清水克行のレビュー一覧

  • 室町は今日もハードボイルド―日本中世のアナーキーな世界―(新潮文庫)

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    歴史は相性が悪く、読んでいてすぐ眠くなってきてしまうが、この本は実に面白い。一見、現代の日本人からするととんでもない、室町時代の日本人がコミカルに紹介される。
    一見、と書いた。たしかに今の尺度からするととんでもないが、当時の尺度からすると当たり前の行動、合理的な、至極真っ当な考え方だったのであろう。
    日本史上の大転換点にあった室町時代の日本人の考え方や行動原理を知り、私が現代で当たり前とするものや考え方もまた絶対の当然のものではないと再確認させられる。色々な考え方の人がいて、色々な正しさがある。こういう考え方って、今の、視野狭窄とも感ぜられる世の中には大事なものなのかな、と。
    そして、一見我々からすると妙だが、根本では似たような考え方や行動をしていると知り、ご先祖様たちに親近感もおぼえる。
    長々と書いたが、ただの歴史本にあらず、世の中の見方、物の考え方について、持っておいたほうが良い「寛容さ」、相対的な視点の大事さを改めて教えてくれる一冊であった。

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    2024年01月25日
  • 喧嘩両成敗の誕生

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    現在、最高裁判所を頂点とする民事・刑事の法体系があり、何か有れば弁護士を通じて裁判所にということが当たり前に存在しているが、室町時代の昔は自力救済が基本の世界だった。しかも苛烈な名誉意識を持ち、集団の構成員が受けた痛みは集団全体のものとして内部化するという中世人の心性。

    そうなると、室町時代における紛争解決とは、放っておけば任侠の世界と同等で、抑止力を効かせつつどどで引くかという話になってしまう。時の支配者たる幕府が、これに権威ある仲裁を行おうとして四苦八苦、荒ぶる人々の公平意識に会う様に様々な制度が出てくる。

    最終的に行き着くのが喧嘩両成敗だが、意図は喧嘩両成敗として喧嘩そのものを抑止しつつ、我慢して手を挙げなかった方が(法廷で)勝ちになるとの定めもあり、裁判へ誘導するものでもあった。

    今の裁判制度を当たり前のものとして見てしまっているが、こういう裏面史があり、様々な経緯や議論を経て成り立っていることを知るのは大変面白い。

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    2021年12月31日
  • 世界の辺境とハードボイルド室町時代(集英社インターナショナル)

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    辺境作家の高野さんと中世史家の清水さんの対談。最初は、本書の表題のように、それぞれが専門とする室町とソマリランドの生き方が似ているというところから話が始まるが、後半はそこから離れて人生論、作家論、文化比較論、日本人論・・と様々な話題に及んで飽きさせない。お二人の教養の深さも物凄い。

    一つ言えるのは、価値観はもとより多様だが、それは辺境にも転がっているし、過去にも転がっていて同様に面白いし、やはり今の価値観が絶対ではないことを常に相対視できるようにすべきということなんだろうと。

    30年前と今と、かなり価値観は変わってきているが、それもそれ、古代から中世、織田信長を経て江戸、そこから明治、戦前から戦後と結構ドラスティックに変わっている。変わるもんだと思って順応していくということなんだろうと思う。

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    2021年12月26日
  • 室町は今日もハードボイルド―日本中世のアナーキーな世界― 無料お試し版

    購入済み

    日本人の本性とは

    日本人は他民族と比較してよくおとなしいと言われますが、それは近世後期から形成されてきたイメージが強いからだといえます。この作品のように中性は日本でもわりと本能のままに生きて行動する人々が多く、本当の日本人の本性とはなにかを考えさせられます。

    #アツい

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    2021年11月06日
  • 喧嘩両成敗の誕生

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    ネタバレ

    イスラム国とか、カルトとか、そういうレベルじゃなくて、異文化を考えるときに、我々がこうやって生きていた歴史があるということがとても助けになる。

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    2021年07月31日
  • 室町は今日もハードボイルド―日本中世のアナーキーな世界― 無料お試し版

    購入済み

    語り口が良い

    現代日本の歴史観は儒教 朱子学で固まってしまったような江戸時代を経ているせいか、どうしても忠孝に基づいた道徳観に縛られがちである。この本はそのような先入観をバッサリと削ぎ落としてくれる。単に中世のことを解説した類書はたくさんあるが、この本は著者の語り口が大変に平易で面白くどんどん読み進めてゆくことができる。

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    2021年07月04日
  • 喧嘩両成敗の誕生

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    現代においても影響が残る喧嘩両成敗という法について、その成立に至る問題解決の試行錯誤の歴史を様々な事例を通して明らかにする内容。中世自力救済社会とその克服を目指す為政者たちとのせめぎ合いが面白い。

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    2021年06月08日
  • 耳鼻削ぎの日本史

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    ネタバレ

    解説で高野氏が称賛しているように、キャッチーな話題で読者の興味を惹き付けながら史料引用と考察を重ねていく、著者の筆力が本作でも冴え渡っている。
    耳鼻削ぎというグロテスクな話題から、日本中世~近世の文化を著述する手腕はお見事の一言。
    柳田國男と南方熊楠といった二巨頭の論戦を冒頭に記すことで一気に引き込まれる。
    中世の事例より、耳鼻削ぎは女性や僧侶に対して、死刑相当の罪一等を減じる宥免罪としての地位を持っていた。女性は一人前の判断能力がないと思われていたため、僧侶は聖界の人間のため。また日本中世の荘園での刑罰は、犯罪によって生じたケガレを除去することに重点が置かれたため、犯罪人は領域外へ追放するといった意味合いが強い。耳鼻削ぎを実際に行う人も、被差別部落民が担っており刑余の人間はそのままその民となっていただろう。
    しかし、室町から戦国前期にかけて耳鼻削ぎは戦果を証明するための証拠であり、そのため鼻削ぎは髭の生えている上唇と一緒に削ぐことで正当な戦果と認められるといった作法まで生まれてくる。また、戦果証拠としてはあくまで首が本義であり、耳鼻は戦場と戦果認定のための中央権力が離れている場合に輸送の便のために執り行われた措置であった。そのため、各地の権力が収斂し戦場が大規模・遠隔で行われるようになる安土桃山時代に耳鼻削ぎの事例は増していく。それに付随して、耳鼻削ぎは宥免罪としてではなく、苦痛の見せしめ罪としての意味合いも付与されていく。
    江戸時代も中期に入り徳川綱吉の生類憐れみの令により、「文明化」されていくと、耳鼻削ぎといった肉刑はグロテスクさと認識されるようになり、徐々に姿を消していく。
    前近代のユーラシア大陸では、いち早く「文明」化した中国や朝鮮半島の王朝のみが耳鼻削ぎ刑を忌避し、それ以外の「辺境」的な地域にのみ耳鼻削ぎが残存し、女性のための刑罰という意味が付与されていたということになる。
    こうした中国隣国型と辺境型という二類型でアジアの国々をみていったとき、日本社会は、古代において中国隣国型の国家体制をとりながらも、中世に入ると一転して辺境型の国家体制にシフトしたといえる。

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    2021年06月03日
  • 喧嘩両成敗の誕生

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    喧嘩両成敗、って喧嘩した両方を死なせるって意味だったんだね?というレベルの知識のない人間にもわかりやすく室町時代の人々の倫理観や価値観を伝えてくれる本。研究によると、室町時代を生きた人々の倫理観や正義感はだいぶ現代の個人主義的感覚からかけ離れたものだった…ということで、ある種のSFを読んでいるかのような興味深い内容だった。
    現代的感覚から見ると、警察や刑務所にあたる公権力がない分、問題が起きたときに自己責任で解決しなければいけない領域が大きい。だが基本的に一人では何もできないので、何かしらのグループに属してそのグループの威を借りたり、グループの連帯責任で生活していく必要があった…という部分が一番のギャップだ。
    この部分は現代の素っ気ない人間関係に感謝しかない。

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    2021年04月14日
  • 喧嘩両成敗の誕生

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    めっちゃ面白い。非武装の平和な国に慣れてしまって、完全に忘れてしまってるけど、昔の日本は、村や所属団体ごとに武装して、頼れる国や警察もなかったから、自分たちで落とし前をつけなければならなかった。喧嘩が始まり、2人殺されたら、同じ数だけ死んでもらわないと収まらず、エスカレートするほど好戦的なそんな時代に、最終的な決着をつける、みんなが同意できる法理論が、日本独自に育っいった。それがこの喧嘩両成敗であり、ハラキリだった。明治になって、欧米の法律を輸入していなかったら、どうなってたんだろう。今だに日本人のバランス感覚に根深く残ってる気がする。

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    2020年12月13日
  • 喧嘩両成敗の誕生

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    ネタバレ

     読んだのは半年ほど前のことになるが、感想を思い出しながら書くことにする。
     この本は中世に漠然と興味を持っていたころ、中世人の考え方を理解するのにおすすめの本という評価を見て、読んでみることにしたものである。
     この本は法制史の本で、室町時代の中世人という現代と異なる価値観をもつ集団の中で、喧嘩両成敗という有名な法がいかに誕生したかということが書かれている。
     私の中で印象に残っていることは2点ある。
     一つは、中世人の異質な価値観である。中世人は非常に短気で名誉を少しでも傷つけられたらすぐに喧嘩に発展し、殺傷事件に至ることも珍しくない。個人間の争いに留まらず、その人たちが属している集団同士の争いに発展し、役人が仲裁に入ってなんとか収まる、ということもままあったようだ。喧嘩の具体的な理由は現代から見ると取るに足らない理由も多い。本には書いた短歌が児に笑われたという理由で児を殺害した人が登場していた。この人は異常者ではないというのが驚きである。 
     歴史を学ぶ上でつい現代の感覚で昔の出来事を見てしまいがちであるが、当時の価値観を考慮した上で、出来事を解釈していくという必要があるのではないだろうか。
     もう一つは喧嘩両成敗の成立の背景についてである。喧嘩両成敗は訴訟を個人間で解決した自力救済型の社会から統治機構による裁判権が確立した近世社会の移行期に誕生したもので、裁判権の統制を行っているが個人間の解決の要素もある、と記述されていたと覚えている。また、喧嘩両成敗は当時の衡平を重視する価値観からも受け入れやすいものであったものだという。喧嘩両成敗という言葉は現在も使用されることがあり、どっちも悪いの意味で使用されることが多いと思うが、その背景には社会の価値観や社会制度の移行など複雑なものがあり、とても興味深かった。
     この本は、以上のようなことを根拠となる資料を提示しながらわかりやすく論を展開して説明する。喧嘩両成敗自体に興味がなくても、室町時代の日本人がどのような人たちであったか知りたい、という方にも自信を持って勧めることのできる本であると思う。

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    2020年11月09日
  • 辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦

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    日本の歴史学者である清水克行と、辺境などを渡り歩くノンフィクション作家である高野秀行による読書対談。

    前作に引き続き、異なる背景を持つ二人による対談は面白い。
    そえぞれの知識、体験に裏付けされた着眼点から一冊一冊の本を掘り下げていくため、非常に読みごたえがある。

    本書を読む前は全然興味がなかった「大旅行記」「ギケイキ」といった本についてもぜひ読んでみたくなった。

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    2020年09月20日
  • 喧嘩両成敗の誕生

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    「喧嘩両成敗」法は何故誕生したか、室町時代に遡って研究する本。随一面白かった!法も警察も裁判所もない時代の共同体ごとの自力救済を原則とするなか村八分さらには埒外(outlaw)に置かれることは何を意味するのか・「両成敗」を求めたのは民衆か権力者か・何故これ程まで「面子」が重要視されるのか・何故これ程まで「平等の損」に執着するのか・責任を(当事者ではない誰かが)取ることの意味と真実を突き止めることへの無頓着さ・「(結果はどうあれ)こんなに頑張ったんだから」が現代でもまかり通るそのルーツ・被害者落ち度による過失相殺が今も残る国。

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    2020年08月09日
  • 喧嘩両成敗の誕生

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    「日本的風土に根づいた伝統」とされ、戦国時代において自力救済克服の画期となった法として日本史の教科書にも必ず登場する「喧嘩両成敗法」の室町時代における形成過程を概説。
    本書は、喧嘩両成敗法を生み出した室町時代の社会の在り方、特に強烈な名誉意識や復讐意識、衡平感覚といった当時の人々の苛烈な心性にスポットを当てているところに特色があり、喧嘩両成敗法は、戦国大名主導の強圧的な秩序形成策として登場したのではなく、中世社会の中で形成された紛争解決の法慣習の蓄積であったと位置付けている。
    本書は、喧嘩両成敗法の成立過程を題材としながら、現代社会と通じながらもかなり異なる室町時代の社会の在り方を生き生きと描いており、歴史学の面白さを感じさせてくれる一冊だった。特に、身分を問わず強烈な自尊心をもち、ちょっとしたことで殺し合いにまで発展してしまう室町時代の人々の現代日本人とは異なる「苛烈」な心性については、本書を読むまでほとんど知らなかったことであり、非常に興味深かった。
    また、民法の「過失相殺制度」が世界的にかなり特異なものであり、こういうところにも「喧嘩両成敗」的な心性が息づいているという指摘も、目から鱗であった。
    本書は、実証研究の成果をもとに、現代にも通じるテーマについて、研究史への批判も盛り込みつつ、現代を相対化させてくれるような過去の社会の在り方を明らかにし、知的好奇心を満たしてくれるという点で、歴史教養書のまさにお手本であると感じた。

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    2020年06月20日
  • 辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦

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    【「ここではない何処か」を時間(歴史)と空間(旅もしくは辺境)という二つの軸で追求していくことは「ここが今どこなのか」を把握するために最も有力な手段なのだ。その体系的な知識と方法論を人は教養と呼ぶのではなかろうか。】(文中より引用)

    それぞれ「周辺」と「中世日本史」に惹かれ続ける2名の碩学が、何冊かの本を手がかりに縦横無尽に議論を試みた作品。著者は、前作の『世界の辺境とハードボイルド室町時代』も話題を読んだ高野秀行と清水克行。

    まず読書合戦のために選ばれている著作からしてかなりマニアック。そこからさらにマニアックな話を展開していくわけですから、刺さる人にはたまらない内容になっているかと。気軽に、それでいて重厚に楽しむことのできる(前作に引き続いての)奇書でした。

    第3弾が出ても読みます☆5つ

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    2020年05月08日
  • 世界の辺境とハードボイルド室町時代(集英社インターナショナル)

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    「ソマリアの内戦と応仁の乱は似ている」というところから話が始まる。最初はソマリランドと室町時代の比較をしているのだが、本の後半では東南アジアやアフリカの話も出てくるし、日本史の方も中世史だけではなくなり、最後は日本国について語るところに収束している。対談形式なのだけれど、どちらかの専門に偏ることなく、辺境も歴史も面白そうな本だった。

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    2020年02月09日
  • 戦国大名と分国法

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    結城・伊達・六角・今川・武田の5戦国大名の領国だけに通用する分国法を順に取り上げて考察している。分国法のねらいは、①自力救済の抑制(たとえば私闘の禁止)②大名権力の絶対化(たとえば治外法権の極小化)③公共性の体現(たとえば公正な裁判や職権主義の実現)④既存の法習慣の吸収・再編などであるが、結局のところ上手く機能することはなかったようだ。領国の法制度を整えるより、近隣大名との争いに悩殺されたからである。では、分国法というのは無駄だったのか。いや、江戸時代になってこれらの試みの経験は大いに生かされたようである。それにしても、それぞれの大名の面白い実態や、意外と村共同体が強かったことなどが、読んでいて面白かった。清水氏の文章は、そういう細部のところが魅力があっていい。

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    2019年09月23日
  • 喧嘩両成敗の誕生

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    「謎の独立国家ソマリランド」からの「世界の辺境とハードボイルド室町時代」、そこからの「喧嘩両成敗の誕生」です。高野秀行がソマリランドの平和を氏族主義によるトラブル回避にあるとして日本の戦国大名に見立てたことが、著者 清水克行独自の研究の室町時代の社会史研究に繋がりました。確かに似てる似てる。それにしても近代以前の日本人ってプッツンしやすかったんですね。笑われてキレる感じが、ツッパッているティーンみたい。そうならないように、というのではなく、そうなったらどう落とし前つけるか、の技術が法をつくっていく、社会の安定を作っていく、というお話だと読みました。ただ、ソマリランドは「男一人殺されたらラクダ百頭」というルールだけど、室町時代は「一人を討たば一人をきり、二人を討てば二人誅する」(あくまでルールのひとつだけど…)の違い。ソマリランドは経済的なバランスも含んでいるけど、日本の場合はあくまで名誉のバランスなのだな、と感じました。今、世界中でお互いにツッパッている緊張が多発していますが、例えば戦後最悪な日韓関係は名誉の問題で解決出来るのか、リアルなお金の問題で解決するのか…。アフリカ大陸や近代になる前の社会などの遠い世界の問題じゃなくて、実は今、日本で必要な技術もここにあるのでは、と感じました。

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    2019年08月17日
  • 世界の辺境とハードボイルド室町時代(集英社インターナショナル)

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    この本の面白いところは、高野秀行、清水克行、まったく違う分野の二人がそれぞれにお互いの話を超・面白がっているところ。たぶん、読者の存在なんて忘れて、ああ言えばこう言う、そのネタ出せばこのネタ出す、相手の気づきが自分の気づきに、お互いに目から鱗が落ちまくっている興奮が伝わってくる本です。EテレのSWITCHインタビュー 達人たち、と似た形式ですが、得てして、強引に共通項探したり、なんとなくのプロフェッショナル的な姿勢を褒め合ったり、みたいな感じになるのに対して、この二人は圧倒的にディテール攻撃の応酬で、そこから大きな歴史観と社会観が浮かび上がってきます。「おわりに」のページで、清水克行が『「ジャン=リュック・ゴダール」と「白村江の戦い」と「スーフィー」と「キジムナー」と「角幡唯介」が、一冊の本で語られるということは空前絶後のことではなかろうか。本書は間違いなく「奇書」である。』と書いていますが、「奇書」というより「奇跡の書」に思えました。その奇跡のできっかけを作ったのが『謎の独立国家ソマリランド』を読んで、「ソマリの氏族と報復のシステムは、『喧嘩両成敗の誕生』で描かれている室町時代の日本社会とまったく同じ」とツイッターでつぶやいた映画評論家 柳下毅一郎。「世界の辺境」ソマリランドと「昔の日本」室町時代、時空を超えて、共鳴し合うのは特殊を特殊と思わず、理解しよとする二人の知的好奇心があればこそ。専門バカにならずにバカみたいに刺激し合う、これが学際領域の知性か、と感動しました。つまりは歴史も社会も人間のつくるもの、その人間のワンダーを大切にしあう素敵な本でした。『喧嘩両成敗の誕生』も読まなくちゃ!

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    2019年08月08日
  • 世界の辺境とハードボイルド室町時代(集英社インターナショナル)

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    「五代将軍徳川綱吉の犬を殺すな、捨て子をするなという政策は、都市治安対策、人心教科策として、ある程度成功した。秀吉のできなかった銃規制もやっている。」「平安時代あたりから、ミニ中華帝国化をあきらめて、中国との程よい距離感によって、文明から切り離され、中華文明圏の辺境になっていく。」「信長の規律化への志向は変。信長、秀吉、家康の力の論理による支配は、長く続かないので、論理や法による支配を考えないといけない。北条泰時の『御成敗式目』や綱吉の朱子学をベースにしたイデオロギーは、中世的な殺伐とした空気を断ち切った。」「中世から近世にかけては、炊くと増え方が大きい古米のほうが新米より高かった。タイ、ミャンマー、インドもそう」「タイでは、農民は所得税を払わない。取ろうとすると、いなくなってしまって別のところで田を作る。タイ人の離合集散は激しい。家族や親せきも、友人もすぐにどこかへ行ってしまう。日本の農民の定住性とは対照的」「戦国時代の宣教師の記録を見ると、武士は戦場までは馬を使って移動して、戦うときは馬から降りて徒歩で戦うとある。武田の騎馬隊は、瞬時に戦場に駆けつけるだけ」「日本の村は、年貢を村単位で取り立てるので、共同体の規制が厳しくなる。」「日本は中華文明の辺境なので、中華という基準と照らし合わせて気にしていないといけない。常にアイデンティティの不安にさらされている」「アジア・アフリカの辺境や室町時代のほうが世界史的に普遍性をもっている。江戸時代という特殊な時代を経たのが今の日本。今生きている社会がすべてだと思わないでほしい。」

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    2019年07月06日