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Posted by ブクログ
なぜその研究が必要になったかの背景、限られた資源・労力で研究を進めるための手法、そしてその結果が分かりやすく書かれており、サバクトビバッタの知識を深めることができ、また研究者の仕事について理解が進んだ。
特にバッタのどの感覚器官が群生化に影響を調べる際には、バッタにマニキュアを塗る手法をとっており、こんな手法もあるのかと感心した。
グラフのサンプル数が非常に多く、調査には膨大な時間と労力がかけられていることが伝わってきて驚いた。(p.202のグラフでは5000個程度の卵長、孵化幼虫の種類、1卵塊あたりの卵数を調べている。)
筆者は次々に新たなことを解明していっており、賞や奨学金も獲得していることから、優れた研究者であることが窺える。一方で、自分は愚直なタイプとの自己評価、成果は周囲の支えによるものだとユーモアを交えて語り、面白く、好感が持てた。
Posted by ブクログ
孤独なバッタが群れるとき
『バッタを倒しにアフリカへ』エピソード1
著:前野ウルド浩太郎
光文社新書1200
感動しました
本書は、農学部の学生が、紆余曲折を経て、前野ウルド浩太郎として、生まれ変わるまでの秘話である
であると同時に、サイエンスのごとき科学雑誌のような雰囲気の書である
図表や、写真や絵が満載されています
学者とは、1000以上の卵や幼虫たちの大きさや色をはかったり、マニュキュアでバッタの目に塗ったり、夜通し触覚を触りつづけたり、頭脳以外にも、その体力を鍛える必要がある人種であると感じました。
気になったのは、以下です
・いつの頃からか人類はこの生き物をバッタ(Locust)と呼び始めた
その語源は、ラテン語の「焼け野原」からきている
古代ヘブライ人はサバクトビバッタの独特な翅の紋様は、ヘブライ語で「神の罰」と刻まれていると言い伝えた
・世界的にバッタとの闘いは戦争とみなされている
・髪が女性の命なら、論文は研究者の命
・先生の采配に恐れおののいたと同時に、先生についていけば昆虫学者になるのも夢でない。やったことが形となり、世の中に発信できた充実感、努力が論文という形で実を結ぶ達成感は他の何物にも代えがたいことを知った
・いやぁ、僕はねぇ、虫を買ってるんじゃないよ。虫に飼われているんだよ
師匠⇒弟子⇒孫弟子と世代を超えて伝わった相蓄積の謎への挑戦が始まった
・この先ずっと研究していくために色々とスキルを身につけた方がいいのではないかと考えていた
自分には特別な技術もないし、装置も薬品もまったく使えない
ただひたすらバッタを飼育するだけの私をあざける声も少なからず聞こえていた
・そうだ、自分は手法や技術を覚えるために研究したかったわけではない
虫の研究がしたかったのだ
突如、虫のことが知りたいという少年時代に思い描いた夢が蘇ってきた
・「繰り返し見続けることで、見えてくるものがある」この研究で得た教訓だった
・私は、王道から外れた邪道こそが発見を生み出す近道だと考えていた
「非常識なことをやるためには常識を知っておかねばならない。不真面目なことをやるためには、真面目をしておかねばならない」との教えを頂いた
・私たち研究者は論文に自分の名前がある限り、発表論文の全責任を負い、その当時得られている証拠に基づきもっとも理にかなった結論を導き出している
・論文発表すれば、賞賛されるばかりでなく、批判の矢面に立つ恐れもあるため、ひじょうに勇気のいる行為だと感じている
・絶対にそうだ、そうに決まっている という先入観はとても危険で、誤解を招くことがある
・たとえ、どんなに長い間言い伝えられてきたことであっても、どんなに偉い先生の言葉であったとしても、それを鵜呑みにすることがいかに危険なことか
・この頃の私のキャッチフレーズは、「誰にでもできることを、誰にもできないくらいやろう」だった
・研究者になるためには、通常、大学や研究所がポストのあきができると公募し、わけこそはという者は履歴書や抱負を郵送し審査される。たった一つのポストに100人も応募してくるのはざらである
・それぞれの能力は厳しい淘汰の過程の中で洗練され、もっとも優れた部分だけが残ったはずだ。洗練されたものは美しいだけではなく、無駄を省き、余力を生む
・この「ウルド(Ould)」はモーリタニアで最高敬意のミドルネームで、「~の子孫」という意味がある
・良く言った!オマエはモーリタニアンサムライだ!今日からオマエは、コータロー・ウルド・マエノ、を名乗るがよい
・君が今まさに自然の中にいることがもっとも重要なことなんだ。昆虫のことを知るためには昆虫の生息地にくるしかない。君は、その暑さ、その風、その寒さを体験しなくてはいけない。そう、バッタを同じように。
・害虫も数を減らせば、ただの虫
・私は、もう昔の前野浩太郎ではない。前野ウルド浩太郎として生まれ変わり、フィールドという新天地に闘いの舞台を移した。
目次
「一杯のラーメン」を「まえがき」にかえて
はじめに
第1章 運命との出逢い
第2章 黒き悪魔を生みだす血
第3章 代々伝わる悪魔の姿
第4章 悪魔を生みだす謎の泡
第5章 バッタde遺伝学
第6章 悪魔の卵
第7章 相変異の生態学
第8章 性モザイクバッタ
第9章 そしてフィールドへ…
おわりに
謝辞
新書版あとがき
参考文献
索引
ISBN:9784334046095
出版社:光文社
判型:新書
ページ数:412ページ
定価:1060円(本体)
発行年月日:2022年05月
2022年05月30日初版1刷発行
2022年06月15日2刷発行
Posted by ブクログ
「バッタを倒しにアフリカへ」を読み、続けて「バッタを倒すぜアフリカで」を読んだあとに読みました。読む順番的にどうだったかは難しいところですが、前に2冊読んだことが功を奏して、若干、斜め読みでしたが内容は理解できた思います。前2冊と明らかに違うところは、より学術書的であることだと思います。難しさもありますが、箸休めのようなコラムが入れているなど読みやすくなるように工夫していると思います。著者が子どもころ夢中になって読んだ「ファーブル昆虫記」のような昆虫(昆虫の面白さや不思議さ等)を深掘りしていくような楽しさは感じられました。昆虫が大好きな子ども達に読んでもらいたいですね。
Posted by ブクログ
文章はクールだけどたぶん熱い男の半生を描いた本。
熱い男といっても、昔から一途にバッタを愛してきたわけじゃなく、戸惑いながらもなんとなくバッタを選んだところ、研究者としてやれてきてしまった(失礼な言い方だけど、いい意味で)というものを感じてリアルでとてもよかった。
単身アフリカに行ったときと数年経ったときとでは、研究者として全然違う感じがして、知り合いでもないけど本当によく頑張ったと思ってうれしかった。
アフリカのバッタによる被害(蝗害)の描写には力がこもっていて、著者の問題意識の高さと訴えが伝わってきた。実際、アフリカの蝗害は凄まじいもので、想像しがたいほどのバッタの群れが襲うんだろうと考えるけれど、それすらも優に超える規模なんだろう。
どこかで講演でもやっていたら話を聞きたいな。
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