古川薫のレビュー一覧
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激烈なまでの大和魂で、処刑されるまで疾駆した吉田松陰。本書は死に臨んで同胞達に訓戒した書である。あまりに死を超越したような覚悟をもって大言壮語する様子は痛快だが、現代においてこうまでして激烈な思想信条をもって行動を取る姿勢は、時代の歓迎を受けないだろう。一つに、科学を取り込んで冷静に考察する態度は重要である。とはいえ、科学の思考をもってただ言論を交わしているということでは、科学など取るに足らないと考えてしまうだろうが、科学によって実際に果実を手にすることができると分かれば、気合い一点張りで進めることはやめ、科学の冷静さを認めることになるのではないか。確かに、吉田松陰の熱情は、今触れてみても、痛
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吉田松陰 留魂録
松陰が牢獄で弟子に遺した遺書。死に対する覚悟、死後のきめ細やかな配慮に 感動する。
「死して不朽の見込みあらば いつ死んでもよし」とする死生観(大和魂)は 生の否定でも、運命論でもなく、生死を超えた生き方、心構えの到達点と感じた。
儒学だけでなく 詩歌にも長けていることに驚いた。「二十一回猛士」が、吉田松陰のペンネームとは 知らなかった。死ぬまでに全力をあげて21回の行動を起こす誓いをこめているらしい。
「身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留め置かまし大和魂」
「至誠にして動かざる者は未だ之れ有らざるなり」誠を尽くせば 人は必ず動かされる(孟子)
「此の心 吾 -
購入済み
戦国時代小説といえば、織田、徳川、豊臣ものが主流で、あとは武田、上杉ものくらい。中国地方の
毛利氏を中心に描いた作品は珍しい。短編集なので手ごろ感があり、文章も読みやすくてあっというまに
完読してしまった。当時は日本全国で合戦が行われていたようで、地元では有名でも、教科書にはほとん
ど載らないような小さな戦いも多かったに違いない。「奇謀の島」には陶晴賢や厳島合戦のことが詳しく
書かれていて興味深かった。
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ネタバレ「初めて先生に見え、教を乞ふものに対しては、必ず先ず何の為に学問するかと問はる。これに答ふるとの、大抵、どうも書物が読めぬ故に、稽古してよく読めるやうにならんといふ。先生乃ちこれに訓へて曰く、学者になつてはいかぬ、人は実行が第一である。書物の如きは心掛けさへすれば、実務に服する間には、自然読み得るに至るものなりと。この実行といふ言はわ先生の常に口にする所なり」
入塾料なし
行動を顧みるノート的なものがあった(今で言うポートフォリオ)
学習の心得として、礼法や規則によって効果があがるのものではなく、師弟の人格的接触によって互いの心が融合するとき、意義・道理が理解できるようになると考えた
咸宜園 -
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吉田松陰が弟子たちに遺した遺書。内容自体は何と言うことはない。解題・本文よりも、本書後半部の訳注者による松蔭の伝記がおもしろい。松蔭をとりまく状況や松蔭の人となりがよくわかる。士籍を失った経緯や幕府の取り調べに対していらぬ自白をしてしまうところなど、松蔭のやや浅はかというか、自ら苦境にはまっていくような面がうかがえる。しかしそれもこれも、結果的には弟子たちに大きなインパクトを与える刑死につながっていくのだ。訳注者が「あとがき」で、松蔭の死とイエスの死を並べて論じているが、なるほどと思った。同じことがソクラテスの死についても言えるだろう。
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ネタバレ久坂玄瑞って、怖いと思っていた。
なんであそこまで狂信的に攘夷を叫ぶのか。
その、イっちゃった感が、すごく怖い。
15歳の時、母を亡くした。
そして、20歳年上の兄も、その年に亡くした。
黒船来航に浮足立ったその時代、藩は久坂玄瑞の兄、玄機に海防策の立案を命じた。
病床にいた玄機は、病を押して海防検索の執筆に取りかかり、徹夜すること数日、筆を握ったまま絶命したのだった。
気落ちした父は、そのたった一週間後にあっけなく亡くなった。
玄瑞が家族を黒船に殺されたと、生涯思い続けたかどうかはわからないが、徹底した攘夷思想は、そこから生まれたものなのかもしれない。
そして、読書のシンクロ、こちらに -
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山口薫氏の少々古い小説。当初は「炎と青雲 桂小五郎篇/木戸孝允編」として1977年から毎日新聞に連載された小説。いま手にしているのは、「桂小五郎」と改題された上下巻です。
先般、司馬遼太郎の「花神」で大村益次郎を読んだとき、「一見変人のようにも見える大村益次郎を、どうして桂小五郎は登用したのだろうか」という疑問がふとわき、桂小五郎について読んでみたくなったからです。
古川薫氏は、山口県の作家であり、長州に関する小説を多く残されています。本書を皮切りに、時間が許すなら他の作品にも手を伸ばしてみたいです。読むなら高杉晋作からみを読んでみたい。
小説は、小五郎が江戸の斎藤弥九郎の練兵館に入門し -
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松陰先生の遺書。
「死は人生の終末ではない生涯の完成である」
というマルティン・ルターの言葉があるが、
吉田松陰の生涯は「至誠」の二文字をもって完成した。
彼が信奉した儒教の祖である孔子も孟子も
一種のしたたかさを持っていたため天寿を全うしたが、
彼は愚直なまでに至誠を貫き、至誠に殉じた。
その姿はキリストやソクラテスと被る。
そして彼の思想は松下村塾の門下生に受け継がれ、
明治維新という奇跡を生み出す原動力となるが、
その際に多くの塾生達が非業の死を遂げて、
それが原因と言ってしまうのは少々強引だが、
日本全体が無謀な戦争に突入していくと思うと、
手放しに称賛する気になれないのも事実であ