彩坂美月のレビュー一覧
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少女の恋と成長、そして自然描写がみずみずしく色彩豊かに描かれた青春小説でありながら、場面場面での意外な展開はサスペンス要素もあり、様々な魅力のある作品でした。
そしてなんといっても終盤の展開が圧巻でした。最後にある真実が明かされた瞬間、張り巡らされていた伏線が一気につながるさまは、一種の壮観さすら感じました。バラバラだったパズルが一瞬のうちに組み立てられ、物語の意味がまったく違って見えてくる。
ミステリとしての快感はもちろんのこと、そこをクライマックスとして、話が終わらせず、もうひと展開魅せるのも憎い。一種の後日談のように、その後の展開もしっかり作って、単なるミステリに終わらない、子ども時 -
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初読みの作者さん。フォローしている方のレビューに惹かれて買ってみた。
仕事が忙しく、年末は家でやることも多く、読み終えるのに時間が掛かった。
父が突然亡くなり、母とともに祖母の家がある山形の集落に引っ越した小学校6年生のみのり。
田舎の季節の移ろいとともに分校や村の行事が描かれ、その中でみのりが二人の少年・怜と隼人と心を通わせ合っていく様が語られていく、その丁寧な描写に好感。
そして、そうした長閑な話の間に挟まる“向日葵男”の不穏な噂と不審な出来事の数々。
緩急つけながら語られる話は、その落差が激しく、その“急”の部分、事件の際に明らかになる事実がいちいち衝撃的で、ちょっと長いお話もそれをア -
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再婚した父に、新しい母と弟。高校生の美咲は、家族になりきれない寂しさを埋めるため、正体不明の作家・三島加深の小説に入れ込んでいた。
そんなある日、三島加深のファンサイトで「謎を解けば加深の未発表作が贈られるミステリーツアー」に誘われる。
家庭で孤独を抱える少女・美咲が、ネットで知り合った人と共にミステリーツアーへと参加する青春ミステリ小説。
美咲はミステリーの登場人物・茜として役割を演じながら、ただのミステリーツアーのはずだったのに次々と起こる殺人や参加者の失踪に直面していきます。
現実にも、「マーダーミステリー」という、物語の登場人物になりきって犯人を探し出したりするパーティーゲームがあ -
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気になる展開でハラハラするシーンもあったのですが、
いかんせんちょっと中だるみしました。
渉くん、もう少し動いて欲しいかった…()
扱っている題材や、
作中作など色んなギミックがあるので面白いなぁと思うのですが、
普通そんなに踏ん切りついて動けるようになる?というリアリストの視点と、
早く動いてほしいなぁ焦ったいなぁという読者的視点と、
両親に人の心はないのか!?
息子の学校で起きた事件何も知らないわけではなかろう!?という気持ちと、
色んな感情になりながら読んでいました。
えてしてこういう時って会話が少ない、から起きる色々ってあるよなぁとつくづく思います。
漫画や小説やドラマであるモノロ -
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「映人」。都市伝説としてネット上を賑わす人物で、依頼者の過去の思い出をひとつだけ「リバイバル」してくれるという。
その映人のリバイバルのおかげで人生の新しい一歩を踏みせるようになった人たちの物語。
本編5話とプロローグからなり、主人公は各話で異なる。
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過去の思い出の一点に戻ることができるというので、岡崎二郎さんのSFファンタジーマンガ『時の添乗員』のようなストーリーを想像していたのですが、本作はもっと暗くて何となくすっきりしない印象でした。
特に、第1話の「父の思い出」がすっきりしません。
父親が殺される瞬間に立ち会いたいという希望もどうか -
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繊細と粗暴、二人の少年たちの運命的(BL的?)な関係に、連星の周囲を回る惑星のように少女が巻き込まれていく。粗暴な少年の方は最初悪役的に登場し振る舞うのだけれど、さすがにこれを鵜呑みにする読者はほとんどいまい。基本的に少年たちの物語であって、ヒロイン抜きでも物語は成立する。ので、傍観者でもある少女を少年たちの物語に介在させる仕掛けが必要になる。これがあまりスムーズでなく、(スムーズになりようがないのだが)そのために彼女がものすごく無神経なトラブルメーカーに見えてしまうようなところがあって、ちょっとかわいそうかな。ミステリ的な真相は、普通のミステリ読者ならかなり早い段階で見抜いてるはず。多分、そ
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たった一つだけ思い出を再上映できるとしたら、あなたはどれを選びますか?
これは(映人)と呼ばれる人物が、報酬も受け取らずに思い出を体験させてくれるという不思議な物語。
ただし、決っして破ってはならないルールがあり、「過去を悪用してはならない」
「内容を誰にも話してはいけない」
「何が起こっても、生じた結果は、自分自身で責任を負うこと」である。
第1話 父の思い出
第2話 恋人との思い出
第3話 青春の思い出
第4話 ある犯罪の思い出
第5話 映人の思い出
過去を思い出し、もう一度確かめてみたいことや楽しかったことを振り返りたい。
それですっきりしてこれからの自分に希望や期待が持てるの -
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彩坂美月さんは、「向日葵を手折る」が大好きで、気になっている作家さん。
表紙が素敵。
都市伝説と言われている映人は、もう一度戻りたい過去の再上映をしてくれるという。
タイムトリップなのか、ファンタジー的要素があるのかとワクワクしながら読んだ。
「ツナグ」(辻村深月著)を思いおこす。
依頼者は、過去に戻り自己を省みる。
再上映を観た人は、そこから明るい方向へやり直せるようなストーリー。
でもラストの種明かしで、ちょっと、え?となった。
催眠暗示、心理療法。
でも、映人によって、確かに立ち直ることができた人がいる。
無意識に沈む記憶を蘇らせるための、催眠暗示。
でも、それができるのは特殊な能力だと