彩坂美月のレビュー一覧

  • 思い出リバイバル

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    『たった一つだけ思い出を再上映できるとしたら、あなたはどれを選びますか?』

    一日二十四時間生きていく私たちは、その一瞬一瞬にさまざまなことを体験していきます。もちろん眠っている時間はカウントできないとしても、私たちは数々の体験を『思い出』として記憶していきます。そんな『思い出』は人によって当然に異なります。例えば『思い出』の中の一つを挙げたとして、たまたま同じ場面を挙げたとしても人によってそこに見えていたものは異なるはずです。『思い出』として刻まれるのは『〈自分〉というフィルターを通したもの』だからです。

    では、あなたがそんな『思い出』の中からもう一度体験してみたいと思うものを挙げるとした

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    2023年11月01日
  • 向日葵を手折る

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    他の皆さんのレビューであらすじは詳しく紹介されているので、ここでは敢えて省略。
    山形の集落で暮らす3人(みのり、怜、隼人)の、小6から中学卒業までの多感な季節を、瑞々しく描いた少し甘酸っぱい青春ストーリーであるが、そこに謎を秘めた不穏な出来事を融合することで、上質なミステリー性を帯びた作品となっている。
    子供の首を切り落とすという向日葵男の噂、花首から断ち切られる向日葵、そして「精霊流し」を思わせる向日葵流し。
    色々な場面で描写される向日葵とともに、季節の移ろいの中での3人の心の襞が見事に映し出されている。

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    2023年11月01日
  • 金木犀と彼女の時間

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    あなたは、『これから何が起きるのかを知ってい』ると思う体験をしたことはあるでしょうか?

    何かをしている時に、これはかつて経験したことがある、というように感じる瞬間。それは、”デ・ジャブ”とも呼ばれ、恩田陸さんがとても好まれ、恩田さんの作品には必ず登場するものでもあります。その真否のほどは分かりませんが言葉が生まれるくらいですから、それなりに経験された方もいらっしゃるのだと思います。

    一方で、目の前でかつて見たのと全く同じ光景が繰り広げられている、と感じたことはあるでしょうか?

    『私は、これから何が起きるのかを知っていた』。

    そんな感覚です。これに、はい!と答える方がいたとしたら

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    2023年10月30日
  • 向日葵を手折る

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     彩坂美月さん初読でした。
     突然父を亡くし、母の実家・山形の桜沢という田舎、それも小さな集落に引っ越した小学6年生・高橋みのりが主人公の物語で、小6から中学卒業までの4年間がみのりの視点で描かれます。

     みのりと2人の少年(隼人と怜)の成長、田舎の豊かな自然や風習・行事のよさ、集落特有の関係性からくる距離感のよさと逆の閉鎖性、これらが緻密にかつ丁寧に描かれ、情景が目に浮かぶようです。
     そこに事件と不穏な空気感を織り込み、ミステリーと上手く融合させている気がします。加えて、花・行事・怪人としての「向日葵」の存在が、明暗の両方に作用し、物語に惹き込む効果的なアイテム兼象徴になっているようです

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    2023年08月16日
  • 金木犀と彼女の時間

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    タイムリープ学園ミステリ。同じ1時間を5回繰り返し最後のターンが確定事項となるんやけど、とにかく面白い。タイムリープ中に成長していく主人公をめっちゃ応援するし、同級生達もどんどん好きになるし、皆で幸せになってくれと思いながらノンストップで読み切った。

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    2023年08月06日
  • 向日葵を手折る

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    多感な子供達が大人になるまでの物語の中にミステリーの要素も加わったよう感じた。
    山形の山あいの村のそれぞれの季節の描写や子供達の心模様がとても丁寧に描かれており、井上陽水「少年時代」の情景が自然に浮かんで来るような気がした。衝撃的な事件を乗り越え成長した3人のラストシ―ンも感動的だった。

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    2023年07月12日
  • 思い出リバイバル

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    都市伝説のようにささやかれる、思い出を再上映する〈映人〉。

    一縷の希望を持って映人に会いに来る人々。

    「ある犯罪の思い出」のラストが素敵だった。

    私にはリバイバルしたい思い出はまだないな。

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    2023年06月21日
  • みどり町の怪人

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    一話完結の連作短編小説です。
    ジャンルとしてはホラー&ミステリ&イヤミス+ハートフルが混ざった感じでした。

    各ストーリーは完全に独立していますが、すべて「みどり町」を舞台にしていて、「みどり町の怪人」という都市伝説的な“なにか”が軸となって物語が展開していきます。

    町で暮らす人々は共通しているので、ある話では嫌な人間に描かれていたのが、別の話では親切な人間として見えたり、主人公の視点で見えかたが反転したりするのも面白かったです。

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    2023年05月20日
  • みどり町の怪人

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    ネタバレ

    田舎町「みどり町」を舞台としたミステリー作品。
    みどり町に蔓延る「怪人」の噂、そこに住まう人々に起きる出来事、田舎特有の閉塞感が絶妙にマッチしていてとても引き込まれました。
    いつの時代も情報が錯綜し、それが噂となり、それがいつの間にか真実のように変わっていく。『幽霊の正体見たり、枯れ尾花』という言葉にあるように、本当はそうでもないものでも、それが尾ひれが付き恐ろしい怪人となっていく。また登場人物達が抱える孤独・焦り・嫉妬などの鬱屈とした感情、それによりどこかで怪人を作り出してしまうという所もリアルで面白かったです。本人がその虚像にすがりつきたくなってしまうほどに。いつの時代も人はあまり変わらな

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    2023年04月09日
  • 思い出リバイバル

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    頁を開くと「たった一つだけ思い出を再上映できるとしたら、あなたはどれを選びますか?」の問い。

    読む前に考える。
    私だったら高校時代の淡いエピソード、それとも亡き父との楽しかった日々?
    過去に想いを巡らせながら読み進めた。

    思い出を一つだけ再上映してくれる不思議な存在・映人によって、過去の出来事を再体験した依頼人達。

    ある者は身勝手だと思っていた父の本当の想いを知り又ある者は見失っていた大切なものの存在に気付かされる。

    最後には映人自身の過去と「思い出リバイバル」の目的が明かされ胸が一杯になる。

    切なさを伴う再生の物語。

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    2023年02月18日
  • サクラオト

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    「サクラオト」「その日の赤」「Under the rose」「悪いケーキ」「春を摑む」「第六感」
    6話収録の連作短編集。

    彩坂作品に漂う不穏さは今回も健在。
    本作では更に緊張感もプラスされ趣向を凝らしたミステリーとなっている。

    春夏秋冬の各季節に聴覚・視覚・嗅覚・味覚・触覚の五感を掛け合わせた構成は新鮮。

    ライトノベル風な装丁で軽いミステリーをイメージしていると良い意味で裏切られ予想していた結末は見事に覆される。

    春の日中に見る満開の桜は美しいけれど夜桜はどこか禍々しさを感じる。
    その桜の様に人の心の多面性に慄く読後。

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    2023年02月16日
  • 金木犀と彼女の時間

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    ネタバレ

    タイムリープ青春ミステリー
    小さい頃に初めてのタイムリープをし、両親に信じて貰えなかった事から他人との接し方に悩む主人公
    中学生の時にも経験し、高校の文化祭で三度目のタイムリープ。
    過去の経験から、1時間×5回繰り返すはずだったが、、、
    1回目に、まさかの出来事。死ぬはずのなかった同級生がなぜか屋上からの転落死。
    なんとか彼を救おうと頑張るのだけれども、、

    最初死ななかったんだから、1番初めと同じ行動とればいいのでは?と思った自分の安易な矛盾点も見事に解消してくれた。
    えぇー、どうなるの??と続きが気になってしまって、一気読み。
    恋と友情もプラスされ青春だなぁ。

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    2022年11月30日
  • サクラオト

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    ネタバレ

    この作者様の他の作品を読みたいのですが、なかなかなくて…気分転換に選びました。
    五感をテーマにした五編+Extra stage「第六感」からなる本格ミステリーの連作短編集でした。

    とても読みやすくて面白かったです。そこまで長くないのでサラリと読めます。温かい話もありつつ、基本はホラーよりでした。
    「変わった構成の本だなぁ。でも連作なのかな?」と思っていたら、最後で種明かしがありました。「騙されたー!」と言うより、「あぁなるほど」と思わず納得してしまいました。全てが明かされたあとはスッキリした読後感でした。

    常に不穏な空気を出しつつ進むお話は、ちょっぴり怖かったです。
    表題作にして一番最初に

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    2022年08月26日
  • 僕らの世界が終わる頃(新潮文庫nex)

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    とても面白かった!
    普段ミステリー小説は読まないけどサクサク読めて、読みすやすかった。

    現代版ミステリーって感じだった。

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    2022年06月20日
  • 夏の王国で目覚めない

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    ネタバレ

    男女7人の一夏の物語を記録した青春ミステリー作品。
    家庭で上手く自分の場所が出来ず悩む主人公・美咲がネットで出会った人々とともにミステリー劇をこなしながら、ミステリー劇・そして旅の真の目的を明らかにしていく物語。
    感想としては、本の厚さ自体は分厚いがストーリーがテンポ良く進むところがとても読みやすかった。三島加深の未発表原稿をめぐりだまし遭うところは誰が本当の黒幕かという所でとてもハラハラさせられた。最後の別荘で全員が殺しあい、草薙が姿を現わしたところは犯人が彼であると錯覚してしまったがまさかの黒幕の正体には驚いてしまいそして、死んだと思っていた人間が全員生きていたとは思わなかった。そして今回

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    2021年12月26日
  • 金木犀と彼女の時間

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    同じ時間を5回繰り返し、5回目が確定事項となってしまうというタイムリープ体験を持つ主人公が同級生の転落死を防ぐために奔走する青春学園ミステリ。
    明確に制約があるタイムリープという設定を活かしたミステリとしとても面白かったです。文化祭に部活、そして友人と高校生活が瑞々しく描かれているのもさすが彩坂美月さんという感じです。

    やっぱり彩坂美月さんの作品は素敵です。

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    2021年12月13日
  • 僕らの世界が終わる頃(新潮文庫nex)

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    普段ミステリーはまったく読まないからほぼ初だったが、面白かった。最後は続きが気になって少し夜更かししてしまった。

    主人公が強くなっていくところも、完璧かのように思えた兄や兄の友人が弱い一面も持っていたところも良かった。

    最後の方まで犯人が誰なのか分からなかった。

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    2021年09月22日
  • 柘榴パズル

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    「物事は、なんでも見た目通りじゃないからねえ?」。いつも嫁の名前を間違える祖父、柔道部出身という母、どこか冷めた兄、年齢より幼い妹、そして私。ほんわかしたムードで4章300ページにわたって繰り広げられる家族ミステリーはところどころに不気味な伏線が引かれ進み、読者はなんとなく違和感をずっと感じながら読み進めることになる。そしてその違和感は最後の20ページで鮮やかに回収される。平易で読みやすい文章だが、著者の技量が光る佳作。

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    2021年08月15日
  • 柘榴パズル

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    ネタバレ

    "家族”を題材とした短編ミステリー小説。どこにでもいそうな山田家やその周りいる人々との交流を通したハートフルなストーリー、

    …かと思ったらそれは読者に対してのミスリードでしか無く本当は"家族"の愛に飢えた人間達が家族を演じる疑似家族であった。
    個人的な伏線としては
    ・祖母の描写は出てくるのに、父親の描写が全くといって良いほど出てこない。→ショウコが父であり母だから。
    ・写真屋の安藤が最初に山田家と出会ったときの反応→そもそも友広が山田家を家族であるという感覚が他の人に比べて少なく、安藤に対してそこまで家族の話をしていなかったから。
    ・友広が突然現れた坂口に不信感

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    2021年07月11日
  • 金木犀と彼女の時間

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    上原菜月は七歳の時にタイムリープを経験して、自分がリプレイヤーだということを知っています。
    同じ一時間を五回繰り返すのです。

    そんな菜月が高校生になり文化祭の十月五日に人生三度目のタイムリープが始ります。
    その日はクラスメイトの天野拓未に告白をされた直後でした。本当は菜月は拓未に五回告白されるはずが、一回目に屋上に向かおうとした菜月の目の前で拓未は墜落死してしまいます。
    なぜタイムスリープ中の出来事が変更されてしまったのか…。
    あと四回タイムスリープを繰り返すと拓未は本当に死んでしまいます。
    菜月は拓未の死を食い止めようと拓未を屋上から落とした犯人を一人で学校中探し回ります。

    怪しい人物が

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    2021年07月08日