伏見威蕃のレビュー一覧
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本屋さんにいくと、必ず早川文庫のコーナーにチェックを入れる。
トム・ウッドさんのヴィクターシリーズや、マークグリーニーさんのグレイマンシリーズの新刊が出ていないか、面白そうなミステリーが出ていないか確認するためだ。数年前は、スペンサーシリーズや87分署シリーズの新刊を確認していたが、このシリーズはもう新刊が出ないからね・・・。1週間ほど前に本屋さんに行ったところ、ありました。マークグリーニー・グレイマンシリーズの新刊『暗殺者の反撃』。
かつての所属機関CIAから”目撃次第射殺”の対象だったグレイマンが、世界各地で追われ、攻撃を受け、切抜けるといった今までのストーリーから攻守反転させる展開だ。グレイマンがワシントンDCのCIA本部へ迫った。なぜ自身が追われなければならないか、真相を究明するためだ。
今までのシリーズで優柔不断だと思われた行動も、本書ではグレイマンの行動規範として魅力的に描写されている。工作員としての作戦実行力はもちろん魅力だが、20数年会っていない父親との邂逅や、CIAで活動していたころの回想も、グレイマンの人間的な魅力の一つとして書かれている。
圧倒的なアクションは、周到な準備と緻密な読みの上に成り立つ作戦行動の描写なので、飽きることもない。狙われる真相を究明するテーマから、ストーリーに謎解きの要素も多く、最初から最後までグッと引っ張っていかれる。
東京出張もあったので、新幹線の車中、ホテルのベッド、約束時間までの喫茶店と、あらゆる時間で一気に読切りました。
面白かった。 -
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ストーリーがダイナミックに展開する下巻。ジェントリーは数々の危機的状況を凌ぎ、目撃次第射殺という彼に下された指令の理由を探る。そして、ジェントリーに迫るシリーズ最大の危機…
アメリカらしく、CIAの内紛や権力闘争も絡み合い、捻れに捻れた展開が続く。真実をやっと手の中に掴んだと思えば、その真実は嘲笑いながら手の中からこぼれ落ちていくといった具合で、少しじれったい。現在進行形のストーリーの中に挿入されるジェントリーの過去。6年前にジェントリーが関わった作戦の真実とは…
ラストには少し不満が残るものの、十二分に面白いスパイ冒険小説である。本作はこれまでのシリーズとは違った味わいがあり、ラストを考えれば、シリーズの折り返しといった位置付けではなかろうか。 -
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2004年秋から特ダネをつかむため米軍とともにイラク各地を訪れたワシントン・ポストの特派員スティーブ・ファイナルは仕事が原因で離婚し主夫に熱中するあまり鬱になっていた。そしてバリー・ボンズが薬漬けになったことを記事にし大陪審証言をリークしたとして収監された弟と悪性腫瘍で余命わずかの父を残し2006年再びイラクに逃げ出した、民間警備会社の仕事を10日間取材するとして。
取材先のクレセントで出会ったのはイラクでこれほど楽しそうにしている人間は他にいないという好青年のジョン・コーテー彼もまたアフガンとイラクの戦争から除隊し、平和な学生生活に耐えられず逃げ出したー達だった。「おい、ここを離れなきゃだめだ。大学に戻ったほうがいい」取材対象相手としては近づき過ぎだがスティーブはコーテに忠告しクレセントを離れた。そして父親が危篤と聞いて戻ったアメリカで聞いた新たなニュースはコーテ達5人がコンボイの護衛中にクウェートからそれほど離れていない比較的安全な主要補給路のルートタンパで誘拐されたと言うニュースだった。
イラクの傭兵の数ははっきりわかっていない。おそらく2.5~7.5万人の間で管理人、コック、トラック運転手や爆弾処理の専門家を含めると08年には軍以外に19万人がイラクにいたと推定される。民間企業との契約総額は850億ドルで米政府の戦費の1/5に当たる。しかし統計上は死傷者に数えられず戦闘にも参加していないことになっている。
クレセントの場合比較的平和なイラク南部へチームを派遣するには1日4~5千ドル、間違いなく攻撃されるファルージャだと35千ドルを請求する。警備部長の月給は1万ドル、チーム・リーダーは8千でメンバーは7千、しかし同じ仕事をやるイラク人には600ドルだ。そのイラク人は最も危険で快適な車内には入れない射手を務める。志願してクレセントの射手になるにはメール1本出すだけでいい、実際に52歳のトラック運転手のホーナーは持ったこともないAKー47を渡されそのまま最初の任務に就いた。「俺はランボーだ」と言えばそれが通じる世界だ。
2005/10/3に発行された連合国暫定当局(CPA)指令第17号に米軍に同行する民間業者の武器使用についてひっそりと発表された「警備任務に必要な場合は武器の使用を承認される」と。連邦法では準軍隊の使用を禁じているが、この指令では先制攻撃の禁止については曖昧で戦闘指揮官の努力目標として規定されている。軍であれば少なくとも指揮命令系統ははっきりしており、犯罪や違反をおこせば統一軍事裁判方で裁かれる。ところが民間警備会社には適用されず、CPA17号指令でイラクの国内法からも免除されている。傭兵を訴追するには実務的な試練にさらされていない法律を適用するしかなく、誰がそれを執行するかも決まっていない。
悪名高いブラックウォーターはイラク政府の免許と適切な武器許可のない会社とは契約を結ばないという新しい命令にも関わらず、国務省に守られ制御できない軍隊となった。道ばたに立っているだけの人を撃ち、対向車や追い越した車を撃つ。それでも何も報告されない。パーティで泥酔した傭兵は首相官邸近くをぶらぶらし、誰何した副大統領の警備員を撃って逃げた。「われわれは殺すために撃つんだ。それに、いちいち脈を確かめたりしない。」ある元傭兵の言葉だ。ブラックウォーターは占領政府のトップや米大使や外交官全てを警護しイラク戦争で10億ドルを得ていた。ブラックウォーターはイラク国民を恐怖で支配する傭兵の代名詞となりアメリカ人が憎悪される原因を作っている。
本書の題名「戦場の掟」(BIG BOY RULES)はブラックウォーターをはじめとする民間警備会社が自分達のルール=強者のルールで戦い死んでいくことから付けられている。米政府は傭兵達を無視しているが傭兵なしでは作戦を遂行できない。2-3回に1度の割合で襲撃される通常20人以上必要なコンボイ警備をわずか7人で実施したクレセントのチームは唯一同行したイラク人に裏切られ拉致された。コーテ達5人は後に死亡が確認されたがクレセントは拉致されると同時に給与の支払いを停止した。
自衛隊が駐屯したサマワでもこうした民間警備会社が警備を担当した。自衛隊がいくら武器使用規定を厳格に守ったとしても、その自衛隊を警備する民間警備会社が銃を撃ち放題だとしたら同じく憎悪の対象になるということだ。 -
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1927年にミシシッピ川流域でアメリカ史上最大の洪水が起こったことはとても有名な史実であるにも関わらず、米国民の大方からは忘れられているという。その時代、その災害のさなかで密造酒作りを稼業に選んだ夫を持ったディキシー・クレイは、幼い子を洪水で失い、今では自ら密造酒作りの日々を送っている。
そこに一家惨殺の生存者である赤ん坊をひょんなことから連れ歩いていた密造酒取締官インガソルが現れ、ディキシー・クレイのもとに神の子を授ける。それが皮肉な運命の出逢い。水は方々で土手を決壊させ、多くの街を水底に呑み込んでゆく。この世の終わりとも言うべき1927年の世界の中で葛藤する男と女の出逢いを描く、南部の叙事詩が本書である。
この骨太の愛の物語を書き綴った語り部は、衝撃の短編集『密猟者たち』で、凄まじくぼくの心臓を打ち抜いたトム・フランクリン。ただし、今回は夫人との共同名義であり、その婦人は詩人であるという。そう言われてみれば、このフランクリンの初めて目にする長編作品、とても骨太でありながらたまらなく叙情的だ。映像で言うならばサム・ペキンパの世界。
常に轟轟と流れる大量の水の重低音をバック・ミュージックにして、時折り流れる硝煙の匂い。そこに生き抜こうとする大自然と戦う人間たちの姿。命を玩具のようにジャグルする非情な悪党たちと、南部男を象徴するような圧倒的存在感を見せる先輩取締官ハム・ジョンソン。
アメリカの歴史と時間とその世界の空気をまでも包括して表現しようとする作家の意気込みに溢れたペンワーク。これぞ小説! と言いたいくらいに印象的で、セピア色したノスタルジー・カラーいっぱいの力作活劇であり、大仕掛けな恋愛物語なのである。モルト・ウイスキーのストレートみたいな作品をお求めの方に! -
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暗殺者グレイマン・シリーズの第四弾。世界各国の諜報機関から生命を狙われるグレイマンことコートランド・ジェントリーを主人公にした面白冒険小説。
ロシア・マフィアのボスを殺害し、復讐を果たしたジェントリーだが、CIAの依頼を受けた民間の暗殺機関が、ジェントリーを付け狙う。さらにモサドも入り乱れ、ジェントリーは窮地に立たされるのだが。
前半は、ジェントリーがあっさりと復讐を果たし、またまたいつものように諜報機関に生命を狙われるのかと思ったのだが、中盤以降は非常に面白い展開になる。ジェントリーの背景も少し明かされ、あっという間の600ページだった。
第五弾が待ち遠しい。 -
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『そのあとは、野原の向こうの林から昼が流れ果て、夜が居つくまで、フロントポーチにつくねんと座っている。どの日もちがう、どの日もおなじ』
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テキサスの大都会の一番の通りといえども、最も賑わうショッピングエリアから西へ15分も行けば、「町はずれ」の雰囲気が漂い始めるほどに建物と建物の間隔は広がり、駐車場に車が疎らなショッピングモールも出現し始める。そんなエリアに建つホテルにて「ねじれた文字、ねじれた路」を読む。
もちろん、ミシシッピ川はテキサスを横切ってはいない。隣のルイジアナからメキシコ湾に注ぐ泥の河。しかし、ここもディープサウスと並ぶ保守の州。白人のみが不動産を購入できる元大統領の住む一角があり、厳然とした社会的ヒエラルキーが「機会平等」という原則の下で形成され、その階層の違いと皮膚の色の違いが寄り添うように並び、5分と行かない場所で発砲事件が起こる街である。否応なしに、本の世界が頁から溢れて現実との境を曖昧にする。
そんな風に本に寄り添って文字を読む必要はないのだが、置かれた場所の雰囲気を身体は脳以上に敏感に感じ取る。理屈ではない、そこはかとない恐怖心が、窓の外の闇の方から忍び寄って来ては取り憑こうとする。ここは安全な場所だと脳がいくら諭しても身体は既に緊張感に縛られている。
ミステリー風の体裁を保ちながら、この本の描くところは社会派のルポルタージュのようでもある。「評決のとき」「ペリカン文書」を連想させる雰囲気である。最後は「スタンドバイミー」のようなヒューマンドラマの要素が濃くなりはするが、そこに至る間に「羊たちの沈黙」のようなサイコパスの要素も入ってくる。そんな風に書くと何だか如何にも陳腐なハリウッド映画のようないいとこ取りのごった煮のようなものと受け止められてしまいかねないけれど、社会的な抑圧の下に粛々と生きることの描写が読むものをずっと捉えて離さず、深々とした雰囲気の中で頁をめくり続けていくことのできる本であることは間違いない。
タイトルの言葉は、ミシシッピの綴りを教えるための言い回しということだが、そこにはどこかマザーグース風の響きが伴い、そのリドルの裏に隠されたものは何だろうという思いが常に頭の片隅に棲みつづける。そこにある筈もないアナログ時計の秒針のカチッ、カチッ、と進む響きが脳の中を満たす。ワン・ミシシッピ、ツー・ミシシッピ。頁と伴に時差で痺れた身体は夜の闇へ一歩ずつ引き込まれてゆく。 -
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フラット化する世界下巻では、フラット化に対する企業、個人、政治の反応、そして「イマジネーション」の重要性を説いている。
ほとんどの仕事がコモディティ化されてしまい、どこへでもアウトソーシングできるようになった今、企業のバリュー創出の難しさとそれへの対処法が大変納得のいくものであった。
個人の章では、個人の情報が氾濫していく中、一度の悪行がサイバースペースに永遠に残ってしまう危険性の記述があった。
「チャンスは一度きり」
私たちは常に正しい行いをし続けなければいけない事がよくわかった。
下巻の特に政治の話の中では安価なコミュニケーション、共同作業を可能にしたツールがビジネスマンだけでなくテロリストに対しても力を与えている事についての記述が目立る。9/11が日本人にとってもはや遠い昔の事になってしまった今もアメリカ人の心の深い所にとどまり続けているのがよくわかる。アルカイダの脅威に無頓着な自分にとってはあまり興味がもてるものではなかった。
本書を読むとフラット化した世界で生きて行くためには、自由な「イマジネーション」が必要なのがよくわかる。
豊かな「イマジネーション」の為には過去ではなく夢の話ができるような環境作りが大切だという。
日本の場合でも昨今漂う閉塞感打破の為には必要なことではないかと感じた。
フラット化する世界は現代の解説書のみならず、最高の自己啓発本であった。
下手な精神論ばかりを語る自己啓発本を読むのなら、本書を読むことをお勧めする。
グローバル化が壁を打ち破ったおかげで、我々はインド人、中国人、世界中の人々と同じ競技場で戦わなくてはいけなくなった、。
「大変な世界になっちゃったな。」というのが正直なところだ。
しかし、本書を読むとフラット化後の世界において個人の可能性は無限大である事に希望が持てる。
明日の世界が楽しみになる本である。 -
Posted by ブクログ
主に第二部のアメリカがグローバリゼーションにどう対応していくべきが中巻の大半を占めているが、一番最初の第4章の内容がすばらしい。
デルはどこの会社であるか?
一昔前ならアメリカとすぐさまこたえれただろう。
しかし、製造地、消費地、資本の基などが多国籍である企業の国を中心とするアイデンティティーをどこに置くのかが難しくなっている。
ユニクロが中国などで製造、さらに販売までも行っている事に旧世代の人々は批判する。「日本から職を奪っている」と。
しかしグローバル化が進む中、企業が生き残っていくためにはもっとも安い労働力をつかって、もっとも需要がある市場に投入すべきなのである。
ユニクロはもはや日本企業ではない。
日本企業などあと10年したらなくなるのかもしれない。
本書を読んでそう思った。
第二部はアメリカがどう生き残っていくべきかを説明していたが、日本の場合も当てはまることが多々あると感じた。
デジタル化の時代、理系の人材育成はアメリカだけでなく日本の発展にも絶対必要なことであろう。
教育はイノベーションを生む。イノベーションは雇用を生むので、日本の利益になるのだ。
さらに、ミドルクラスの労働者は今以上に勉強を怠らずに、努力をし続けなくては、生き残れないと言う言葉が心にひびいた。
インド人中国人との激しい競争生き残るためにさらに勉強していこうと思う。