柳宗悦のレビュー一覧
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【沖縄文化論の草分け論集】
明治政府による廃藩置県で琉球王国が滅亡し沖縄県とされたのは、1879年である。日本で沖縄文化研究の本格的な気運をつくったのは民俗学の創始者の柳田国男だった。柳田は南島こそ日本文化の源流と見ていたのだ。柳田の『海南小記』に刺激されて、折口信夫も沖縄を訪ね、『琉球の宗教』を書く。他方、民芸運動の主唱者柳宗悦は、沖縄における「民衆芸術」の営みを愛でた。
本書は、柳田、折口、柳をはじめとする沖縄文化論の草分けの論考が詳細な注記とともに読みやすい形で提供されている。返還50周年を機に、沖縄の文化を見つめ直すのに格好な本である。
柳田「日を経て南の風の吹く頃には、遙かなる常夏の -
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国立近代美術館で柳宗悦没後60年の「民藝の100年」という展示や、近所の日本民藝館に行ったことなどもあり、民藝に興味を持って手に取った。
柳宗悦は、ロダンを中心とする汎神論的な芸術の受容からキャリアをスタートしているが、彼の民藝評には汎神論的な感覚を感じる。なぜ民藝が美しいかと言えば、それは「用」の美。なにかに用いられるということを想定された美しさなのである。近代の美術において評価されてきた貴族的な品物と民藝と比較すると、前者が有想(想像を巡らせ、意匠を凝らすこと)であるのに対して、後者は無想であり、より清い境地にある。また、前者が意識なら、後者は無心、前者が主我ならば後者は忘我の境地であると -
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柳宗悦の考える『美』について書かれています。
彼曰く、
・華美な装飾や高級なだけの工芸美術品は美しくない
・無駄を省いた実用性のある民芸品が美しい
そんなことを言っています。
本書を読んだ時は、工芸品と民芸品の定義がうまく飲み込めず、混乱しました。
DIYで作ったものは?こけしや赤べこなどの置物は?振袖は?無印良品・ユニクロは?国宝が作ったもの・クリエイターが作ったものは?
どれなら良くて、どれなら悪いのか、よくわからなかったのでマトリクスを作って思いつく限りのクラフト品をあげてみました。
そうすることで、柳宗悦が高価なクラフトや装飾の見事な着物などを全て否定しているわけではないということ -
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日本の民藝についての第一人者である柳宗悦による美の論説。本書で語られる柳の主張は、一切の反論の余地も与えないようなものでは確かにない。例えば創意工夫が美を損ずるとか、僅少で高価であることはそれ自体が不完全であるとか、絶対にそうとは言えないのでは、とその論理づけにおいて指摘したくなる部分は少なからずあった。
しかし柳の功績は貴族趣味的なものばかりがやたら有り難がられて、日用品が工芸品として評価されていなかった風潮に待ったをかけて、用の美というキーフレーズでいわゆるクラフトの価値を土俵に上がるところまでに押し上げたところにあると思う。現に日本のクラフトデザインの歴史を柳抜きに語ることはできないであ -
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まさに「民藝」の入門書として、提唱者の柳宗悦より平易な表現で、分かり易く解説されている。
「民藝」は、明治近代化の中でしばしば登場する概念であり、その影響力から、言葉としては認識していたが、体系的に理解できたことは収穫。
このように原則論を読んでいると、時代を超えた普遍性があり、現代においても意識すべき概念ではないかと思う。
以下抜粋~
・用が生命であるため、用を果たす時、器は一層美しくなってきます。作り立ての器より、使い古したものはさらに美しいのではありませんか。
・廉価であるということが、実に美を増す大きな基礎なのです。安いものであるから、強いて美を盛ろうとは工夫していません。
・無 -
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岩波文庫の『民藝四十年』をやっと入手できたと思ったのも束の間、ちくま学芸文庫から『民藝四十年』が刊行された。本書は新編増補版。刊行にあたってとの編集部の文章が付されているが、それによると、1958年に刊行された宝文館より刊行された『民藝四十年』の目次には柳自身による書き加えがあり、改訂の考えがあったらしい。本書はそれら15編の論考を新たに増補したもの。
かなり厚い本になったが、確かに柳の言わんとしたことが、より具体的に分かりやすくなったように思う。
「美の法門」では、仏教の教えが今一つ良く理解できなかったが、詳しくその考えを論じた「無有好醜の願」、「知」るよりも前に「観」ねばならないと