あらすじ
昭和史をめぐっては、実証的研究が着実に進んでいる。にもかかわらず、一般向けにその成果を紹介したものは少ない。近現代の歴史教育にも、最新研究が反映されているとは言い難い。なぜ昭和の日本が戦争へと向かったのか。その失敗の原因はどこにあったのか。その解明に向けて、戦後七十年を機に、気鋭の研究者の最新成果を結集。より進んだ探究をしたい人向けに、邦語で読める参考文献ガイドを付す。昭和史の真実を知りたい読者におくる、最良の戦前期昭和史レクチャー。
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Posted by ブクログ
昭和史の重要事項を時代順に並べ、それぞれ専門の研究者が最新の研究に基づいて執筆する。政治の場面で何が起こっていたのか、メディアはそして世論はどうだったのか、また外交・戦争においても日本側では何があったのか、相手側ではどうなっていたのかを述べており、その叙述は冷静で、一面的な見方に陥らず、中立的である。参考文献ガイドまでついており、昭和史の手引き書として最適。世の中にはびこる旧説・俗説に基づく昭和史本に対する憤懣と慨嘆にはうなづけるものがあり、こうした一般向けに最新の実証的研究の成果を紹介する本は貴重。
Posted by ブクログ
学校の日本の歴史の授業では、近現代史に到達するまえに、授業が終わって、のこりは自習ということになっていた。なので、その辺のところは、とても表面的なところでしか知らなかったわけだが、最近、この辺りのところに関心があって、学習中。
この本は、最新の研究成果をまとめて、これまでの通説的な理解を塗り替える、みたいな位置付けなんだけど、なまじこれまで学んでないので、へ〜、そうなんだという感じで、あまり驚きはなかった。(笑)
歴史というものは、そんなに単純な因果関係で理解できるようなものではない、ということがよくわかるな〜。
もし自分がこの時代で、しかるべき立場にいたとするならば、どんなことを思って、どんな判断をするだろう?多分、同じようなことを考えてしまっただろうな〜と思う。
だれが悪いわけでもないのだが、いろいろやっているうちに、そんなことになってしまう、という実に日本的な空気感があって、痛いところ。
Posted by ブクログ
2018.12.16-2018.12.20
昔ながらの紋切型の歴史観がネット上で飛び交ふ中で、最新の研究を元にした議論を一般にも広めようといふ意図は評価できる。
特定の問題についての論文が並んでゐるので、全体像についての知識がないと読みにくいかも。
個人的には、中国国内の情勢、例へば蒋介石の動きと日本の政治が密接に関係してゐたことを再認識した。
Posted by ブクログ
戦前から戦中にかけての昭和史を専門家が短く読みやすくまとめたものである。それぞれの研究者によって、同じ事象に対して見方が異なるところがあり、それがかえって一方向に偏らない思考の助けになる。本書の特徴である。
内容としては、すでにたくさんの書物、新聞の論説、NHKなどのテレビ番組によって世の中に広く知られていることが議論の対象であり、特別に新しい発見があるとかいうものではない。
ただ、本書のような重層的な書き方がまとまったものを手にして、日本が日中戦争、太平洋戦争(大東亜戦争)に至るそもそもの目的は何だったのか、最後に何をしたかったのか、あるべき姿をどのように描いていたのか、このような本質的な部分に疑問を持つようになる。
Posted by ブクログ
昭和史の最近の研究成果を反映させた論文集だ.ロンドン海軍軍縮会議(1930),満州事変(1931),2.26事件(1936),ノモンハン事件(1939),日独伊三国同盟(1940)などに関して新しい知識が得られた.従来の説とやや異なる記述も目立つが,参考文献を詳細に示していることで,いわゆる俗説ではないなと感じた.
Posted by ブクログ
全15講からなる「昭和史講義」。“複雑きわまる戦前期を正確に理解するための決定版通史”と帯には惹句が掲げてあるが、多分、何の前提の知識もない人が読んでもちんぷんかんぷんだと思う。
そういう意味で多少この時代に興味を持ち、何冊か概説書も読んだけれど、イマイチよくわからない人が読んで、“最新の研究はこういう資料を使ってこうした議論がされているのか……” と、もしかすると概略を掴めるのかもしれない、といった感じのテキスト。
決して簡単で易しいという本ではないが、コンパクトなまとめと導きのブックガイドは非常に有益(ただし、経済史・社会史のネタはほとんどなし。政治史・外交史に偏ってはいる)。
Posted by ブクログ
昭和史を考えるポイントは2つ。
なぜ戦争を選択したのかと、どうしてもっと早く終戦に持ち込めなかったのかだ。目からウロコほどの新事実が語られているわけじゃないけど、ロンドン軍縮条約に対する評価は興味深い。もっと勉強できるぞ。