河合香織のレビュー一覧
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ネタバレまたどうして私はこういう重いテーマの本ばかり読んでしまうのだろう。なかなかに、つらい。
河合香織さんの「母は死ねない」が良かったので次はこちらを読みました。
北海道で、誤診の結果ダウン症の子供を産んだ母親が、医師を相手取って裁判を起こしたできごとのくわしいルポです。当然、世間からさんざん批判されただろうと予測できる。羊水検査をして「異常ありません」と診断され、出産したところ、重い合併症を伴うダウン症の赤ちゃんが生まれた。・・・それで裁判を起こした、ということだけ聞くと「ダウン症の子どもなんて生みたくなかった!どうしてくれるんだ!」という裁判なのか?となってしまう。
河合香織さんは、原告の母親「 -
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なかなかに衝撃的な本だった。
赤ちゃんの子育てって、本当に自分がこの子が生きるか死ぬかを預かっているという恐怖との戦いだと思う。自分の色々なやりたいことをすべて後回しにして、子どもに合わせてひたすら毎日を重ねていく。母になるということは自分の一部を子どもに捧げることなのではないかと思うくらい。でもその分、子どもから返ってくる喜びも大きい。
でもそれはあくまで自分だけの体験であって、この本を読んで母の多様性と、共通する何か、の両方を感じた。病気、障害、事故、死別、中絶、それぞれの母が色々な経験をしているけれど、誰が良い母で、誰が悪い母というのはないと思った。皆ただ懸命に子育てをした母であるという -
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"私自身は、きっとこれからも間違い続け、不完全な母であり続けるだろう。また知らず知らずに、子どもを傷つけてしまうに違いない。それでも「あなたのために」という言葉だけは言わないようにしたいと誓った。"(p.146)
"それぞれが抱える絶望を、家族だからといって聞かなくていいし、語らなくていい。家族が向き合って、絶対的な愛情を持つべきだという規範にとらわれたとたん、苦しくなる。家族はそっぽを向いていても、ただそこにいるだけでいい。痛みを見つめ合って話し合わなくてもいい。同じ山を見て、同じ歌をくちずさむことができればいいのだ。"(p.210) -
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昨日に引き続き「小さな命」を考える本です。
出生前診断の誤診によってダウン症の子を出
産した女性が、誤診した医者を訴えた裁判の
ルポです。
「では誤診でなければ、中絶を選んだのか?」
と問われると、そうではないと言う。
単純に第三者的な立場で考えてしまうと、ダ
ウン症であると知らされていなかったので、
しなくてもよい苦労や悲しみを背負うことに
なった。それを訴えるのだろう、と思えます。
しかし訴えた理由はそんな単純ではありませ
ん。
「命とは?」「母親の思いとは?」「生きる
とは?」
本当に本当に、人間の根源について考えさせ
られる一冊です。 -
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HONZノンフガイドから。もう何だか、ひと昔前という気すらしてしまうけど、コロナ渦にまさに突入せんとする最初期の混沌を収めた一冊。この時期は、さっさと任務をほっぽり出した前々首相の末期とも重なる訳だけど、良心たる本会議の存在すらもし無かったとしたら、果たしてどこまで愚かな暴走が突き進んでいたんだろう…と、改めてゾッとする。本書は表立って、まだまだ不気味な謎が多かったウイルスに対し、その時点での最適解を求めんとする会議メンバーの奮闘録なんだけど、その裏側に見え隠れする、ときに有害とすら思える政権の存在もしっかりと記録されている。今後当然、後方視的検証も重要になってくるけど、その中で、本書は重要な
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◯とても面白い。NHKのドキュメンタリーさながら、臨場感があり分かりやすい。
◯専門家会議って国の組織じゃなかったのか、から、感染症の感染拡大、専門家たちの市民を守るという思い、専門家が訴えられる?!まで、波瀾万丈というかジェットコースターのような展開。
◯著者のスタンスも非常に好感。事実をどちらの立場に立つのでもなく、ありのまま伝えようという意志を感じる。だからこそ、行政、政治家、専門家と幅広い取材が可能となったのだろう。その記載内容に信頼がおける。
◯去年のその頃の自分を思い出しながら読めるという同時代性も良い。これは是非多くの人に読んでもらいたい。 -
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コロナ対策に関する提言で頻繁にマスコミに登場した「専門家会議」。3密とか、人との接触7割減とか、さまざまな提言を発信されました。その専門家会議は発足から約半年を経て、後継の組織へと引き継がれたのですが、その半年間に政権や厚労省などとどのようなやり取りがあったのかを追ったドキュメントです。
感染症の専門家であっても新型コロナは初めて遭遇する感染症で、”サイエンスは失敗が前提。新しい知見が出てくれば、前のものは間違いということになる。そういう積み重ねが科学であり、公衆衛生はエビデンスが出そろう前に経験、直感、論理で動かざるを得ない部分がある(本書より尾身先生の発言を抜粋)”という姿勢で臨まれたのに -
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対策案の考案、厚労省等の関係各所との調整、国民への情報発信などを、凄まじいスピード感で実行していった専門家の先生方に、敬意を表したい。
もどかしく感じたのは、省庁内部や、国と地方など、縦割りに伴う信頼関係の薄さ、連携不足であった。
特に、感染状況のシミュレーションに用いる感染者数等のデータを、地方自治体の発表資料から手作業で引っ張ってきていたことには衝撃を受けた。
最近になって、科学的には徐々に解明されてきているにも関わらず、ワクチン接種や医療体制拡充などの対策がなかなか進まないのも、各組織間の連携がうまく行っていないことも原因にあるように思う。
専門家会議に参加されていた先生自身による -
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読み始めた直後は、文章があまり上手くないのだと思った。読みながら、どこに着地するのかが全く想像出来なかったから。
でも読み進むうちに、この本は、これまで自分ごととして考えた事がなく、気づきもしなかったような答えのない何かへの無数の問いかけであり、本を閉じた時にどこかに着地できるようなものではないのだと気づいた。
本書は、命の選別についてのみ書かれた本ではなく、私たちの生きる社会全体の矛盾や、マイノリティへの見えない圧力を炙り出したものだ。
善も悪も幸も不幸も、誰も明確な線をひけないものを、私たちは社会を維持するために法律というルールで仕分け続けている。
そこで、法の抜け穴に落ち込んだ者は、あ