前野ウルド浩太郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
孤独なバッタが群れるとき
『バッタを倒しにアフリカへ』エピソード1
著:前野ウルド浩太郎
光文社新書1200
感動しました
本書は、農学部の学生が、紆余曲折を経て、前野ウルド浩太郎として、生まれ変わるまでの秘話である
であると同時に、サイエンスのごとき科学雑誌のような雰囲気の書である
図表や、写真や絵が満載されています
学者とは、1000以上の卵や幼虫たちの大きさや色をはかったり、マニュキュアでバッタの目に塗ったり、夜通し触覚を触りつづけたり、頭脳以外にも、その体力を鍛える必要がある人種であると感じました。
気になったのは、以下です
・いつの頃からか人類はこの生き物をバッタ(Locust)と呼び始めた
その語源は、ラテン語の「焼け野原」からきている
古代ヘブライ人はサバクトビバッタの独特な翅の紋様は、ヘブライ語で「神の罰」と刻まれていると言い伝えた
・世界的にバッタとの闘いは戦争とみなされている
・髪が女性の命なら、論文は研究者の命
・先生の采配に恐れおののいたと同時に、先生についていけば昆虫学者になるのも夢でない。やったことが形となり、世の中に発信できた充実感、努力が論文という形で実を結ぶ達成感は他の何物にも代えがたいことを知った
・いやぁ、僕はねぇ、虫を買ってるんじゃないよ。虫に飼われているんだよ
師匠⇒弟子⇒孫弟子と世代を超えて伝わった相蓄積の謎への挑戦が始まった
・この先ずっと研究していくために色々とスキルを身につけた方がいいのではないかと考えていた
自分には特別な技術もないし、装置も薬品もまったく使えない
ただひたすらバッタを飼育するだけの私をあざける声も少なからず聞こえていた
・そうだ、自分は手法や技術を覚えるために研究したかったわけではない
虫の研究がしたかったのだ
突如、虫のことが知りたいという少年時代に思い描いた夢が蘇ってきた
・「繰り返し見続けることで、見えてくるものがある」この研究で得た教訓だった
・私は、王道から外れた邪道こそが発見を生み出す近道だと考えていた
「非常識なことをやるためには常識を知っておかねばならない。不真面目なことをやるためには、真面目をしておかねばならない」との教えを頂いた
・私たち研究者は論文に自分の名前がある限り、発表論文の全責任を負い、その当時得られている証拠に基づきもっとも理にかなった結論を導き出している
・論文発表すれば、賞賛されるばかりでなく、批判の矢面に立つ恐れもあるため、ひじょうに勇気のいる行為だと感じている
・絶対にそうだ、そうに決まっている という先入観はとても危険で、誤解を招くことがある
・たとえ、どんなに長い間言い伝えられてきたことであっても、どんなに偉い先生の言葉であったとしても、それを鵜呑みにすることがいかに危険なことか
・この頃の私のキャッチフレーズは、「誰にでもできることを、誰にもできないくらいやろう」だった
・研究者になるためには、通常、大学や研究所がポストのあきができると公募し、わけこそはという者は履歴書や抱負を郵送し審査される。たった一つのポストに100人も応募してくるのはざらである
・それぞれの能力は厳しい淘汰の過程の中で洗練され、もっとも優れた部分だけが残ったはずだ。洗練されたものは美しいだけではなく、無駄を省き、余力を生む
・この「ウルド(Ould)」はモーリタニアで最高敬意のミドルネームで、「~の子孫」という意味がある
・良く言った!オマエはモーリタニアンサムライだ!今日からオマエは、コータロー・ウルド・マエノ、を名乗るがよい
・君が今まさに自然の中にいることがもっとも重要なことなんだ。昆虫のことを知るためには昆虫の生息地にくるしかない。君は、その暑さ、その風、その寒さを体験しなくてはいけない。そう、バッタを同じように。
・害虫も数を減らせば、ただの虫
・私は、もう昔の前野浩太郎ではない。前野ウルド浩太郎として生まれ変わり、フィールドという新天地に闘いの舞台を移した。
目次
「一杯のラーメン」を「まえがき」にかえて
はじめに
第1章 運命との出逢い
第2章 黒き悪魔を生みだす血
第3章 代々伝わる悪魔の姿
第4章 悪魔を生みだす謎の泡
第5章 バッタde遺伝学
第6章 悪魔の卵
第7章 相変異の生態学
第8章 性モザイクバッタ
第9章 そしてフィールドへ…
おわりに
謝辞
新書版あとがき
参考文献
索引
ISBN:9784334046095
出版社:光文社
判型:新書
ページ数:412ページ
定価:1060円(本体)
発行年月日:2022年05月
2022年05月30日初版1刷発行
2022年06月15日2刷発行 -
購入済み
面白すぎた
あまり本を読む機会がないのですが試し読みで気になったので、初めて電子書籍で買ってみました。内容に引き込まれ、サクサク読めてしまった。昆虫は苦手ですが、最後まで読み切れました。買ってよかったです。
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Posted by ブクログ
2020年、アフリカの砂漠から4000万匹にも及ぶバッタの集団がアジアめがけて進軍中と言うニュースを発見。インドの次は中国か?と言う記事に、迎え撃つ中国軍は、アヒル10万匹の陣容を整える予定と言う、なんとも胸熱な展開に童心に戻ってワクワクしていたところで、この本の存在を知ってしまいました。(バッタを倒しにアフリカに行った人が書いた本より後でバッタがアジアに? 察し)ちなみに、アヒル10万は人間の食事になる予定と言うオチも胸熱だったがあれはどうなったのか?
しばらく寝かせておいたら児童文学的なポジションで新装された様なので、手にとって読み始めたら、この著者(ウルド、これも文中で秘密と顛末が明かされる)は、胸熱な人材と即座に分かりました。なぜなら、本の題名は”バッタを倒しに”とあるのですが、ウルドの本心、願望は”バッタに食べられたい”と… 更に、バッタの研究をし過ぎてバッタアレルギーになっちゃうってw これは、NS釣法を編み出した釣り師が、真鯛釣りの時に使うアミ餌を触り過ぎてアレルギーになっちゃったのと同じパターンのやつ。(腸管から吸収していれば免疫細胞は無害と認識するが身体の傷口から入ると異物として認識して、以後アレルギー反応を起こしちゃうやつ)
この本では、バッタ(サバクトビバッタ)が、集まると変身して凶暴になると言う、書いていて欲しいことは当然ながら書かれているし、モーリタニアと言う国と日本についての繋がりも触れられているし、モーリタニアではヤギがご馳走である事、程度の知識が得られる。
地味に良いなと思う点は、大学院を出た博士の身の振り方を書いているところ。海外の研究者も転々としながら生き場所を見つけている記述があったりしたのを読んだ事(『天才数学者、ラスベガスとウォール街を制す』など)があるが、ウルドは研究者として金を貰う事に執着している点が生々しいし清々しい。京都大学から資金を貰えた事も凄いなと、まぁ凄いのはあげた方なのかもしれないけど。海外ものは、その頭脳で別の職を見つけて成功した話が多い印象。(株とITに関する本)
あと、ウルドが研究の段取りをしっかり考えているところや、生き残り戦略として何をしたのかなど、児童文学書としても綺麗事で終わらせない味がある。
そして、肝心要のバッタを倒せたのか?夢であったバッタに食べられたのか?それは読んでのお楽しみ。(まあ、上の流れでだいたい察し…)
砂漠で生活しながらのリスクもだいたい経験していて、サソリに刺されて、その後の件は人智を超えているなと感心させられる。
ウルドは、現在、国際農研と言う所に所属しているようで、今も夢を追い続けている模様。
自分の好きな事が長期的に見れば世界を変える力になるって凄い事だし、現在進行形で頑張り続けて欲しいと思える良書だと思いました。
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Posted by ブクログ
『バッタを倒しにアフリカへ』がものすごく面白かったので、こちらも読んだが、個人的には本著のほうが好み。特に研究室でのバッタ研究の様子は珠玉、こんなに面白いことがあっていいのだろうか、と脳内から変な液がでてしまいました。あまりに面白かったので、この本を読んだ人は脳から液をだしながらサバクトビバッタを欲するようになり、ポキモンよりもサバクトビバッタを集めにアフリカ旅行が大流行り、また買い求めるというサバクトビバッタブームが到来、日本人に売れるとなると某国の商人もこぞって砂漠で群生相サバクトビバッタを乱獲、そうしてアフリカでの神の罰は消えてしまい一見落着。ただ、日本にもちこまれたサバクトビバッタはカゴから抜け出したり、飼いきれなくなった人が野に放ったりして、、恐怖は続くのだった、。というような妄想をしてしまったぐらい面白かったです、再読必至。所謂”いちびり”な話だけでなく、科学的根拠に基づいたシリアスなデータや考察もふんだんに盛り込まれグイグイと引き込まれる。フィールドワークも大切だが、研究室でもアドベンチャーだと感動します。リアルインディージョーンズな前野先生、すばらしいです。
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Posted by ブクログ
モーリタニア国立研究所でバッタ研究に勤しむ前野ウルド浩太郎さんの、研究の記録。フィールドの生物学シリーズの一冊。
前野さんのブログでも書かれていたが、少年の頃に、バッタ大発生の記事で、女性が緑色の服を着ていたばかりに、バッタの群れに服を食べられてしまったという話を知り、いつか自分もバッタに服を食べられたいと願い、そのまま大きくなってバッタ研究員になった。初志貫徹というか、すごい人である。
サバクトビバッタは、主にアフリカで、しばしば大発生し、バッタの群れがやってくると、草という草が食べ尽くされる被害が起こる。
サバクトビバッタは孤独であるときは緑色、群生しているときは黒い姿をし、知らない人は種が違うのではないかと思うくらいの差がある。
孤独な環境で生育したものを孤独相、密集した環境で生育したものを群生相という。
その孤独相、群生相が、どのような条件で移り変わるのかを、メスのバッタが産んだ個体を調査している。
その調査したバッタの数が半端ない。ひとつの論文を書くのに、相当数のバッタを調査しているのである。
また、すぐに使う当てがなくても、孤独相、群生相のバッタを多めに飼育して、研究のアイデアが出たときに即座に研究に取り組めるようにしている。凡人にはできないと感じた。
研究内容もすごいが、バッタ博士の文体も面白く分かりやすかった。
サバクトビバッタ研究に人生を捧げた前野さんの生き様が、絶対に真似できないが、すごい。
ミドルネームのウルドは、モーリタニア国立研究所所長さんにいただいたものである。それを論文のオーサーネーム(著者名)にも入れて使うようになったのだから、その心意気が素晴らしいと感じる。
クマムシ博士の堀川さんの著書やブログでバッタ博士の前野さんのことを知ったのだが、博士になる人はやっぱりすごい。