あらすじ
余命は一年、そう宣告された妻のために、小説家である夫は、とても不可能と思われる約束をした。しかし、夫はその言葉通り、毎日一篇のお話を書き続けた。五年間頑張った妻が亡くなった日の最後の原稿、最後の行に夫は書いた──「また一緒に暮らしましょう」。妻のために書かれた1778篇から19篇を選び、妻の闘病生活と夫婦の長かった結婚生活を振り返るエッセイを合わせたちょっと変わった愛妻物語。
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Posted by ブクログ
長年連れ添った伴侶を
見送った後の心境たる
や。
喩えるなら最終列車が
行ってしまったホーム
でしょうか。
静かで、すこし寒くて
だれもいないベンチに
ぽつんと座るような…。
立ち尽くす人もいれば
淋しく微笑む人もいる
でしょう。
笑い声の余韻、喧嘩の
後の湯呑みのぬくもり
…
時折、風が吹いて記憶
をそっと撫でていく。
愛した分だけ空っぽに
なると言うけれど、
それはね、満たされて
いた証なの。
ほら、夜空を見上げて
みれば星が瞬いている。
もう一度ただただ君の
名を呼びたいと、
だれしもいつかきっと
そう思う日がくるから
──
静かに涙が溢れてくる。
最終章に溢れる想いは
言葉にしようとすると
喉の奥で崩れてしまう。
だから、もうこの表現
方法しかなかったのね
と、何度も頷きました。
喪失とは、終わりでは
なく静かに続いていく
愛のかたち。
声は届かないかもしれ
ないけど、ぬくもりを
間近に感じる。
その人はもういないの
ではなく、ここにいる
のだと。
Posted by ブクログ
読む前から分かっていたけれども切ない。お話やエッセイ自体はいつもの眉村ワールドだけれども、最終章は生の作者の気持ちが強くあらわれていて、やはり強く心を動かされてしまいました。
Posted by ブクログ
夫婦の絆って素晴らしい!読書芸人カズレーザーが絶賛していた作品。大きな感動を呼ぶ1冊。
子供の頃、本書の作者眉村卓の学園もののSF作品を読んでいた。数十年ぶりに筆者の作品を手に取る。
余命1年を宣告された妻。小説家の夫は妻のために毎日1作の短編小説を書くことを妻に約束する。余命宣告を越えて5年間の闘病生活。作品は全部で1778篇。その中から選んだ19篇から成る本書。
もちろん作品だけでなく筆者自らの作品解説。そしてこちらも感動の妻との思いでを語るエッセイ。妻との数多くの思い出が涙を誘う。
一日一話。プロの作家とはいえ、相当の苦労があったようである。それでも毎日妻のため出来立ての作品を届ける。そして妻の暖かな視点からの批評。奥さまこそ筆者の一番のファンだったのだろう。
意識を失った後の最終の三話。筆者の動揺が隠せない作品がまた大きな感動。
そして奥さまが亡くなった直後に書かれた最終1778話のラスト。
いかがでしたか?
長い間、ありがとうございました。
また一緒に暮らしましょう。
夫婦の絆を強く感じさせる1冊。妻にもっと優しくしなくてはとく思った感動作でした。
Posted by ブクログ
眉村卓氏が、癌で弱っていく妻に毎日一話のお話を書くことに決めて、5年(?)くらい書き続けた。
そのお話自体は、新聞で紹介されたり、抜粋して書籍になったりすでにしているらしいが、この新書はその経緯を著者自身が書き記し、どんな心もちでお話を書いていたのか、自分の書くお話がどのように変化していったのか、などの当時の心境や奥様の様子も少々紹介している。そしてこれまで他の媒体では紹介されていない「お話」を中心に、何篇かも収録されている。
最愛の伴侶が、余命わずかと知った時、人にできることは限られているとは思うが、作家ならではの「一日一話書く」という行為。私はとても共感できる。あえて闘病とは関係なく、物語を紡いでいく。紡ぎながら、著者自身も戦っている。
最後の一行で号泣する…と、ウワサに聞いていたので、最後のページを開かないように気を付けながら読み進めた。そして、最後の一行というか、最後の一編に号泣です。世の中の多くの夫婦は、その原稿用紙の1枚のような、他の誰にも理解できない絆(良いことも悪いことも)を共にしているのではないかな。私もそんな夫婦関係を築いていきたいと思った。
Posted by ブクログ
コルベットさんの本棚から。
余命1年と宣告された妻のために、1日1篇のお話を書き続けた眉村卓さん。闘病生活は5年だったということは、宣告よりもかなり長く生きられたんだなぁ。
きっと1日1篇の力も大きかったのでは。
普段のお二人のやり取りは他愛のないことばかりだけど、そこに愛情、悲しみ…色々な感情が見え隠れして、なんとも切なかった。
「お葬式の名前は、作家眉村卓夫人、村上悦子にして欲しい」の言葉と最終回では、我慢していた涙が止まらなかった。出先で読むのはダメなやつだったな。
泣けました。
淡々とした中に、愛はあって、
それは一人一人の心が、見つける旅をしているんだろうと、感じさせて頂きました。
また一緒になりましょうと言われて死にたいです。
Posted by ブクログ
内容は、淡々と進む感じ。短い小説と、それを書いたときの心境が綴られている。お涙頂戴的な話でもなく、奥さんへのラブレターというわけでもなく、小説家らしく商業誌に出せるレベルの小説を、奥さんのために書く。というところが、良かった。
眉村さんの奥さんは、小説家である旦那さんを、きっちり支えてきたんだなぁと思った。
いろんな方がお勧めしてるのもわかる。
Posted by ブクログ
タイトルから分かるように、
妻が余命宣告を受けた日から、夫である作者が妻が亡くなるまで毎日短編ストーリーを書き続けた話だ。
内容はそのいくつかの短編ストーリーとエッセイで、読んでるとエッセイなのに小説を読んでるような不思議な気持ちになった。
また、文体だったり使う言葉・漢字で作者の年齢を感じて、本を読むとこういうところの面白さも感じれるのかと感心した。
どんどん短編ストーリーを読み進めて、最後の1778話を読んだときにはグッとこみ上げてくるものがあった。
最後のあとがきの終わりでもグッときた。
初めて本を読んでしっかり感動した。よかった。
Posted by ブクログ
素敵な夫婦…
人と人がお互いに信じ合い、共に生きてゆくためには、何も相手の隅から隅まで知る必要はないのだ。
夫婦に限らずそうなのかも。
最終回…苦しくて泣きました。でも、こんな風に思えるくらい、大切な人に出会えるって、やっぱり幸せですよね。
Posted by ブクログ
「聞いた事があるな」と思った本をひたすら読む期間に初めに手に取った一冊。自分が面白かったか否か、それだけでいつもは星をつけている。今回はこの本を面白かった!いや、面白くなかった!という判断を私は出来ずにいる。じんわりと胸に広がるこの感覚が感動なのか寂しさなのか、それすら分からずに本を見つめている。
奥様が亡くなる5年間、毎日書き続けてきた話を、時系列に並べてその時の状況と照らし合わせながら読む。
形式としてはものすごく分かりやすく、好みの本だった。
筆者の奥様への愛と、その5年という年月に思いを馳せて、私は私なりの感想とさせていただく。
Posted by ブクログ
著者後書き
「人と人とがお互いに信じ合い、共に生きてゆくためには、何も相手の心の隅から隅まで知る必要はないのだ。生きる根幹、めざす方向が同じでありさえすれば、それでいいのである。」
Posted by ブクログ
夫婦ってこうなれるんだ、と思いました。著者が最後に書いてらっしゃるとおり、相手の心の隅から隅まで知る必要はなく、生きる根幹、目指す方向が一緒であればいいんですよね。 SFのショートショートの良さはあまり自分には分からなかったけど、最後の三話を読んでたら、勝手に涙が滲んできました。
Posted by ブクログ
奥様のおっしゃるとおりこれエッセイやんかと思うお話もあるけれど、奥様への愛情に溢れた一冊。
続けることは尊い。誰にでもできることではないよね。
令和元年11月3日
亡くなられたとことをニュースで知りました。
奥様にようやく会えますね。
ご冥福をお祈りします。
Posted by ブクログ
妻に捧げた1778話
著:眉村 卓
余命1年を宣告された妻に対して一日一作品、妻のために作品を綴る。そして妻に向けたその作品はプロである著者が商業的な読み物として世に出せるものという水準が求められている。
妻に向けながらもその先にある読者を考慮する作品。
全1778話の中から厳選された作品が本書にて編纂されている。
著書の作品を紡ぎあげる目的は何だったのだろう。余命一年を宣告された妻に対しての想いを綴るそれは、手紙でもなく、そしてその作品によって完治を図るものでもないように思う。ただ目の前の人に喜んでもらう。その妻の喜びは裏・将来の読者を意識した喜びが叶えてはじめて妻も喜ぶ。
難しく深い作品が本書にはつめこまれている。
どんな心境で読み進めるべきか迷う時も多いものの、何か期待を込めて読んでいる自分がいた。
一日一作品を紡ぐ大変さはあったとは思うが、妻と著者との関係はこの作品によって永遠なものとなっている。話すとはまた違った残り方に心が動いた。
Posted by ブクログ
僕が青春時代、既にオールドタイプのSF作家という認識でいました。何冊か読んだ事はあると思うのですがあまり覚えておりません。(不定期エスパーシリーズを読んだ記憶があります)
本作はカズレーザーさんがアメトークの読書芸人で紹介した事で一気に広がったと思うのですが、(僕も見ていました)メチャクチャ感動する泣ける、という方向の紹介だった為泣かせて欲しい症候群の人々が群がったのがとっても残念でした。
淡々とした筆致で奥様との日々を語り、短編を淡々とつづる。
長い時間を共有した夫婦だからこそ醸し出せる奥深い空気感。
誰にでも訪れる別れに、わが身を置いてこそ感じるしんとした切なさ寂しさ。
最後の一文に込められた感情に背筋が伸びます。自分もこんな風に配偶者に向き合いたいと強く想いました。
「感動するって聞いたのに泣けませんでした」というようなレビューを書いている人が沢山いるのにびっくり。どれだけ慟哭したいんだよとガックリ来ました。
Posted by ブクログ
だいぶん前に購入し、そのままだったが、ようやく読み終えた。
死を宣告された妻のために毎日一話ずつ書くことを決めた著者の「話」と記録。
「話」の方は難しく、よくわからない物語がほとんどだったが、妻との何気ない会話のやりとりが良かった。
Posted by ブクログ
眉村さんの、小説家らしく、愛する人の夫らしく、奥さんへの愛を込めた物語を描き続けたその姿勢と、最後の一文に込められた精一杯の愛に心を打たれました。
学校の先生がおすすめの本として授業で取り上げていたのを思いだし、手に取りました。
愛のあたたかさと力強さを改めて感じました。
Posted by ブクログ
眉村卓は、子どものころからおなじみの作家。「ねらわれた学園」や「なぞの転校生」「まぼろしのペンフレンド」など、ドラマ化されてワクワクしながら読んだ記憶がある。
この本は、ガンに侵された妻のために眉村が1日1話の創作を書き、読んでもらったものをまとめたもの。
数年前、「アメトーク」の読書芸人でカズレーザーが紹介して即重版になったはず。カズレーザーは、ラストがとてもいいと語ったように記憶している。そのページを光浦靖子に示すと、一瞬にして彼女の目に涙が浮かんだ。
そして昨年2019年、眉村自身も亡くなっている。
ラストは本当に悲しい。
本当の読み方ではないけれど、「死に向かっていく妻に向けて書いている物語」として受け止めていて、ひとつひとつの出来については忘れてしまいがちだった。
P117
妻の闘病生活が始まってから、私は毎日短い話を書いたけれども、それは、何度も繰り返すがエッセイではなくお話でなければならない。私自身の投影の要素が入ってくるとしても、私自身の気持ちをナマで出すのは許されない。そんなことをしては、妻が辛いだろうからだ。
~
しかも、商品として通用するレベルを保持するように努めて、だ。
~
それが私の仕事だ。
p167「土産物店の人形」の自己注釈
一読して、なーんだと言われても仕方のないような話であろう。
だが、ものものしい予兆があり、それなりに覚悟をしていたにもかかわらず、少なくとも今のところは何も起こっていない、あるいは先になると何か起こるかもしれないが、、現在は無事--ということは、多くの人が体験しているのではあるまいか。
P180
毎日短い話を書くにあたって、私が自分に課した制約のひとつに、どんな話であろうともどこかで必ず日常とつながっていること--というのがあった。この作業に対する私のスタンスを示すためであったが……その日常と言うものがこんな具合になって来ると、よりどころが少しずつ変質して行かざるを得ない。私自身、そのことを感知していたけれども、だからといって、どうしようもない。
P193 1777 けさも書く
だが、たしかに声は聞こえたのだ。
彼はわれに返った。
幻聴だろう。
でも、幻聴でもいいではないか。自分にとっては、本物の妻の声だったのだ。自分にとっては本物の声だったのだ。
↑
幻聴でも錯覚でも思い違いでも言い間違いでも。それが自分にとって「そう」であるのなら、「そう」でしかない。そして、「そう」だと思って生きていく。生きていけばいい。そう思った体験と重なった。
Posted by ブクログ
お話をつくることで作者自身が癒され、そんな作者を受け入れることで、妻も癒されたのではないか。夫婦って何だろうなと最後の最後で考えさせられた。夫婦がみな同じ想いや考え方を抱くわけではない。それぞれに夫婦の形がきっとあるんだと思う。
夫婦になりたいと思った。自分達なりの夫婦をやってみたいと思った。
Posted by ブクログ
いつだったか、カズレーザーがおすすめしていた。エッセイでありショートショートであり、肩肘張らずに気軽に読める。奥様が亡くなられた後の最後の一遍は、泣ける!とか感動!とかいう言葉よりも「粋だねぇ」が似合うと思う。
Posted by ブクログ
カズレーザーさんが15年ぶりに泣いたとのことで期待しすぎながら読んでしまった。
余命わずかの妻を持つ作家の背景がチラつき、それぞれの作品が違った意味を持つのが特徴的だった。静かに心揺さぶられる作品。
Posted by ブクログ
本人も言っていた通りオチの無い話ではあったが、こういう本の形もあるのかという、新しさに感心した。
本の内容では「少し長い後書き」の中の「相手の心の隅から隅まで知る必要はないのだ。生きる根幹、めざす方向が同じであればそれでいいのである。」という一文が1番印象に残った。ついつい欲張って何でも知りたくなってしまうのだけど、どれだけ一緒に過ごしても、他人だから全てを知り理解することはできないなと。だからそこに労力を使うのではなく、大切なこと、めざしたい方向について語り合うようにしようと思う。
眉村先生は毎日1話を書き続けるにあたり、いくつか制約を設けました。その一つが読んであははと笑うかにやりとするものでありたい、ということだった。
最終回は、奥さんが天国で微笑んでいるのが想像できる内容だった。
Posted by ブクログ
アメトーークでカズレーザーが15年ぶりに泣いたと言っていたため手に取った本。
最近母が亡き婦人と同じく大腸癌になったため、
最初は他人事だと思えずとても重い気持ちで読んだ。
亡くなるまで、1778話。毎日毎日よく書いたと思う。
小説家という立場だからこそ、できることがあり
それをやり遂げた眉村卓さんはすごいと思った。
しかし小説家という立場だからこそ、妻だけではなく世の中へ向けて書いてほしいという妻の願いから、眉村卓という小説家の妻であることへの誇りを感じた。
またお葬式での看板も同様である。
あまりSFは読まないけれど、SFを構成するまでの著者の意図も書いていただきなるほど。と興味深く読ませていただいた。
最後に近づくにつれて、よりナマの感情を出そうとせずとも伝わってきて心が締め付けられたかのように苦しくなった。
いい作品であったと思う。
また最後の人と人がともに生きていくための眉村卓さんの考えが、沁みた。「また一緒に暮らしましょう。」という締めの言葉に愛を感じた。
こんなふうに思える人と人生を共にしたいと思った。
Posted by ブクログ
この本に収録されている話を読む限りだが、奥様の病状が深刻になればなるほど作品の完成度が高く感じた。神経が研ぎ澄まされる、という事であろうか?
私は妻ではないが、母を亡くす間際は最後の3話に少し似た感情か沸き上がった事を思い出した。
「妻のトリセツ」の後にオススメ。
田村書店天下茶屋店にて購入。
Posted by ブクログ
内容は著者が書いたショートストーリーの一部を抜粋したもの。
私はこれを良いとも悪いとも評価できない。
また、他人にこれを勧めることもできない。
ただ、本書を読むなということもできない。
理由としては自分の経験から、本著を読んでいて段々と悲しくなっていったから。
最後の方はこの先を読みたくないなと思いながら無理やり読みました。
この本の感想は本書にある書かれているように千差万別だと思います。
ただ自分が本書に対して☆3を付けたことに、
これ良い意味で☆3だとか悪い意味で☆3だとか決して思わないでほしい。ただ単に無理矢理にでも点数をつけるとしたらこの点数にすることにしか出来なかったというだけなので。