筒井清忠のレビュー一覧
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大正時代というのは、改めて振り返ると、とても重要、且つ学ぶべき時代だと思う。
明治から始まる近代化は、大正時代において、特に政治の観点で成果が見えつつあり、文化の面でも花開くところがあった。
そんな中で、どのように昭和を迎え、何が軍国主義に追い立てたのか?
決して、徐々に軍国主義が広がったわけではなく、大正時代は、ある意味、国民の政治に参加する意識は高く、議会制民主主義の裾野が広がった時期でもある。
軍国主義が、その反動だった、という一言で片づけられる訳もなく、よくその時代を追っていく必要がある。
軍国主義へ導いたことを現象面で上げるとすれば、相次ぐ政治家へのテロがある。
それも、政治に対す -
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帝国陸海軍の主要な14人の将官を扱ったもの。紀伝体的に個別人物に着目しているわけだが、中身は玉石混淆。編年体では無いので全体像は掴みにくくなるが、それはシリーズ全体で縦糸横糸の関係にあると思う。但し、紀伝体らしく、その人の個性・経歴・思想などに切り込めている章が全てではなく、残念ながら星4とした。
読後感としては、個別人物が好きかどうかは別として、梅津、鈴木貞一、武藤、牟田口、今村、永野、石川、堀が面白かった。山本が自分の中ではダントツに詰まらなかった。
特に、海軍の指導者として名前はよく見るが全く知らなかった永野は更に知らなければと思った。リーダーシップなき組織の典型。堀悌吉の項では、と -
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「昭和史講義」が好評だったので、その続編としてでたもの。
前作同様に、戦前を中心として、注目すべき出来事の事実解明を中心としながら、20のトピックを20人の研究者が概説したもの。
出版の経緯からして、前著と一緒に読まないと、全体の流れがわからなくなるかもしれないが、これだけでも、多分、それなりに面白いだろう。
一人の著者による通史ではないので、読みにくさはあるのだが、取り扱われるのは、それなりに「知っている」つもりの出来事が多いので、それなりに面白い。また、通常、どういう文脈で議論されているかもなんとなくわかっているつもりなのが、近年の研究ではかなり違う話しになっいるかがわかって、スリリ -
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日本のファシズムは、ドイツやイタリアと比べると、あまり全体主義的ではなく(いろいろな意見・利害対立があって、バラバラで、「全体」になってない)、下からの運動というより、天皇の権威を利用した上からの統制という具合に理解しているのだが、それでもやはりファシズム的であるのは、大衆からの支持があったから。
そして大衆の支持は、マスコミによる影響が大きいのだろうという予測のもとに、この本を読んでみた。
大きくは、こうした事前の予測とは異なるわけではなかったのだが、それでも具体的にメディアがどういう論調の記事を書いたのか、そして、それに大衆がどういうふうに反応したのかを読むと、あらためて戦前の日本がど -
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学校の日本の歴史の授業では、近現代史に到達するまえに、授業が終わって、のこりは自習ということになっていた。なので、その辺のところは、とても表面的なところでしか知らなかったわけだが、最近、この辺りのところに関心があって、学習中。
この本は、最新の研究成果をまとめて、これまでの通説的な理解を塗り替える、みたいな位置付けなんだけど、なまじこれまで学んでないので、へ〜、そうなんだという感じで、あまり驚きはなかった。(笑)
歴史というものは、そんなに単純な因果関係で理解できるようなものではない、ということがよくわかるな〜。
もし自分がこの時代で、しかるべき立場にいたとするならば、どんなことを思って -
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<目次>
第1章 吉野作造と民本主義
第2章 経済メディアと経済論壇の発達
第3章 上杉慎吉と国家主義
第4章 大正教養主義~その成立と展開
第5章 西田幾多郎と京都学派
第6章 「漱石神話」の形成
第7章 「男性性」のゆらぎ~近松秋江、久米正雄
第8章 宮沢賢治~生成し、変容しつづける人
第9章 北原白秋と詩人たち
第10章 鈴木三重吉・『赤い鳥』と童心主義
第11章 童謡運動~西條八十・野口雨情・北原白秋
第12章 新民謡運動~ローカリズムの再生
第13章 竹久夢二と宵待草
第14章 高等女学校の発展と「職業婦人」の進出
第15章 女子学生服の転換~機能性への -
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大正史となると、およそ100年前の時代、だいぶ現代史に近づいてきた感がする。
"はじめに"として、編者筒井氏の総論が述べられる。「大正時代というのは一言で言えば、大衆の登場が始まった時代である」そしてそれを象徴するのが、日比谷焼打ち事件であった。
第一次護憲運動、大隈ブーム、対中国強硬政策要求運動、米騒動、普選運動、排日移民抗議運動、第二次護憲運動、護憲三派内閣、普選法成立、二大政党政治、28年普選実施と事態は進んでいく、それらの駆動力となったのが、大衆であった、と言う。
全26講、それぞれに新しい知見を得ることができて勉強になったが、特に関心を持ったのは次のとお -
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戦前から戦中にかけての昭和史を専門家が短く読みやすくまとめたものである。それぞれの研究者によって、同じ事象に対して見方が異なるところがあり、それがかえって一方向に偏らない思考の助けになる。本書の特徴である。
内容としては、すでにたくさんの書物、新聞の論説、NHKなどのテレビ番組によって世の中に広く知られていることが議論の対象であり、特別に新しい発見があるとかいうものではない。
ただ、本書のような重層的な書き方がまとまったものを手にして、日本が日中戦争、太平洋戦争(大東亜戦争)に至るそもそもの目的は何だったのか、最後に何をしたかったのか、あるべき姿をどのように描いていたのか、このような本質 -
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筒木清忠編のちくま新書による「昭和史講義」シリーズ第3弾は、人物にスポットを当てての入門書。
15名の人物(加藤高明、若槻礼次郎、田中義一、幣原喜重郎、濱口雄幸、犬養毅、岡田啓介、廣田弘毅、宇垣一成、近衛文麿、米内光政、松岡洋右、東條英機、鈴木貫太郎、重光葵)が取り上げられている。このうち首相経験者は、12名。宇垣、松岡、重光以外は首相をやったことがあるから、サブタイトルにある通り「リーダーを通してみる戦争への道」でいうリーダーはほぼほぼ首相ということになろうか。逆に首相非経験者3名が軍人、外交官という選定(宇垣は大命降下までいって組閣失敗という事例だが)。
外交官関係は加藤、幣原、廣田、 -
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全15講からなる「昭和史講義」。“複雑きわまる戦前期を正確に理解するための決定版通史”と帯には惹句が掲げてあるが、多分、何の前提の知識もない人が読んでもちんぷんかんぷんだと思う。
そういう意味で多少この時代に興味を持ち、何冊か概説書も読んだけれど、イマイチよくわからない人が読んで、“最新の研究はこういう資料を使ってこうした議論がされているのか……” と、もしかすると概略を掴めるのかもしれない、といった感じのテキスト。
決して簡単で易しいという本ではないが、コンパクトなまとめと導きのブックガイドは非常に有益(ただし、経済史・社会史のネタはほとんどなし。政治史・外交史に偏ってはいる)。 -
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男子普通選挙とともに訪れた本格的政党政治の時代は、わずか8年で終焉を迎えた。待望久しかった政党政治が瞬く間に信頼を失い、逆にそれほど信望の厚くなかった軍部が急に支持されるようになったのはなぜか。宮中やメディアといった議会外の存在、大衆社会下におけるシンボルとしての天皇、二大政党による行き過ぎた地方支配など、従来の政治史研究では見過ごされてきた歴史社会学的要因を追究する。現代日本の劇場型政治と二大政党制混迷の原型を、昭和戦前期に探る試み。(2012年刊)
・はじめに
・第1章 護憲三派と政党政治の新生―政友会の分裂から第二次加藤高明内閣まで
・第2章 「劇場型政治」の開始―第一次若槻礼次郎内閣