あらすじ
戦後昭和文化とは何だったのか。茫漠として像を結びにくいその全貌を描き出すべく、上下2巻、38の多様な論点から照射する試み。これまで7冊を刊行してきた筒井清忠編『昭和史講義』シリーズの最終配本となる戦後文化篇。上巻では、思想・文学・芸術を幅広く渉猟しつつ、個々の論点を深く掘り下げ、戦後昭和文化の核心に迫る。知識人や作家の活動、社会の側のさまざまな思想や運動を、第一線の研究者が一般読者に向けてわかりやすく説き明かすこれまでにない昭和文化史入門。
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Posted by ブクログ
『昭和史講義』シリーズも7冊が既刊だが、いよいよ最終配本とのこと。
興味を持った講は、次のとおり。
第1講「丸山眞男と橋川文三」〜丸山の近代主義的な超国家主義研究に対し、橋川は、日本の“超国家主義“を日本の国家主義一般から区別する歴史的視座の構築を目指し、具体的には、安田善次郎を暗殺した朝日平吾をそのスタートとして着目する。社会的緊張の状況におかれた下層中産階級の者たちの自我意識がその限界を突破しようとして、現状のトータルな変革を目指した革命運動であったとして昭和超国家主義を捉える。
第3講「知識人と内閣調査室」〜「内調」という組織は、なかなか外からはその実態が分からない。最近でこそインテリジェンスの重要性が言われ、内調幹部経験者の書籍等も出ているが、本稿は、戦後間もない時期における内調自身の自己規定や、内調と知識人との関わりなど、あまり知られていないところにフォーカスを当てたもので、興味深い内容である。
第14講「小林秀雄」〜小林秀雄の偉さというものがいろいろ読んでも良く分からなかったのだが、本稿ではニコラウス・クザーヌスの「知ある無知」を補助線として小林の批評の特色を説いている。少し納得できた思い。
第18講「勤労青年の教養文化」〜50年代には、進学したくとも家庭の事情等で進学出来なかった相当数の者たちがいた。青年学級、定時制高校、人生雑誌等、彼ら勤労青年が教養を求めて参画したそれらに触れつつ、勤労青年の鬱屈と時代状況を説明する。正に、そんな〜時代もあったねと、との思いを強く感じた。