河合香織のレビュー一覧
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母親としての著者自身のことも折々に交えながら、DVを受けている母親、AID(非配偶者間人工授精)(+α)で子どもを授かった母親、突然失踪してしまった子どもの母親、難病の子どもを持った母親、児童殺傷事件の被害者の母親、中絶を経験した母親、レズビアンの母親、特別養子縁組で子どもを育てる母親、自死を選んだ母親など、様々な状況に置かれた母親を取り上げるノンフィクション。一般的なノンフィクションというよりは、文学的エッセイに近い文体。
かなり重い、壮絶な状況に置かれた母親がたくさん登場し、胸が苦しくなった。特に、子どもが失踪して後に白骨化した遺体が見つかったり、事件に巻き込まれて子どもが殺されてしまった -
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一気読み。尾身副座長を中心とした専門家と内閣官房・厚労省のコロナ対策の連携を描く。官僚が無謬性の原則から思っていた以上に硬直していた。それは本来あるべき姿ではない。政策選択によって被害を被る国民の一部からしてみれば甚だ迷惑な話だろうが、間違いもあることを認めて、反省して次に繋げるという謙虚さを持つことが肝要なのではないか(理想論に過ぎないと言われそうだが)。コロナの状況に関する西浦氏のインフォームドコンセントと厚労省のパターナル的対策は科学者と政策担当者の違いを示していて興味深かった。どちらも正しいしどちらも間違っているので答えが出ない。
押谷さんのブリコラージュの話(p138)は特に大事だと -
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読むきっかけ:新聞広告で知り、専門家会議の運営に興味を持つ。
尾身氏をはじめとする専門家の矜持に低頭する。
以下、文中の尾身氏の心に響いた言葉。
「サイエンスというのは失敗が前提。新しい知見が出てくれば、前のものは間違っていたということになる。そういう積み重ねが科学であり、さらに公衆衛生はエビデンスが出揃う前に経験や直感、論理で動かざるをえない部分がある。一方で役所は間違わない、間違いたくないという気持ちが強かった。」
「リーダーは感情のプロである必要がある。リーダーとは何かといった本には、決断力やコミュニケーション、大きな方向性を示すことなどが書いてありますが、でももっとも重要で難し -
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2020年の年明け以降、世界は新型コロナウイルス感染症に蹂躙された。
中国・武漢から始まり、世界へと滲みだした感染症は、多くの死亡者を出しながら、野火のように広がった。人と人とが触れ合うことで広がる感染症の性質から、多くの国で都市封鎖(ロックダウン)や活動・往来の抑制が行われ、経済にも大きな影響が出た。
現在のところ、日本では第五波がほぼ収束し、落ち着きを見せているが、世界全体では感染の再上昇が見られる国もあり、なお予断を許さない。
本書では、日本で、2020年2月~7月に設置された新型コロナウイルス感染症専門家会議の成立から解散までを追う。
先が見えない中で、構成員である専門家も、何度か「 -
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大変興味深く拝読した。コロナが出てきた直後の意思決定がどのようにされていたのか、断片的な報道では知り得なかったことがまとまっている。未知のウイルスに対する初期対応の難しさがひしひしと伝わってくるまた、どう意思決定者に伝え、国民にコミュニケーションするか、何を課題として議論すべきかという点が、コロナ対策の本質的なテーマなのだとも再認識する。
読んでいろんな疑問が一年越しに晴れた。なぜあんなにも意思決定が遅く感じられたのか、専門家はどんな立場だったのか、などなど。最終的に思ったことは、政治の意思決定と、科学分野の検証プロセスはあまりにも相性が悪いということ。
そのギャップを埋めるために、結局は -
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出生前診断が優生思想と結びついて語られがちな状況は、日本独特のものであることを知った。母体保護法と名前を変えてはいるが、その前身は優生保護法。母体の保護と経済的理由を中絶の根拠と表向きにはしつつも、実態としては胎児の先天的な障害が中絶の直接的な理由になっている。
NIPTのカウンセリングまでは受けた当事者として、どうしても読まなければならないと思って読んだ。やっぱり、どこにも答えがない。答えがないのが、答え、という言い古されたフレーズが頭をよぎる。
科学技術の進歩は、人類の身体的あるいは精神的負荷を取り除き、自由の領域拡大を目指してきた。結果、従来、人類に課されていた負荷は軽減された。楽に遠く -
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河合香織(1974年~)氏は、神戸市外国語大学ロシア学科卒のノンフィクション作家。2004年のデビュー作『セックスボランティア』で注目され、2009年の『ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち』で小学館ノンフィクション大賞を受賞。
本書は2018年に発表され、大宅壮一ノンフィクション賞、新潮ドキュメント賞を受賞。2021年に文庫化。
本書は、2013年に始まったある裁判を軸に、人(胎児)の命について問うものである。
その裁判とは。。。41歳の母親が、胎児の染色体異常を調べる羊水検査を受けたところ、ダウン症という結果が出たにもかかわらず、医師は誤って異常なしと伝えてしまう。そして、母親が出産した -
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ネタバレ<目次>
まえがき
第1章 新型コロナウイルスの研究最前線
第2章 ウイルスと共に生きる
第3章 ウイルスと私
<内容>
世界的なウイルス学の権威、河岡先生の話を、ノンフィクションライター河合香織氏が聞き書きをしたもの。大変分かりやすく、コロナウイルスの何が怖く、何をしてはいけないのか、大変分かりやすい。その後の状況などから、「コロナウイルスが季節性があるかもしれない」などは、外れている可能性があるが(8月に第2波が来ているので)、第2章はよく参考になるし、マスコミのもしくはネット上の情報が、如何に杜撰かもよくわかるので、冷静になることができる。研究者なので、大胆な踏み込みはないが、コ -
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性への興味から。
非常に読みやすかったです。
障害をもっていても、そりゃ人間ですものね。障害者の性介護を有償でするにしろ無償でするにしろ賛否両論あるようですが、私は本文中にもあったように、そこにニーズがあるのであればあってしかるべきだと思った。
ただし、サービスを提供する側にも生活や感情はあるので、そこが有償であるか無償であるべきかは、当事者が判断されるべきだと思う。少なくとも何の手出しもしない外野の者がとやかくいうべきではない、と思う。
有償であるべき理由として、互いに「お金が絡んだサービスだから」ということで割り切って気軽に付き合えるといメリットには大変納得した思いがしました。
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昔、セックスボランティアというものがあると聞いてからずっと興味は持っていた。
技術や医療が進歩したり、バリアフリー法が多くの施設で義務付けられていたり等、昔よりも圧倒的に障がい者の人が生きやすい世の中になっているはず。
しかし、障がい者の方の性の話になると途端にタブーな話のように感じてしまう。
実際私も、読んでいく中で
「障がいを持っていて、周りに助けられながら生きる事が出来ているのにそれでもなお、必要最低限以上の欲望を満たそうとするのか」と思ってしまい、我に返った。
結局、自分も障がい者の差別を行ってしまっている。
恐らく一般的にも「障がいへの理解があり、差別はしない」と思っている人が障