【感想・ネタバレ】きみの存在を意識するのレビュー

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Posted by ブクログ 2020年05月08日

5人の中学2年生の目を通して描く連作短編集。
たぶんディスレクシアで、読むことがとても苦手な、でもそれを正面切って認めたり、周囲に配慮を求めたりするのはいやな、ひすい。そのひすいと同じクラスで、女子だけれど体が大きくさばさばしていて男子と間違えられがちな理幹(りき)。字を書くことが極端に苦手で、ひす...続きを読むいとは対照的に自分でその原因を調べ、周囲を説得して「合理的配慮」を求める心桜(こはる)。ひすいの弟――両親を事故で亡くしてひすいの親に養子としてひきとられた――で、高い知性と繊細な感性を持つ拓真。そして大人のいうことを聞く「いいこ」であろうとするあまり自縄自縛になり、過食症になってしまう小春。

だれもが問題をかかえていて、「中二病」という言葉でくくったらそれでおしまいになってしまうけれど、そんなものじゃない。だって、中二が終わったら終了するというようなものではなく、ほうっておけば大人になっても同じ問題を抱え続けることになるだろうから。実際、この作品に登場する大人たちもみな問題のある人ばかりで、児童文学にちょいちょい登場する、聡明な導き手はだれもいない。ひすいたちの担任の角野先生なんてひどいものだけど、“親には評価が高いが、世間体を保つのがうまいだけで、子どものことがさっぱりわかっていない”という先生って、実際いるからね。読んでいてむかむかするほどだった(^_^;;

周りの大人がちゃんと機能していない場合、子どもはなんとか生きのびて自分で知恵をつけて解決するしかない。だからこそ、心桜(こはる)が、苦手な書字で絞り出すように書いたメッセージ「生きてようね。みんな、死なないで、生きていてね」が、痛切にひびくのだろう。

でも、この作品にはもうひとつ大切なメッセージがあった。それは、ひとりで悩まないで「困ってる」と声をあげようということ。そうすれば、誰かしら手を差しのべてくれる人や助けてくれる人が出てくるかもしれない。
それが凝縮されているのが最後の1編。日本では往々にして、声をあげた人が、平和をかき乱すわがままな人と捉えられがちで、学校などはまさにその縮図なのだけど、それをどうやって必死に突き崩していくか。

そういう意味でも、大人子どもを問わず、今読まれてほしい本だと感じた。

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Posted by ブクログ 2019年11月12日

読字障害の疑いがあるひすい、性別に分けられることに違和感を感じている理幹、漢字を書くのが苦手な心桜、両親と死別しひすいの両親の養子となった拓真、大人の期待に応えたい過食気味の賀川、化学物質過敏症で教室に行けなくなった留美名。

この本には、彼らのような生きづらさを抱えた中学生達が登場する。

その中...続きを読むでも一番印象に残ったのは、性別に分けられることに違和感を感じている理幹だ。彼女は、体は女性でも、心は女でも男でもない、いわばXジェンダー、無性愛者である。

多様性を求める社会となった今でも尚、この社会は「男」か「女」に分けたがっている。

例えば、学校の模試や入学試験の願書、パスポートなど、私たちは様々な場面で、性別を問われている。


かくいう私の学校では毎月一度、頭髪服装検査が行われる。

特に髪型については厳しく指導される。

男子は目、耳、襟に髪の毛がかかってはいけない。

これまで約15年の間に育まれてきた私たちの個性は、大人達の手によって、大人達のものさしで測られ、切りそろえられていく。

もしも、性同一性障害で、体は男性でも心は女性という人が髪を伸ばしたら、私の学校の大人達はどのように対応してくれるのだろうか。

それでも彼らは彼らなりの「普通」を押し付けてくるのだろうか。


この本に登場する中学生達は皆悩みを持っている。それでいて、彼らは人から「個性的で変わった人」というふうに見られてしまう。

私の目には、食事中でも電車の中でも歩いていても、薄っぺらに光る四角い端末を飽きることなく凝視している彼らの方が、よっぽど変わっているように見えるのは、単なる視力の問題なのだろうか。

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Posted by ブクログ 2019年08月25日

本を読むことが苦手でディスレクシアのグレーゾーンにいる子、字を書くことに違和感を持つ子、自分を女にも男にも分けられたくない子、過敏症で教室に行けない子、親と死別し養育里親の養子となった子、大人の期待に応えたくて過食気味になる子など、「みんな」と違う子がその違いに対峙していく連作短編集。

「みんな」...続きを読むと違うことに対しての、本人の反応や対応は様々です。そういうものだから仕方がないと諦めてしまう子、受け容れようとする子、必死に抗う子、自分の中に閉じ込めてしまおうとする子、どうしていいかわからず困惑する子。
「みんな」と違うことに対しての、他人の反応や対応も様々です。困った子だと思う、自分勝手なワガママを言っていると思う、迷惑だと思う、何とか力になれないかと悩む、そんなものだと受け容れる、そして全く気付かない気付こうとしない人も。

作者お得意の共通した舞台での語り手を変えた連作短篇の手法により、「みんな」と違うことに対しての、本人の思いと他人の見え方が交差し、より厚みと深みを増して読み手に提示されます。
本人が困っていることも、本人が必死に頑張っていることも、他人には違うように受け取られることがあることが書かれています。しかし書かれることによって困っているのだ、だから悩み何とかしようともしているのだと読み手に伝えるのです。

この作品は今現在困っている子には、寄り添い力となってくれるものとなるでしょう。作中には困っていることに対しての対処の仕方もエピソードとして織り込まれており、巻末には参考となる情報源が示されてもいます。
そしてこれは今現在困っていない全ての人にも読んで欲しいものとなります。あなたの目に怠けていると見える人、ワガママを言っていると見える人、みんなの和を乱す存在に見える人は、本当はその人自身が困っているのかもしれない。どうしようもできないのかもしれない。
その困ったことを除き取り助けることができるとは限らない。でも困っているということを知ることにより、寄り添い救える心はきっとあるでしょう。そんなことに気付かせてくれる作品でした。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2020年04月02日

面白かったです
所々嫌いなわけではないができないところやサボってるわけでなくできないなどといったことがある子たちの短編集なので読みやすいです
孤児や臭い、本を読むのが遅い、字が雑になってしまう、大人の期待に応えたいなどといったことのある子からの目線なので難しかったです

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Posted by ブクログ 2020年03月15日

中1の娘曰く「この人の物語は曇ってる」…確かに明るくて楽しいストーリーではないけれど、私はある意味とても現代のリアルを切り取っているように思えたし、瑞々しさすら感じた
語り手が変わると同じ出来事が全く違う現象に見えてくる
それが「相手の立場になって」ということなんだろう
人に分かってもらうのは難しい...続きを読む…そう言えば、地震の後受診した病院でも「そんな言葉が欲しかったんじゃなくて、ただ怖かった気持ちを受け入れてもらえるだけで良かったのに」と感じた25年前のことを思い出した
きっと息子や娘との関係も同じことだね

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Posted by ブクログ 2020年01月06日

両親と、同学年で3ヶ月違いの養弟と暮らすひすいの、新中学2年の担任教師は、個人が読んだ本と感想を書いた「読書カード」を掲示し、班ごとに冊数を競う方針を掲げた。彼女は、本そのものや読み聞かせは好きだったが読むことは苦手で、なかなかカードが出せず焦っていた。ところが、同じクラスの入来理幹は、プライバシー...続きを読むを理由にカードの提出を拒む。担任に気に入られたいひすいは、理幹の行動に驚くが、同じクラスの心桜の汚い字で幼い文章のカードにも、その字をパソコンで打ち替えたカードに張り替える担任教師にも驚くのだった。

ディスレクシア、書字障害、化学物質過敏症、里親養子、外国人の血筋、過食症……、中学2年生の様々な悩みを、語り手を替えながら描く。


*******ここからはネタバレ*******

異性で、しかも実娘と同学年の養子を迎えた親子がどう物語を展開していくか期待しながら読み始めたこの本は、結局、物語としての進展は見せず、いろいろな悩みを紹介して終わりました。
特に、著者の抱えている困難と同じ書字障害や化学物質過敏症についての記述はこれが中学2年生の言葉かと思うくらい詳細で、解説書のようです。

他の人には理解してもらいにくい困難さを理解しようとしよう、お互いが気持ちよく暮らせるように配慮し合おうということで物語は締めくくられますが、本作で紹介される悩みがたくさん過ぎていささか消化不良に感じます。

とはいえ、共感できるところもありました。理幹が、読書カードとプライバシーについて争ったところです。
私自身、高校生の時、大嫌いな国語教師から自らの心情を描いた作文を書くように言われて拒否したことがあるので、気持ちがわかります。
今でも、学校に掲示してある絵や習字等の作品、文集等を見ながら、子どもたちは自らの作品の公開を拒否できないのか、したくない子もいるだろうにと考えてしまいます、教育とプライバシーの境目についてもっと議論してほしいところです。


物語としては物足りないが、たくさんの議論のネタを提供してくれる道徳の教科書のような一冊です。

表現は平易で読みやすいけれど、ところどころ深いところがあるので、中学生以上か、しっかり考えるのが好きな高学年からオススメします。

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Posted by ブクログ 2019年12月19日

生きることや勉強することに困難を抱えていたり、自分のアイデンティティを模索したりしている中学生達のお話。
現代の子ども達の身近にある問題について、本人の気持ちだけでなく、周りの人達の視点でも考えることが出来る。

ドラマや小説、教科書で、ディスレクシア、LGBT、アレルギーなどの話が出てくると、自分...続きを読むはちゃんと皆のことを理解できていると思いながら読む。
しかし、もし自分の子どもや友人が当事者の場合ではどうだろうか?同じように、冷静に、相手の立場になって考えることが出来るだろうか?この本にも登場する、何も分かってない親や教師のような反応をしてしまうのではないか…?
頭では分かっていても、感情や言動をコントロールするのは難しいだろうなぁと考えさせられました。

ストーリーとしては、最初の、ディスレクシアの姉と、血のつながらない弟の家族の話が、この先どう進んでいくのかも読みたかったなぁと思いました。

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Posted by ブクログ 2020年03月31日

思春期の子たちに(こっそりでもいいから)読んでもらいたい本。それぞれに何かしらの「困難」を抱えた中学生たちが主人公。障害と言えるものもあるし、そこまでではないものもある。ただ、みんな何かしら「困難」を抱えていること、その「困難」が立場が変われば見方も変わること、が瑞々しい文章で描かれています。
著者...続きを読むのこの視点、この世代の子たちへの寄り添い方がすごいと感じていたら、あとがきで納得させられました。著者自身がこういった「困難」を抱えて生きてきたことが書かれていました。
これから多様性がキーワードとなる社会で生きる子たちに、これらが「困難」でありながらも受容される社会を作ってもらうために、是非読んで欲しい一冊です。

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Posted by ブクログ 2020年03月19日

周りには理解して貰えず1人でもがいたり、葛藤している思春期の登場人物の感情をすごくリアルに描いていて良かった。ごく普通クラスには色々な生徒がいて、それぞれ悩んだり、考えたり、お互いに理解し合い、助け合いながら成長していく同年代の登場人物に感動したし、色々な子がいるんだという発見もできた。

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Posted by ブクログ 2020年01月15日

読み書きに困難を抱える血の繋がらない姉をもつ拓真は、養育里親の制度でひすいと家族になった。女にも男にも分けられたくない子、文字を書くことに違和感を持つ子、過食気味の子、過敏症の子、いろんな困難を抱える中学2年生が登場します。わがままを言ってる?怠けている?決めつけると見えなくなること、知っていると変...続きを読むわってくることがあります。自分やまわりの困難を知るきっかけになる一冊。

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