしての落とし所は中々のもの。教師が協力的で作品の中にしっかり大人の存在を感じさせたのには非常に好感が持てる。やってきた転校生の一族は、先進的な文明を持っているにしては、ややその馴染み方に抜けがあると感じるが、それが今の人類の愚鈍さに繋がる点は上手いとは思った。
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眉村卓『日本SF傑作選3 眉村卓 下級アイデアマン/還らざる空』ハヤカワ文庫。
隔月刊行の全6巻。現代日本SF誕生60周年記念シリーズの第3弾。眉村卓の記念すべきデビュー作を含む、全22篇を収録。700ページを超えるボリュームに圧倒される。
第一部は異種生命SFを13編、第二部はインサイダーSFを9編と構成に気を使った感はあるが、同じテイストの短編ばかり並び、飽きてくる。出来れば、もう少しバラエティに富んだセレクトにしてもらいたかった。
眉村卓はジュブナイル向け作品を皮切りにだいぶ読み込んだ記憶がある。昔、NHKがまだまともだった時代に眉村卓の初期代表作である『なぞの転校生』がドラマ放送 -
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岩田広一が通う中学に山沢典夫という転校生が入ってきた。典夫は美男子で成績優秀、スポーツも万能だが、なぞめいた雰囲気を持っていた。ある日とんでもない事件を起こした典夫の秘密とは…。SFジュブナイルの傑作。
初版は1967年という古典的少年少女向けSF。数年前に深夜ドラマ化された時、その映像の美しさには目を見張ったが、ストーリーは把握していなかったので読んでみた。学研の「中一コース」に連載された作品というが、確かに小さな盛り上がりがいくつもあるストーリーで、連載モノの痕跡はあった。ただこれが半世紀前に書かれたということから改めて眉村卓の才能に驚いた。
(B) -
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再読。1976年の作品。
「ねらわれた学園」と中編「0からきた敵」
NHK少年ドラマシリーズ「未来からの挑戦」の原作。
懐かしい〜
今読むと展開が早くて子供向けと思うものの面白かった。
未来から来た種族との対決というSFではあるが、今の時代に権利と自由を主張したために未来は無秩序と混沌でどうしようもない状態である。あるいは、生徒会での決定という名のもとに、生徒会でパトロールを組んで規則を破った生徒を罰する。民主主義の手続きを踏んで正義の名のもとに生徒たちを支配していく。ファシズムというのはこうして始まるのだという意味も込められ、奥が深い。
主人公の少年は正義感が強くまっすぐで、母親は子ども -
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学園が舞台で、超能力者が出てきて、生徒会と戦う。
ジュブナイルSFとは、昨今でいうラノベの、本当に正当な先祖なのだろう。
読んでて懐かしい感じがたんまり。
昨年、アニメ映画になりまして、文庫で再版されたので読んでみたわけですが。
こういうのが好きで好きでたまらない。
骨子はラノベと本当に近似なんだけど、ラノベがキャラクターに依存する傾向が強いのに対して、キャラクターそのものは現実感があり、ある意味で「普通」なんだけど、だからこそ、キャラクターというものは、その設定に意味があるのではなく、行動にこそ意味があり、行動するからこそ主人公は主人公たり得るのだ、ということに改めて気づかされる。