柳宗悦のレビュー一覧
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私は日本を知らない。
この本を読んで、心からそう思う。
「吾々は日本から生まれたものをもっと愛そう」
そう柳さんは語る。
今世の中を見渡すと、有形無形に関わらず、海外のものに溢れている。
海外のものが悪いのではない。
ただ、自分たちの生まれ住む国にある素晴らしいものを知らず、海外のものばかりを「安いから」「どこでも手に入るから」と使い続けて、日本固有のものが衰えていくのは悲しいことだ。
自分たちが住むこの日本の足元をもっと見つめて、掘り下げていけば、豊かに生きていけると思う。
「便利さを買い、美しいものを売ってしまった。それは幸福か?」
と柳さんは語る。
この本の初版が出たのは、昭和23年らし -
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一緒に全国行脚して色んな工藝を巡ってる気分を味わえて、めちゃ楽しかった〜!烏山が美しい馬具を作るところだったなんて知らんかったぞ?今となっては検索しても出てこいものもけっこうあった一方、ちゃんと残ってるものが多数あって希望を感じた!
実用品の美しさとは何か。それは実際の生活での使用に耐えうる丈夫さや使いやすさをともなった「健康な美」。健康な美こそ一番美しい!なぜなら、背後に自然の法則が働いているから。法則に従順である、この「他力の美しさ」は人間の視点からすると「不自由」「束縛」という嘆きとも捉えられるが、自然の視点からすると一番当然な道を歩くということ。むしろ「他力に任せ切るとき、新たな自由 -
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【沖縄文化論の草分け論集】
明治政府による廃藩置県で琉球王国が滅亡し沖縄県とされたのは、1879年である。日本で沖縄文化研究の本格的な気運をつくったのは民俗学の創始者の柳田国男だった。柳田は南島こそ日本文化の源流と見ていたのだ。柳田の『海南小記』に刺激されて、折口信夫も沖縄を訪ね、『琉球の宗教』を書く。他方、民芸運動の主唱者柳宗悦は、沖縄における「民衆芸術」の営みを愛でた。
本書は、柳田、折口、柳をはじめとする沖縄文化論の草分けの論考が詳細な注記とともに読みやすい形で提供されている。返還50周年を機に、沖縄の文化を見つめ直すのに格好な本である。
柳田「日を経て南の風の吹く頃には、遙かなる常夏の -
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昭和15年ごろの日本列島の手仕事を紀行する。現在で言えば地域特産品である。日本の民芸品が紹介されることで、当時の手仕事の結実がわかる。機械は世界のものを共通にしてしまう。それは、粗末なものになりがちだという。手仕事にこそ個性が宿る。ドキュメンタリーのような手法で、日本の手仕事を紹介する。手によって生まれた日本人の暮らしに欠かせなかった生活道具の紹介。その見る目が民藝運動の創始者の視点が浮かび上がる。日本にこれだけの民芸品ができていることに、感動さえ覚える。日本は、素晴らしい手仕事の国つまり手の国という。
上手、下手、手堅い、手並みがよい、手柄を立てる、手本にする、手腕、読み手、書き手、聞き -
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国立近代美術館で柳宗悦没後60年の「民藝の100年」という展示や、近所の日本民藝館に行ったことなどもあり、民藝に興味を持って手に取った。
柳宗悦は、ロダンを中心とする汎神論的な芸術の受容からキャリアをスタートしているが、彼の民藝評には汎神論的な感覚を感じる。なぜ民藝が美しいかと言えば、それは「用」の美。なにかに用いられるということを想定された美しさなのである。近代の美術において評価されてきた貴族的な品物と民藝と比較すると、前者が有想(想像を巡らせ、意匠を凝らすこと)であるのに対して、後者は無想であり、より清い境地にある。また、前者が意識なら、後者は無心、前者が主我ならば後者は忘我の境地であると -
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昭和17〜18年ごろに書かれた本。
民藝の美しさ、クオリティを手仕事に求め、商業主義との距離感がある方がいい伝統が守られるというスタンスに貫かれているように見える。
これを読むと、人の仕事というのは結局機械との競争を続けている産業革命以降の歴史ということが分かる。今の時代、AIやロボットに置き換わることで、果たして仕事の「美しさ」は失われるのだろうか? 我らサラリーマンに仕事上の「美しさ」は求められていないのかもしれないけど。
それでも、シンプルな生き方、歴史を受け継ぎ発展させようという姿勢、健康であること、など著者のメッセージは今の時代でも刺さると思う。 -
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1946年(昭和21年)?
民芸運動の提唱者・柳宗悦による、若年者のための民芸解説書。日本各地の手仕事(染物、陶器、文具、家具、衣服、郷土玩具など民衆の生活に密着したもの)が紹介されている。写真が添えられていないため文章から実物を思い描くのが難しいのが難点だが、芹沢銈介による小間絵がその欠点を補っている。また、柳の持論である「職人の功績」「用の美」「健康の美」等の概念も簡潔に説明されていて興味深い。「モノづくりの国・日本」の原点に回帰させてくれるような書物である。若年者向けということで極めて平易な文章で書かれているので、民芸入門として適していると思われる。 -
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柳宗悦の考える『美』について書かれています。
彼曰く、
・華美な装飾や高級なだけの工芸美術品は美しくない
・無駄を省いた実用性のある民芸品が美しい
そんなことを言っています。
本書を読んだ時は、工芸品と民芸品の定義がうまく飲み込めず、混乱しました。
DIYで作ったものは?こけしや赤べこなどの置物は?振袖は?無印良品・ユニクロは?国宝が作ったもの・クリエイターが作ったものは?
どれなら良くて、どれなら悪いのか、よくわからなかったのでマトリクスを作って思いつく限りのクラフト品をあげてみました。
そうすることで、柳宗悦が高価なクラフトや装飾の見事な着物などを全て否定しているわけではないということ