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Posted by ブクログ
2017年発行の前作『バッタを倒しにアフリカへ』。たまたま行った本屋でコーナーの一角にたくさん平積みされていた。全身緑の衣装で眼光鋭く虫取り網を構えるバッタ博士こと前野先生の写真は陳列されている本の表紙の中でも一際目立っていた。本を手に取ってパラパラとめくってみると「バッタに食べられたい」とかいう文言が目に飛び込んでくる。「新書らしからぬ」というのが最初の印象だった。しかし、いざ買って読んでみると、バッタの生態のみならず、アフリカの文化や、社会人としての働き方など、著者の人生がぎゅっと詰め込まれた、瑞々しい体験が綴られている本で、働き始めたばかりで失敗続きの私は、先生が遠い異国で奮闘する姿とその知見に大いに励まされた。
続巻が出た暁には絶対に新刊を本屋で買うのだ、博士の活動費の足しにして頂くのだ、と心に決めており、2024年に本書『バッタを倒すぜアフリカで』が出た時は喜び勇んで本屋に買いに行った。それからずっと積んでいたけれど2026年になってやっと読んだ。
私が働いている職場では、2019年のコロナ禍をきっかけに、海外拠点から来ていた社員さんの多くが帰国してしまった。コロナが収束していけば以前のように色々な国籍の人たちが行き交う風景が職場に戻ってくるかと思っていたけれど世界の緊張感は増すばかりで、そんな風にはならなかった。いろいろな国で戦争が増え続け、2026年2月末の中東情勢緊迫化に伴ってホムルズ海峡が封鎖されてから、いよいよ私の生活にも色々な影響を感じるようになった。必要な資材が入ってこなくて仕事のスケジュールに影響が出たり、カルビーのポテトチップスが白黒パッケージになったり。
閉塞感を感じる日々の生活の中、『バッタを倒すぜアフリカで』で前野博士が示してくれる、壁を真正面から突破し続ける姿は、前巻と同様にやっぱり励まされた。
正面から突破といってもすぐに壊せる壁ばかりではない。何が起こっても、世界中の伝手をつかって研究を続ける突破力もすごいのだけれど、絶対にこの方向で貫通すると信じて、熱心にやり抜く忍耐力にも感嘆する。スプーンで一さじずつすくって厚い壁を掘り進めるがごとく。研究や論文というものはなんと地道な積み重ねなのだろう。
社会を維持するために対立をどのように管理するのかは大切である、という大きな関心から、サバクトビバッタの繁殖行動が果たしてどのように雌雄間の性的対立にかかわる問題を解決しているのか、という流れで論文を執筆し始めた。
『バッタを倒すぜアフリカで』p.484より
サバクトビバッタは普段、雌の集団と雄の集団が別々で生活していて繁殖の時に雄雌は群れを成すのではないか、という着眼点から博士は沙漠で過酷なフィールドワークに挑む。過酷であるし、予想外のアクシデント続きでつらい。でも語り口がおもしろおかしい。ユーモアのところを書いちゃうと、ギャグの面白い所を説明する野暮なヤツみたいになってしまいそうだからやめておくけれど、今の時代に漂っている閉塞感は集団幻覚でも患ってるのかもしれないと思うくらい、読んでいるとワクワクしてくる。
アフリカはイスラム教徒が多い国で、日本で暮らしている私にとっては全く馴染みの無い国だけれど、著者のディープなアフリカ暮らしの目線から書かれている人々の生活ぶりはパワフルで、親しみに溢れている。論文調の文章を好む人はこの本を回りくどく思う人がいるのかもしれない。しかし、広く色々な人に読んで欲しい、色々な人の興味関心を喚起したい、という願いが一冊の本に貫かれていて、私のように世界を狭く生きている人間の心を打つ。
専門外の人へ説明することを徒労に感じたり、対立相手はエネミー!になる事が組織的にも個人的にも多くなっている。もし「アフリカの農作物をバッタが食い荒らしている現状を知らない無知な読者(お前)」という雰囲気をこの本が持っていたら私は読み切れなかったと思う。
「こんなことも知らないのか」に耐えられない非力な私(読者)にどこまでも並走してくれる、懐の深い一冊だった。
Posted by ブクログ
青年記としての色合いが濃かった「バッタを倒しに〜」に比べ本著は研究色が強い。とはいえ学術書ほどお堅くはなく、専門的な分野もすんなりと頭に入ってくる。
この本を読まなければバッタ学なる学問
永久に知ることはなかった
孤独相と群生相について詳しく知る事ができて知的好奇心が満たされる
バッタなんて何の興味も関心も無かったのに
今やどんなバッタでも見つけて観察したい気分
「バッタを倒しに〜」の中で著者に匹敵する濃いキャラだったティジャニの話もがっつり楽しめた!
表紙の写真
もう一人はティジャニだった!
著者にとってはバッタ研究の欠かせない永遠の相棒なんだね
バッタの繁殖行動を解明し、バッタ被害の
防除研究に貢献していくであろうこれから
著者のバッタ愛から導かれた必然だと思っていたけれど、逆境や挫折も同じくらい運命を引き寄せる力になっていたのかもしれない
論文発表にこぎつけた本著
新たなスタート地点に立っているウルドさん
バッタ共々何かの機会でまた出会えたら嬉しいな
Posted by ブクログ
いゃ〜、面白かった!
「バッタを倒しにアフリカへ」の続編です。
前作のレビューで筆者の文章が面白いと書きましたが、今回は圧巻の約600ページ!
しかもご本人曰く、「学術書」と言われるように、研究内容もしっかり触れ、それが最終的にどのように活かされるかまで分かりやすく解説され、大変楽しく読みました。
私は商業雑誌への依頼原稿しか書いたことないけど、共著者としてスタッフの論文投稿でリジェクトを繰り返してアクセプトされた時の嬉しさは何度か経験あります。日本語でも大変なのに、研究者の皆様の熱意と努力には頭が下がります。
そして最後にいろんなものが報われて良かった!
あとは婚活がうまくいきますように!
オススメです♪
Posted by ブクログ
前作の「バッタを倒しにアフリカへ」は論文発表前ということで、いろいろ書けなかった部分もあったそう。今回はそこら辺もしっかり網羅、みっちり600ページ。厚い。
相変わらずの前野節がさらに絶好調でニヤニヤしちゃう。
前野さんが取り組むのはバッタの大発生、ことに繁殖の謎を明らかにする研究。その結論に至るまでの観察・実験から研究業界のあれこれ、論文が完成するまでの紆余曲折がギチギチに詰まっています。
世界中をあちこち飛び回っていろんな人と出会ったり、研究に刺激を受けたり。何より「巨人の肩に乗ってる」という、諸先輩方へのリスペクトがそこかしこに感じられるとこ。研究者あるあるなのかな、ジーンとしちゃう。
自身の婚活は二の次にバッタのカップル達を見守り続け、ついに論文を発表。どこに行ってもみんな大喜びなのは、前野さんの人柄(と気前のよさ)あってこそ。
しかし。なんならバッタより気になっちゃうのはやっぱりティジャニ。
私も「バッタを倒しに…」買いましたので、その印税がティジャニを潤わしたと思うと「もうちょっと用心しなはれ」と言わざるを得ない。
それでも憎めないティジャニ。前野さんとのやり取りもほほえましいし、彼が有能すぎる相棒だったのは表紙からも伝わってきます。
前作はバッタに会えなかったり、スパゲティでゴミムシダマシを捕まえたりしていましたが、今回は「もうバッタはしばらくいいや」ってくらいずっとバッタ。
今なら私もけっこう詳しいかも!
Posted by ブクログ
これほど続編を待ち望んだ本はなかったかもしれない。前作は薄かったが、今回は600ページもの大ボリューム。あのポジティブでアツい前野ウルド氏が、今回もフィールドワークで戦い、分野をまたいで新たな発見に気付き、多くの人々に支えられながら論文を執筆した。それがPNAS(世界最高峰の総合学術誌)に掲載されたのだから大尊敬である。
本書には「前野ウルド浩太郎」という人間の魅力が詰まっている。PNASに論文が掲載され、日本学術振興会賞も受賞した立派な博士なのだから、もっと偉そうにしてもおかしくないはずなのに、前野氏はまったく飾らない。賢そうに見せようともしない。前作の印税でウハウハな状況を素直に喜び、友に分け与え、自分の感情を隠そうとしない。どこまでも等身大で、ありのままの自分を表現しているから、人はこの男に惹かれるのではないだろうか。
正直、ついに前野氏がサバクトビバッタの防除技術を開発し、モーリタニアを蝗害から守ったのかと淡い期待があった。だが、そうではなかった。異分野を跨いで点と点をつなぎ、疑問に光を当て、仮説を検証し、新たな発見をした。それを論文として後世に残すという偉業を成し遂げていた。何年先になるかはわからないが、誰かの論文が誰かの研究の役に立つ日がきっとくる。その輪の中に前野氏の論文が組み込まれた。我々はその現場にリアルタイムで立ち会えたのだ。それだけで本書を読んでよかったと思える。
助手のティジャニ氏の愛嬌と図々しさは見ていて微笑ましい。前野氏の婚活がうまくいっていないのも、申し訳ないが本書のいいスパイスになっていると思う。幼い頃から両親の背中を見て、「自分もがんばれる素質があると思い込んでいた」「人のためにがんばれる素質を秘めていると信じていた」と語るシーンが特に印象的だった。彼はおそらく、人生の道に迷った時、悩んだ時、自分を信じて自身を鼓舞しながら道を切り開いてきたのだろう。最終章のタイトルのとおり、「結実のとき」を迎えられてよかった。
いつか蝗害の防除技術が開発される。前野氏の研究は、それに近づくための貴重な一歩だったと思う。研究はまだまだ続けられるそうだし、前野氏が蝗害から世界を救う救世主になることを強く願っている。
以下、本書より抜粋。
「父はときおり何かの試験に向けてハチマキをしてがんばって勉強していた。その後ろ姿を見て、自分もがんばれる素質があると思い込んでいた。母が手料理を一生懸命作る姿を見て、人のために何かをできることは喜びであり、自分も人のためにがんばれる素質を秘めていると信じていた。口であれこれ言われたわけではなく、両親の普段の姿から、自分も大人になったらあれこれがんばれるだろうと勝手に思っていた。」
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