鈴木るりかのレビュー一覧
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近所のお兄ちゃん、落合先生が下着泥棒で捕まった。文武両道、品行方正で両親と同じ教師の道に進んだ彼にずっと憧れ続け、同じく教師になる進路を決めたばかりの高校生、水咲の心は大混乱。全国ニュースで盗んだパンツ800枚と逮捕される瞬間まで流れたのに信じられない水咲の一途な暴走恋心が深刻にではなくコミカルに描かれているのが瑞々しい。幼馴染みの二人、愛海と聖二のギリギリを攻めた茶化しっぷりが重くなりそうな内容を軽やかにしている。そのネタが三人が文藝部(藝の漢字にこだわりあり)だけあって様々な文学要因から持ってきてテンポ良く進むのが楽しい。落合家の事情が描かれないのが逆にリアルだ。高校生から見た事件ってこん
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昭和感あふれる笑いが楽しい
今回は田中さんシリーズではないけど、ユーモア溢れる軽妙な会話と昭和感たっぷりのネタは健在。ホントにJKが書いたの?登場人物は進学校の高校文藝部の部員たちという設定ということもあり、いろんな文芸作品をパロったフレーズが次から次へと出てくる。これって格調が高すぎてオリジナルを知ってないと笑えない。個人的には「母さん、ぼくのヘルメットはどうしたんでせうね?」がツボった。てっきり森村誠一の『人間の証明』のパクリかと思ったら、西條八十の詩がオリジナルなんですね。高校生の純朴な心が微笑ましい爽やかな青春小説だった。
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中学生で小説家デビューした鈴木るりかさんの2作目。
「国語」「数学」「道徳」などの教科の名前がついている短編集だ。
舞台は中学校。登場人物は中学生とその家族、教師。
最初の「国語」の主人公が三木明日香という中学生で小説家デビューした女の子だったので、この後の話もこの子が主人公で話が進むものと思っていた。
あまり主人公が名前呼びされないこともあり、2作目(家庭科。家庭科が得意な女子が主人公)の主人公も三木明日香だと思って読んでいた・・・。
「あれ?家庭科の先生になるの?小説家は辞めるのか?」とか思いながら読んでしまったよ。
「体育」の、主人公とおじいさんとの交流が良かったなぁ。
おじいさんが -
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しまった。。。
さよなら、田中さん
を読まずして、こちらを先に読んでしまった。
多分前作を読んでいたら、全く違う感想になったのだろうなぁ。。。。
いやでもしかし、読んでなかったが良い作品だった。
それぞれに沢山の悩みを抱えた人物が沢山登場するのだが、どの話に出てくる人も、みんな前向きで美しい。
これがこの作者様の魅力なのだろうなぁ。
木戸先生、よく出てくるなぁと思ったら、最後の短編で木戸先生が。
こんな展開もとても素敵。
そして、えーーー!!そんな落ち!?って、どこかほっこり(^-^)
作者様はまだお若いのに、凄い実力だな。
他の作品も読んでみたい。素晴らしい(*^^*) -
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あなたには、自分の『居場所』があるでしょうか?
生きるということは、さまざまな人たちと関わり、さまざまなコミュニティに関係していくことでもあると思います。義務教育を経て、高校、そして大学・専門学校へと進み、社会へと歩み出していく私たち。社会に出たあとも、会社の中での人事異動や転勤、さらには転職…と人が同じ場所に同じ人たちと留まり続ける時間というものは極めて短いものです。それは、家族関係でも同じでしょう。かつて育ててもらった両親が年老いて今度は自らがその介護に当たる番となる、また全くの他人だった人と結婚し、子供が生まれ、かつて自身が育てられたことの逆を行くように子育てに邁進していく。人生とは -
Posted by ブクログ
「さよなら、田中さん」以来楽しみに読んでいる、鈴木るりかさんの新作。「現役受験生が書く受験生のリアル」とかいう紹介文を見たけど、その言葉から受ける印象と中味はちょっと違うんじゃないかな。受験生なんて狭い枠ではなくて、誰もが持つ「ままならなさ」を重くならずに描いた、著者らしい作だと思う。
いきなり下着泥棒の話から始まって(しかも犯人は主人公水咲にとっての王子様)、あれま、このお話はどう進むのかと思ったが、その件の着地点が焦点ではないのだった。憧れの人がおこした衝撃的な事件に、水咲の心は揺れ動く。でもそこに危うい感じがほとんどないのは、農村地帯に住み(水咲の家は農家)、通学時にはヘルメット着用と