筒井清忠のレビュー一覧

  • 大正史講義

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    大正時代というのは、改めて振り返ると、とても重要、且つ学ぶべき時代だと思う。
    明治から始まる近代化は、大正時代において、特に政治の観点で成果が見えつつあり、文化の面でも花開くところがあった。
    そんな中で、どのように昭和を迎え、何が軍国主義に追い立てたのか?
    決して、徐々に軍国主義が広がったわけではなく、大正時代は、ある意味、国民の政治に参加する意識は高く、議会制民主主義の裾野が広がった時期でもある。
    軍国主義が、その反動だった、という一言で片づけられる訳もなく、よくその時代を追っていく必要がある。

    軍国主義へ導いたことを現象面で上げるとすれば、相次ぐ政治家へのテロがある。
    それも、政治に対す

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    2022年08月14日
  • 昭和史講義【軍人篇】

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    帝国陸海軍の主要な14人の将官を扱ったもの。紀伝体的に個別人物に着目しているわけだが、中身は玉石混淆。編年体では無いので全体像は掴みにくくなるが、それはシリーズ全体で縦糸横糸の関係にあると思う。但し、紀伝体らしく、その人の個性・経歴・思想などに切り込めている章が全てではなく、残念ながら星4とした。

    読後感としては、個別人物が好きかどうかは別として、梅津、鈴木貞一、武藤、牟田口、今村、永野、石川、堀が面白かった。山本が自分の中ではダントツに詰まらなかった。

    特に、海軍の指導者として名前はよく見るが全く知らなかった永野は更に知らなければと思った。リーダーシップなき組織の典型。堀悌吉の項では、と

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    2022年04月03日
  • 昭和史講義2 ──専門研究者が見る戦争への道

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    「昭和史講義」が好評だったので、その続編としてでたもの。

    前作同様に、戦前を中心として、注目すべき出来事の事実解明を中心としながら、20のトピックを20人の研究者が概説したもの。

    出版の経緯からして、前著と一緒に読まないと、全体の流れがわからなくなるかもしれないが、これだけでも、多分、それなりに面白いだろう。

    一人の著者による通史ではないので、読みにくさはあるのだが、取り扱われるのは、それなりに「知っている」つもりの出来事が多いので、それなりに面白い。また、通常、どういう文脈で議論されているかもなんとなくわかっているつもりなのが、近年の研究ではかなり違う話しになっいるかがわかって、スリリ

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    2022年01月19日
  • 戦前日本のポピュリズム 日米戦争への道

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    日本のファシズムは、ドイツやイタリアと比べると、あまり全体主義的ではなく(いろいろな意見・利害対立があって、バラバラで、「全体」になってない)、下からの運動というより、天皇の権威を利用した上からの統制という具合に理解しているのだが、それでもやはりファシズム的であるのは、大衆からの支持があったから。

    そして大衆の支持は、マスコミによる影響が大きいのだろうという予測のもとに、この本を読んでみた。

    大きくは、こうした事前の予測とは異なるわけではなかったのだが、それでも具体的にメディアがどういう論調の記事を書いたのか、そして、それに大衆がどういうふうに反応したのかを読むと、あらためて戦前の日本がど

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    2022年01月13日
  • 昭和史講義 ──最新研究で見る戦争への道

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    学校の日本の歴史の授業では、近現代史に到達するまえに、授業が終わって、のこりは自習ということになっていた。なので、その辺のところは、とても表面的なところでしか知らなかったわけだが、最近、この辺りのところに関心があって、学習中。

    この本は、最新の研究成果をまとめて、これまでの通説的な理解を塗り替える、みたいな位置付けなんだけど、なまじこれまで学んでないので、へ〜、そうなんだという感じで、あまり驚きはなかった。(笑)

    歴史というものは、そんなに単純な因果関係で理解できるようなものではない、ということがよくわかるな〜。

    もし自分がこの時代で、しかるべき立場にいたとするならば、どんなことを思って

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    2021年11月22日
  • 大正史講義【文化篇】

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    <目次>
    第1章  吉野作造と民本主義
    第2章  経済メディアと経済論壇の発達
    第3章  上杉慎吉と国家主義
    第4章  大正教養主義~その成立と展開
    第5章  西田幾多郎と京都学派
    第6章  「漱石神話」の形成
    第7章  「男性性」のゆらぎ~近松秋江、久米正雄
    第8章  宮沢賢治~生成し、変容しつづける人
    第9章  北原白秋と詩人たち
    第10章  鈴木三重吉・『赤い鳥』と童心主義
    第11章  童謡運動~西條八十・野口雨情・北原白秋
    第12章  新民謡運動~ローカリズムの再生
    第13章  竹久夢二と宵待草
    第14章  高等女学校の発展と「職業婦人」の進出
    第15章  女子学生服の転換~機能性への

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    2021年10月30日
  • 大正史講義

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    大正史に関連するテーマ全26講を500ページ越えのボリュームで読み解く。
    全く初心者の入門ではなく「講義」と銘打っているだけあって、一講ごとのページ数の中にギュッと詰め込まれた情報量の多さと、かならず末尾に執筆者がお勧めする「さらに詳しく知るための参考文献」が入っているのが有り難い。紹介した著作について、それぞれ一言ずつどんな位置づけの書籍なのかのコメントまでついていて、この本を読んでより深く学びたいテーマに出会ったときに、次に読み進めるべき読書ガイドとしての使い勝手も良い構成になっています。

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    2021年09月28日
  • 大正史講義

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     大正史となると、およそ100年前の時代、だいぶ現代史に近づいてきた感がする。
     "はじめに"として、編者筒井氏の総論が述べられる。「大正時代というのは一言で言えば、大衆の登場が始まった時代である」そしてそれを象徴するのが、日比谷焼打ち事件であった。
     第一次護憲運動、大隈ブーム、対中国強硬政策要求運動、米騒動、普選運動、排日移民抗議運動、第二次護憲運動、護憲三派内閣、普選法成立、二大政党政治、28年普選実施と事態は進んでいく、それらの駆動力となったのが、大衆であった、と言う。

     全26講、それぞれに新しい知見を得ることができて勉強になったが、特に関心を持ったのは次のとお

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    2021年08月23日
  • 昭和史講義2 ──専門研究者が見る戦争への道

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    『昭和史講義』で触れながら掘り下げられなかった事項、触れられなかった事項を取り上げる。 引き続き、冷静かつ中立的な記述によって昭和史に関する最新の実証的研究の成果を紹介してくれる。物事がいかに複雑に展開したか、一面的な見方や単純な見方、陰謀論などは成り立たないということが、本書を読むと非常によくわかる。未だに論争になっていることもあり、昭和史の論点の整理としても読める。

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    2020年12月21日
  • 明治史講義【人物篇】

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     例えば、谷干城とか、今まで知らなかった面を、ずいぶんと知る。
     一般的なイメージというのは、あまり役に立たない。

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    2019年10月02日
  • 昭和史講義 ──最新研究で見る戦争への道

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    2018.12.16-2018.12.20
    昔ながらの紋切型の歴史観がネット上で飛び交ふ中で、最新の研究を元にした議論を一般にも広めようといふ意図は評価できる。
    特定の問題についての論文が並んでゐるので、全体像についての知識がないと読みにくいかも。
    個人的には、中国国内の情勢、例へば蒋介石の動きと日本の政治が密接に関係してゐたことを再認識した。

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    2018年12月21日
  • 昭和史講義 ──最新研究で見る戦争への道

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     戦前から戦中にかけての昭和史を専門家が短く読みやすくまとめたものである。それぞれの研究者によって、同じ事象に対して見方が異なるところがあり、それがかえって一方向に偏らない思考の助けになる。本書の特徴である。
     内容としては、すでにたくさんの書物、新聞の論説、NHKなどのテレビ番組によって世の中に広く知られていることが議論の対象であり、特別に新しい発見があるとかいうものではない。
     ただ、本書のような重層的な書き方がまとまったものを手にして、日本が日中戦争、太平洋戦争(大東亜戦争)に至るそもそもの目的は何だったのか、最後に何をしたかったのか、あるべき姿をどのように描いていたのか、このような本質

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    2018年10月28日
  • 戦前日本のポピュリズム 日米戦争への道

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    日露戦争後の日比谷焼き打ち事件に端を発した劇場型大衆動員政治は、その後日本を戦争へと導く大きな要因になった。当時の新聞やラジオなどのマスメディアが世論に与えた影響が非常に大きいことが分かる。

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    2018年10月21日
  • 明治史講義【人物篇】

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    明治期に活躍した人物というと、どうしても小説から得た情報が中心になっている。司馬遼太郎先生の作品の影響は大きい。司馬先生の力量のせいで小説なのに史実と思いがちだ。特に人物の印象は間違いなくそうだ。
    実はけっこう違う。小説ではデフォルメされていたり一定の役割を与えられているけど、実際にはそう極端に突っ走ったりしないわけだ。あらためて歴史ってのは誰かの思惑通りに進んだりはしないってことが分かるよね。

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    2018年08月25日
  • 戦前日本のポピュリズム 日米戦争への道

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    なぜ日米戦争に向かったのかを、軍部ではなく政治と社会の側から探る。政党政治を崩壊させたものは何だったのか。結局、当時の日本社会では民主主義が幼稚に過ぎたためってことなんだろうけど、これって今とどれだけ違うのか? 既存政党を批判するばかりでは、民主主義は育たない。自ら判断できる知力と、正確な資料報道の重視が求められるのだろう。こりゃ道は遠いわな。

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    2018年04月05日
  • 昭和史講義3 ──リーダーを通して見る戦争への道

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    筒木清忠編のちくま新書による「昭和史講義」シリーズ第3弾は、人物にスポットを当てての入門書。

    15名の人物(加藤高明、若槻礼次郎、田中義一、幣原喜重郎、濱口雄幸、犬養毅、岡田啓介、廣田弘毅、宇垣一成、近衛文麿、米内光政、松岡洋右、東條英機、鈴木貫太郎、重光葵)が取り上げられている。このうち首相経験者は、12名。宇垣、松岡、重光以外は首相をやったことがあるから、サブタイトルにある通り「リーダーを通してみる戦争への道」でいうリーダーはほぼほぼ首相ということになろうか。逆に首相非経験者3名が軍人、外交官という選定(宇垣は大命降下までいって組閣失敗という事例だが)。

    外交官関係は加藤、幣原、廣田、

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    2017年07月24日
  • 昭和史講義2 ──専門研究者が見る戦争への道

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    全部で20講あるので当然中身も精粗様々。個人的には第5項、8講、12講、16講が興味深かった。「昭和恐慌下の日本」を扱った第4講はダメ。しかし、全体としては勉強になった。

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    2016年08月03日
  • 昭和史講義 ──最新研究で見る戦争への道

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    昭和史の最近の研究成果を反映させた論文集だ.ロンドン海軍軍縮会議(1930),満州事変(1931),2.26事件(1936),ノモンハン事件(1939),日独伊三国同盟(1940)などに関して新しい知識が得られた.従来の説とやや異なる記述も目立つが,参考文献を詳細に示していることで,いわゆる俗説ではないなと感じた.

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    2016年03月25日
  • 昭和史講義 ──最新研究で見る戦争への道

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    全15講からなる「昭和史講義」。“複雑きわまる戦前期を正確に理解するための決定版通史”と帯には惹句が掲げてあるが、多分、何の前提の知識もない人が読んでもちんぷんかんぷんだと思う。

    そういう意味で多少この時代に興味を持ち、何冊か概説書も読んだけれど、イマイチよくわからない人が読んで、“最新の研究はこういう資料を使ってこうした議論がされているのか……” と、もしかすると概略を掴めるのかもしれない、といった感じのテキスト。

    決して簡単で易しいという本ではないが、コンパクトなまとめと導きのブックガイドは非常に有益(ただし、経済史・社会史のネタはほとんどなし。政治史・外交史に偏ってはいる)。

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    2015年08月02日
  • 昭和戦前期の政党政治 ──二大政党制はなぜ挫折したのか

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    男子普通選挙とともに訪れた本格的政党政治の時代は、わずか8年で終焉を迎えた。待望久しかった政党政治が瞬く間に信頼を失い、逆にそれほど信望の厚くなかった軍部が急に支持されるようになったのはなぜか。宮中やメディアといった議会外の存在、大衆社会下におけるシンボルとしての天皇、二大政党による行き過ぎた地方支配など、従来の政治史研究では見過ごされてきた歴史社会学的要因を追究する。現代日本の劇場型政治と二大政党制混迷の原型を、昭和戦前期に探る試み。(2012年刊)
    ・はじめに
    ・第1章 護憲三派と政党政治の新生―政友会の分裂から第二次加藤高明内閣まで
    ・第2章 「劇場型政治」の開始―第一次若槻礼次郎内閣

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    2014年04月12日