河合香織のレビュー一覧

  • 母は死ねない

    Posted by ブクログ

    母親としての著者自身のことも折々に交えながら、DVを受けている母親、AID(非配偶者間人工授精)(+α)で子どもを授かった母親、突然失踪してしまった子どもの母親、難病の子どもを持った母親、児童殺傷事件の被害者の母親、中絶を経験した母親、レズビアンの母親、特別養子縁組で子どもを育てる母親、自死を選んだ母親など、様々な状況に置かれた母親を取り上げるノンフィクション。一般的なノンフィクションというよりは、文学的エッセイに近い文体。
    かなり重い、壮絶な状況に置かれた母親がたくさん登場し、胸が苦しくなった。特に、子どもが失踪して後に白骨化した遺体が見つかったり、事件に巻き込まれて子どもが殺されてしまった

    0
    2023年08月25日
  • 母は死ねない

    Posted by ブクログ

    「朝の希望」、「生まれるかなしみ」、「花を踏みにじらないために」

    他者の花畑を踏みにじらないように、自分の花畑を荒らされないように、荒らされたとしてもまだ花は咲いている。
    決して忘れてはいけない。

    0
    2023年06月01日
  • 帰りたくない―少女沖縄連れ去り事件―(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    好物の事件ルポ。しかも本書は、何といってもこの分量が素敵。それでいて、語りつくされていない不全感も特に感じられず、見事に纏められている。あと、本事件の予備知識ゼロの状態から読み始めたこともあり、どんな展開になるのか読めないという、小説的ハラハラもあり。

    0
    2022年11月29日
  • 分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議

    Posted by ブクログ

    一気読み。尾身副座長を中心とした専門家と内閣官房・厚労省のコロナ対策の連携を描く。官僚が無謬性の原則から思っていた以上に硬直していた。それは本来あるべき姿ではない。政策選択によって被害を被る国民の一部からしてみれば甚だ迷惑な話だろうが、間違いもあることを認めて、反省して次に繋げるという謙虚さを持つことが肝要なのではないか(理想論に過ぎないと言われそうだが)。コロナの状況に関する西浦氏のインフォームドコンセントと厚労省のパターナル的対策は科学者と政策担当者の違いを示していて興味深かった。どちらも正しいしどちらも間違っているので答えが出ない。
    押谷さんのブリコラージュの話(p138)は特に大事だと

    0
    2022年03月23日
  • 帰りたくない―少女沖縄連れ去り事件―(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    著者の構成が上手く、一気に読み進めた。少し叙述ミステリ的な要素も感じられた(もちろんフィクション作品では無いが)。
    事件の一断片を切り取っただけでは、結局何も分からないと言うことを思い知らされる。

    0
    2022年02月25日
  • 分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議

    Posted by ブクログ

    間違いを認める所は認める専門家と、間違いをしない事を目的とする役所と政権。
    この間の丁々発止のやり取りは、言葉では表し切れないと思うが、どちら側に重心をおくでもなく、フラットな立場で描かれてるので、それぞれの立場の違いや当事者の覚悟が伝わり、臨場感が感じられた。

    0
    2022年02月11日
  • 分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議

    Posted by ブクログ

    読むきっかけ:新聞広告で知り、専門家会議の運営に興味を持つ。

    尾身氏をはじめとする専門家の矜持に低頭する。

    以下、文中の尾身氏の心に響いた言葉。

    「サイエンスというのは失敗が前提。新しい知見が出てくれば、前のものは間違っていたということになる。そういう積み重ねが科学であり、さらに公衆衛生はエビデンスが出揃う前に経験や直感、論理で動かざるをえない部分がある。一方で役所は間違わない、間違いたくないという気持ちが強かった。」

    「リーダーは感情のプロである必要がある。リーダーとは何かといった本には、決断力やコミュニケーション、大きな方向性を示すことなどが書いてありますが、でももっとも重要で難し

    0
    2022年01月28日
  • 分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議

    Posted by ブクログ

    2020年の年明け以降、世界は新型コロナウイルス感染症に蹂躙された。
    中国・武漢から始まり、世界へと滲みだした感染症は、多くの死亡者を出しながら、野火のように広がった。人と人とが触れ合うことで広がる感染症の性質から、多くの国で都市封鎖(ロックダウン)や活動・往来の抑制が行われ、経済にも大きな影響が出た。
    現在のところ、日本では第五波がほぼ収束し、落ち着きを見せているが、世界全体では感染の再上昇が見られる国もあり、なお予断を許さない。

    本書では、日本で、2020年2月~7月に設置された新型コロナウイルス感染症専門家会議の成立から解散までを追う。
    先が見えない中で、構成員である専門家も、何度か「

    0
    2021年11月08日
  • 分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議

    Posted by ブクログ

    日本における新型コロナウイルス対応の記録。科学者だけで物事を進めることは良くないし、政治家だけでも良くはない。稀に見る事態ゆえに、対応する人員のバランスをとることがとても難しいところであるが、今後の対応を考える上で資料価値のあるノンフィクションだ。

    0
    2021年10月17日
  • 分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議

    Posted by ブクログ

    大変興味深く拝読した。コロナが出てきた直後の意思決定がどのようにされていたのか、断片的な報道では知り得なかったことがまとまっている。未知のウイルスに対する初期対応の難しさがひしひしと伝わってくるまた、どう意思決定者に伝え、国民にコミュニケーションするか、何を課題として議論すべきかという点が、コロナ対策の本質的なテーマなのだとも再認識する。

    読んでいろんな疑問が一年越しに晴れた。なぜあんなにも意思決定が遅く感じられたのか、専門家はどんな立場だったのか、などなど。最終的に思ったことは、政治の意思決定と、科学分野の検証プロセスはあまりにも相性が悪いということ。
    そのギャップを埋めるために、結局は

    0
    2021年09月25日
  • 分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議

    Posted by ブクログ

    尾身先生は日本の宝。
    あと、読んでて西村大臣ってのはけっこうまともな政治家なのかもしれないと思った。厚労大臣の話はほぼ出てこない。

    0
    2021年08月22日
  • 分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議

    Posted by ブクログ

    西浦先生の本を先に読んでいたが、こちらの本の方がより多様な関係者の思いをキレイに整理してくれています。人間ドラマとして面白いです。
    主に専門家側の視点から書かれ、政治、行政批判のトーンが随所に滲んでいますが、政治、行政サイドも色々考えがあり、そう簡単な話ではないんだろうと推察します。

    0
    2021年08月17日
  • 選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子

    Posted by ブクログ

    出生前診断が優生思想と結びついて語られがちな状況は、日本独特のものであることを知った。母体保護法と名前を変えてはいるが、その前身は優生保護法。母体の保護と経済的理由を中絶の根拠と表向きにはしつつも、実態としては胎児の先天的な障害が中絶の直接的な理由になっている。
    NIPTのカウンセリングまでは受けた当事者として、どうしても読まなければならないと思って読んだ。やっぱり、どこにも答えがない。答えがないのが、答え、という言い古されたフレーズが頭をよぎる。
    科学技術の進歩は、人類の身体的あるいは精神的負荷を取り除き、自由の領域拡大を目指してきた。結果、従来、人類に課されていた負荷は軽減された。楽に遠く

    0
    2021年08月07日
  • 分水嶺 ドキュメント コロナ対策専門家会議

    Posted by ブクログ

    新型コロナウィルス感染症対策専門家会議の発足から廃止まで、約5ヶ月間を追ったノンフィクション。招集されたチームの微妙な立ち位置や劣悪な作業環境など、政府の本気度を疑う。厚労省の役人や政治家の態度は想定内だったが、きちんと話を聴ける人がいたことに希望をもてた。たった1年半ほどのことなのに、どれだけ日本が、世界が変わってしまったかに驚く。収束したとしても終わりではない。このウィルスとは長い付き合いになりそうである。

    0
    2021年05月21日
  • 選べなかった命 出生前診断の誤診で生まれた子

    Posted by ブクログ

    河合香織(1974年~)氏は、神戸市外国語大学ロシア学科卒のノンフィクション作家。2004年のデビュー作『セックスボランティア』で注目され、2009年の『ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち』で小学館ノンフィクション大賞を受賞。
    本書は2018年に発表され、大宅壮一ノンフィクション賞、新潮ドキュメント賞を受賞。2021年に文庫化。
    本書は、2013年に始まったある裁判を軸に、人(胎児)の命について問うものである。
    その裁判とは。。。41歳の母親が、胎児の染色体異常を調べる羊水検査を受けたところ、ダウン症という結果が出たにもかかわらず、医師は誤って異常なしと伝えてしまう。そして、母親が出産した

    0
    2021年05月06日
  • 新型コロナウイルスを制圧する ウイルス学教授が説く、その「正体」

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    <目次>
    まえがき
    第1章  新型コロナウイルスの研究最前線
    第2章  ウイルスと共に生きる
    第3章  ウイルスと私

    <内容>
    世界的なウイルス学の権威、河岡先生の話を、ノンフィクションライター河合香織氏が聞き書きをしたもの。大変分かりやすく、コロナウイルスの何が怖く、何をしてはいけないのか、大変分かりやすい。その後の状況などから、「コロナウイルスが季節性があるかもしれない」などは、外れている可能性があるが(8月に第2波が来ているので)、第2章はよく参考になるし、マスコミのもしくはネット上の情報が、如何に杜撰かもよくわかるので、冷静になることができる。研究者なので、大胆な踏み込みはないが、コ

    0
    2020年09月07日
  • セックスボランティア(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    障害者の性をテーマにしたノンフィクション。

    男女の障害者、性の介助の提供者、オランダの性事情、風俗など、関係のある人物をレポートしている。

    「性は生きる根本」
    「全ての人が自分の性について見つめ直すべき」

    などの言葉が響いた。

    性=生であり、性欲≠性交ではなく、精神的、肉体的コミュニケーションであると。

    また障害者だから性のことをタブー視するのではなく、全ての人間がもっと性について向き合うべきとしている。

    勉強になりました。

    0
    2018年11月12日
  • セックスボランティア(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    途中まで読みました(確か出張ホストの話まで)
    重度身体障害者の男性と、健常者の女性の夫婦の話には驚きました。
    女性に障害者の男性とお付き合いしたい、結婚したいと思わせたものは何なのだろう?
    身体こそ不自由だけれど、内面がとても魅力的で、奥様との相性も合うのだろうなと思いました。

    「自分は障害者だから恋愛や結婚は無理だろう」と諦めている方がもしいたら、↑の章だけでも読んでほしいです。

    0
    2020年05月06日
  • セックスボランティア(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    性への興味から。

    非常に読みやすかったです。

    障害をもっていても、そりゃ人間ですものね。障害者の性介護を有償でするにしろ無償でするにしろ賛否両論あるようですが、私は本文中にもあったように、そこにニーズがあるのであればあってしかるべきだと思った。

    ただし、サービスを提供する側にも生活や感情はあるので、そこが有償であるか無償であるべきかは、当事者が判断されるべきだと思う。少なくとも何の手出しもしない外野の者がとやかくいうべきではない、と思う。

    有償であるべき理由として、互いに「お金が絡んだサービスだから」ということで割り切って気軽に付き合えるといメリットには大変納得した思いがしました。

    0
    2018年08月27日
  • セックスボランティア(新潮文庫)

    Posted by ブクログ

    昔、セックスボランティアというものがあると聞いてからずっと興味は持っていた。
    技術や医療が進歩したり、バリアフリー法が多くの施設で義務付けられていたり等、昔よりも圧倒的に障がい者の人が生きやすい世の中になっているはず。
    しかし、障がい者の方の性の話になると途端にタブーな話のように感じてしまう。

    実際私も、読んでいく中で
    「障がいを持っていて、周りに助けられながら生きる事が出来ているのにそれでもなお、必要最低限以上の欲望を満たそうとするのか」と思ってしまい、我に返った。
    結局、自分も障がい者の差別を行ってしまっている。

    恐らく一般的にも「障がいへの理解があり、差別はしない」と思っている人が障

    0
    2017年12月24日