野村美月のレビュー一覧
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ネタバレ読後にまず思ったのは「小説の神様」であって「小説家の神様」じゃないんだ、ということ。小説に関わる人――書く人、読む人、売る人、評する人――すべての人の神様なんですね。だから、小説家以外の人達にも「小説の神様」と関わる物語があって、それぞれの人たちが小説と真摯に向き合って……というお話が生まれ、小説好きな私はそうしたところで本作が気にいったんだろうな、と思いました。
個別の作品で言えば、収録作群の中では異色に映りますが「モモちゃん」が一番気に入りました。ラノベテイストに最初は違和感を覚えましたが、自作の世界に入り込んで自分の描写力の無さや知識の浅さを身をもって痛感するところなど、それこそ宮沢賢治の童話のよう。ファンタスティックな要素ゼロの剣と魔法のファンタジーなどより、はるかにファンタジーしてて素敵でした。
あと、最初の作品がプロット担当と執筆担当の2人組の降田天のものというのが上手いですね。どう考えても帆舞こまにに重なるわけで「小説の神様」好きからしたらたまりません。その作品の方は、ラストシーン「ありがとう」「うー……しほりー」のところでうるっと来てしまいましたよ。花実はほんとにいい子だし、しほりも嫌なところあったけど同情するところも多かったので。
ほかにも「神の両目~」の伏線回収を「神様の詮索」で行うところや、実話?もしかして実話?と気になる仕方ない「『小説の神様の作り方』」など、どの作品にもツボにはまるポイントがあって好印象でした。また違う作家たちによる「小説の神様」を読んでみたいです。 -
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作者の野村美月さんが育った東北の地方都市には、かつて書店がたくさんあり、特に一番にぎわっていたのは、駅の近くのアーケードにある三階建ての書店だそうです。
東北で一番。日本で一番の本屋さんなんだぞ!と心の中で自慢していたそうです。
だからその書店の閉店を知ったときは、信じられず泣いたそうです。
この幸本書店の物語りを書きながら、ずっと幸せしかなかった。その空間を思い出していたそうです。
この本は作者が書店と本が好きだという想いがとてもよく伝わってきます。
幸本書店の三代目の店長の笑門さんが仕事中に亡くなるというショッキングな出来事からこの物語は始まりますが、最後は亡くなった笑門さんが、心から本と皆を愛していたことが改めてよくわかります。
以下ネタバレなのでお気を付けください。
一冊の図鑑で人生を変えた道二郎さん。
長い年月を経て本によって結ばれた彬夫さんと瑛子さん。
古い『かもめ』と新しい『かもめ』の二冊の本を胸に凛然と進む女優のアスカさん。
笑門さんが選んでくれた『ゾロリシリーズ』を今も買い続けている中学生の広空くんと颯太くん。
『緋文字』のディムズデール牧師に自分の罪を重ねて苦しんでいた作家の田母神さん。
笑門さんにアランの『幸福論』を処方してもらったアルバイトの水海さん。
そして、笑門さんに、本たちをまかされた、本のことばがわかる高校生の榎木むすぶ。
そして笑門さんのたおやかな笑顔。 -
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野村先生の久々の新作は本の声が聞こえる少年の物語。
しかもあの文学少女と同じ舞台なんて読む前からワクワクしてしまった。
五つのエピソードは作者らしい、切ない話、楽しい話、ほっこりする話があってとても楽しい。
四つは実在の作品だけど二話目だけは作者が登場することもあって架空の本だね。
個人的には一話目のピッピさんの物語が一番好き。
本の想いも妻科さんの想いも切なすぎて思わず泣きそうになってしまった。
それにしても、本が話すという発想は本好きならでわだなあ。
自分も本の精の話を書いたことがあるけど^^
夜長姫について本巻ではほとんど触れられなくて、むすぶと彼女との話は悠人先輩との出会いも含めて今後語られるのだろう。
ファンとしては遠子さんや心葉くんもどこかで姿を見せてくれたら嬉しい。
因みに遠子さんが本を食べてる時に本がどんなことを喋っているかちょっと興味がある。
もしかして「食べられちゃう〜」て泣き叫んでない?
そんな場面が出て来ないかなあ^^ -
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野村美月先生の4年ぶりの新作。吸血鬼~の打ち切りに涙した私としては待望で、Twitterのご様子から復帰を絶望視していたので本当に嬉しかった。
軽妙でロマンチックで可愛くて、でもどろりとした感情が常に見え隠れする。
ああこれだ、これが野村先生の世界だ。と再会の嬉しさをかみしめた。
誰もが心底物語を愛していて、それは近代文学からラノベまで分け隔て無い。ラノベという単語に自称読書好きが向ける差別意識を、時にラノベ作家すら持ってしまっている中で(不思議なことにラノベを書いていることに劣等感があるラノベ作家もいるのだ)、ここまで真っすぐオールレンジに愛情を向けられる人は実のところそんなにいない気もする。
あらゆる物語を等しく、誰かを癒したり誰かに道を示すものとして描いている。それはお人好しなのではなくて、物語の力を誠実に信じているからそう描けるのだろう。
本を愛することも、もしかしたら本に愛されることも簡単じゃなくて、でもそうしてでも手を伸ばしたいものが愛なのだろう。
というようなことを、軽妙な文体とかわいらしいヒロインと主人公を通して描いてしまえるのが野村先生のライトノベル作家としての凄さだと思う。 -
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――またおいで。それで、本の話をしよう。
編集者になった遠子先輩が、売れっ子高校生ライトノベル作家の担当として活躍(?)する、という、どう考えても蛇足なシリーズ最終巻。主人公は作家の少年です。
モチーフは伊勢物語・風と共に去りぬ・ハムレット・伊豆の踊り子。
たとえ蛇足でも、また読めたことに感謝したい1冊。
それに最後に出てきたあの人の分だけで、十分に満足させていただきました。
油断しているところにここでそう来るのか!と言うのがずどん、と一発入って、小説を読む楽しさってこういうとこにありますね。
良く考えながら読んでいれば分かっていたようなことだけど、素直に読んで衝撃を受けるほうがお得です。 -
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ネタバレ街の一角に新しくできたお菓子屋さん。
そこの店主は非常に無愛想だが、反比例して
ものすごく美味しいお菓子を作る。
今だったり、過去だったりと、時間軸がバラバラの短篇。
一体あの戦いで何があったのか、その後どうなったのか。
軸になるのは菓子職人ですが、語りは戯曲作家。
場所が場所ですし、とにかくお菓子が出てくる出てくる。
おやつ時でも、空腹時でも、大丈夫な時でも
ものすごく危険な一冊です。
菓子屋との出会い、看板娘との出会い
シスターとの出会い、そして女王との出会い。
どれをとっても、菓子屋が語り手だとまったくもって
話が進まなさそうな性格です。
と、作者もあとがきで前世(?)を語ってましたし。 -
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ネタバレラノベの下読みをする男子高生「青」と、周囲に内緒でラノベを書いている女子高生「氷雪」の2人が主人公。ひょんなことから氷雪のラノベ執筆を手伝うことになった青は、色々あって感情を表に出せない氷雪と関わってゆくなかで、彼女の心を溶かしてゆく。そんな中で困難が立ちはだかって・・・という、登場人物が少なく、かつ非常に素直な青春恋愛小説。
今作が抱える問題は家庭の不和によるものであり、コミュニケーション不足による考えの行き違いがネックとなっている。以下、大幅に脱線する。
なんというか、家の外を巻き込めば前進する可能性のある問題を、当事者で解決なんてできもしないのに家の外に持ち出そうとせず自力で解決しようとする傾向……フィクションに限らず身内や周囲でも聞くのだが、これどうにかならないんだろうか。
家で問題が起きてるのが恥ずかしいとかあるんだろうが、そうした支援が得られない家庭というのは本当に不幸だし、家庭という枠組みの尊さと同時に、脆さを社会全体が意識すべきだよなと思う。子育て失敗したから今度はもっと厳しくとかじゃなくて、第三者へ話聞いてみるとかしないと、プライドとかはあるんだろうけどそれはあなたのエゴだろうと。善意でやっているとしても、むしろ善意で動いている時が一番内省的な視点を欠きうるだろうと。
最近は子育てを終えた親達がうまくいっていないみたいな話をちらほら聞くので、結構思うところはあった。
作品に戻る。
大きな特徴はやはり主人公がラノベの下読みをやっているという点であり、これには著者自身による下読みの経験が反映されているようだ。あらゆる物語を慈しむという主人公や著者の姿勢は、文学少女シリーズにも色濃く見られる。
読み手以上に、書き手を強く意識した小説だなと感じた。作家デビューしたいという動機以外にも、例えば氷雪のような切実な想い(作家志望も切実だろうがそれはそれとして)を作品に託している者もいるのだろう。
だが、下読みというジャッジを前にして、書かれた動機は必ずしも判断には関係してこない。面白いものは面白い、つまらないものはつまらない。商品として世に出そうとする時点でそれは紛れもなく商売としてのシビアな世界に足を踏み込むことだ。評価シートにだって人件費がかかる。評価を得られない作品に対しぞんざいな評価シートを叩きつけられたところで文句は言えないし、どんな評価をするかはあくまで評価者の決めることだ。優しいアドバイスばかり書く義理はない。筆者によるあとがきはそうした事情を酌んだものだろう。
だからこそ、物語を描く全ての人に向けて著者が届けようとしたエールが、この小説なのかもしれない。 -
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ネタバレ作者が前巻の後書きで述べていたように最終巻の内容はシャールと聖羅の恋物語がメインになっている
竜樹やギルマーについては一応補完されたけど、レドと桜の物語は消化不良のまま。まあ、あの二人の話を始めると完全に別物語になってしまうから仕方ないか
ミリーとハールーンが再登場したのは嬉しいな。これによってシャールはアニスだけでなくこちらの二人対しても誠実な対応で付き合うことが出来ないと伝えることが出来たのだから良い展開だった。更にシャール達の逢瀬を見た聖羅が嫉妬した辺りで思わずニヤニヤしてしまったよ
話が進むごとに聖羅が成長し段々と子供ではなくなっていくのに頑なにそれを認められずに大事な生徒として扱い続けるシャールはもどかしかったなぁ
こちらとしては既に無意識下で聖羅を意識しているために他の娘とは付き合えないのかな?なんて想像していたんだけど、どうやら次から次へと彼女を作っていたようで。そりゃ聖羅からすれば落ち着かず何度も邪魔に来るのは仕方ない
そんなシャールが聖羅を取られるかもと動揺してからの聖羅の対応がもう子供ではなくて一人の女性になっていて。その辺りから二人の関係性が大きく変わったことが伝わってきた
そこからの展開はもう本当に王道展開。初めて会った時は9歳だった聖羅がその時のシャールと同じ17歳になってようやく対等な存在となる展開は感無量だった -
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ネタバレグリンダが失踪した理由ってエーレンの件とかほぼ無関係でシャールがフロリーに振られていたことが切っ掛けだったのか。これは見事に騙されたな。
またグリンダが異世界に行きたがっていた理由も知らない世界に行きたかった理由よりも、シャールと再び一つになることが最大の目的になっていたりと、ここに来てグリンダがかなりブラコンをこじらせていたことが発覚。はじまりの森での発言なんてヤンデレのテンプレ的なものになっているしなぁ
突如2000年前の世界に行く展開には度肝を抜かれたが、更に第一巻から何度も話しに出ていたオルフェートについて謎解きがなされたのも驚きだった。この作品ってタイトルや当初の展開からは想像できないほど世界観が奥深かかったんだなと再認識
遂に大勢にシャールの正体がバレたわけだけど、竜樹の対応が大人。ギルマーという信頼できる騎士を手に入れたことも併せて考えると彼は当初に比べてかなり成長したんだなぁと実感。初恋の相手が男性だったと知っても感謝を伝えられる11歳なんてそうそう居ない
最終的にシャールはアニスと聖羅どちらと結ばれるのかと楽しみにしていたけど、結局アニスを選ぶことはなかったのか。シャールにとってアニスは相性は最良だったんだろうけど、同時に甘えたい相手でも有るから聖羅の先生で在りたいと思う現在のシャールにとっては選べない恋だったんだろうね
次でいよいよ最終巻か…… -
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ネタバレここに来て怒涛の展開に開いた口が塞がらなかった。グリンダが関わってくるのだから、「扉」関連の話によってこれまでと毛色の異なる話が展開されるだろうと予測はしていたけど、まさかアレほどまでとは予想していなかった
竜の復活とか何かのたとえだろうと思っていたら本当に竜が復活してしまうし、ギルマーが勇者なんて何かの間違いだろうと思っていたら本当に竜を倒してしまうし、これまで謎キャラとされていた社長さんが本当に謎キャラだったし最早何が何やら……
それにしてもこのシリーズを読み始める前は主人公だけが女装している作品程度に捉えていたけど、ここに来て異性に変装したキャラクターがかなり増えてるなぁ
又、ちょくちょく触れられてきたジェラード卿の話が本格的に本筋に絡むようになったのも意外
ただ、少し残念なのは異国の地が舞台であったことやグリンダが色々暗躍していたせいで家庭教師的な要素が減ってしまったことか。ラストの展開を見るに次巻以降もそんな感じなんだろうな……。
何だかんだでシャールの教師っぷりは好きだったんだけどな~ -
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行動の組み合わせが固定されつつ有った王子たちの組み合わせをシャッフルさせた話は、意外な内容ばかりだったかも
更紗と織絵の双子がそれぞれ以外に心開くようになるとは思わなかったし、このまま影が薄いまま終わりそうだった真が思い遣りの姿勢を見せたのは確かな成長を感じさせた
何よりも水と油の関係性だった竜樹とギルマーに信頼関係が生まれるとは思わなかったよ
今回の話で築かれた関係性は今後の話を更に面白くさせていくように思える
シャールが遂に星羅に対して独占欲を見せ始めたけど、これが恋愛感情に昇華することはあるんだろうか?健気な聖羅の姿勢を見るとその想いが成就して欲しいようにも思うけれど、流石に17歳が9歳に恋をするって少し無理がある気もする……
着地点としてはシャールが考えているように父親のような立場で聖羅の成長を見守ることになるんだろうか?
少しずつ明かされていくグリンダの目的や感情。言葉を見るにシャールのことはとても大切に想っているようだけど、それがグリンダ・ドイル廃業とどう繋がってくるんだろう?