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すぐれた民藝品を求めて日本全国を歩いた民藝運動の創始者・柳宗悦(1889―1961)が、各地に残る美しい手仕事を紹介しながら、日本にとって手仕事がいかに大切なものであるかを訴え、日本がすばらしい手仕事の国であることへの認識を呼びかけたユニークな民藝案内書。秀逸な小間絵(芹沢けい介)を多数収録。(解説 熊倉功夫)
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Posted by ブクログ
私は日本を知らない。 この本を読んで、心からそう思う。 「吾々は日本から生まれたものをもっと愛そう」 そう柳さんは語る。 今世の中を見渡すと、有形無形に関わらず、海外のものに溢れている。 海外のものが悪いのではない。 ただ、自分たちの生まれ住む国にある素晴らしいものを知らず、海外のものばかりを「安い...続きを読むから」「どこでも手に入るから」と使い続けて、日本固有のものが衰えていくのは悲しいことだ。 自分たちが住むこの日本の足元をもっと見つめて、掘り下げていけば、豊かに生きていけると思う。 「便利さを買い、美しいものを売ってしまった。それは幸福か?」 と柳さんは語る。 この本の初版が出たのは、昭和23年らしい。 その頃から更に失われてしまった民藝は全国各地にあるだろう。 でも、各地で復興を目指している人たちもいる。 そんな熱い志を持った人たちを応援し、日本固有のものを尊び、守っていくことは、日本のためになると言える。 改めて、日本のことを好きになれる一冊だった。 日本民藝館に行きたい。
大切な点として最後までに挙がった三つ、職人の功績、実用と美、健康の美、は手仕事に限らない。 実用と美、健康の美、ふたつの表現の違いを噛みしめる。 地図や索引もありがたい。
一緒に全国行脚して色んな工藝を巡ってる気分を味わえて、めちゃ楽しかった〜!烏山が美しい馬具を作るところだったなんて知らんかったぞ?今となっては検索しても出てこいものもけっこうあった一方、ちゃんと残ってるものが多数あって希望を感じた! 実用品の美しさとは何か。それは実際の生活での使用に耐えうる丈夫さ...続きを読むや使いやすさをともなった「健康な美」。健康な美こそ一番美しい!なぜなら、背後に自然の法則が働いているから。法則に従順である、この「他力の美しさ」は人間の視点からすると「不自由」「束縛」という嘆きとも捉えられるが、自然の視点からすると一番当然な道を歩くということ。むしろ「他力に任せ切るとき、新たな自由の中に入る」。 芸術品と異なり、工藝品は作った人の名を記したものはない。職人たちは、名で残ろうとするのではなく品物で勝負している。たとえ作った人が学のない無名な人で、作るものが普通であったとしても、大きな伝統の力に支えられているということを忘れず、名もないものの美しさこそもっと評価すべきではないか。 伝統を尊ぶということは、ただ昔を繰り返すということではない。伝統は活きたものであって、そこに創造と発展がなければならない。伝統を尊ぶということはむしろ連なってきた樹木の根をを更に育てて名木にするためである。 もしも我々の生活が醜いもので囲まれているなら、その暮らしは程度の低いものに落ちてしまう。一国の文化はその国民の日々の暮らしに最もよく反映される。生活を深いものにするためには、どうしてもそれは美しさと結ばれねばならない。生活の中に交えることでかえって美が深まり、確実なものになる。それこそが実用の美、健康の美。 「我々は日本の固有のものをもっと尊ぶべきだが、それは他の国のものを謗るとか侮るとかいう意味を伴ってはならない。真に国民的な郷土的な性質を持つものは、お互いに形こそ違え、その内側には一つ触れ合うものがあり、お互いに近い兄弟ともいえる。世界は一つに結ばれているものだということを、かえって固有のものから学ぶ。」 柳さんも朝鮮の文化に触れて、かえって日本のさまざまな美、民衆が創造主体の美が見えてきたということで、外に触れて内を知るというのはどの時代にもあるんだな〜と感じた!いつか日本の手仕事令和ver.を刊行したいと思いました。
昭和15年ごろの日本列島の手仕事を紀行する。現在で言えば地域特産品である。日本の民芸品が紹介されることで、当時の手仕事の結実がわかる。機械は世界のものを共通にしてしまう。それは、粗末なものになりがちだという。手仕事にこそ個性が宿る。ドキュメンタリーのような手法で、日本の手仕事を紹介する。手によって...続きを読む生まれた日本人の暮らしに欠かせなかった生活道具の紹介。その見る目が民藝運動の創始者の視点が浮かび上がる。日本にこれだけの民芸品ができていることに、感動さえ覚える。日本は、素晴らしい手仕事の国つまり手の国という。 上手、下手、手堅い、手並みがよい、手柄を立てる、手本にする、手腕、読み手、書き手、聞き手、と手に関する言葉が多い。手がものを作らせたり、働きに悦びを与えたり、道徳を守らせたりする。日本にさまざまな品物ができるのは、自然、紀行風土であり、人間が開発した努力の跡としての歴史であり、自然と人間との交わりから生み出されてきた。品物を作ることは、自然の恵みを記録しているようなものである。伝統とは長い時代を通し、祖先たちが、さまざまな経験によって積み重ねてきたもの。そこには思想もあり、風習もあり、知恵もあり、技術もあり、言語もある。 手仕事の世界は人間の自由が保たれ、責任の道徳がよく働いている。柳宗悦は、正直な品物を褒める。 著者は、美しいとは、健康でなければならないという。美しいの中に、健康という概念を持ち込むことが素晴らしい。今まで、そのような健康と病気という視点で見たことはなかった。 柳宗悦はいう。「私たちは健康な文化を築かねばなりません。日本を健康な国にせねばなりません。それには国民の生活を健全にさせるような器物を産み育て、かかるものを日々用いるようにせねばなりません」表現は、戦争時代を迎えて、検閲に注意したとしても、いい言葉である。 その美しく健康な地域固有な品物が、手によって作られることで、心でつくり、心で受け入れられるのだという。 焼物、染物、織物、金物、塗り物、木や竹や皮や紙の細工、玩具をめぐる。 関東から始まり、江戸文化、そして江戸風な気質を見出そうとする。上野近くの田村屋のキセル、十三屋の櫛、道明の組紐。襟円の半襟。阿波屋の下駄。さるやの楊枝。榛原の和紙。永徳斎の人形。なごやの金物。平安堂の筆墨。と上げていく。ふーむ。まさに文化が手仕事で結実している。この中で残っているのは、どれくらいあるのだろうか。昭和15年頃なので、80年前のことだ。 こうやって、日本列島を北海道を除いて、東北、関東、中部、北陸、近畿、中国、四国、九州を駆け巡る。美への基準としたたかな目で探り当てていく。 機械で盛んに作られている品物に対して、惜しいかな、どこまでも営利の目的を外れないので、だんだん粗末になり、どう手を省くかについて知恵を働かしていることに嘆く。一方で、手でつむぎ、染めも正藍を用い、昔風の手機で織っている。このやり方が織物のよさをよく知り、道を守って仕事を崩さないという。そして、装飾めいたものに対しては、批判をする。もっとシンプルに生活に合うものを求める。その姿勢が、なんとも言えないなぁ。 ここで、上げていったらきりがないのでやめるが、その評価については、なるほどと思わせるものがある。柳宗悦が、今の時代に生きていたら、絶望を感じるかもしれない。時代は大きく変わり、職人は、どんどんと消え去り、長年の修行によって達成される手業が生み出されない日本が生まれているような気がする。日本の原風景が見えて、楽しい。しかし、語り口が実に爽やかなのに驚く。
20220206008 生活の中から生まれる美、生活を彩る美。 80年前の著述だが、現在残っているものがどれほどあるのか。無くしたものを取り戻す難しさも知ることができる。
昭和17〜18年ごろに書かれた本。 民藝の美しさ、クオリティを手仕事に求め、商業主義との距離感がある方がいい伝統が守られるというスタンスに貫かれているように見える。 これを読むと、人の仕事というのは結局機械との競争を続けている産業革命以降の歴史ということが分かる。今の時代、AIやロボットに置き換わる...続きを読むことで、果たして仕事の「美しさ」は失われるのだろうか? 我らサラリーマンに仕事上の「美しさ」は求められていないのかもしれないけど。 それでも、シンプルな生き方、歴史を受け継ぎ発展させようという姿勢、健康であること、など著者のメッセージは今の時代でも刺さると思う。
1946年(昭和21年)? 民芸運動の提唱者・柳宗悦による、若年者のための民芸解説書。日本各地の手仕事(染物、陶器、文具、家具、衣服、郷土玩具など民衆の生活に密着したもの)が紹介されている。写真が添えられていないため文章から実物を思い描くのが難しいのが難点だが、芹沢銈介による小間絵がその欠点を補って...続きを読むいる。また、柳の持論である「職人の功績」「用の美」「健康の美」等の概念も簡潔に説明されていて興味深い。「モノづくりの国・日本」の原点に回帰させてくれるような書物である。若年者向けということで極めて平易な文章で書かれているので、民芸入門として適していると思われる。
解説の言葉に、心が痛みます。 「『手仕事の日本』はまだ手仕事が各地方の生活の中でいきいきと働いていた昭和十年代の姿を、これからの日本を背負って立つ若者たちのために書き残す仕事であった。結果としては、滅びていった手仕事の遺書となってしまった。」 今では見る事が出来ない、すばらしい日本の姿がありま...続きを読むす。 「良い仕事をする」ではなく「悪い仕事を知らない」と表現する、 この本の日本語も、美しいです。 美しい世界を堪能できるすばらしい本です♪
紙上の日本民藝紀行。各地で伝統に忠実に民藝品を制作し、自らの名を遺すことを望まず静かにこの世を去っていった無数の職人達への、畏敬の念が込められています。
無名の職人たちが作った民藝品は実用に耐えるからこそ健康的な美しさを持つ。そして柳宗悦が起こした民藝運動は、民藝という新しい美の標準を蒐集して展示し、その美の性質を理論化して啓蒙し、民藝の美に即した新しい器物を生産して世に普及させることだった。
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