【感想・ネタバレ】司政官 全短編 【完全版】 《司政官》シリーズのレビュー

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Posted by ブクログ 2016年02月08日

 「日本SFの第1世代」の眉村卓の代表作、司政官シリーズの全短編である。
 眉村卓は 『まぼろしのペンフレンド』や 『なぞの転校生』、それから『ねらわれた学園』といったジュヴナイルSFが現役としても、10年以上前に癌の奥さんを介護しつつ、彼女のために毎日ショートショートを書くという看病生活で、すっか...続きを読むり本格的な作家活動からは退いてしまったかのようだが、この司政官シリーズなどは上記のジュヴナイル以上に復活して欲しかったものだ。司政官シリーズは7短編と『消滅の光輪』『引き潮のとき』という長大な2長編からなる。

 遙か未来、宇宙進出を果たした人類。連邦軍が力で制した植民惑星に平時の体制を樹立し、その惑星の発展を図る行政官。担当世界の発展に尽くすという高い理想を掲げて任に当たる司政官は、しかし、植民者と先住種族、あるいは植民者と連邦政府といった立場の異なる集団の狭間で苦悩する運命にある。1971年に書かれた最初の司政官ものの短編は、次々に司政制度の時代を下った作品が連作され、4編を集めて『司政官』という題名の短編集としてハヤカワ文庫で出版されるが、司政制度の発足・発展・衰退という避けられない歴史が既にして描かれている。
 その後、さらに2つの短編が書かれるが、司政官シリーズはアイディア小説ではなく、行政専門家の思索と施策の細部が書かれれば書かれるほど面白くなっていくということが明らかとなったというべきか。1976年から2年半がかりで『SFマガジン』に連載された『消滅の光輪』では、司政官の権威が低下した時代で、惑星規模の待避計画を実行する司政官の行状がこれでもかというくらい克明に描かれる(もっとも連載開始時にはこんなに長くなるとは思っていなかった節がある)。
 次に、司政制度の黎明期を扱った「長い暁」──これは本文庫で200ページほどになるので、十分長編といっていいものだが──が書かれ、これを含む3短編が『長い暁』という短編集としてやはりハヤカワ文庫に入る。

 本書『司政官 全短編』はハヤカワ書房の『司政官』と『長い暁』を合本にして、さらに司政制度の歴史に沿って配列し直されたものである。司政官は惑星規模の行政官であるが、現代の「政治家」のようなものを思い浮かべてはいけない。中小企業の社長くらいを考えたほうがいい。持てる資源をいかに活用して最大限の得るかという仕事だからである。日ごろ、政治家を馬鹿にしたり、役人に文句を言ったりしているが、そうした仕事がいかに重要にして大変なものなのかといったことに思いを致すようになる。その司政制度の問題点はおよそこの短編集ですべて提示されるので、あとは解決編。是非とも2長編を読まねばならない。

 本書刊行時点で、奥さんを亡くして5年となる眉村氏は、しかし、「老人となった」自身の新たな視点から司政官物語に取り組んでくれそうな言質をあとがきに記してくれているのだが……

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Posted by ブクログ 2013年11月20日

照り返しの丘のロボットに対する疎外感がものすごく新鮮で面白かった!■追記■全短編集だけどあと2作が入ってない…。黎明期から崩壊間近まで。続きが気になる~!

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

 とても面白いSFです。厚い本ですが厚さを感じさせません。
 司政官制度の初期から末期までが短編で書かれています。
 

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Posted by ブクログ 2017年06月22日

古いSFを読み直している流れの1冊。これらの何作かはSFマガジン掲載時に読んでいるはずで、実際「これかな」と感じた作品もいくつかあるのだが、結局確信を持てたものは皆無。40年を超える時の流れは半端ではない。司政官シリーズの短編はこれで終了。『終末の光輪』は入手済み。『引き潮のとき』はどうしたものか思...続きを読む案中。

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Posted by ブクログ 2012年08月12日

ひさしぶりに読んだ。やっぱり面白い。後の時代についてなるほど環境が複雑で矛盾に充ちてて、そんな中での司政官の苦悩がリアルで良い。

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Posted by ブクログ 2011年09月18日

もとは今から20~30年位前に書かれた小説である。今回、初の一巻本として出版された。植民地の星を統治する司政官という職を描いた(時代も場所も人も異なる)短編集である。これが面白い。2cm位の厚さがあるのだが苦にならないくらい面白い久々のヒットである。今読んでも全然古く無い本である。

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Posted by ブクログ 2009年10月08日

眉村卓というと長いことジュブナイルSFのイメージを持っていた。
この本を読んで自分の不明を心から恥じた。

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Posted by ブクログ 2009年10月04日

物語を年代順に配し、"司政官"の通読が容易になった好編集。ロジックを優先させつつ、最後の最後で肉体へ戻る作者の皮肉な歴史感が、浮き彫りになった。じっくりと書き込みながら、それぞれの短編世界を深く横へ掘り進めない。そんな贅沢なアイディアの使い方が、改めて素晴らしい。続編とは違う、シ...続きを読むリーズの重みを感じた。読み応えある一冊。

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