見田宗介のレビュー一覧
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見田宗介氏(1937年~)は、現代社会論、比較社会学を専攻する社会学者。真木悠介の筆名でも多数の著書がある。東大の著者のゼミは抜群の人気を誇り、その出身者には、大澤真幸、宮台真司、小熊英二、上田紀行といった、現代日本を代表する思想家・社会学者がいるのだという。
本書は、初出2011年の序章のほか、いくつかの著作、学会やシンポジウムでの講演内容に加え、本書のための書下ろしをまとめたものである。私はこれまで見田氏(真木氏)の著作に縁がなかったのだが、本書の題名と上述のような構成から、著者のこれまでの論考のエッセンスがまとめられたもの、即ち「集大成」と考え、手に取った。
本書の論旨は以下のように明快である。
◆人間は、地球という有限な環境下に生きる限り、生物学でいう「ロジスティック曲線」から逃れることはできない。人間はこれまで、原始社会<定常期>から、カール・ヤスパースのいう「軸の時代」(古代ギリシャで哲学が生まれ、仏教や儒教が生まれ、キリスト教の基となる古代ユダヤ教の目覚ましい発展があった時代)<過渡期>を経て、文明化による人口増加<爆発期>を経験してきたが、近代はその<爆発期>の最終局面だったのであり、現代はその後に訪れる<過渡期>、即ち未来社会<定常期>への入り口にある。
◆それは、人間は、「軸の時代」以降、貨幣経済と都市社会の勃興を前に、世界の“無限性”を生きる思想を追求し確立してきた(その究極の姿が資本主義であろう)が、現代において、グローバル化が極限まで進み、環境的にも資源的にも、人間の生きる世界の“有限性”を生きる思想を確立しなければならなくなった、ということである。
◆そして、その思想とは、経済成長を追求しない、生きることの目的を未来に求めない、他者との交歓と自然との交感によって「生のリアリティ」を取り戻すことである。
◆その思想は、シンプル化、ナチュラル化、素朴化、ボーダーレス化、シェア化、脱商品化、脱市場経済化という現象として現れつつあり、価値観調査における若い世代の幸福感の増大のような結果も併せると、新たな世界が広がりつつあると言えるのかも知れない。
これは社会学者・広井良典氏のいう「定常型社会」と共通するものであるが、私はこの思想に深く共感を覚えるし、人類の進むべき方向はこれしかないと考えている。しかし、現実に目を転じると、政治家は「一億総活躍社会」などとぶち上げて「経済成長」を錦の御旗にし、少なからぬ人々が「経済成長」の呪縛に捉われたままである。現在の課題と進むべき方向が明らかな今、どのようにしてそれを実現するのかにこそ、人類は知恵を絞る必要があるのだと思う。我々に残された時間は多くはない。
(2018年9月了) -
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1968年の連続射殺事件の犯人・永山則夫を対象とし、個からそれを取り巻く当時の社会構造と変動を総体とした社会学論考。
他者からのまなざしは個人の現在と、そして未来をも呪縛する。具象的であれ抽象的であれ、ある表層性において人間を規定するまなざしと、その記号化に囚われ、陥凹し、存在と離脱された一つの事例がN・Nである。その背景としての当時の社会として、高度経済成長期に合わせた集団労働力としての地方から都市への出稼ぎ者の流入、地方の貧困、家郷の喪失、といったことがある。
この内容を、個から総へ、そしてまた個へと行きつ戻りつしているのが本書である。社会学者ならではの表現と言い回しは、もっとわかりやすくならないのか!といらだちを抑えつつ辛抱していくと、ジワーっと内容が入ってくる(気がする)。
貧困とは貧困以上のものであること、というのは本事件の核心であり、社会情勢の変化のなかでの影の部分の発露であることがわかる。
特に解説が良く、内容だけではなく、数十年たった事件の論考がなぜ再度まとめられたかということの補完にもなっており、現代と比較することで社会学的な意味合いが増していることがわかる。 -
Posted by ブクログ
人間が誰かといればそれは社会と言える。いや、一人でもその「在り様」は社会の一部であろう。社会学というのは全く幅が広くて捉えどころがないのである。
序文にあるように、「社会というものの本体は人間であり、社会学は人間学」である。
さて、本書はその入門とあるが、さまざまな人の書評にもあるように後半(というか中盤)は読み解くのに困難を極める。文字が滑って頭に入らないという、圧倒的な情報を圧倒的な語彙で責められる。つらい。
ただ、前半は知的欲求を満たしてくれつつ社会学への扉を開いてくれている気がするし、最後6章と補章でパンクしている頭をなだめてくれる。
まさに「越境する知」を体感できる。再読したい一書。 -
Posted by ブクログ
刊記を見ると、初版は1996年。
20年が経過しているので、もう時代遅れになった部分があるのでは、と思った。
たしかに、アメリカの経済状況は、あれからリーマンショックなど、本書では予見できない不況に見舞われたのは事実だ。
むしろ、今、やっと著者の描いた情報化/消費化社会のことが、リアルなこととして感じられる。
限界に達した現代社会を、問題だけ指摘して終わるのではないところも、本書のよいところだと思う。
ただ、バタイユを援用しながら述べる、「生の充溢と歓喜の直接的な享受」を可能にするような「消費社会」がやってくるのかは・・・残念ながら、現状ではそのようには思えない。 -
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これからの千年を人類はどう生きるべきか?千年の射程で人類のビジョンを示す、日本を代表する社会学者による奇蹟の対談集。
私の『社会と思想』に関わる思考の基礎は、見田さんとの出会い、見田さんの本から出来ていると思う。
そんな見田さんの対談集。全てを読み込むことは出来ていないけど、見田さんの思考の一部が、私の中に溶け込んでくる感覚が堪らなく好きだ。
『気流の鳴る音』、『現代社会の理論』、『社会学入門』…にして、何度も何度も読み返す中で、体に馴染んできたように思う。
この本も、何度か読み返しながら…『時間の比較社会学』、『自我の起源』も少しずつ読み進めたいとは、思っている…自分の思考の基礎を、積み上げていきたいと思う。
今回読んで、特に印象に残ったところは、
○虚構のシステムはリアリティの一点から破綻する。
○スモールワールド・セオリー…小さな交響的な共同体がたくさんできれば、全体の人間を覆うような大きな共同体を構築することができるのではないか⁈
○利己性と利他性が問われる地平そのものが、どんどん問い詰めていくと、そこが抜けていく。
○他者性を他者性として繰り込むという契機がどこかにないと、近代性の主体としての自我は存立しない。
○災害の破局は、革命の好機でもあるのだ。
○リスク社会のリスクの特徴…全体として危機に陥るほどの破局である…生起する確率が小さ過ぎて計算不能である。
○第三者の審級の許可が絶対の成功を保証してくれてから、踏み台したいという気持ちがあるから、物事は正しいだけではなかなか前進しない。
○第三者の審級による承認を待っていたら、決して、革命に匹敵するような決定的で本質的な選択はできない。
○未来の他者との連帯はいかにして可能か?その連帯を正当化するどのような理論が可能なのか?
これらの千年を生き抜くために必要な社会と思想の断片的ビジョンを手に入れた私は、自らの実践をもって、これらのビジョンをカタチあるものにしていきたいと思う。 -
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社会学"入門"というタイトルではあるけれど、自分には充分に歯応えのある本だった。それは自分が初めて社会学に触れたからかもしれない。
自分の中で消化し切れていない部分が多分にあるけど、それを差し引いても、この本を読めて良かった。また数年後、数十年後に読み返したら理解はもっと進むだろう、という深みも感じた。
死者の日の「余分な一人分の食事」とマックス・ウェーバーの「プロ倫」の比較から見えてくる、人間が失ってきたもの、それはすなわち「目に見えないもの、測定できないもの、言葉では説明できないもの」だった。そしてこれらは人間が生きていく上での核心たり得ることが多い(P39)。
今よりも争いの少ない世界を実現するための、今まで自分が全く意識していなかった可能性を感じた。が、それを成し得るまでにどれほどの時間が必要なんだろう、いや無理なのかもしれないとも思った。その方法とはすなわち、我々が生きる情報化/消費化社会が自ら自立することだった(P140)。
現代を短歌を通して見ていた四章は読んでいて、和歌の良さを再発見したようで面白かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ[ 内容 ]
「ゆたかな社会」のダイナミズムと魅力の根拠とは何か。
同時に、この社会の現在ある形が生み出す、環境と資源の限界、「世界の半分」の貧困といった課題をどう克服するか。
現代社会の「光」と「闇」を、一貫した理論の展開で把握しながら、情報と消費の概念の透徹を通して、“自由な社会”の可能性を開く。
社会学最新の基本書。
[ 目次 ]
1 情報化/消費化社会の展開―自立システムの形成(新しい蜜蜂の寓話―管理システム/消費のシステム デザインと広告とモード―情報化としての消費化 ほか)
2 環境の臨界/資源の臨界―現代社会の「限界問題」1(『沈黙の春』 水俣 ほか)
3 南の貧困/北の貧困―現代社会の「限界問題」2(限界の転移。遠隔化/不可視化の機制 「豊かな社会」がつくりだす飢え ほか)
4 情報化/消費化社会の転回―自立システムの透徹(「それでも最も魅力的な社会」? 消費のコンセプトの二つの位相 ほか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
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ネタバレ[ 内容 ]
「人間のつくる社会は、千年という単位の、巨きな曲り角にさしかかっている」―転換の時代にあって、世界の果て、歴史の果てから「現代社会」の絶望の深さと希望の巨大さとを共に見晴るかす視界は、透徹した理論によって一気にきりひらかれる。
初めて関心をもつ若い人にむけて、社会学の「魂」と理論の骨格を語る、基本テキスト。
[ 目次 ]
序 越境する知―社会学の門
1 鏡の中の現代社会―旅のノートから
2 「魔のない世界」―「近代社会」の比較社会学
3 夢の時代と虚構の時代―現代日本の感覚の歴史
4 愛の変容/自我の変容―現代日本の感覚変容
5 二千年の黙示録―現代世界の困難と課題
6 人間と社会の未来―名づけられない革命
補 交響圏とルール圏―「自由な社会」の骨格構成
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