あらすじ
現役女子高生作家が紡ぐ、鮮やかな人間賛歌。
★遠くへ行きたい
田中花実は、中学2年生になった。前作『太陽はひとりぼっち』からのバディ、佐知子とは相変わらず仲良し。ある日、二人は少女と出会う。よかれと思って少女のために行動した二人だが、思わぬところから、深い社会問題に踏み込んでしまう結果に。笑いあり、涙あり、生きることへの肯定感を滲ませる「るりかワールド」はより広がり、深みを増す。
★私を月に連れてって
デビュー作『さよなら、田中さん』、前作『太陽はひとりぼっち』でも、常に名脇役として登場する2階の住人・賢人が主役の物語。相変わらずむさ苦しく、世捨て人となっている賢人がある日突然恋に落ちる。そのお相手とは……?そして、その恋が、彼の生活、人格すべてを変えていく。賢人が見つけた鮮烈な「恋」の行方は……?
★夜を越えて
今作の『遠くへ行きたい』を受けて誕生した作品。授業の一環、職場体験で出会った「ぶーさん」。彼女は、花実のお母さん・真千子の昔を知る人物だった。実の娘の花実にすら一切を語らない、真千子の壮絶な過去の一端が紐解かれる。そこで描かれる真千子の少女時代。そして、その時代から続く熱い想い、絆に心が震える一編。
感情タグBEST3
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中学生の花実は母親と二人暮らし
友達とある日家から外に出たことは滅多にないと言う女の子と出会い児童相談所に相談
女の子は無戸籍だとニュースになる
同じマンションに住みニートの賢人
公園でぼーっとしていたところに女の人に声をかけられ道を尋ねられ恋に落ちる
無知では行けない
見えている面が全てではなくその裏側を見る覚悟
わかりやすい言葉で紡がれているが深いと思う
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鈴木るりかさんの「さよなら田中さん」シリーズ、第3冊めです。
今回も、田中花実のお母さんと大家さんの面白さ炸裂。
「人の夢と書いて、儚いと読む、か。パンツ穿いても人生は儚い」
小学校高学年のとき、「瞬足」というメーカーの速く走れる運動靴が流行ったので、花実がお母さんにねだると、「まかしとけ」と買ってきたのは、スーパーのワゴンで見つけた「迅速」。
大家さんの息子でニートの賢人が突然表れた「文代さん」を好きになり、
「私を月に連れてって」と言われたから約束したと言ったことを聞いて、花実のお母さんは思わず
「は?月?何言ってんの?あんたゾゾの社長じゃないんだよ」
底抜けに明るいのだが、そんな中、時々胃がキュッとなることが。
花実と親友の佐知子がたまたま出会ったノンちゃんという子。お母さんが大好きなのだが、アパートの敷地から外に出してもらったことも学校に行かせてもらったこともないという。こっそり二人で児童相談所に電話し、「いいことした」と思っていたが、後で「無戸籍の子が保護された」というニュースを見て、「ノンちゃんがお母さんと引き離された。良かれと思ってしたことが、余計なことだった」と猛省した。
この本では、花見の小学校の時の担任木戸先生と繋がりのあった人や花実のお母さんの子供の時の親友も登場。会えなくてもずっと思っているかけがえのない愛情、友情を感じる。
本当の家族の愛情に飢えた人。だけどそれを信じて力強く生きている人たちが登場する。
鈴子るりかさんはすごい。この時まだ高校生なのに学校で教えてくれないことばかりに目を向けた小説を書いている。
教室で教えられることは限られている。だから本は読まなければならないのだ。
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『さよなら、田中さん』『太陽はひとりぼっち』の続編です。
相変わらずの、るりかワールド笑
何度声を出して笑ってしまったことか笑
外で時間を潰しながら読んでいた時もあったので、その時は声は出せず、マスクの下の鼻の下を伸ばすにとどめ、なんとか我慢しました笑笑
主人公花実の母と大家さんの会話が面白過ぎます!
でも、本当は二人とも重い重いものを背負っているのです。それなのにガハハと笑って生きているのです。
デビュー作の『さよなら、田中さん』から花実も作者も成長して深みのある作品になっています。
貧乏だけど明るく生きている!だけでなく、皆、何かを抱えながらも明るく生きている!
そしてその“何か“は“何か“のままで‥‥知らなくてもいいことがあるんだよ、と。
家族から離れて遠くの月へ行ってしまいたいと思ったり、一番近くにいるはずの家族が月のように遠い存在になってしまったり。
今作もまた大満足の一冊でした。
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届かないものは届かない。だけど、代わりのものを探さずにはいられない。満たされない心を隠さずさらけ出したとき、代わりではない別の何かを見つけることができる。ひたむきに生きるキャラクター達に、親しみを感じずにはいられません。
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「さよなら、田中さん」の続編。本作も読み始めてすぐ物語に引き込まれました。
登場人物がみんな個性的でその語り口も何ともいえず魅力的。
親子の会話シーンが楽しくて好き。
大家さんと花実のお母さんとの掛け合いとかホント面白すぎる。それを毎回冷静に観察し、心の中で突っ込みを入れる花実ちゃん!
2階に住む大家とは名ばかりのニートの賢人。
花実ちゃんの恩師の木戸先生。
木戸先生の兄。
前作「さよなら、田中さん」に登場してた三上君のその後。そしてそこからの花実との再会。
花実ちゃんのお母さんの子ども時代。
本編だけでなく、登場人物の視点で綴られた短編どれもが良かった。
余韻までしっかり楽しみました。
ちょっと疲れてるときも負担なく読みやすい文章なのもいい。
ずっと追いかけたい作家さんです。
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シリーズ3作目。
貧乏もつらさも昭和感まで笑いを乗せて読ませてくれる、ホントに素晴らしいです。
『アンラッキーの先払いしてるんだよ。このツケはあとで神様から回収してやるんだよ、必ず。』
心に響きました。
経験値ではなく他者の気持ちに寄り添える心があるかどうかなんでしょうか。
素晴らしい作品だからこそ高校生の鈴木るりかさんの頭、心の中、気になります。
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またまたびっくりさせられる展開で、本当に面白い。
もっと花実ちゃんの今後を知りたくなる。
ばっくやーどは何やら不幸がてんこ盛りなのに、とにかく明るくて前向きで、それが切なくてあたたかい。
引きこもり賢人の恋路は笑えるけど、是非次回作では社会に出てほしい。
楽しみ。
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相変わらず貧乏だけどその中でも日々を明るく逞しく過ごしている花実ちゃん親娘に出会える3作目。花実ちゃん視点の「遠くへ行きたい」はスマホ持ったり隣の席の石井君のちょっかいをウザがったりと中2らしい可愛らしい日常と平行に社会問題や将来への不安、母親への想いが平易な、しかし真っ直ぐな言葉で語られるのが相変わらず凄い。職業体験で出会ったしのぶさんから漏れてきた母の秘密で今後の展開がちょっと心配。賢人が文代さんという魅力的な人に恋する「私を月に連れてって」は締めも含めコミカルだけど(文代さんって前作のあの人だよねぇ)前に進もうとする爽やかさがいい。でも次でまた元に戻りそうだけど。しのぶさんと母との昔のエピソード「夜を越えて」は秀逸!嘗ての友人への願い。心に浮かべた経験があるなら刺さる。
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『さよなら、田中さん』の花実親子シリーズ第3弾。
時代は令和になっても、相変わらず昭和感が色濃く残る田中家。
花実の母と、親子が暮らすアパートの大家さんの賑やかな会話には今回も癒やされる。
そんな家庭環境の中、花実も念願のスマホをゲットしたり進路のことで悩んだり、と大人の世界に近づいている。
そしてふとしたきっかけで、母の過去を知る人物と出逢い…。
「真実をすべて知ることがいいとは限らないし、その必要もないんです。そして知った後では、もう知る前には戻れないんですよ」
母の過去を知りたい気持ちは分かるけれど、小学校時代の恩師・木戸先生の言葉通り、知ればいいというものではない。
いつも花実の幸せだけを心から願う優しい母。
目の前にある現実だけを真っ直ぐ見ているだけでは済まされないものなのか。
花実が次回以降、母の過去や自分の出生について知ることで親子関係がどうなってしまうのか、とても心配。
一方、アパートの大家さんの一人息子・賢人の初恋には大ウケ。なるほどそうきたか…。
恋する素晴らしさを知り、生きる気力を得て俄然張り切る賢人。
そんな賢人にも木戸先生の言葉をそのまま贈りたい。
恐らくは月の裏側を見る覚悟のない賢人。
月の女神の真実の姿は…知らぬが仏ということで済ませましょ。
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「夜を超えて」がとてもよかった。これまでかかれてきた明るくて、裏表のない田中母があるからこそ、胸がじんとしました。
花ちゃん、私も木戸先生に会いたくなったよ。
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読書記録です。まだの人は読まないでね。
『さよなら、田中さん』を14歳で書いた著者。「書いて欲しい」と背中を押した選者の石田衣良さんありがとう。『14歳、明日の時間割』『太陽はひとりぼっち』も読みました。プロットを書かずに湧き出るストーリーを書いている、とは著者の創作スタイルだそうですが、伏線回収が凄すぎる今作。田中さん(母)を虐待していた祖母のぽろっとこぼした言葉、小学校担任の兄…いったいどこからキャラクターたちは著者の頭のなかで動いていくんでしょう。続きが早く読みたい。でも花ちゃんにはゆっくり成長していって欲しいし、伏線回収でどんなふうに成長していくのか、その姿を読んでいきたい。
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凄まじい才能だ。年齢や人生経験など関係なく小説の天才が存在することを改めて感じた。作品を上梓される毎に磨かれ無駄が削がれた圧倒的なストーリテリングに驚嘆させられる。センス溢れる会話の妙と洗練されたギャグ、絶妙なメタファー、タイトルに込められた明確な主題、余韻を十分感じさせる終わり方、どれをてっても既に完成された美を感じる程。本作が直木賞候補になっても全く驚かないし、もうそれ以上の存在かもしれない。次回作が本当に楽しみ。
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さよなら田中さん、の第三弾。相変わらず、田中母娘の清々しいほどの裏表ない生活に、何度も吹き出した。今回は一言「早く続編よみたいっ!」です。え?!どうなるの?どういうことなの?が散りばめられて、一年後の新作待ちきれないよ。賢人の恋は…(笑) でもさ、新しい人生踏み出してほしいな。花実ちゃんの優しさと強さと賢さ、読んでいて泣きそうになる。前作の「太陽はひとりぼっち」も読み直さねば!きっと新たな発見あると思う。
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鈴木るりかさんの著書はこれが初めて。るりかワールドに惹き込まれました。重ためなテーマが入ってきつつも事件性や悲劇感はなくいい意味で淡々と、日常感があって、主人公たちと同じように日々過ごしいろいろな気持ちを感じながら読めました。
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高校で勉強がたいへんだから執筆はお休み中なのかと思ったら、とっくに書いていらしたのね。しかも、賢人くんとか、お母さんの過去とか、知りたかったことが!でも、まだ続くのね。ふふふ。
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鈴木るりかさんの著作4冊目です。
この本は多分高校生で書いたのかな。
もう、「こんなに若くてこんな本がかけるなんて」という驚きは間違ってると気が付きました。
「こんな本を書ける人がこんなに若いなんて」が正しいです。本の内容がありきで、プラス年齢に驚く感じ。
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人は会うべきときに、会うべき人と出会っているのだという。そうなのかもしれないと思った。
今回は、〈食器棚の奥の骸骨〉がたくさん出てきた感じだった。この言葉は、花実の小学生の時の担任が教えてくれた言葉で、どの家庭にも秘密にしておきたいことがあるという意味だ。
大家さんと花実のお母さんは、相変わらずとても元気。花実も友達の佐和子と新しい友達の石井くんとスマホで繋がったりと、楽しそうな日々。二階に住む賢人にも新たな展開があった。
そんななかでの、のんちゃんとの出会い。よかれと思ったことの怖さについて、改めて考えた。そして、職場体験で出会った村山さんと母親の関係、そして隠されている真実が、今後どう語られていくのか。大家さんの息子の賢人、そして文代のことなど気になることは山積み。
「夜を越えていくんだよ」とかつて花実の母親である真千子が言った言葉が、村山さんから花実に伝えられた。花実は何かを既に感じ取った。これから心身ともに成長していくとともに、乗り越えてほしいと思う。そして、大変な経験を経て今、花実を育てている真千子には、名前の意味と同様に〈真に価千金の子〉となった今の時間が長く続いてほしいと思った。
皆の今後が気になるので、『私を月に連れていって』の後の作品をすぐに読もうと思う。
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鈴木るりかの私を月に連れてってを読みました。
鈴木るりか高校二年生の時の作品です。
昨日読んだ太陽はひとりぼっちの続きのようです。
遠くへ行きたいと、私を月に連れてってと、夜を越えての三部作で、遠くへ行きたいは同級生の石井君と家から出たことがない女の子との出会い。私を月に連れてっては、ひきこもりの大家さんの息子が、綺麗な女の人に道を聞かれたことから、ひきこもりから脱皮。
夜を越えてはお母さんの小さい頃の話と、読みやすく、面白かったです。
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「遠くへ行きたい」「私を月に連れてって」「夜を越えて」
3話収録の連作短編集で『さよなら、田中さん』『太陽はひとりぼっち』に続く田中母子シリーズ第三弾。
今回は『月』がテーマになっている事もあり、月光の裏側の暗い部分が、登場人物の心の闇部分とリンクして描かれている。
花実とお母さん、大家さん、親友の佐知子、ナイスキャラの石井君、2階の住人・賢人など、それぞれが織りなすテンポの良い会話に笑っていると、突如現れる社会問題。
ユーモアと負の感情のバランスがお見事。
若干17歳にしてその知識と語彙の豊富さ、感性に感動する。
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『さよなら、田中さん』の花実の物語の3作目
花実に気があるらしい石井君
木戸先生のお兄さんと賢人
お母さんの過去を知る人
前作でおばあちゃんが出てきて謎だったところが、今回で一つ解き明かされたされたかもしれない
続きが出てくれたらいいなと思う
学生ということで1年に1作の刊行ペースだった鈴木るりかさん
2022年に大学生になったらしいので今後は新刊も増えるのかな?楽しみ
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よろこび、哀しみ、優しさ、強さ、不安。
人間にはいろんな面があることが書かれていて、これを高校生が書いたとは、、、‼︎
真相をつく言葉を知っているのが本当にすごい!
「夜を越えていくんだよ」という言葉に勇気をもらい、アンラッキーの先払い、ツケの回収って発想もおもしろかった。
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鈴木さん田中シリーズ。「遠くへ行きたい」「私を月に連れてって」「夜を超えて」の三遍。ニート賢人の目覚ましい変化、新たに増えた田中家の「食器棚の奥の骸骨」。ますます磨きがかかったような筆致。続編気になる(*´꒳`*)
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連作短編3編
短い言葉,簡潔な会話,ストレートな表現,わかりやすくてしかも奥が深い.特に「愛されたい思いをずっと抱えて生きてきた」という言葉に胸が締め付けられました.
また二階のニートの賢人のその後も気になるし,母田中真千子の過去も気になる.
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現在高校2年生の鈴木るりかさん。14歳の誕生日に『さよなら、田中さん』でデビューしてから毎年誕生日に新作が刊行されています。今作で4冊目、私の大好きな田中さん母娘シリーズとしては3作目。
もうねえ、毎回思うんですが、るりかさん…本当に実年齢ですか?なぜ松島トモ子さんのCMを知っているの?実は昭和生まれでしょ?と言いたくなってしまいます。
今作は田中母の素性が少し明らかにされ、なんだかちょっと不穏な空気も感じます。でも相変わらず田中母はいいキャラだし、吹き出しそうになるくらい面白いかと思えば考えさせられたり、胸があつくなったり…特に『夜を超えて』は本当に良かった。木戸先生の名言もやっぱり深いです。
前作の内容をかなり忘れちゃってたので、また読み返したいなぁ。
田中母娘…今後どうなるの?賢人くんは?続きを早く読みたいようなちょっと怖いような…でも田中母娘には絶対しあわせになって欲しい。
幸せはいつも自分の心が決める…田中母のようにいつでもどんなことにも前向きに生きていきたいなぁ。
Posted by ブクログ
デビュー作より3作読んでもうすごいの一言、読んでいてあきません。おもしろさ。今回もまたやってしまいました。「遠くへ行きたい」に出てくる麦茶のくだり、安くてお徳「こんなに美味しいのにさ。これなんか五十六袋も入ってて百五十八円だよ。ひと袋三円しかないんだよ。」もうこのフレーズいいなあ最高です。おもしろい発想読んでいてあきない。のんちゃん母子のエピソードはとても考えさせられる深いお話でした。「食器棚の奥の骸骨。どんな家庭にも秘密にしておきたいことがあると言う意味です。なかなかうまいフレーズです。賢人が主役のお話は最高でした。きれいにかわっていくのが素晴らしい。恋の行方がハラハラドキドキでした。その後のお話がぜひとも読んでみたい。次回続きを書いてください。ハラハラドキドキの物語に乾杯。あと希望ですがぜひともミステリーやファタジーなどの作風を書いてほしいです。