梨屋アリエのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
5人の中学2年生の目を通して描く連作短編集。
たぶんディスレクシアで、読むことがとても苦手な、でもそれを正面切って認めたり、周囲に配慮を求めたりするのはいやな、ひすい。そのひすいと同じクラスで、女子だけれど体が大きくさばさばしていて男子と間違えられがちな理幹(りき)。字を書くことが極端に苦手で、ひすいとは対照的に自分でその原因を調べ、周囲を説得して「合理的配慮」を求める心桜(こはる)。ひすいの弟――両親を事故で亡くしてひすいの親に養子としてひきとられた――で、高い知性と繊細な感性を持つ拓真。そして大人のいうことを聞く「いいこ」であろうとするあまり自縄自縛になり、過食症になってしまう小春。
だ -
Posted by ブクログ
夏期講習を抜け出した中学生の真名子は、洗濯物が干された庭へと入り込む。そこにはローニンセイがひとりでいたのだった。
ヒリヒリと焼け付くような心。圧迫感と閉塞感。自分が何者なのかわからない、自分が何をしたいのかわからない。何にいらだっているのかも、何を喜べばいいのかもわからない。
それは真名子にだけあるものではなく、大人も友達も年下の弟にもある心情だということに気付いていない。いや気付いているのかもしれないし、指摘されれば知っていると答えるだろう。でもそのことを受け止めてはいなかった。その事実を受け取った止めたことにより、真名子は自分自身を受け止めやすくなったのではなかろうか。
そんな真名子 -
Posted by ブクログ
松葉が幼い頃心慰めてくれた隣家のピアノが譲られた先で出逢った紗英。華やかで自信家の紗英に松葉は惹かれていくのだった。
性格も家庭環境も違うふたりの少女が出逢うことで始まる物語。しかしそこから想定される展開は待っていませんでした。憧れが自己を昇華してくれる訳でもなく、他者を受け容れることで自己が変わっていく訳でもなく。なれ合いでも依存し合うのでもない友情。でも松葉と紗英は出逢うことで、それまでとは違う自分を見付けることになるのです。いや、それまで気付かなかった自分を見付けると言うべきでしょうか。
松葉は自分のことを平凡で良くも悪くも特化していないと思っています。周りに合わせて流される、そんな