古川薫のレビュー一覧
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購入済み
あまりに不平等な人生
ドキュメンタリー風の小説。作者自身の体験がベースになっている。自分が最後に整備し、
メッセージを残した練習機が特攻に使われたことを知り、本作がなかばライフワークの
ような存在になったというが、たしかに行間に作者の気迫のようなものがが感じられた。
ちょっとした偶然や行き違いがもとで、運命的な出会いや別れを体験するというのは
よくある話。まして戦時中ともなれば、ワンタッチの差で生死が分かれてしまうことだ
ってざらにある。生き残れるかどうかはまさに運次第。
前途ある若者が、上層部の理不尽な命令一本で出撃を命じられ、あっけなく散っていく。
一方で無謀な作戦を立案し、大勢の若者を死なせた指 -
購入済み
炸裂!大森流居合術
腕の立つ旅姿の浪人が、行く先々でバッタバッタと悪人退治。主人公の深田清兵衛に思わず三船敏郎を連想してしまった。剣戟シーンの描写が巧みで、臨場感満載。三日で読了。
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吉田松陰
処刑前日に書き終えた遺書「留魂録」
身はたとひ 武蔵の野辺に朽ちぬとも
留め置かまし 大和魂
無念のうちに散ったの思える松陰も
留魂録の中ではこう言っている。
人それぞれの人生には四季がある。
10代で死ぬ者も、その人生の中には四季があると。自分の29年という人生も、実は身を結んでいるのだと。
年数ではなく、その与えられた人生を如何に生きたかにこそ価値があると。
吉田松陰が教育者として当時の中で一線を画していたのは、
身分制度を越えた横の関係で、塾生と繋がっていたことだろう。
身分に関係なく師と生徒が互いに学び合う。
身分制度の束縛が強すぎると藩に松陰が提言したほどの封建 -
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幕末と言えば!な本を久しぶりに読んでみた
なんかビジネス書とか神格化されがちだな~と
前からちょっと毛嫌いしていた久坂玄瑞。
だけど読んでみたらスッキリ。
こういう人間臭さがとても良い(良くも悪くも)
幕末の世に25年の生涯を華々しく散ったといえば聞こえはいいが
吉田松陰とのやりとりが一番面白かった
でも見込まれたから結果的に、吉田松陰の妹と結婚したしとかも思うけど…
それはさておき。
今の吉田松陰の神格化も、たぶん久坂玄瑞がいなかったらここまでなかったと思う
そして最後まで意思を受け継いで行ったのであろうとも。
相当なキレ者だと思うし、これは久坂玄瑞様様じゃないかと
NHK大河ドラマ「花燃ゆ -
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「留魂録」は、幕末の長州藩において、維新回天の原動力となった志士を幾人も育てた吉田松陰の遺書です。この訳は大変読みやすく、後半は松陰史伝も載っているのでオススメです。
中身は門下生に宛てた後事を託す内容になっています。刑死するに至る顛末のほか、死前の獄中生活において出会った有志の士の紹介、そして死に臨んでの松陰の辿り着いた人生というものの境地などがまさにありのままに書かれています。
全編松陰の思いが刻み込まれていて感慨深いものがありましたが、特に深く感銘を覚える箇所がありました。その一つが有名な「人生の四季」を述べるところです。
「四季について」は、「どんなことをしようとも、人は生まれて -
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まず疑問に思ったこと。留魂録は果たして遺書か?それとも遺言か?どちらでとらえるかで、松陰の伝えたかったメッセージの意味が違って見えてくる。著者は遺書ととらえている。死生観を綴っているところは特にその印象が強い。しかし私はこれを遺言ととらえた。なぜなら、松下村塾の門下生はその意思を受け継いだからだ。松陰の攘夷論、教育観、人生観には非常に感銘を受ける。しかし、伝えるのは「生きること」と「教育」の2つであってほしかった。討幕や暗殺といった過激な思想まで伝え、そして自ら大獄に死してしまったがために、死が美化され、門下生の大半も死に至り、代わりに「維新=暗殺」という観念だけが、昭和初期まで生き残ってしま
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桂小五郎・・・はどんな人だったのかというと、 いわゆる伝奇小説に描かれているような“怜悧さ” “俊敏さ” “先見の明” は、・・まぁ あるにはあった。 が
現実の桂さんってもっと失敗もしたし、周囲の人がドン引きするようなこともやったりしていたし後世の人々からみて批判されるようなことだってしてた。(維新後の、キリシタン弾圧とか)
それに、多くの作品で知られるような 攘夷運動(幕府に対するテロル行為等)はほとんどやってなかった。ていうか、そーゆうことやってたのは若手長州人たちで、桂さんはというと彼ら後輩の暴発行為を兄貴然としてたしなめたり、説教したり、説教しすぎて高杉晋作や伊藤俊輔からちょっと敬 -
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「自敬に徹したこの最後のサムライにとって、世上の毀誉褒貶は無縁のざわめきでしかなかった。」
古川さんの昨年出版された最近刊。
乃木希典を描いた小説かと思い読み始めましたが、評伝のような作品でした。
明治を生きた性格と境遇の対照的な二人の軍人、乃木希典と児玉源太郎を多くの史資料を参考にして読み解いています。
乃木希典を描いた『軍神』、児玉源太郎を描いた『天辺の椅子』の著書をもつ古川さんにとっては得意分野です。
司馬遼太郎氏の『殉死』を読み
―これでは乃木さんがあまりにも可哀そうだ。
という衝動から出発し、乃木に関する記事の誤謬をただそうとこの作品を書き上げられたそうです。
「長州ぎらい」とい -
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直木賞作家、古川薫さんの中山忠光暗殺について書かれた作品です。
来月、このあたりに行くかもしれないので再読してみましたが、つくづく、歴史って面白い!ということを再確認しました。
中山忠光は明治天皇の叔父にあたり、攘夷過激派の公卿として知られ、尊攘派の志士と交わり活動していました。
後に天誅組の首領となり文久三年(1863)大和で挙兵しますが、戦いに敗れ長州藩へ亡命。
しかし、八・一八の政変で長州を頭とする尊攘過激派が京より一掃されると長州藩内でも俗論党が台頭してくるにおよび、もてあました長府藩により暗殺されてしまいました。
ちなみに、潜伏中に側女として仕えた恩地登美子との間にできた女児が後に -