【感想・ネタバレ】世界の辺境とハードボイルド室町時代(集英社インターナショナル)のレビュー

あらすじ

現代ソマリランドと室町日本は驚くほど似ていた! 世界観がばんばん覆される快感が味わえる、人気ノンフィクション作家と歴史家による“超時空”対談。世界の辺境を知れば日本史の謎が、日本史を知れば世界の辺境の謎が解けてくる。中島京子さん推薦「脳天にハンマー直撃。目から鱗ボロボロ。」【小見出しより】外国人がイスラム過激派に狙われる本当の理由/ソマリアの内戦と応仁の乱/未来に向かってバックせよ!/信長とイスラム主義/伊達政宗のイタい恋/江戸の茶屋の娘も、ミャンマーのスイカ売りの少女も本が好き/独裁者は平和がお好き/妖怪はウォッチできない/アフリカで日本の中古車が売れる知られざる理由/今生きている社会がすべてではない

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Posted by ブクログ

なんとも刺激的な本。

辺境作家の高野秀行さんと「喧嘩両成敗の誕生」が出世作となった歴史学者清水克之さんの対談集。

高野秀行さんはデビュー作の「幻獣ムベンベを追え」から注目している好きな作家さん。一方清水克之さんは日本の中世の民衆史が専門の学者さん。

普通に考えると共通性もないお二人がソマリランドを媒介にして出会い、社会や国の在り方、果ては人間の思考のあり方の根源にまで想いを巡らせている。

その論考は新たな発見に満ちゾワゾワと今までの常識を揺さぶられる。

高野秀行さんの辺境作家としての行動力にばかりに目が行きがちだが、高野さんの緻密な思考回路や斬新な歴史解釈に、清水さんがインスパイアされて知識と事実に裏付けられた確固たる解釈や解説を的確に与え、それに対して高野さんが自らの体験を元にして話題をどんどん深め発展させていく。

なんとも面白く楽しい対談集であるのだ。

今は文庫でも出ている様なのでぜひ興味のある方は読んでほしい。良質なブックガイドの側面もある。

私もますば「喧嘩両成敗の誕生」を積読本の山から掘り起こし読んでみたい。た

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2025年09月02日

Posted by ブクログ

マニアックな知識をたくわえた、教養あるオジサンが二人で居酒屋で歓談している。どこまでも広がる話。ひたすら興味深い。
たまたま一人飲みをしていた隣の席にこのオジサンたちが居たなら、顔面と同じくらい耳を大きくして聴いていたくなる。
たびたび紹介される他者の作品も気になるものばかり。知らないことをたくさん吸収できる悦び。

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2024年11月12日

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辺境作家の高野さんと中世史家の清水さんの対談。最初は、本書の表題のように、それぞれが専門とする室町とソマリランドの生き方が似ているというところから話が始まるが、後半はそこから離れて人生論、作家論、文化比較論、日本人論・・と様々な話題に及んで飽きさせない。お二人の教養の深さも物凄い。

一つ言えるのは、価値観はもとより多様だが、それは辺境にも転がっているし、過去にも転がっていて同様に面白いし、やはり今の価値観が絶対ではないことを常に相対視できるようにすべきということなんだろうと。

30年前と今と、かなり価値観は変わってきているが、それもそれ、古代から中世、織田信長を経て江戸、そこから明治、戦前から戦後と結構ドラスティックに変わっている。変わるもんだと思って順応していくということなんだろうと思う。

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2021年12月26日

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「ソマリアの内戦と応仁の乱は似ている」というところから話が始まる。最初はソマリランドと室町時代の比較をしているのだが、本の後半では東南アジアやアフリカの話も出てくるし、日本史の方も中世史だけではなくなり、最後は日本国について語るところに収束している。対談形式なのだけれど、どちらかの専門に偏ることなく、辺境も歴史も面白そうな本だった。

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2020年02月09日

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この本の面白いところは、高野秀行、清水克行、まったく違う分野の二人がそれぞれにお互いの話を超・面白がっているところ。たぶん、読者の存在なんて忘れて、ああ言えばこう言う、そのネタ出せばこのネタ出す、相手の気づきが自分の気づきに、お互いに目から鱗が落ちまくっている興奮が伝わってくる本です。EテレのSWITCHインタビュー 達人たち、と似た形式ですが、得てして、強引に共通項探したり、なんとなくのプロフェッショナル的な姿勢を褒め合ったり、みたいな感じになるのに対して、この二人は圧倒的にディテール攻撃の応酬で、そこから大きな歴史観と社会観が浮かび上がってきます。「おわりに」のページで、清水克行が『「ジャン=リュック・ゴダール」と「白村江の戦い」と「スーフィー」と「キジムナー」と「角幡唯介」が、一冊の本で語られるということは空前絶後のことではなかろうか。本書は間違いなく「奇書」である。』と書いていますが、「奇書」というより「奇跡の書」に思えました。その奇跡のできっかけを作ったのが『謎の独立国家ソマリランド』を読んで、「ソマリの氏族と報復のシステムは、『喧嘩両成敗の誕生』で描かれている室町時代の日本社会とまったく同じ」とツイッターでつぶやいた映画評論家 柳下毅一郎。「世界の辺境」ソマリランドと「昔の日本」室町時代、時空を超えて、共鳴し合うのは特殊を特殊と思わず、理解しよとする二人の知的好奇心があればこそ。専門バカにならずにバカみたいに刺激し合う、これが学際領域の知性か、と感動しました。つまりは歴史も社会も人間のつくるもの、その人間のワンダーを大切にしあう素敵な本でした。『喧嘩両成敗の誕生』も読まなくちゃ!

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2019年08月08日

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「五代将軍徳川綱吉の犬を殺すな、捨て子をするなという政策は、都市治安対策、人心教科策として、ある程度成功した。秀吉のできなかった銃規制もやっている。」「平安時代あたりから、ミニ中華帝国化をあきらめて、中国との程よい距離感によって、文明から切り離され、中華文明圏の辺境になっていく。」「信長の規律化への志向は変。信長、秀吉、家康の力の論理による支配は、長く続かないので、論理や法による支配を考えないといけない。北条泰時の『御成敗式目』や綱吉の朱子学をベースにしたイデオロギーは、中世的な殺伐とした空気を断ち切った。」「中世から近世にかけては、炊くと増え方が大きい古米のほうが新米より高かった。タイ、ミャンマー、インドもそう」「タイでは、農民は所得税を払わない。取ろうとすると、いなくなってしまって別のところで田を作る。タイ人の離合集散は激しい。家族や親せきも、友人もすぐにどこかへ行ってしまう。日本の農民の定住性とは対照的」「戦国時代の宣教師の記録を見ると、武士は戦場までは馬を使って移動して、戦うときは馬から降りて徒歩で戦うとある。武田の騎馬隊は、瞬時に戦場に駆けつけるだけ」「日本の村は、年貢を村単位で取り立てるので、共同体の規制が厳しくなる。」「日本は中華文明の辺境なので、中華という基準と照らし合わせて気にしていないといけない。常にアイデンティティの不安にさらされている」「アジア・アフリカの辺境や室町時代のほうが世界史的に普遍性をもっている。江戸時代という特殊な時代を経たのが今の日本。今生きている社会がすべてだと思わないでほしい。」

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2019年07月06日

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ネタバレ

星を見ると言うことは、同時に過去(の星の姿)を見ることであるように、現在の『辺境』(ソマリアやミャンマー)を見ることで日本の過去の社会への理解が進むというのは、不思議なようでいて、全く不思議じゃないようで。同じ人間なんだな。
そして、歴史学者とノンフィクション作家の対談のはずが、読んでいるうちにどっちの発言かわからなくなることが多々あって、その辺りもとても面白かった。しかし、話題がどれだけ変化してもお互いにボールに食らいついていけるのは凄い!
この二人の著作を読みたくなった。

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2018年10月14日

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まずは、2人の知識の膨大さ、引き出しの多さに驚き。
あまり歴史に詳しくないため、下の解説を読みつつ、引用される人や書籍が多かったので、次に読んでみたい本も増えました。
最後の方で、今の日本に住んでいた良かったと思ってしまうのは思考が停止しているとの指摘があり、はっとさせられた。
確かに、世界は広く、住んでるところだけが世界ではない。過去の日本や世界に目を向けて多様性や今の日本を客観視する目は必要だと思った。

◾️村社会の所以。応仁の乱前後からの日本人の同調圧力が強い理由は、年貢を納めるのは村単位だから、個人が納められないと村で負担していた。生命の共同体であった→ミャンマーでは、税は個人単位だから、村の誰が何をしようと知ったこっちゃない
◾️タイ人の流動性。家族、親戚がすぐとこかへいなくなっちゃう。研究者は水の文化と言ってる。タイでは、農民は所得税を払わない。政府が多く税金をとろうとすると、すぐどこかへいなくなっちゃうから。農民が定住民であるとは言い難い。今でも政府がとっているのは企業の法人税や個人で所得の高い人。関税。

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2018年04月26日

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辺境滞在に裏打ちされた経験と日本史歴史学者の最新の知識が次々に披露され しかもなんだかリンクしている驚異の対談

ふたりの対談終盤 現代日本が特殊でアジアやアフリカの辺境や室町時代の日本の方が 世界的に普遍性をもった社会なんじゃないか
今生きている社会がすべてとは思わないでほしい
との結論に至る
んとも憑き物が落ちるような感覚を受ける本

知識としてもっとも意外性があったのは アフリカで日本の中古車が売れる理由
日本の車がすごいということでなく クルマの持ち主が代わった瞬間に、価格が6割に下落する国は日本しかない 中古車輸出ビジネスは日本しか成り立たない それがケガレ意識と関係している
ってところ

ほかにも目から鱗が多数

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2018年01月13日

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室町時代だけでなく、江戸時代との違い、幕府と京都の距離感の関係性、辺境から現代を読み解く等、相当面白い内容が展開されている。

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2017年11月25日

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良き質問者は
良き回答を引き出す

博覧強記のお二人から
丁々発止、縦横無尽に
あっちや こっちへ と 
対談をされて
歴史的な
文化的な
博物学的な
興味深い話が
とどまるところを知らずに
溢れ出てくる

これを面白いと
言わずして…

いゃあ
知的な好奇心を気持ちよく
揺さぶってくださいました

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2017年11月22日

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室町時代の研究者 清水さんと辺境を渡り歩いている高野さんが、意外にも日本の室町時代と辺境と言われる世界の各国各エリアの文化が、似ていることから、それをテーマに比較文化すると面白いのではということで成立した著作。世界の辺境地の文化や特性は、実は過去の時代の特定の国の文化状況と類似しているということは、非常に興味深い本です。

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2017年02月05日

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タイトルは、村上春樹の『世界の終わりとハードボイルドワンダーランド』に掛けている、そうだとはどこにも書いていないけれど。遠く離れたソマリランドと遠い過去の室町時代が並行世界のようであるということなのだろうか。ソマリアの内戦と応仁の乱って似てますよね、というところから始まった辺境作家の高野さんと日本中世史の家清水さんの意外な組み合わせの対談は、意外にもとても噛み合ったやりとりになっている。

「応仁の乱もソマリアの内戦も、同じようにわけがわかんないんですけど、共通しているのは戦争の中心が都だったことでしょう。ふつうはある場所が戦場になっても、そこが戦いによって荒廃すれば、他の場所に戦場が移るけれど、都が戦場になると、いくらそこが荒廃しても、誰かが完全制圧するまで戦いの舞台が移らないんですよね」ということらしい。体面や面子を重んじること、名誉意識や集団主義といった心性が共通しいていると。また、ソマリアにおけるイスラム教と室町時代における信長の治世を、正義と公平を重んじる点で共通していると話している。不安定ながらもそれがゆえに平等な社会であることがソマリアと室町時代の共通点だという。

結局、ソマリアのことをとても特殊な世界だと思いがちだが、歴史的環境条件がそろえば同じような世界が出現するような、ある意味で合理的な世界だということなのかもしれない。遠く離れた世界、つまり距離的に離れたソマリアや時間的に離れた室町時代、についてその世界の合理性を理解するためにはソマリアに対して高野さんがやったように、また室町時代に対して清水さんがやったように、深く潜入してその中で息をするように感じることが必要なのかもしれない。そういった感覚を持ち寄った二人による対談は、現在の日本の特殊性を際立たせることにもなるのかもしれない。高野さんは、「現代日本の方がむしろ特殊であって、アジア・アフリカの辺境や室町時代の日本の方が、世界史的に普遍性を持った社会だったんじゃないかって夢想することがありますよ」と言う。それを受けて、清水さんが「江戸時代という特殊な時代を経て、その延長戦上にあるのが今の日本社会だと考えると」と返す。

対談ものはあまり好きではないのだが、この本のようにそこに必然性があると面白くなるのだ。

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2016年11月20日

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なぜ辺境へ行くのか、歴史を学ぶのか。今生きている社会が全てではないことを知るため、この一言に全てが凝縮されている。歴史家とノンフィクション作家の対談なのだが、中世日本とアジアやアフリカの辺境に思わぬ共通点があり、とても面白い。

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2016年06月28日

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辺境ライターと日本中世史研究家のハナシが合いすぎる。
高野秀行は、「ソマリ人の復讐の方法って徹底してるよね?」と言えば「そうそう、あれはすごいよね」と返してくれる話し相手がいなくて淋しいのだという。
そうか、辺境ライターには、そういう悩みがあったか。
そんな高野が、中世史研究家の清水克行に出会い、「ソマリアの内戦は応仁の乱に似てるって思うんですけどどうですか」などとと質問すると「それはですね」と真正面からの答えが返ってくる。最初の出会いで5時間も語り合った(素面→居酒屋)というのだから、どれだけ嬉しかったかが伝わってくる。
実に面白い。世界の辺境でおきていることと、日本の中世の歴史が縦横無尽に語りつくされます。

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2016年04月11日

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この間読んだ高野秀行がめちゃくちゃ面白かったので、読んでみた。やっぱり面白い。専門は違うがバックグラウンドは似ている2人。ものすごい知識量だけど、それを感じさせないフランクさ。
濃い内容の対談集。
お二人の率直な会話から、それぞれ自分からは言わないような個人的な話なんかが聞けるのもめちゃ面白かった。
教養主義の死に絶えた時代だけど、やはり、「ものごとを普遍化して考える能力は文字を読むことで高まる」「抽象的にものごとを考えるには読み書きができないとだめ」「経済発展のきばんは人々の教養」
という言葉に励まされる。この本がでて10年、ますますみんな文字から離れてるけど、本を読む啓蒙が広がるといいなぁ。

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2025年05月19日

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ソマリランドで知られるノンフィクション作家の高野さんと、日本中世史を専門とする歴史学者の清水さんの対談。異色の組み合わせではあるが、これが見事な化学反応を起こし、とても面白い内容となっている。

時間と空間の違いこそあれ、ソマリ社会も中世日本も、現代日本から見ればどちらも遠い異文化世界。むしろソマリ社会と中世日本のほうにこそ共通点が多いかも、という気づきから始まったこの対談。豊かな経験と強い好奇心で高野さんが打ってくれば、該博な知識で清水さんが当意即妙に返してくる。何といっても、お2人が楽しんで対話しているのが伝わってくるのがいい。

古米と新米の話などトリビア的な知識も得られるし、鎖国と現代日本、NGOやNPOと現代日本など社会科学的に考えさせられるトピックもあるが、体系的学術書というわけではない。肩肘はらず、楽しく学ぶとはどういうことかを感じて読みたい。

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2021年08月29日

Posted by ブクログ


面白い。ノンフィクション作家の高野氏が世間に発見されかけている?

世界の辺境に赴き、現代日本とは異なる感覚で生きている彼らを紹介してきた高野氏と、室町時代の学者が話す事で生まれるケミストリーが凄い。
高野氏には前々から目をつけて、いつかもっと良い仕事をしてくれると思っていた。高野氏の性格なのだろう、本書でも語っているように難しく、固く文章を書かないのだ。しかしその文章やおふざけの中に深い洞察や見識も感じられており、いつか日の目を見るはずだと思って応援してきた。系譜としては近年ではその名は地に落ちたが本田勝一氏のような作家だと思っている。

室町時代を想像する際に現代の日本人から彼らの生活を想像するのには限界がある。そこで本書で取り上げたテーマのように世界の殺人や略奪が日常として残っている辺境との比較をすることで日本の室町時代が見えてくる。

本書は非常に知的好奇心をくすぐられる内容が多く含んでいる。また読書好きにはたまらないような数々の関係図書を紹介してくれているのが嬉しい。また本書で高野氏が読書家である事も披露されている。
作家は固い文書を書かないと評価されない世界だ。高野氏にはそろそろそちらの世界に飛び立って欲しい。

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2021年08月06日

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辺境作家と日本中世史学者とが奇跡的な噛み合いっぷりを見せる対談本。いろいろ「へえ」が多すぎていちいちメモできない。

ハードボイルド室町時代から一転して、今の日本の原型が江戸時代に作られたとありますが、そのあたりは渡辺京二の『近世日本の起源』を読むとハラ落ちしますよ。

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2019年08月05日

Posted by ブクログ

室町時代って、ホント歴史の中では掴みづらい時代だなって思ってた。お二人の異業種無差別格闘技みたいな、がっぷり四つに組むみたいな?議論が面白かった。分からない事はとことん調べる、ちゃんと知るって楽しい!という事を、実に楽しそうに伝えてくれる内容です。お二人とも今後もじゃんじゃか開拓して、私たちに色々伝えてほしい。

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2019年07月27日

Posted by ブクログ

賠償なんかの法慣習とか神判の有効性とかアト・サキの概念とか古米の扱いとか犬食とかヒゲの意味とか物の怪に対するスタンスとか…話題はもう、多岐にわたる。
夫々が「ああ、xx時代では…」「ソレは何処其処で…」と速攻で返してくるのが、本当に小気味良い〜

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2019年01月06日

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先に「辺境の怪書 歴史の驚書 ハードボイルド読書合戦」という同じ著者同士の対談の本を読んで、それがあまりにも面白かったので第一弾のこの「世界の辺境とハードボイルド室町時代」を手に取った。そもそものきっかけは、ちょうど出版されたばかりの「辺境の怪書〜」が話題の本のランキングの中にあって装丁がその中で断トツにかっこよくて目を引いたからだった。それプラス高野秀行さんをTBSの「グレートジャーニー」で観て興味が湧いたので読むことにした。本文の中で場所や人種などは全く関係なく人間が進化?変化?する過程で多くの共通点があるというのはとても興味深かった。人間が自ら変わっていくのではなく自然にあるいは必然的にその変化が起きている、と。人類史という大きな流れの中で捉えるとそれが意図せずに必然とそうなるということがとても不思議で面白かった。そして本の中で辺境と室町時代のことを専門に扱っている辺境作家と中世歴史学者ということでけして大きな経済圏の分野ではない2人だから、おのおの食べていくための苦労などが、フリーランスとしての大変さなどが書かれていてそこがとても共感した。(自分も一応フリーランス、フリーターみたいなもんなので)、苦労がまざまざと目に浮かぶ。こういった決してメジャーとは言えない、いわばパイの小さい分野で活動する人たちの存在というのは、(自分を棚に上げるようであるが)、非常に大事なことである。やはりメジャーだけに大半の人の意識は向きがちだが、(そういう自分もグレートジャーニーというメジャー番組で高野さんを知った訳だけど)アンチメジャーというわけではないが、それでもやはり人が目にしないようなところにも必ず価値はあると思う。それがインディペンデントの存在意義であるし、多様性と可能性があると思う。文中その世界のプロの人でも、アフリカの友人に対して「もし自分がアフリカに生まれていたら、自殺していたと思う。」というようなすごく想像力の欠如した、傲慢な態度=メジャーな人間が陥りがちの多数派の思考(これは自分自身も注意しなければいけない。その考え方に知らぬ間に陥ってしまう)それは多数派の無意識の暴力といえる。特に日本人にはその考え方が強い、いわゆる常識人の一般常識の普通という概念、これは気をつけたい。自分1人がマイナーとして存在することを恐れてはいけない、卑下する必要もない、またその人たちの気持ちを分かろうとしなければいけないという事は常々考えておく必要がある。また第3弾を是非期待したい。またカッコいい装丁が楽しみだ。

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2018年06月23日

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多岐に渡る興味深い話題満載でとても面白かったです。清水氏の著作は読んだことがないので、今度読もうと思います。

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2018年01月15日

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今までの常識をひっくり返すような興味深い話がドンドン出て来て一気に読んだ。外国人がイスラム過激派に襲われる本当の理由は、逃げ込んだ客人は誰であっても守るイスラム社会において、外国人は政府側の客で殺されたらメンツが潰れるから!刀と槍の関係はピストルと自動小銃のそれと同じ。比叡山延暦寺は今の東大、アカディズムの最高峰。中世は復讐が横行していて寺社がアジールだった。綱吉は実は名君で、生類憐みの令は平和な社会に未だ適応できない傾奇者対策だった。それを知ればその社会がよく理解できるエピソードに溢れている。

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2017年08月13日

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「北斗の拳」の舞台のモデルとなったのは室町時代であるということを、辺境ジャーナリストの高野さんと、タイムスクープハンターの清水さんが討論を通して浮き彫りにする。

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2016年12月02日

Posted by ブクログ

いかもにパクリ(失礼!オマージュなんでしょうね)っぽい題がいけてないけれど、内容はなかなかのもの。ただし、ソマリランドのことは余り詳しく触れられていないので、事前に高野氏の著書を読むことをお勧めする。
内容は、別の視点から日本の中世を捉える、という感じ。清水氏の歴史観が新鮮で面白いと思う。

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2016年09月04日

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対談形式は苦手なのだけど、これは読みやすかった。へぇ〜という歴史トリビアや歴史の見方、学者の世界の舞台裏などが語られ、教養本として楽しく読める。歴史が苦手な人間でもさらっと入り込める。

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2016年08月25日

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ネタバレ

この本では、
「現代の辺境地域」と「日本の中世」に共通する
行動や習慣を面白がる所から
対談が繰り広げられていきます。    

日本の中世と
アジア・アフリカ諸国の共通点で
興味深かったのが、

1.倫理観
日本の中世では複数の法秩序が重なっていたように、
現代のアジア・アフリカ諸国でも
近代的な法律と伝統的・土着的な法や掟が
ぶつかり合い、それが相反しながら社会で成立している。

2.未来の概念
 日本語の【先日・後回し・先々・後をたどる】は、
「アト」「サキ」を使った言葉で
未来と過去を指す正反対の意味がある。

ソマリ語でも同じように使う「アト・サキ」に当たる言葉がある。

日本の中世では未来はアトで背中側、サキは過去の意味しかなかった。

3.恋の歌
日本の平安貴族のように
ソマリ人は恋愛の作法としての詩歌が伝統として残っており、
歌を詠むことが男性のたしなみとなっている。

放牧中に少し離れた所から歌を投げかけているらしい。



まったく離れた時代や国で
起こる人間の行動が
似通ってくるということが面白く紹介されています。


世界の辺境と呼ばれる人たちや
中世の人が何故そう考え、
行動するのかがわかってくると
少し親近感が湧いてきました。

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2022年11月18日

Posted by ブクログ

高野秀行の本に興味があったのと、タイトルに惹かれて読んでみました。2人とも博識で、切り口も斬新でなかなか面白い対談集。2人の著作自体も読んでみるべきですね。まずはやはり怪獣ムベンベから、かな?日本の歴史も、ほとんど興味ないのだが、中世史は面白そうです。

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2019年04月18日

Posted by ブクログ

世界でも珍しいソマリランド研究の第一人者高野秀行。というか大抵第一人者になってしまう隙間家具文筆家とも言えます。あまりにもレアな研究過ぎて誰とも話題を共有できない。そこで室町時代の日本とソマリランドや辺境の軍事政権の在り方が似ているという事になるわけですが、それが本になってしまうあたり訳が分からずもさすがであると言わざるを得ないでしょう。そもそも室町時代に興味ないので何とも言えませんが、文面から立ち上る水を得た魚のような高野氏のテンション。知り合いの子供が友達作ったみたいなほんわか感覚が有ります。よかったねえ高野君。正直興味の薄い領域だったので評価しがたいところが有ります。日本史好きの素養が欲しい!

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2018年01月15日

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