伏見威蕃のレビュー一覧
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マーク・グリーニー『暗殺者の奪還 下』ハヤカワ文庫。
暗殺者グレイマン・シリーズ第14弾。
ロシア国内も中国や北朝鮮のように国家機関の官憲による警邏と厳しい監視が行われていることに驚く。ロシア、中国、北朝鮮は社会主義や共産主義などではなく、救いようもない独裁主義の国家なのだ。
しかし、日本とは異なり、こうした国々がインテリジェンスに長けているのは厳しい監視と情報統制により不穏分子を排除するためなのだろう。
そんなロシアにグレイマンとザック・ハイタワー、マット・ハンリーたちが反ロシア政府組織とウクライナ軍を率いて立ち向かうのだからたまらない。
シリーズの中で一番であろう最新の軍事兵器を駆使した激しい戦闘シーンに息を呑む。
過酷な状況の中、ロシアに上陸したジェントリーは文字通りグレイマンとなり、モスクワに暮らすロシア人支援者の元を訪ねる。ジェントリーは、支援者を説得し、反政府組織とコンタクトを取ることに成功する。
しかし、ジェントリーのロシア潜入はロシア連邦保安庁のFSBが仕掛けた大きな罠だった。FSBはゾーヤを収監する矯正収容所にスペツナズを集結させ、過去に何度も苦渋を舐めさせられたジェントリーを葬り去ろうとしていた。
そんなことも知らぬジェントリーは、ザック・ハイタワー率いる反政府組織の軍事部隊とウクライナ軍の協力を得て、ゾーヤが収監されている矯正収容所に総攻撃をかける。
ロシアの軍事侵攻に抵抗するウクライナ軍という今まさに進行中の事実に基づいたストーリーにはリアリティを感じる。
本体価格1,400円
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Posted by ブクログ
マーク・グリーニー『暗殺者の奪還 上』ハヤカワ文庫。
暗殺者グレイマン・シリーズ第14弾。
気が付けば、シリーズは第14弾に到達。シリーズ第1弾が新装版として再刊されるのも理解出来よう。
各国の気狂い独裁者の暴挙により、きな臭くなる国際情勢。プーチン率いるロシアがウクライナへ侵攻し、習近平率いる中国は台湾や東南アジア諸国を手中に収めようと軍事行動を繰り返し、金正恩が絶対的支配を続ける北朝鮮は日本海にミサイルを飛ばしまくり、ドナルド・トラップの米国はベネズエラを攻撃し、世界は危険な情勢に陥っている。
グレイマンがロシアに潜入するならば、ついでにプーチンを暗殺し、帰り道に習近平と金正恩も成敗してくれればと思いたくもなる。
上巻では、ロシアで囚われの身となったゾーヤを救出するためにロシアに潜入しようとするグレイマンが東欧諸国で悪戦苦闘する様が描かれ、読む側からすれば、非常に焦らされる。
グレイマンことコート・ジェントリーは、ロシアで絞首刑にされたという噂が流れる、恋人で盟友のゾーヤ・ザハロワの死を受け入れられず、単身ロシアに潜入し、ゾーヤを探し出し、救おうとする。
ロシアに向かう船に極秘に乗船するために、ジェントリーはルーマニアのギャングと取引きを行うが、彼らにあっさり裏切られ、なかなかロシアに向かうことが出来ずにいた。
万策尽きたジェントリーは元CIAのマット・ハンリーの伝手を使い反ロシア政府ポットキャスターのミルダ・ベルジーナ接触し、ロシア国内での協力者を紹介してもらう。
一方、ロシアの矯正収容所に収監されているゾーヤは脱走に失敗し、いよいよ生命の危機に瀕していた。
本体価格1,400円
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Posted by ブクログ
グレイマンが主人公のシリーズ第4作品目です。今回の作品も並外れた身体能力と自制心、そして殺しを生業としながらも自らの正義を貫くストイックさが堪能できます。NETFLIXで見た映画がきっかけで、小説を読み始めました。こうして小説を読み進めると、映画はいくつかの作品をごった混ぜにした感じだったのだとわかります。映画もアクションシーンは見応えがあるので、一度は鑑賞してみてください。映画と小説は作品そのものが別だとの認識を持っています。あえて、どちらが面白いか決めないといけないのであれば、文句なく小説に軍配を上げますね。このシリーズはすでに数作品がこの後翻訳されていますので、読み続けると思います。
若かりし頃、ロバート・ラドラムさんクライブ・カッスラーさんの作品を追いかけていた時のように、マーク・グリーニーさんの作品を読まずにはいられない体になってしまいました。小説で味わう、血湧き肉躍るアクションがあることを教えてくれた人たちになります。現在絶賛中毒中の作家さんは、本作品の著者とジェームズ・ロリンズさんになります。この手の作品がお好きな方は、気に入ってくださるのではないでしょうか? -
Posted by ブクログ
本書は原題は"WAR"副題に3つの戦争とあるように、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのハマスへの報復、そしてアメリカ国内の深刻な対立(静かな戦争というべきか)というアメリカが直面する課題が、膨大で詳細な取材と分析から見事に描かれる。
プロローグでかつてウオーターゲート事件を共に追及した懐かしいバーステイン記者を通じて当時デベロッパーとして野心家だったトランプとの出会いが描かれ(1989年)、その後も変わらない彼の本質(決して負けや非を認めない)を再確認することになる。
それが犯罪者だったニクソンよりひどく、アメリカ史上最悪の無謀で衝動的な大統領候補として2024年に立候補したトランプだったことを直截的に言い切ったのは今までの第1次トランプ政権を描いた著作のタッチに比べると少し驚きだった(P512)。
2~41は主にロシアのウクライナ侵攻が描かれ、バイデン政権においてロシアの野心(ウクライナ併合)に関する情報収集・分析が正確で侵攻する可能性が高い(確実)ことを把握しており、事前にウクライナやNATOに情報提供していたにもかかわらず、真剣に対応してこなかった事実が明かされる。
またロシアに対して様々なチャンネルから警告した様子も鮮烈だ。
ただ侵攻前のアメリカのアフガニスタン撤退及び事後策の不首尾(政府軍の脆弱さ、タリバンの復活)が、ロシアにアメリカの弱体化(世界の警察官ではない)というシグナルになったのでは?との指摘は重い。
反面バイデン政権が自国軍を外国に派遣しなかったことを評価する著者の視点もやや一面的すぎる気がする。
42~54は主にハマスのイスラエルに対するロケット攻撃や民間人の人質、テロ行為に対する反撃ないしパレスチナ一般人を含む報復を、どう抑制させるかバイデン政権の苦労が読み取れる。
また反イスラエル、反イランの複雑な中東の国際関係を仲介して中東戦争に拡大しないための労苦を通じてリアルな世界を知ることが出来る。
55以下は以上の2つの戦争状況の推移とバイデンの再選とトランプの大統領選が描かれる。
バイデン政権で国内の移民政策に対する批判が根強かった事実、81歳の高齢となったバイデンに対する国民の不安が民主党からも噴出してきたことから選挙途中でハリスに交代した事実は物悲しい。
ただエピローグで著者は本書が政治家や政権の疑惑や疑念を暴く従来の姿勢とは異なりバイデン政権の国益に沿った責任ある誠実な安全保障の実情を称賛していることが珍しくも清々しく感じた。